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株式会社プロレド・パートナーズ創業者、佐谷進:創業時から大事にしている行動規範とは?

 

創業時から大事にしている行動規範とは?

 

 

佐谷進/株式会社プロレド・パートナーズ創業者

 

 

弊社が創業時から大事にしている行動規範は、『THINK OUT (考え抜く)』とCOMPASSION(思いやり)』です。

会社が成長したからといって社員がこの2つをなくしてしまったら、組織もビジネスもうまくいかなくなるでしょう。

私も上場後は、経営者としてどうしたらこの2つを会社の中に根付かせることができるかを考えることが多くなりました。

“思いやり”については、まずは僕自身が社員とコミュニケーションをとりながら、皆がどんな気持ちや考えでいるのかを知ることが必要だと思っています。

 

 

 

佐谷進(プロレド・パートナーズ創業者)とは?

 

 

佐谷進。

1976年生 東京芸術大学 美術学部 卒業

 

東京芸術大学美術学部卒業後、ジェミニ・コンサルティング・ジャパン・インク、ブーズ・アンド・カンパニー(現PwCコンサルティング合同会社)にて、大手プラント工業のリエンジニアリング、大手都銀の営業戦略の策定、経済産業省依頼のリサーチなどの経営コンサルティングを経験。

 

その後、不動産運用(REIT)会社であるジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社にて、住宅、オフィス、商業ホテル、倉庫物件などの取得・運用業務に従事

 

2009年12月株式会社プロレド・パートナーズ創業。

2018年7月東京証券取引所マザーズに上場。

 

 

 

 

 

 

佐谷進(プロレド・パートナーズ創業者)の「コトバ」

 

 

 

僕はもともとアーティストになりたくて芸大に入りました。専攻は建築でした。デザインに関わる仕事に携わりたいと思っていたものの、どういうデザイナーになるかは決めていませんでした。方向性を色々と考えていた時に、30歳ぐらいの先輩らと飲む機会があって、『給料が20万円の大台に乗ったよ』という話を聞いたんです。月に500時間も働いているのに、そんなにも安いのかって驚きました。自分なら経営者側に立って、もう少し上手く皆をプロデュースして、いい生活させてあげられるのではと考えたんです。ただ、その前にビジネスの原理原則を知らなくてはいけないということで、『ビジネスを学ぶのであれば経営コンサルファームだ』と勧められ、知名度の高いところから順番に受けていきました。

 

 

 

 

 

 

プロレド・パートナーズが創業したのは2009年12月。08年9月に世界を揺るがせたリーマンショックから約1年後のことでした。私が現パートナーの山本卓司とコンサルティングファームを興そうとしていることを聞きつけた知人の多くは、「何もこんな時期に…」と、口々に反対しましたが、不況はいつか終わるもの。厳しい状況下で一定の成果が出せたなら、景気回復後にさらなる成長が期待できます。中長期的な視点で考えた場合、私はこの時期だからこそ、やるべきと会社を立ち上げました。とはいえ、将来予測だけで創業したのではありません。かつて勤めていた戦略コンサルティングファームや不動産ファンドの運用会社で感じた、問題意識が私たちの独立を導いてくれました。

 

 

 

 

 

私はコンサルタント時代から、「価値と対価はイコールであるべき」だと考えていました。しかし、一般的な戦略コンサルティングファームは、自ら立てた戦略の結果に責任を負いません。また、コンサルタントによって、コンサルティングのクオリティも異なります。これでは価値と対価のバランスが取れているとは言えませんでした。不動産ファンド時代においても、ファンドで生み出した利益1億円と、利幅の薄い小売流通やメーカーが稼ぎ出した利益1億円が、私には等価であるとはどうしても思えませんでした。利益こそ同じ額でも、世の中に与えている価値が同じだとは到底言えないと感じていたのです。

 

 

 

 

 

