【デジタル植民地日本!GAFAMが狙うのは日本人の「頭の中」!?】GAFAMによる「人類の家畜化」~日本政府ガバメントクラウドは米アマゾン(AWS)と米Google、なぜデジタル庁は国民データを米国企業に委ねるのか?~
■Amazonは日本を植民地にする?商店街を叩き潰したイオンも楽天も駆逐されていく
まぐまぐニュース 2020年2月14日 鈴木傾城
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・もはや誰もアマゾンに勝てない?巨大な流通網が日本を飲み込む…アマゾンの売上は9年で3.5倍に
アメリカの巨大ハイテク企業であるアマゾン・ドット・コムは、今まで日本に税金を支払っていないということで大きな問題になったのだが、2018年12月期に約150億円の法人税を納めていたことが分かった。
これは日本にとって良いことなのだが、同時に日本人が考えなければならないことは、「今後はアマゾンはさらにきめ細かく日本に定着していく」ということである。
すでに日本人の消費活動は変化していて、モノを買うのにインターネットのショッピングサイトを経由することが多い。
日本で最大にして最強のショッピングサイトは、すでにアマゾンである。
アマゾンの日本での売上高推移は着実に増え続けており、2010年は4,371億円だったのが、2018年には1兆5,350億円になっている。
9年で3.5倍になっているというのがこの数字を見て分かるはずだ。
・楽天はもうアマゾンに勝てなくなってしまった
アマゾンのライバルと言えば楽天だが、楽天の2018年度の決算を見ると、売上高は1兆1,014億円であり、もうとっくに楽天を追い抜いていることが分かる。
強すぎるアマゾンに楽天は勝てるのだろうか。
楽天は本業のショッピングモールである「楽天市場」で躓いている。
2019年1月に楽天はアマゾンに対抗するために「3,980円以上は送料を無料とする」という方策を取ったのだが、送料が無料であるならば出店者が送料を負担するしかない。
通常、送料は価格に転嫁されるのだが、利幅の薄い商品は一気に売れなくなる上に利幅の薄さを数でカバーできる大手に飲み込まれるので、中小の出店者にとっては「死ね」と言われているのと同様になる。
これによって中小出店者は「楽天ユニオン」を設立して、楽天側と激しく対立するような事態になっている。
しかし、楽天側は送料無料化を強行する構えを見せている。
さらに楽天は「楽天モバイル」で新規に進出した携帯電話事業でもサービス開始にトラブルが続出している。
本業のショッピングモールでもトラブル、新規事業でもトラブルに見舞われている中で、楽天はアマゾンに勝てるだろうか。
状況はなかなか難しそうだ。
・イオンはもうアマゾンに勝てなくなってしまった
アマゾンは「アマゾン・フレッシュ」というサービスで野菜、果物、鮮魚、精肉などの生鮮食品を当日に配達するようなサービスも始めている。
場合によっては最短で2時間以内に配達されるような地域もある。
このサービスが仮に成功して広がっていくようになると、アマゾンはいよいよ日本のリアル店舗の大型ショッピングモールをも駆逐していくことになるはずだ。
今、日本のリアルのショッピングモールの雄は「イオン」である。
イオンはアマゾンに勝てるのだろうか。結論から言うと、イオンは今のままではアマゾンにどんどん侵食され、最終的にはアマゾンに駆逐される可能性が高い。
なぜか。
すでに、イオンは本業のショッピングモール事業で儲からない体質になってしまっているからである。
イオンは「イオンモール」や「マックスバリュ」事業が柱になっているはずなのだが、肝心の「イオンモール」は赤字転落している。
「マックスバリュ」も営業利益はたった28億円でしかない。
イオンが何とか助かっているのは「イオン銀行」などの金融事業が利益を出しているからである。
しかし、「イオン銀行」が今後は都市銀行なみに事業になっていくのかどうかは疑問でもある。
イオンはしょせん「小売り事業者」でしかなく金融業者ではない。
イオンモールのユーザーにイオン銀行に入らせることはできたとしても、それ以外の消費者にイオン銀行に入らせる魅力は備えていない。
そもそも、フィンテックの台頭で銀行のビジネスも激動期に突入している中で金融事業が柱になっているのだから、かなり危うい事態になっていると見ることができる。
そんな中でリアルな店舗を持つイオンはアマゾンの大攻勢を受けるのである。
アマゾンに勝てるのだろうか。
すでに本業で赤字になっているイオンは、ここから挽回するのはかなり厳しそうだ。
