昨今、ビジネス社会において、多様性、ダイバーシティが注目されています。
背景には人材不足があるのかもしれません。
でも、そもそも、多様性は必要なのでしょうか。
ダイバーシティに本当は意味があるのでしょうか。
今回は多様性、ダイバーシティについてお伝えします!
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今年の花粉症、すごかったですね。
初めて発症した、という方も多かったように思います。
今、日本人全体の25%ほどが花粉症を持っていると言われています。
私もその一人です。
花粉症は、まさに日本における「国民病」の一つかもしれません。
でも、なぜ、日本にだけ、花粉症が広がっているのか、ご存知でしょうか。
花粉症の原因の中心が「スギやヒノキの花粉」ですよね。
実はこれ、自然が偶然作り上げたものではなく、「人工的」に広がったものだと言われています。
背景は戦争。
太平洋戦争後半、各国からの資源輸入ストップもあり、鉄などの金属を使い切ってしまったのち、国内木製の資源を大量にねん出しました。
木製飛行機や木製輸送船、なんてものまで造ったそうです。
戦時中の木材大量伐採。
これが引き金です。
戦後、植林を勧めます。
高度成長期の木材需要増加も拍車をかけ、植林も拡大させていきます。
植林する樹木のターゲットは、成長早く育成しやすい「スギ」や「ヒノキ」。
育成期間は30年~40年。
この高度成長期の植林、つまり「人工林」のスギやヒノキが成長し、現在一斉に花粉を飛ばしているんですね。
今、日本の森林のうち40%ほどが人工林ですが、そのうち約43%がスギ林だと言われています。
人工林。
人工的に、一つの種類を増やし続けることって、自然界には存在しません。
不自然で偏った植林が、花粉症の背景かもしれません。
一つの種類、一つの考え方、何事でも「行き過ぎ」はリスクも伴うものかもしれません。
そういえば、以前、ブラジル「アグロフォレストリー(Agroforestry)」という農法でフルーツを栽培し、日本国内で普及させようと奮闘しているベンチャー企業経営者にお会いしたことがあります。
「アグロフォレストリー」は、農業(アグリカルチャー=Aguriculture)と林業(フォレストリー=Forestry)の造語です。
直訳すれば「農林業」となりますが、通常は「混農林業」「森林農業」「農林複合経営」などと呼ばれています。
育成したい果実を中心に育成するのだけど、ジャングルに近い植物や木々を意図的に植えて相互のバランスを維持する、ミニジャングルような形式でその目的の果実を栽培する農法です。
多様な樹種が育つ森が再生することから、アグロフォレストリーは「森をつくる農業」とも言われています。
一つの農作物を専門に生産するうえで一番のリスクはその病害虫の発生。
一気に全滅、という事態もあり得ます。
一方、 様々な果樹を混植し、その樹陰で野菜を栽培することで効率は落ちるものの、病害虫の被害を受けにくく、定常的な収益が期待できるのが、「アグロフォレストリー」です。
ローリスク・ローリターンですが、森林の形態を維持するメリットがあることも、一つ注目されています。
もともと、森や林は1種だけで育っていないですよね。
いろんな植物がいて、いろんな動物がいて、その総体として自然はバランスで存在してるのかもしれません。
もともと、ブラジルの農法ですが、この「アグロフォレストリー」という新しい農法を立ち上げたのが日系人。
ブラジルに入植した日系人が、コショウ栽培しながら試行錯誤し、現地の人たちの知恵や工夫を取り入れた結果、見出した農法だそうです。
複数の考え方、知恵を取り入れ、イノベーションを起こしたとも言えるのかもしれません。
色々な植物が絡み合って成り立っている「アグロフォレストリー」。
言い換えれば「多様性(ダイバーシティ)」かもしれません。
今、ビジネス社会で注目されている「多様性」は、主に女性、高齢者、外国人、障害者活用の名目で使われることが多いように思います。
人口減少、労働力不足を背景とした人材不足が根底にあるような気がします。
でもこの「多様性」、効用は人材活用だけに留まらないと思っています。
それがイノベーション。
ある記事に「多様性がイノベーションを生む」という証明データがあります。
それがこちら。
BCG日本代表、御立尚資氏の記事です。
記事中のデータ調査は、ミュンヘン工科大学とBCGが2016年に行った共同調査で、ドイツ・スイス・オーストリアの171社を対象に実施したものです。
このデータから「多様性が高い企業ほど、新商品・新サービスの収入が多くなっている」としています。
このデータにおける「多様性」の項目が以下。
・ 性別
・ 出身国
・ キャリアパス(複数企業で働いた経験)
