昨今、人材不足が深刻化してきました。
人口が減少し、高齢者が増加する中、人材を確保することが企業存続の条件となっています。
一方、グローバル化も浸透してきています。
外国人旅行者も増加、日本食などの人気を背景に海外進出している企業も急増しています。
このように今までの考え方、経営手法では成り立たなくなってきているのは周知の事実ではないでしょうか。
今回はダイバーシティ経営の一角、障害者活用についてお伝えします。
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昨今広まってきたダイバーシティ(多様性)経営。
ご存知の通り、ダイバーシティ経営は企業が多様な人材を活かし、能力を最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを誘発し、価値創造を実現する経営手法のことです。
このダイバーシティ経営の特徴は、単なる社会貢献、福利厚生やCSRの一環としてではなく、企業としての業績、利益に寄与できる考え方として注目されています。
ダイバーシティ経営は大きく分けて「人材の多様性」と「働き方の多様性」の2つの多様性があります。
旧来の日本の企業は「新卒、男性、日本人」といった単一的な人材で成長してきました。
物やサービスが枯渇してきた時代には物を作れば、サービスを提供できれば、単純に成長できた時代でもありました。
消費者が全員白物家電を買い揃え、土曜の夜は8時だよ全員集合、年末はNHK紅白を家族全員で見て、子どもたちは全員ファミコンをしている時代、単一商品、単一サービスを提供することだけでも企業は問題なく収益を拡大できた時代でした。
しかし、様々な物やサービスがラインナップした現代では、多様化する消費者の嗜好や価値観が広がり、真新しい商品、サービス、新しい価値観や考え方を取り入れることが企業存続のカギとなってきました。
つまり、単一的な人材、単一的な考え方では企業が存続できなくなってきたのです。
様々な意見やアイディアを取り入れ、多様な商品やサービスを生み出す必要が出てきたのです。
女性、外国人、高齢者、障害者など様々な考え方が、企業の利益としてそのまま戦力に結び付くようになってきたのです。
海外からの外国人旅行者、増えつつける高齢者向けサービス、働く女性向けの商品、増え続ける精神障害者などなど、「新卒、男性、日本人」しかいない企業がそのニーズに答えられるでしょうか?
今、人材不足も加速している背景もあり、企業は「人材の多様性」が求められているのです。
そしてもう一つのダイバーシティは「働き方」の多様性です。
女性、外国人、高齢者、障害者などの不可欠な人材を安定雇用するためには、生活環境・家族の事情・健康の事情を考慮し、働きやすい環境を整備する必要があります。
多様な雇用形態、ワークライフバランス、雇用条件、さらには就業場所や時間、人事考課制度などを取り入れる必要性があります。
女性や外国人、高齢者や障害者が働きやすい会社は、優秀な人材にとっても同じでもあり、優秀な人材が離職しないための対策にもつながることも大きなメリットであると言われています。
しかし、ダイバーシティ経営を推進する上で重要なことは、上記のような制度面だけではありません。
違いを受容する風土を職場全体に浸透、定着させることが重要ではないでしょうか。
そのためには「意識改革」もダイバーシティ経営を定着させるために必要なことかもしれません。
ダイバーシティ経営は、現在女性の活用が脚光を浴びています。
多くの企業でも女性の活用は実現しつつあると言えるでしょう。
また、再雇用制度や定年延長制度も浸透している中、高齢者活用も進んでいると言えるのかもしれません。
しかしながら、ダイバーシティ経営において、ハードルが高いのが「外国人」「障害者」活用ではないでしょうか。
特に障害者雇用。
この障害者雇用は、実は企業に雇用義務が存在しています。
それが「障害者雇用率」。
50人以上の企業には法律で義務付けられている「障害者雇用率」という制度があります。
障害者法定雇用率とは、企業が全社員数の内、障害者を必ず一定比率採用しなければならないという制度です。