・商店街を叩き潰したイオン。今度はアマゾンに追われる立場に…
イオンはかつて町の商店街を叩き潰してシャッター通りにしてきた張本人である。
地方都市の多くは商店街が寂れてイオンモールに客を奪われた。
しかし、今度はそのイオンが赤字を抱えてにっちもさっちもいかなくなってきた。
特にイオンモールは地方で閉店が相次いでいるのだが、地方はこれから人口がさらに減っていく上に、残った人口も高齢化するので売上を上げるのは難しい状況になっていく。
努力しても集客ができないのである。
集客ができないのであれば専門店も入らず、不動産事業で儲けることすらもできない。
アメリカでも地方の巨大なショッピングモールがどんどん閉鎖されてゴーストタウン化しているのだが、同じことが日本でも起こってきていると言うことだ。
・巨大な流通網が日本を飲み込む
そして、そんな変化の中でアマゾンはどんどん地方を攻略し、消費者を貪欲に取り込んでいる。
アマゾンのインターネットのショッピングサイトは都市だろうが地方だろうが関係なくアクセスできる。
注文すれば、後は流通の問題だ。
アマゾンは流通の重要性をよく理解しており、流通にもイノベーションを起こそうとしている。
いずれは日本でもアマゾンの無人自動車が走ったり、ドローンでの拠点から拠点への配達も一般化することになる。
流通網をアマゾンが構築してアマゾンが一手にそれを握ると、もはや日本の「買い物」はアマゾンが支配することになっていくはずだ。
もちろん、イオンもインターネットサイトの重要性は分かっているはずだが、アマゾンに匹敵する堅牢で強固なサイトを構築することは、やはり本業ではないのでなかなか難しい。
そんなわけで、日本はアマゾンという巨大な企業の植民地になっていく流れができあがっているようにも見える。
今後はさらにハイテク企業の影響力は増していくのだが、日本を支配するハイテク企業は日本企業ではなくアメリカ企業である。
アマゾンもまた日本を支配することになるだろう。
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Amazonは日本を植民地にする?商店街を叩き潰したイオンも楽天も駆逐されていく=鈴木傾城
まぐまぐニュース 2020年2月14日
https://www.mag2.com/p/money/891829
■これではデジタル植民地、デジタル庁は国民データを米国企業に委ねるのか
日経クロステック 2022.03.10
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「霞が関が米国のパブリッククラウドを使うのは駄目だが民間企業ならよいのでは、とおっしゃいますが、当の霞が関が国民のデータを米国クラウドに置こうとしています」
つい最近、ある仕事をしていて、米国企業が運営するパプリッククラウドサービスに日本企業のデータを置くことの是非を巡って情報セキュリティーの専門家と話し合った際、こう言われて遅まきながら驚いた。
議論の対象となっていたのは個人のデータ、あるいは個人が特定される可能性があるデータである。
専門家が「個人に関わるデータを載せたいなら国産クラウドを選ぶほうがよい。
米国企業のクラウドではたとえデータを保存するデータセンターが日本国内にあったとしても米国政府の要請に応じてクラウド会社がデータを米国政府へ開示するリスクがある」と言った。
確かに2018年に成立した「Clarifying Lawful Overseas Use of Data Act」、いわゆる「CLOUD Act」に基づいて米国政府は米国内に本社がある企業に対し、米国外に置いているデータについても開示要求が出せる。
国産クラウドを推すかのような専門家にこう言った。
「米国のパブリッククラウドの肩を持つわけではないですが、CLOUD Actによる問題は民間企業の場合ほとんど起きないのでは。米国と日本が戦争をしたら別ですが。霞が関が米国のパブリッククラウドを使ってよいのか、とは思いますが、民間の場合致し方ないかと。扱うデータの機微度によって匿名加工をするとか、バックアップを国産クラウドか社内に持つといった備えは要るでしょうが」
これに対する専門家の応答が冒頭の発言である。
かつて日経コンピュータの編集長を務めたこともあったのに、なんとも恥ずかしいことだが、政府や地方自治体が使うガバメントクラウドの調達先としてデジタル庁が2021年10月、米Amazon Web Services(AWS)と米Googleの2社を選んでいたことを知らなかった。