・ 産業(調査対象企業が属する業界以外の業界で働いた経験)
・ 年齢(年齢層の拡がり)
・ アカデミックバックグラウンド(学位の種類等)
年齢やアカデミックバックグラウンドはあまり関係ない、としつつも、多様な背景を持つ人材が多い場合、イノベーションが起こりやすいという結果となっています。
確かに、様々な経験、考え方、視点が絡み合い、相乗効果を見い出せれば、新しい商品や新しいサービスが生み出される可能性は高まるかもしれません。
多様性とイノベーション、関係性は一部あるのではないでしょうか。
しかしながら、新しい考え方、視点が増えたとしても、大きな課題があります。
それが実現化。
実際に考えたもの、思ったもの、斬新な考え方を「言えるかどうか」。
それが「意見の多様性」。
ある意味、一番難しいことかもしれません。
これだけ多くの企業が多様化、ダイバーシティに注力しつつも、実際に実現できているかどうかが分かりづらいのも、その効用を本当の意味で「実現化」できていないからかもしれません。
一つ、成功事例をご紹介いたします。
それが赤城産業株式会社という企業。
「ガリガリ君」ってご存知でしょうか。
そうです、お手頃価格アイスで多くのコンビニでも見かけますよね。
この「ガリガリ君」の製造メーカーが、赤城産業です。
赤城産業で有名なのが、見える化ならぬ「言える化」です。
「言える化」とは、文字通り、思ったことを言えるようにする組織的な活動のことを指します。
自由に意見を言うというのは、実際、組織において難しいものです。
自分の感性でいろいろ考えても、バカにされるのではないか、上司の意向に反していないか、戦々恐々となってしまうのが、多くの企業の実態ではないでしょうか。
実際、赤城産業の業績拡大は、若手を含めた様々な意見を取り入れることで成長を実現してきたと言われています。
ガリガリ君と言えば、斬新なフレーバーが有名ですね。
ナポリタン味、メロンパン味、温泉まんじゅう味、コーンポタージュ味、黒蜜きなこ味、シチュー味、etc…。
アイスにナポリタン?!コーンポタージュ?!
普通考えられません。
なかには「大外れ」もあったようですが、実際日本中話題を集め、ガリガリ君の知名度を上げたことは間違いないでしょう。
実際、コーンポタージュの宣伝費用はたった15万円だったようです。
ガリガリ君の斬新的な発想も、その「言える化」の賜物かもしれません。
「言える化」。
意見の多様性を「実現」するためには、最も重要なポイントではないでしょうか。
世界を変える、イノベーション。
イノベーションも、様々な意見を言い合い、確認し合い、絡み合い、生み出されるものではないでしょうか。
人は「想像」できないものは「創造」できません。
「想像」を超える考え方と出会うことで、新たなものが「創造」することができるのではないでしょうか。
イノベーションとは「違い」「異質」との創造的出会い。
つまり。
「違い」そのものが、私たちの未来を創り上げている、そう言えるのかもしれません。
名言をお伝えします。
かつて日本には1つの価値観が重きを占め、それ以外を否定的にとらえていた時代がありました。しかし例えば森の木々でも、スギは木材として役立ち、ブナは木材に適さなくても、森全体を保水するという大切な役割を果たします。同じように、ダイバーシティもいろいろな角度から見る必要があるでしょう。
赤井益久/國學院大學学長
オープンイノベーションに必要なのが、ダイバーシティ(多様性)。違う血を入れて、異なるものを是とする受容力。ダイバーシティによって、イノベーションも生まれるのです。
新浪剛史/サントリー代表
普段、私が経営判断をするうえでもっとも参考にしているのは、モンゴル帝国の皇帝クビライです。ヨーロッパでは十字軍や異端審問が行なわれていた時代に、彼は思想・信条・宗教と政治を切り離していました。彼は中国人やペルシャ人、アラブ人など、さまざまな国・地域から優秀な人材を登用しています。徹底的に合理的なのです。いってみれば、ダイバーシティの先駆けですね。
出口治明/ライフネット生命保険創業者
所詮、自分の脳から出てくるアイデアなんてタカが知れています。私たちは自分がさまざまな考え方ができると勘違いしていますが、実は、人間の思考は想像以上にワンパターンです。しかも、長く生きれば生きるほどワンパターンになっていきます。ですから、創造的な発想をしようと思うなら、他人と脳を合わせることです。
池谷裕二/東京大学大学院薬学系研究科教授
事業開発で創り出すほうの創造力、つまりクリエイトの創造力と、もう一つイメージするほうの想像力の二つ共に経営にとって大事。
伊藤一郎/旭化成会長
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