■日本がいつまでたっても「アメリカの子分」をやめられない理由~この国を蝕み続ける病理とは?~
週刊現代(2018.07.28)
白井聡(京都精華大学専任講師)
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――日本の対米従属姿勢を考えるうえで欠かせない興味深い概念が、白井さんが前著で示した造語「永続敗戦」です。
第二次世界大戦で日本が大敗したことは、国民の誰もが知っています。
ところが、ほとんどの日本人は、心のどこかで敗戦を認めていないのではないでしょうか。
たとえば、8月15日を「終戦の日」と呼ぶのがその典型です。
「敗戦」ではなく「終戦」と言い換えて認めないことこそが、皮肉にも敗戦の結果としての対米従属関係から脱せられない「永続敗戦」の状況を作り出しているのです。
もうひとつ、「歪んだプライド」も日本が敗戦を直視できない原因のひとつでしょう。
冷戦構造の中で「アメリカの一の子分」になったことで、「自分たちがアジアの中で唯一の先進国だ」という戦前からの優越意識を持ち越してしまった。
逆に言えば、他のアジアの国々を一段下に見てきた。
「アメリカには従うけれど、中国に負けたことは認めない」。
妙な自意識が生まれたのです。
こうして、だらしのない対米従属を続け、歪んだ自意識を抱えてきた日本は世界の国々からすれば、まぎれもない「アメリカの属国」と見られている。
ここに、日本が経済力に見合った国際的な地位を得られない理由の一端があるのです。
――各国のメディアから「アメリカにへつらっている」と評される安倍政権の姿勢にも、苦言を呈されています。
今の日本は、ひたすらアメリカのご機嫌をとってすがり付く見苦しい状態に陥っています。
それがはっきり見えたのが、先日、トランプ大統領が「米韓合同軍事演習を停止する」と言いだしたときの小野寺五典防衛大臣の発言です。
小野寺氏は「米韓合同演習は地域の平和と安定を確保していく上で重要な柱」と言い切りました。
朝鮮戦争が終わってしまえば在日米軍の駐留根拠の一つがなくなってしまう。
これは同時に「アメリカの一の子分」という戦後日本のアイデンティティが崩れることも意味します。
それだけは避けたいという日本政府の不安が露骨に表れたのがあの発言なのです。
――対米従属の現状を打開することは難しい。それでも、白井さんが本書の執筆を急ぐ理由となったのが、’16年8月8日に発表された天皇の異例のビデオメッセージ、いわゆる「お言葉」でした。
「お言葉」のなかで天皇は繰り返し、自身の「国民統合の象徴としての役割」を語りました。
国民の統合は、天皇自らが動き、祈ることよってもたらされる安寧と幸福を国民が集団的に感じることではじめて成り立つという考えです。
即位以来、そのために絶えず動き続けた天皇は、ここにきて自身の体力の限界を認識し、天皇の位を去ることを決断しました。
逆に言えば、あの「お言葉」は、自分が退位した後の日本における「国民の統合」に対して、天皇が危機感を抱いていることの表れでした。
私自身は、「アメリカを事実上の天皇と仰ぎ続けたままで国民の統合を保つことができるのか」という非常に烈しく、踏み込んだメッセージのように感じました。
失われた20年、あるいは30年と言われるように、日本が長い停滞から抜け出せないのは、「国体化」した対米従属の構造が社会を蝕んでいるからにほかなりません。
この足踏み状態から抜け出すには、まず現実を直視することからはじめなくてはならないのです。
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日本がいつまでたっても「アメリカの子分」をやめられない理由~この国を蝕み続ける病理とは?~
週刊現代(2018.07.28)
白井聡(京都精華大学専任講師)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56670
■【隷属状態からの脱出が日本の最重要課題だ】日本人から思考を奪う「国体の正体」とは何か
東洋経済オンライン
2018/07/26
白井聡:京都精華大学教員/國分功一郎:東京工業大学教授
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「奴隷」という言葉で表しています。
ニーチェが言ったように、奴隷は自らが奴隷であることを否認し、自分の現状をすばらしいものだと思い込んでいる。
そして、「お前は奴隷なんだぞ」と言ってくる自由人たちを誹謗中傷し、自分の惨めな境遇を押し付けようとする。