リーマンショックの時に、僕は不動産ファンド(REIT)のマネージャーとして商業施設開発に携わっていました。テナントである食品スーパーの経営が厳しくなり、撤退したいものの違約金が多すぎて出るに出れないという状況でした。結果として、他の拠点を複数閉店する決断をしたのです。食品スーパーは地域の食インフラを支えるという、価値あることをやっているのに赤字で苦しむ状況にある。一方、僕は投資家から称賛される立場にいて利益も出していた。ただ、僕一人の対価としては大きすぎる。ならば、その困っている事業会社が適正な利益(=対価)を出せるようコンサルティング会社で勝負をしたいと思ったのが起業理由です。そして、価値=対価の世の中にしたいのであれば、まずは自分たちも価値=対価のサービスを提供しないと辻褄があいません。それで、成果報酬型を選びました。

 

 

 

 

 

間接費のコスト削減の視点で日本の企業を振り返ると、発注前に必ず相見積もりを取るなどの意識は向上しているものの、相変わらず5年間も10年間も価格の見直しを行っていなかったり、サプライヤーの言いなりに購入していたりと、プロフェッショナルな購入ができているとはとても言い難い状況です。我々は間接費のコスト削減のドライバーとして「交渉」を積極的に採り入れコンサルティングを行っているのですが、多くの企業ではコンサルティングファームが入りある程度の削減余地のある費目の洗い出しはしているものの、そこまでで終わってしまっている場合が多くあります。どういう費目に削減の余地があるという分析レポートをもらって、そこで止まっている状況にあるのです。実行に移せず、交渉していない。我々がそれを代わりに実行し、このようなメリットが生じますよと伝えても、なかなか理解していただけない場合もあります。

 

 

 

 

 

 

 

共同購買のスキームを活用することで全体価格を下げるという方策を取ることはあります。企業間をまたがって購買し、トータル価格から割引するという方法です。A社1社ではせいぜい1000万円の間接費が使われる程度であっても、B社は数10億、C社に至っては1000億の間接費を使っているとすれば、全体で10%下げてくださいという交渉は可能です。グループ会社では昔からあったのかもしれませんが、別々の企業での共同購買は比較的新しい試みですね。最初はPEファンドが所有している企業間で行われはじめました。とは言え、株主が同じということですね。弊社ではさらに、別資本の企業間での共同購買を推進しています。例えば、A社、B社、C社ともに購買しているものは同じなので、サプライヤーに「ここまで下げられればクライアントを増やすことができますよ」と需要を括って交渉すればある程度の値下げはできます。もちろん、サプライヤーを替えるときにはその整合性をクライアントに示さなければなりません。品質の違いやメリットを一つずつ説明して理解してもらう必要はあります。

 

 

 

 

 

 

 

企業が上場するメリットは数多くあります。融資や増資がしやすくなり、資金調達の選択肢が広がる。資金調達だけでなく、株式交換などでM&Aもしやすくなります。会社の地名度や注目度が向上するので、広報活動や他社との業務提携などもしやすい。上場の審査を通ったということは、社会的意義のある会社だと認められたという証でもあるので、社会的な信用も得られます。さらには、従業員にも大きなメリットがある。上場するには労務管理を適切に行っていることが条件なので、会社は働きやすい環境づくりに積極的に取り組むようになります。自社株を持っている社員は、株を売買してキャピタルゲインを得ることも可能になりますし、転職するときや住宅ローンを組むときも『上場企業に勤めている』という事実がその人の社会的信用度を保証してくれる。経営者にとっても働く人にとっても、上場は多くのメリットがあります。

 

 

 

 

 

 

 

確かにこれまでは、コンサルティングファームが投資やM&Aをする必要性が低かったのは事実です。『私は経営戦略のことなら何でも知っています』というコンサルタントが一人いれば、企業に提案ができて高いお金をもらえるので、最小限の人員かつ属人的なビジネスで経営が成り立つし、わざわざリスクをとって投資や買収をする必要がありませんでした。しかし私は、属人的なスキルや経験だけに頼っている中小規模のコンサルティングファームは、今後淘汰されると考えています。なぜなら現在は経営課題が多様化し、しかもそれぞれの課題を解決するには高い専門性を求められるようになったためです。例えばITの領域をコンサルティングするにしても、その中にはシステム構築からビックデータやAI、IoTなどと細分化されたさまざまなカテゴリーが含まれます。これだけ広い範囲で、しかも一つ一つに高い専門性を求められる場面では、一人のコンサルタントの知恵だけでは到底まかないきれません。これからは、専門性を有する多くのコンサルタントがチームでサービスを提供しなくてはお客さまのニーズに応えられない。そのためには、コンサルティングファームも多様な専門性を持つ企業を買収したり業務提携をしながら、専門性のある分野に投資したり、規模の拡大と高い専門性を追求していかなければ生き残れません。だからプロレド・パートナーズは、資金調達やM&Aがしやすい上場の道を選んだのです。