「遅まきながら驚いた」と書いたゆえんである。
AWSもGoogleも米国企業である。
繰り返しになるが、2社のパブリッククラウドに日本国民のデータを置いた場合、たとえ2社の日本国内にあるデータセンターを使ったとしても、米国政府はAWSとGoogleに命じて、日本の国民データを開示させることができる。
契約や運用で日本の国民データが米国政府に開示される危険を抑えられるのか。
日本企業が米国クラウドを使う場合、日本国内にあるデータセンターを必ず使う、米国のクラウド事業者と個別に契約し紛争時の裁判所を日本側にしておく、データを暗号化して解除キーは日本側で管理する、といったやり方がある。
だが技術面の対策をどうするか、という話ではない。
日本政府が日本国民のデータを率先して米国のパブリッククラウドに載せる、といった政策の是非が問われる。
民間企業が一定のリスクをとって米国クラウドを使う話とは全く違う。
ちなみに米国政府はパブリッククラウドを積極活用する動きを見せているがクラウド事業者は米国企業である。
“データ主権”を唱え、個人データの保護を強めるEU諸国の政府は住民データの保存に米国のパブリッククラウドを使っていない。
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これではデジタル植民地、デジタル庁は国民データを米国企業に委ねるのか
日経クロステック 2022.03.10
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00166/030700098/
■アマゾンに日本政府のIT基盤を丸投げする菅政権~NTTデータはなぜ敗北したのか
菅政権「デジタル改革」の罠
論座(朝日新聞)2020年09月28日
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今から167年前の1853年、浦賀沖に米国ペリー提督率いる黒船が来航して徳川幕府は上を下への大混乱に陥り、明治維新につながっていった。
それ以来、日本人の保守的で慣習に流されがちな側面を揶揄して「黒船が来ないと改革はできない」としばしば表現される。
10月1日から、次期政府共通プラットフォームは米国企業のAmazonが提供するAWS(Amazon Web Services)のクラウド・コンピューティング・サービスに移る。
この事態をわかりやすく言えば、「みんなで黒船に乗って改革してもらおう」という話だ。
「みんなで乗れば怖くない」という意識が安倍政権の方針を引き継いだ菅政権にはあるのかもしれないが、本当に「怖くない」のか。
幕末の黒船には吉田松陰が乗り込もうとしたが、その話とはまるで違う。松陰は身を捨てても先進文明を学ぼうとする覚悟を決めていたが、現在の日本政府は黒船Amazonの単なる客だ。
しかも、国民や政府の機密情報が大々的に流出するリスクにも目をつぶって乗ろうとしている。
・「AWSは国内各社より優れていました」
Amazonにみんなで乗ることを決めた安倍内閣の総務相、高市早苗氏は日本会議国会議員懇談会の副会長でもあり、右翼的な言動が目立つ。
その高市氏は今年5月20日、自らのホームページ上のコラムでこう綴っている。
「私は、『第2期(次期)政府共通プラットフォーム』について、何とか『純国産クラウド』で整備できないかと考えていました。昨年9月の総務大臣就任直後、『設計開発の一般競争入札』は昨年3月に終わっていたものの、諦め切れずに、改めて国内各社のクラウドサービスとの比較・検証を行いました」
愛国の情がそうさせたのか、高市氏はAmazonと国内メーカーとの比較、検証の再調査をしたと記している。
だが、その結果についてはこう続けている。
「日本人としては残念ですが、十分な比較・検証の結果、AWSは、『セキュリティ対策』も含め、『クラウドサービスのメリットを最大限活用するという点』で、国内各社のクラウドサービスよりも優れていました」
本当にそうなのか。
この高市氏の言葉に対して、私が取材した日本有数のセキュリティ設計専門家は問題の深さをこう指摘している。
「ふざけるなという話ですよ。それだったら、なぜもっと早く国内メーカーや専門家にそういう問題提起をしなかったのでしょうか。問題は政府基幹システムのアプリケーションもセキュリティも今後はAmazonに従うということです。もっと早く議論すれば専門家や学者がいろんな意見を出したでしょう。安倍さんや菅さんのやり方はまさに独裁でしょう。議論や意見の出しようがない」