この奴隷根性に関して非常にショッキングなのは、白井君の本によく出てくるアメリカの元国務長官、ジョン・フォスター・ダレスの分析です。
ダレスは日本について、日本人は欧米人に対するコンプレックスと同時にアジア人に対するレイシズムを持っており、この2つをうまく利用すれば日本を支配できる、と言った。
実際、日本はそれをうまく利用され、支配されてきました。
戦後の日本がアメリカの支配の中で受け取った価値観は、自由主義でも民主主義でもなく、結局のところ近隣のアジア諸国を差別する権利だったわけです。
こうしたコンプレックスの中にいるかぎり、日本の奴隷根性がなくなるはずがない。
これに対して、「共産党はろくでもないけど共産党しかない」と言っている中国には、奴隷根性はないわけですね。
そこが「自民党しかない」と言っている日本との違いだと思います。
中国の学生たちを見ていても、彼らには奴隷根性はないでしょう。
『国体論』の先にある日本にとって重要な課題
白井:そう思いますね。
中国の学生たちが会社に就職したあとにまず何を考えるかというと、どうやってその会社を辞めて独立するかということですからね。
最初の問いに戻れば、支配されているという事実、日本の状況がどんどん悪くなっているという事実から目を背けている奴隷根性が、安倍政権を支えている。
國分:この奴隷根性から脱出することが日本にとって重要な課題であり、『国体論』のひとつの課題でもあったと思います。
ただその際、奴隷根性から脱出したあとの姿があまりイメージできないということも事実です。
僕は『国体論』を読み、その問題意識に強く共感すると同時に、奴隷根性から脱した先のことを具体的に考えていく必要があると思いました。
この問題は今後も白井君と一緒に考えていきたいと思っています。
白井:まずは「国体」のもと、支配されていることを否認するという病癖に日本人が気づくことから始めるしかないでしょう。
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日本人から思考を奪う「国体の正体」とは何か
東洋経済オンライン
2018/07/26
https://toyokeizai.net/articles/-/229556
■『すべての戦争は自衛から始まる』(著:森達也 2019年01月16日 講談社文庫)
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歴史上、多くの戦争が自衛意識から始まった。
ナチス最高幹部だったヘルマン・ゲーリングは「戦争を起こすことはそれほど難しくない」と述べている。
「国民に対し、我々は攻撃されかけているのだと危機感をあおり、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればいい」と。
安倍政権は危機を誇張して「抑止力」や「自衛」の必要性を訴えている。
「集団化」が加速するこの国は、その意味を深く考えないまま流されてしまうのか。
だから、「戦争はダメ!」と言い続けなければならない。
いや、それでは足りない。
「戦争はダメ!」だけではダメなのだと言わなければ。
なぜなら、それだけでは「戦争を回避するために抑止力を高める」とか「戦争を起こさないように自衛力を身につける」などのレトリックに対抗できなくなる。
我々は戦争の被害だけでなく加害の記憶を刻む必要がある。
被害と加害の二つの視点を重ねることで、普通に市井に生きていた人が、なぜあれほど残虐な行為に耽ることができたのか、そのメカニズムが明らかになる。
理由までは行き着けないにしても、人間とはそんな存在なのだと実感することができるようになる。
戦争の悲惨さ、残酷さが初めて、立体的な姿で立ち現れる。
繰り返す。
多くの戦争は自衛の意識から始まる。
あの国を侵略してやろうなどと始まる戦争はほとんどない。
そして自衛の意識が発動したとき、被害の記憶だけでは踏みとどまれない。
加害の記憶から目をそむけず、何度でも自分に刻みこむ。
それを自虐史観と呼びたければ呼べばよい。
胸を張って自虐する。
この国が、再び「戦争」を選ばないために。
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『すべての戦争は自衛から始まる』講談社BOOK倶楽部
https://bookclub.kodansha.co.jp/title?code=1000034089
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