この法定雇用率は5年に一度比率が引き上げられており、1997年に1.6%→1.8%、2013年に1.8%→2.0%、2018年に2.0%→2.3%に引き上げられました。
例えば1,000人の社員がいた場合、内23人(2.3%)以上を障害者手帳保持者を雇用する必要がある、という数字になります。
この数字に未達成となりますと、50人以上の企業に対し、罰金(納付金1人1か月五万円)の支払いを命じ、さらに改善しない企業には行政からの指導が入り、最終的には社名公表にまで至ってしまうものです。
企業にとっては罰金(納付金)も損失ですが、仮に社名公表となった場合、ブランドイメージ、株式市場の評価など相当な痛手となってしまいます。
つまり、知名度のある企業としては、この障害者法定雇用率はMUSTで達成しなければならないもの、と言えるのかもしれません。
前述のように企業としては法定雇用率が上昇している背景もあり、ダイバーシティ経営に積極的な企業は、障害者雇用を推進しています。
積極的に障害者雇用を推進している企業の多くは、「障害者枠」として一般の採用とは別基準での採用を設け、より採用しやすい仕組みを用意しています。
主眼は長期就労。
専門的能力よりは一般の業務を長く働くことを主眼において採用しています。
給与条件などは「一般採用枠」と異なるケースもあり、契約社員での採用が圧倒的に多いのも事実です。
しかしながら、採用のハードル、入社後のサポート体制、負担の少ない業務内容など、障害者の視点に立った採用・環境配慮を実施している企業も多くなっています。
前述のごとく、障害者雇用が法律で義務付けられてはいます。
しかし、その多くは在籍するだけ、という形態がまだ多く存在するのも事実ではないでしょうか。
しかしながら、戦力としての雇用は十分可能だと思っています。
その背景が「IT化」。
この時流に乗って、多くの障害者支援機関はパソコン能力向上を重点的に推進してきています。
そのため、障害者と言えども、パソコン能力が一定以上の方が増えているのも事実です。
今まで障害者は清掃や仕分けといったブルカラーでの雇用がメインであったのですが、今や障害者雇用はホワイトカラー。
実際の企業経営上、障害者の能力を効果的に発揮する方法、戦力として雇用する方法は様々あります。
それぞれの障害種別で能力を発揮するケース例は以下です。
「視覚障害」「聴覚・平衡機能障害」「音声・言語・そしゃく機能障害」「肢体不自由」「内臓機能などの疾患による内部障害」の方で、身体に障害を抱えている方です。
都心では企業ニーズが高く採用が難しくなってきていますが、都心郊外や地方などにパソコン能力や事務能力に長けた人材が多くいます。
特に聴覚障害者や車いすの方などはパソコン業務に能力を発揮できる方も多くいらっしゃいます。
心臓ペースメーカーの方や人工透析の方などはコミュニケーションも、一般雇用の方と変わらないとも言えます。
知的障害者は知能に障害があり、知能指数が基準以下の方です。
多くは先天的に障害のある方です。
知的能力に障害があるため、読み書き計算が苦手ですが、主に作業系の業務を実施し、清掃や荷造り、メールボーイなどで就業しています。
多くの方はブルカラー系の仕事に従事、地元行政の斡旋もあり、比較的就業先も固定しているのが特徴です。
軽度知的障害者であれば、単純なパソコン打ち込みなどで能力を発揮できる方もおり、ここでもIT化による職域拡大がみられます。
主に統合失調症やうつ病などの気分障害、神経症、パニック障害、適応障害、発達障害などを抱え、脳に何らかの障害がある方です。
後天的に発症する方が多い障害です。
学卒し、就職後に発症する方も多く、過去の経験や知識を生かした業務を実施することができ、ビジネス的にも能力的にも、一定以上の経験値があるのが特徴です。
事務系、作業系いずれも就業ができますが、集団で作業することで症状が悪化する方も多く、単独で業務を実施することで能力を発揮する方が多い障害とも言われています。