しかし、この専門家も高市氏も、Amazonなどの海外勢に比べて日本の国内メーカーが技術力で劣っていることを認めている。
なぜ、こんな状態になってしまったのだろうか。
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アマゾンに日本政府のIT基盤を丸投げする菅政権~NTTデータはなぜ敗北したのか
菅政権「デジタル改革」の罠
論座(朝日新聞)2020年09月28日
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020092600003.html?page=1
■デジタル・ファシズムへの不安 利便性の背後にあるものは~堤未果の警告・上
デジタル庁の発足で高まるIT化推進への期待の背後に垣間見える不都合な真実
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・デジタル庁発足。期待する声の裏に……
9月1日、デジタル庁が発足した。
菅義偉首相の突然の辞任表明から自民党総裁選挙へとなだれ込んだ政局に、やや印象が薄れた感はあるものの、日本にとって極めて重要な省庁が生まれたことは間違いない。
デジタル化は休みなく進展し、社会のさまざまな場面で利便性が追及されている。
そのスピードは日増しに強まっているようだ。
それはスマホの多様な使われ方を見るだけでもわかる。
これからさらにどんな可能性が広がるのだろうかと、期待を抱いている人も多いだろう。
しかし、利便性の裏にはデメリットがある。
無自覚なまま、便利を追求することにかまけていると、気付かないうちにとでもないことが起きると、ジャーナリストの筆者は近著で警告する。
タイトルは『デジタル・ファシズム』。
穏やかではない。
明るい未来どころか、どこか気味の悪い未来を予告するかのようでもある。
私たちはいま、デジタル社会のどういう場所=「現在地」に立っているのか。
内外の具体的事例をふんだんに使って解き明かすこの本に込めた問題意識とは、一体何なのか。
・デジタルが強欲資本主義をさらに獰猛にする
著者は、自らの米国在住体験を踏まえ、米社会の影の部分である貧困や格差の実態などを俎上(そじょう)に、弱肉強食の新自由主義経済や、それを推し進める政治の問題に果敢にメスをいれてきた。
また米国にとどまらず、米国に追随し、同じ轍(てつ)を踏もうとしている日本社会や政治のありようにも、批判の目を向ける。
人間性や公共性を失った社会は、個人にとってとてつもなく過酷なものになるという意識があるからだ。
そうした社会を招来せしめる最大の原因は、ビジネスの巨大利権であり、マネーへの飽きなき執着と信奉である。そこに、デジタルという新たな要素が加わるとどうなるか。「今だけ金だけ自分だけの強欲資本主義が、さらに獰猛になる」と著者は懸念する。
デジタル社会というのは、利便性と引き換えに個人情報が企業や国家に集積されるシステムの社会ということでもある。
個人情報がしっかりと守られているならいいが、IT企業に利用され、やがて国家に吸い上げられたらどうなるか。
すでに中国では顕著だが、日本もそうならないとは限らない。
・日本政府のプラットフォームを米国のIT企業がつくる
身近な所から説明しよう。
いま各省庁は、様々な分野でデジタル化を進めている。
マイナンバーカードと国民の情報を一元管理(総務省)、デジタル教科書(文部科学省)、マイナンバーカードと健康保険証の紐づけ(厚生労働省)。こうしたあらゆる省庁の担当プロジェクトを、デジタル庁は全て配下に収めることになる。
補助金申請などの業務もまとめてデジタル庁が管轄するという。
日本の行政は中央も地方も縦割で、手続きに時間がかかり、効率が悪いことは確かだ。
そこで各省庁、地方自治体がバラバラに運営していたデジタル情報をひとつにまとめようというのがデジタル庁だ。
必要なのが「政府共通プラットフォーム」というシステム。
製造・販売元であるベンダーとして選ばれたのは、米IT系大手の「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」である。
日本政府のプラットフォームをなぜ、米国のIT企業がつくるのか。
本書によれば、2015年に日本年金機構がサイバー攻撃を受け、個人情報が流出した事件に遠因がある。
政府は共通プラットフォームに安全ゾーンを追加するよう国内企業に依頼。ところが、頑丈な安全システムはできたものの、使い勝手が悪く、使われないまま18億円がムダになったのだ。
そこで採用されたのがAWSだ。
・私たちの個人情報が米国に漏洩?