 

 

 

 

 

 

 

例えば私たちは、2年ほど前からソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という新サービスの提案に力を入れています。これは自治体などの行政機関が民間企業に業務を委託し、成果に応じて報酬を払うという社会課題解決の仕組みです。もともと弊社は成果報酬型コンサルティングを実践してきたので、今度はそのノウハウを自治体に提供するためにご提案を続けていたのですが、上場前は導入して頂ける自治体がありませんでした。SIBの仕組み自体は、税金の使い道を透明化できる非常に意義のあるものですが、自治体はあらかじめ予算を決めて動くので、成果によって報酬が変動する点に抵抗があったようです。ところが最近は、私たちが上場企業であることを伝えてご提案すると、かなり前向きに検討してくださる自治体がいくつも出て来ました。近いうちに何件か正式な契約が成立する見通しです。もちろん提案力が上がったということもありますが、上場によって得られた社会的信用も大きいのだと改めて実感しましたし、プロレド・パートナーズとしてもいろいろなことにチャレンジしやすくなったのは間違いありません。

 

 

 

 

 

 

時代の大きな流れとして、世の中は“フェア(公平さ)”を求めている。それが私の考えです。ITがこれだけ発達したのも、誰もが同じ情報を公平に取得できるようになったからだし、広告の出稿先がテレビCMからYoutubeなどの動画に移っているのも、『広告を打ちたい人に視聴した人数に応じて費用を払う』という課金型のビジネスモデルがフェアだからです。そして弊社の成果報酬型コンサルティングが伸びている理由も、フェアだから。私たちが成果を出した分を対価としてお客さまから頂く。成果を出せなければ、クライアントは一円も払う必要がない。非常に公平ですよね。そして、成果が出ても出なくても一律の費用を払う固定報酬型コンサルティングはフェアではないと考えるクライアントが増えている。今後はコンサルティング業界でも、固定報酬型のビジネスは限りなく縮小していくのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

会社が大きくなるとどうしても経営者と社員の距離は離れがちですが、皆の顔を見ながら会話する機会を増やすため、昨年末から月に1度か2度、マネジャー以上のメンバーたちと読書会をしています。“考え抜く”を習慣化するにはロジカルシンキングなどの基礎的な思考力が必要なので、私自身が新卒社員の研修で講師に立ち、『考えるとは何か』といった根本的なところから伝えています。また各コンサルタントにはメンターとして指導役のマネジャーがつきますが、私自身も入社2年目や3年目の若手のメンターとなって直接アドバイスなどをしています。若手の育成については、他のファームに比べてもかなり手をかけていると思います。

 

 

 

 

 

 

僕は時間軸に重きを置いています。実際、僕が尊敬している経営者は皆30年、50年、300年先を見ていて、自分の生きている時間もしくはそれ以上の時間使って、何かを成し遂げようとしています。そういう視点で見ると柔軟になれ、打ち手も広がります。戦略もより深くなりますよね。僕は、そこまで大きなスケールで見えていませんが、5年後もまた10倍にしたいと宣言するでしょうね。そうすると時価総額が1兆円になるので、今から実現するにはどうしたら良いかという観点で、ビジネスに取り組んでいけるようになります。

 

 

 

 

 

私たちは考え抜く
クライアントに対して、社会に対して、どのような価値を提供できるのか
現状のままで良いのか
求めている以上の価値を生み出せないのか
何度も何度も、何度も何度も、何度も何度も、脳が擦り切れるまで考える
私たちの言動は、時に周りに負荷をかけ、迷惑をかけ、成果をあげられないかもしれない
しかし、考えることを諦めない
誰よりも多く、諦めずに考え抜いた人たちが革新的なものを生み出し、人を変え、世界を変えていった
私たちは誰よりも考え抜く集団で在りたい

(コーポレートサイトより抜粋)

 

 

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