【東京都国立市】「ママ下湧水」と「矢川おんだし」~東京北多摩の歴史散歩~

「ママ下湧水」はご存知でしょうか。

国立市、多摩川にほど近い辺りにある「湧き水」で東京の名湧水にも選ばれています。

「ママ」とは「崖」を意味する地方名。

昭和初期には、この湧水を利用してわさびも作られていたそうです(^^)

 

 

「ママ下湧水」とは?

古い時代、多摩川の流れは武蔵野の台地を削り、幾筋もの河岸段丘を形成しました。

「国分寺崖線」「立川崖線」や「青柳崖線」もそうしたもののひとつです。

国立市のいくつかの湧水は、過去に多摩川が削ってできたこれら崖線の崖下に湧き出すものです。

国立には3つの段丘があり、そのうち最も多摩川に近い段丘は「青柳段丘」と呼ばれています。

青柳崖線は柴崎体育館北側で立川崖線から分岐する形で南へ逸れ、多摩川近くを辿って中央自動車道国立府中IC近くまで延びています。

段丘の段差部分である段丘崖は、地方名で「ママ」や「ハケ」と呼ばれ、ここから湧き出る地下水は「ママ下湧水」(東京の名湧水57選)と呼ばれています。

 

湧水は青柳崖線を代表し、都内でも有数の湧出量です。

「ママ下湧水」の「ママ」とは、この辺りの古語で、「小さな崖」のことを指します。

つまり「ママ下湧水」とは「崖下の湧き水」のことを意味します。

「青柳崖線」の崖下に湧き出る湧水を、この辺りでは昔から「ママ下湧水」と呼び、生活や農作業に利用してきました。

 

昭和の初期には、その水を利用してわさびを栽培していました。

 

 

「矢川おんだし」とは?

矢川は、立川市錦町の立川段丘崖下を源とし、矢川緑地保全地域一帯から湧き出る水を集め、甲州街道を横断して府中用水の支流に合流する、長さ約一.五キロメートルの小川です。

合流するところを「矢川おんだし」(おんだしとは押し出しの意)と呼んでいます。

 

矢川緑地一帯を水源とした矢川は、流水が矢のように速いことを表した名だそうです。

緑地を流れ出た矢川は南の甲州街道をくぐり、青柳崖線のハケ下にある「矢川おんだし」で「ママ下湧水」からの流れと共に谷保分水という疏水に合流します。

ここが、「矢川おんだし」です。

二列に並んだ流れが、これもほぼ直角に谷保分水に合流する様子が特徴的な景観を生んでいます。

 

尚、国立第6小学校近くに「矢川いこいの広場」があります。

矢川駅からも近いところですが、この「矢川いこいの広場」にはちょっとした水遊びができるのです。

夏には小さな子どもの楽しい場所になるかもしれません。