それでも利用しやすければいいではないか、と思うかもしれない。
しかし話はそう単純ではない。
アマゾンは「CIA(米国中央情報局)やNSA(米国国家安全保障局)など、米国の諜報機関との関係が深い企業」であり、「CIAと契約を結び、2020年にキース・アレクサンダー元NSA局長を取締役に迎えている」。
アレクサンダー氏は、NSAによる米国民の大規模な盗聴を指揮したと言われる人物。
さらに、米国に有利な協定も日米間で結ばれている。
「アマゾンのような企業が日本でデジタルビジネスをする際に、その企業に個人情報などを管理するデータ設備を日本に置く要求は、2020年1月に発効した『日米デジタル貿易協定』によってできなくなっている」という。
またアマゾンに限らず、グーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフトの「GAFAM」といったIT大手の持つデータを、米政府は令状なしで開示請求することもできる。
18年に米で成立した「クラウド法」に基づくもので、米国内に本拠地を持つ企業にはすべて適用される。
こうした日米のアンバランスな関係の中で、私たちの個人情報が米国に漏洩(ろうえい)したり、盗まれたりするリスクがあることを著者は示唆しているのだ。
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デジタル・ファシズムへの不安 利便性の背後にあるものは~堤未果の警告・上
デジタル庁の発足で高まるIT化推進への期待の背後に垣間見える不都合な真実
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2021091600009.html
■街も給与も教育も、米中の支配下に!?
「日本デジタル化計画」の恐るべき裏側に迫る『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』が発売
株式会社NHK出版 2021年8月31日 PR TIMES
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9月1日、国のデジタル化を進めることを目的に情報システムの構築などを行う新たな行政機関「デジタル庁」が発足します。
そのほかにも、スーパーシティ、キャッシュレス化、オンライン教育、マイナンバーなど、デジタル改革の名のもとに、私たちの周りではさらなるデジタル化が推進されようとしています。
そこから浮かび上がってくるものとは何か。
それはアマゾン、グーグル、ファーウェイをはじめとする米中巨大テック資本が、行政、金融、教育など、日本の“心臓部”を狙っているという現実です。
このたび発売の『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』(NHK出版、2021年8月31日刊)では、気鋭の国際ジャーナリスト・堤未果さんが、緻密な取材と膨大な資料をもとに「日本デジタル化計画」の恐るべき裏側を暴きます。
高速で進化する〈デジタル技術〉の影響力は凄まじく、よほどのことがない限り、仕事でも私生活でも、デジタルを使わないという選択肢はありません。
電車に乗るときや買い物をするときはもちろん、自動運転車やゲノム医療、ビッグデータにブロックチェーン、人工知能にヴァーチャルリアリティ、聞いているだけでワクワクする、SF小説のような世界が次々に実現していきます。
そんな中、2020年9月に就任した菅義偉内閣総理大臣は、新政権の目玉政策として「日本全国デジタル化(Society5.0)計画」を打ち出しました。
総理自らがトップに立つ強力な機関であるデジタル庁の創設や、全国民のマイナンバー活用、自治体のデジタル化にオンライン教育、給与をスマホに直接入金するキャッシュレス給与、最速の通信技術「5G」で一都市の全てをつなぐスーパーシティなど、デジタル尽くしの政策が次々に並べられてゆきます。
デジタル化によって、得るものと失うもの。
オンライン教育の光と影。
この社会を支配するお金の仕組みと、陽の当たらない場所で粛々とこの国を支える大切な存在について。
