現在、世界各国で法人税引き下げ競争が激化しています。
トランプ政権が公約として進めてきた法人税引き下げも、一気に世界先進国でもトップクラスの引き下げ幅となっています。
日本も徐々に法人税は引き下げしてきましたが、アメリカの大幅な法人税引き下げの影響から、さらに引き下げが検討されています。
今回はこの法人税引き下げの理由についてお伝えします!
Contents
法人税は世界各国引き下げが続いています。
なぜ、各国は法人税引き下げ競争をしているのでしょうか。
背景にあるのは企業のグローバル化。
インターネットが発達し、世界中へのサービスが可能となり、一つの国に本社をとどめる必要が無くなったからだとも言われています。
アメリカ発のIT企業がアメリカに本社を置かないという企業も出てきています。
アメリカではアップルやグーグルなどのグローバル企業が課税をアメリカ本国での課税を回避していることがたびたび問題になってきました。
ご存知かと思いますが、法人税とは、法人(企業)にかかる税金のことです。
企業にとって、国や自治体に支払う法人税を軽減することができれば、その分、利益化できます。
つまり、企業にとって、法人税が低い国は大きなメリットがあります。
一方、国にとってもメリットがあります。
他国の企業が本社として移転してきた場合、その企業の法人税が上乗せされるからです。
大企業であれば、そのインパクトも大きくなります。
また逆も不安要素です。
今まで自国に所在していた企業がいきなり他国に本社を移転してしまうリスクです。
減少するのは法人税だけではありません。
働く社員たちの雇用創出、各種税収入増加、企業に関わる地域消費活性化などにも大きな影響が出てきます。
結果、各国が法人税の引き下げ競争が激化していると言われています。
世界各国、1980年代から一貫して法人税は引き下げられています。
イギリスの実効税率も現在19%で10年間で11%引き下げられており、フランスでもマクロン政権が現在33.33%の実効税率を段階的に引き下げ2022年に25%を目指す方針を発表しています。
そして大きな動きがあったのが、アメリカ。
それまでアメリカは法人税が先進国の中で最も高い国でした。
※出典:OECD TAX DATABASE 2017
もともとトランプ政権は選挙中から法人税減税を公約としていました。
トランプ政権が誕生したことで、アメリカは実質約30年ぶりの税制改革が実現、アメリカは2017年12月には法人税を35%から一気に20%に引き下げる法案が議会で採決されました。
この結果、アメリカは先進国の中でも法人税率が高い国でしたが、今回の減税で一気に先進国の平均を下回る税率になる見通しとなっています。
一方、日本も法人税引き下げを進めています。
安倍政権は、法人税減税を経済政策「アベノミクス」の成長戦略の柱に据えて、改革に取り組んできました。
法人税の実効税率は2014年度34.62%、2016年度29.97%、2018年度には29.74%と推移してきましたが、前述のように、フランス、アメリカ等の法人税引き下げがより一層競争激しくなる中、日本もさらなる法人税引き下げを実施する予定となっています。
政府は2018年税制改正に向け、現在29.97%の実効税率を段階的に引き下げ、25%台に下げる案が進められています。
さらに、一定以上の条件をクリアした企業には25%よりも低く引き下げる「2段階の優遇措置」も検討されています。
前項のように、日本政府は現在法人税引き下げを進めながらも「2段階での優遇措置」も進めています。
この「2段階での優遇措置」の内容の詳細は現在も議論の最中ですが、現状素案として検討されているのが以下です。
①3%以上の賃上げや設備投資実現で法人税を29.97%から約25%へ引き下げ
②さらに積極的な設備投資(IoTなど)で税負担を約25%よりも低く引き下げ
③一方、消極的な企業には税制の優遇措置縮小
安部政権は「生産性革命」を掲げ、賃上げや生産性向上やIoTなどの設備投資を積極的に推進しています。
これは、安倍政権が掲げる生産性革命が背景にあります。
生産性革命とは、以下の目標を掲げています。
【生産性革命】
(1)日本の生産性を年2%上げる。2015年までの5年間の平均0.9%の伸びから倍増する。
(2)設備投資額を20年度までに16年度よりも10%増やす。
(3)18年度以降3%以上の賃上げを達成する。
この生産性革命に則った企業においては、法人税を減税しましょう。
このような意図が見え隠れしていますね。
この中でも、注目すべきポイントは「IoT投資減税」です。
IoT(Internet of Things)とは、モノのインターネットのことであり、あらゆるモノがインターネットに接続され、効率的、かつ多くのデータ蓄積にも優れた技術です。
IoTはモノづくり日本ならではの強みを生かせる分野でもあります。
今回の法人税減税施策の中にあるのが「IoT」への投資を行う企業への減税。
これは非常に筋の良い減税かもしれません。
「データ連携・利活用を目的とする機器やソフトウェアに新規投資を行う場合、投資合計額の30%の特別償却または3%の税額控除(法人税額の15%が上限)を講じる」というもので、最低投資合計額は5000万円、適用期限は2021年3月末までの3年間。
この「IoT投資減税」の対象となるのは、以下です。
①データ収集機器(センサーなど)
②データ分析より自動化するロボット・工作機械
③データ連携・分析システム(サーバー、AI、ソフトウェア)
④サイバーセキュリティ製品
などで、より詳細な品目は2018年3月末までに決まる見通しで、「賃上げ減税」の併用も可能です。
「IoT」などと言うといかにも難しそうに聞こえますが、生産ラインの制御システムや機器の保安管理システムをリプレース、生産現場で収集・分析されたデータと管理系業務システムとの相互連携や、事業所間・異業種企業間でのSCM(Supply Chain Management)などへの投資、さらには、従業員不足を補うための生産ロボットや介護ロボットの単体導入を実施すれば、多くの場合、IoT投資減税の対象になっていきます。
要件としては、投資年度から一定期間内に以下2つの目標を達成する見込みがあるかどうかです。
(A)労働生産性(労働による付加価値を労働投入量で除したもの)の年平均伸び率が2%以上
(B)投資利益率(ROI:100×当期純利益÷(期首総資本+期末総資本)÷2)が年平均15%
ただ、これらは見込みの目標値でOKなので、実質的にハードルはかなり低いと言えます。
大企業のみならず、多くのベンチャー企業や中小企業でも適用可能ではないでしょうか。
アメリカの大幅な法人税減税のインパクトは日本にも及んでいます。
ただ、法人税の引き下げはある意味チャンスです。
企業がより新たな分野への投資も可能となりますし、新しい事業開発も増えるかもしれません。
減税施策と絡めて、各企業の新技術導入も進むでしょう。
IoTはAIと結びつき、多くの産業・分野に導入され、その先にはブロックチェーン技術やフィンテック技術も融合するかもしれません。
法人税の引き下げ。
この潮流をチャンスと考えることができるかどうか、私たちの意識改革も問われているかもしれません。
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