就業環境に配慮する必要がありますが、プログラミングやウェブデザインなどIT能力を有する方も多く、即戦力となる方も多くいらっしゃいます。
昨今、劇的に増加し続けている障害でもあり、今後企業にとって雇用する必要がある障害の一つです。
企業側の採用したい障害者ニーズはまだ偏っている状況は否めない事実です。
一般的に企業が採用したいのは軽度の身体障害者の方です。
仕事に支障が少なく、通勤やサポートもあまり必要ないということが背景にあるようです。
身体重度障害者の方は1級または2級と非常に大きな障害を抱えていることもあり、実際の職場環境で完全サポートが難しいとも言われています。
また軽度の知的障害者も比較的ニーズが高いとも言われています。
一般的には知的障害の方は読み書き計算が苦手でもあるため、清掃などの作業系、単純作業のブルーワーク、飲食店での食器洗いなどに多く就業しています。
しかしながら単純な入力作業などでパソコン業務ができる方もおり、コミュニケーションも比較的スムーズであることから、軽度の知的障害者はニーズが高いと言えます。
このように身体障害者、知的障害者の方々は比較的仕事を見つけやすい状況となっています。
しかし、大きな課題は精神障害(発達障害者含む)の方です。
では、なぜ精神障害者の就業が困難なのでしょうか。
その背景が以下です。
・雇用側、受入側の精神障害者に対するイメージが良くない
・安定就業が難しい(身体、知的障害者に比べ)
・トラブルとなるケースもある(身体、知的障害者に比べ)
・企業側が精神障害者のサポートノウハウがない(雇用経験がないなど)
・精神障害者の数が圧倒的に増加傾向
など
現在うつ傾向のメンタル不調者が急増しています。
うつ病患者は国内111万人(厚生労働省平成26年調査)を超え、潜在的メンタル不調者は500~600万人にのぼると云われています。
ご家族や知り合いなどにもメンタル不調者がいるという方も多いのではないでしょうか。
うつ病や精神疾患は特別なものではなく、すでに身近で一般的にもなってきています。
組織で就業されている方の3人に1人は、何らかのメンタル配慮が必要だと言われています。
精神障害者の手帳保持者は氷山の一角でもあり、このメンタル不調者が予備軍としても母数が大きく、今後も増え続けることが予想されています。
精神障害者の方は外見で判断できるものではなく、採用が難しいことも挙げられ、サポートも千差万別で人によって症状が大きく異なることも採用に至らない背景にもなっています。
しかしながら、視点を変えることで障害者雇用を大幅改善することも可能です。
なぜならば、精神障害者のニーズが低く、かつ人数も増えていることから、精神障害者は採用市場に多く存在しているからです。
仮に企業側が精神障害者の安定雇用体制を確立できれば、今後自社の障害者雇用全体を安定化することが可能となるという見方もできます。
また、精神障害者雇用のノウハウを蓄積し、サポート体制を整えることで、仮に自社内でメンタル不調者がいる場合、その対策やノウハウも蓄積できることにつながるかもしれません。
つまり、既存社員の活性化にもつながる、とも言えるのではないでしょうか。
人手不足が加速している昨今。
女性の活用、外国人の活用、高齢者の活用、そして障害者の方の活用。
「人材の多様性」は「働き方の多様性」につながっていきます。
多くの方がハード面でも、ソフト面でも働きやすい組織は、多くの人が集まってくるのではないでしょうか。
それだけではありません。
多様な人材は、多様な経験や多様な視点を運んできてくれます。
きっと、新たな「気づき」を与えてくれる。
それがダイバーシティ経営の大きなメリットかもしれません。
よく言われますが、障害は、障害ではなく、一つの個性です。
個性は誰でも持っていますよね?
個性があるから、強みがあり、弱みがある。
その個性をカバーし、その個性を生かす。
それが強い組織の条件かもしれません。
「個性を生かす」組織力。
どの企業よりも、多くの個性を生かし切る。
これからの企業には重要な考え方ではないでしょうか。
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