デジタルをめぐり各国が繰り広げるパワーゲームや、次に来る「ゴールドラッシュ」に群がるであろう国内外の企業群。
デジタルを通して私たちの資産と主権を平気で売り渡しているのは、一体誰なのでしょうか。
デジタルと最も相性がいいのは、他でもない「ファシズム」であることを、デジタル政府、キャッシュレス、オンライン教育といった視点から読み解いていきます。
本書は、デジタル政府、デジタルマネー、デジタル教育の3部で構成します。
第Ⅰ部「政府が狙われる」では、9月1日に発足する「デジタル庁」の特徴とともに、オンライン会議ツール「Zoom」や動画共有アプリ「TikTok」、ECサイト運営などWEBサービスを提供する「アマゾン」などを引き合いに、「日本デジタル化計画」推進上のリスクを解説します。
また、地域と事業者と国が一体となって「まるごと未来都市」の実現を目指す「スーパーシティ構想」の落とし穴についても取り上げます。
第Ⅱ部「マネーが狙われる」では、まずキャッシュレスやデジタル給与などを事例に、スマホ決済の弊害について見ていきます。
続いて、取引のさらなる活発化が予想されるデジタル通貨がもたらすマネー戦争について説明。まとめとして、デジタルは目的ではなく手段としてとらえ、お金についての「匿名性」や「主権」や「自由」を手放さないと決めることが未来の社会へ大きな影響を与えるのだと説きます。
第Ⅲ部「教育が狙われる」では、生徒一人一台のタブレット支給とクラウドの活用、高速大容量インターネット通信環境を全国の国公私立の小中学校に整備する「GIGAスクール構想」に触れたうえで、教育上のあらゆるものがデジタル化していく仕組みやエドテック(教育〈Education〉と技術〈Technology〉の組み合わせ)などについて解説します。
また、オンライン教育がドル箱としてビジネスや投資の対象となっていくことや、教育にAIが導入されることによって教師や教科書がいらなくなるであろう未来を踏まえ、未来の教育はどうあるべきかということについても考えます。
世界に後れを取るなとばかりに急速にピッチを上げる〈デジタル改革〉。
私たちはこの改革をよく理解しないまま、あらゆるデジタル化を急かされようとしています。
そんな今だからこそ、本書がデジタル化の是非について正常に判断するための学びとなるはずです。
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街も給与も教育も、米中の支配下に!?
「日本デジタル化計画」の恐るべき裏側に迫る『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』が発売
株式会社NHK出版 2021年8月31日 PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000368.000018219.html
■斎藤幸平×堤未果「デジタル植民地化」から日本を守る方法
GAFAMが狙うのは「Z世代の頭の中」シリコンバレーの技術者が子供にスマホを持たせない納得の理由
プレジデント 2022.06.20
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・GAFAMの主要ターゲットはZ世代
【斎藤】危機状況といえば、「資本主義の微修正でいけるのだ」と思いたい中高年世代とは違い、不況続きの私の世代くらいになると、もはや資本主義の永遠の経済成長への憧れはほとんどない。その意味では、私よりさらに一回り下のZ世代の価値観に最近は注目しています。
【堤】今までの続きでなく、根本から新しい価値観を作り出せるZ世代ですね。
【斎藤】今の若い世代は、経済的に苦しい状況にあります。日本のガラパゴス化なんていいますが、アメリカへ留学する学生の数も減っている。教員として大学生を見ていても、僕らの時代以上に「経済的に留学できない」という声はよく聞きます。さらに、そこにコロナと円安です。より海外は遠ざかり、見分を広める機会も減少しています。
【堤】斎藤さんは、ドイツ、フランス、アメリカとさまざまな土地で学ばれてきたんですよね?
【斎藤】非常に幸運でした。やはり土地が変われば、経済も人間も変わります。ベルリンなら豊かに暮らせるお金を持っていても、ニューヨークでは食べていくのがやっと。
だから、ニューヨークの投資銀行に入った大学時代の同級生は、稼ぎのことばかりを考え、同僚と競争しながら、街の速度に合わせるように必死に働いていた。一方、ベルリンは、日曜はすべてお店が閉まるくらいのんびりしている。けれど、週末はみんな公園でビールを飲んだり、仲間と議論したり、デモに参加したり。どっちが幸せかといえば、やっぱり後者じゃないかと(笑)。
【堤】うふふ、いいですねドイツ(笑)。そうやって五感を使って体験した記憶って貴重ですよね、時間が経つほどその効力を発揮する。頭だけでなく体感で覚えたことは忘れないし、自分の中のステレオタイプを壊しやすくしてくれるんです。
斎藤さんの経験もすてきだし、たとえ今のZ世代が海外に出られなくても、国内で全く文化の違う相手とリアルで接する機会を持つことには、大きな価値があると思います。
デジタルテクノロジーの進化で、「これからは家の外に出なくてもいろいろ体験できるようになりますよ」と宣伝されていますが、私は逆にZ世代には、「身体で体験することが、後で必ず宝ものになるよ」と伝えています。
ちなみにGAFAMの主要ターゲット層は、Z世代の若者です。それは思春期の、まだ感情や自己肯定感も不安定な時期に、スマホを通して彼らの感情や思考、健康状態や食の好みや政治観まで、データを収集して、ある種の方向に誘導もできるなど、ビジネスとしての利用価値がとても高いからです。若いうちからオンラインにいる時間が長ければ長いほど、ネット依存度も高くなるので、その分回収できるデータも膨大になる。Z世代の頭の中は言ってみれば富を生み出す「巨大なマーケット」なんです。
・シリコンバレーの技術者たちの後悔
【斎藤】今の若い世代は、望むと望まざるとにかかわらず、FacebookやInstagramなどで常に他人との比較の中で生きています。いまさら日常生活からスマホやデジタル機器をなくすことも難しいですしね。
【堤】ええ、なくすどころか技術の進化で、デジタル機器は近い将来彼らの身体に埋め込まれるようになるでしょう。問題はデジタル機器そのものではなく、いかにその全体像を把握して主体的に使うかどうか、の方なのです。幸いSNSが若者のメンタルに与える危険については世界でもかなりデータが出てきているので、それだけでも知っていると知らないのとでは、大きく違ってくるでしょう。
一昨年アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』(新潮社)がベストセラーになりましたが、そのずっと前から、シリコンバレーの技術者からは「とんでもないものを作ってしまった」と懺悔の声が上がっていました。彼らは自分の子どもはデジタルフリーで育てています。
あれはれっきとした依存症ビジネスなので、大人でも自分の意思だけでやめるのは難しいですよ。実は私も、散々このテーマを取材してる癖に、全然人のことは言えず……執筆をしていたはずが、気がつくといつの間にか猫グッズのサイトに……(笑)
・中国や韓国で進む「スマホ脳」対策
【斎藤】まぁその点は、僕の脳みそも同じです(笑)。Twitterとかよく見ちゃうので、深く反省します……。実際、デジタルは中毒性と非常に親和性が高く、人間の注意、意欲、集中力をとことん吸い尽くすように緻密に計算されています。
「資本主義」や「民主主義」が大きな壁にぶち当たり、これから人類がどういう道を模索していけばいいのかを考えねばならない時代に、おりしもスマホ脳的現象で、「考える力」が奪われてしまっているのは、悲劇的です。
【堤】ええ、本当に。「考える力」をこれ以上奪われっぱなしにしないために、この悲劇的状況を私たち大人が重く受け止めて、一刻も早く行動を起こさないといけません。
新しい技術についてはいつも、時差があるものです。開発者側の語る利便性や夢の未来のような理想が先に拡散されて、リスクが問題になるのはずっと後ですよね。ハンセン博士の「スマホ脳」が騒がれたのも、日本にiPadが上陸してから10年も経ってからでしょう? 開発者のジョブズは2010年のインタビューで、自分の子にタブレットを持たせない、とはっきり言っていたのに。
でも、Z世代や子供たちに関しては10年後20年後に出る影響が、彼らの人生だけじゃなく国の未来も変えてしまうので、そうも言っていられません。同じアジアでも中国や韓国では、すでに国を挙げて対策を打っています。
【斎藤】一方で、まだ私たちの考える力がすべて奪われてしまっているわけではないと信じています。
・「考える時間」を見つめ直すチャンス
【斎藤】例えば、『人新世の「資本論」』(集英社新書)は決して内容的にも簡単ではなかったにもかかわらず、予想を大きく上回る人に読んでもらえました。それはコロナ禍という特殊な状況も影響していたと思っています。
リアルな付き合いが激減し、生活がスローダウンすることで、人々が自分一人で考える時間が増えたからです。
【堤】パンデミックが結果的にもたらした良いことの一つはそれですね。グローバリズム信仰で効率や利便性を追求した果ての社会が、どれだけ脆弱ぜいじゃくだったかも一気に露呈して、皆がそれぞれ、考え直すチャンスがきた。
早ければ早いほどいい、便利なほど快適、と思っていたことが、立ち止まって考えてみたら、実は自分の心身に結構負担になっていたことに気づいたという声も少なくないですね。
本というのは、世の中に出るタイミングも含めてお役目を持っているんです。今だからこそ、斎藤さんが投げかけた「脱成長」や<コモンズ>、「持続可能な地球」といった大事なキーワードが、平時よりもずっと深く響いたのではないでしょうか。
(中略)
・日本は自前のプラットフォームをつくれるか
【斎藤】ただ日本の状況を考えたときに、難しいのは、やはり規模感ですよね。現在、積極的にGAFAMに規制をかけようとしているEUは、経済圏も大きく、各国が足並みをそろえ、大きな対抗勢力となっています。
中国もやはり10億人市場だから、自分たち独自のプラットフォームを作れる。しかし、人口1億人という小規模市場の日本が、どれだけGAFAMに代わる自前のプラットフォームを作れるかというと、かなり厳しい。
【堤】国民の発信媒体に関してはGAFAM以外の検索エンジンなどまだ選択肢はありますが、デジタル庁など行政サービスに関しては、利便性やスピードより「セキュリティー」が最優先されるべき部門なので話が違いますね。
全国民のデータを扱う省庁なのに、機能や利便性で追いつこうとするあまり、「デジタル安全保障」という意識が薄いのではと思わずにいられません。
今後社会のあらゆる面がスマート化する中で、国産が遅れてるから手っ取り早く外国企業に委託、ITに強い外国人を民間から採用しましょうという、今までのような「外注思考」を、国家と国民の重要データを扱う公共部門に入れることの意味を、よく考える必要があります。食とエネルギーを外国に依存している国に、コロナやウクライナ有事で一体何が起きたでしょう?
世界はすでにデジタル植民地の時代に突入しています。今の日本には、デジタル時代の安全保障の重要性を理解し、サーバー主権について徹底的に議論し、外資に委託する際の有事リスクへのセキュリティー対策や、国民に対する透明性の確保、そしてたとえ時間がかかっても国の重要インフラには、人と技術に投資すべきだと考える政治家が必要でしょう。
・「自由」はどこまで残せるか?
【斎藤】アメリカはそれで儲けることができるけれども、GAFAMをいくら導入しても日本経済は豊かになりません。広告料や利用料もどんどん吸い上げられて貧しくなっていきます。
【堤】ええ、そうやってサービスと引き換えに無料で提供している個人データが実は巨大な資産であることを、私たち国民もしっかり意識しなければなりません。
Microsoft Teams、Google Meet、Zoom、LINE……、日本の教育界や経済界、医療現場や福祉現場、政府や自治体で、安易に使われている海外系サービスが吸い上げた国民の個人情報が、今後どう扱われるかが重要であること、あのデータはあなたたちの大事な権利なのだと、今のうちに子供たちに教えておかなければなりません。
日本でも今後私たち国民の金融情報、個人情報、健康情報、知能情報などが一元化されてマイナンバーカードに組み込まれていきます。そうなったとき、果たして国民にどの程度の「自由」が残されているのか? ラッキーなことに、世界を見回せばすでにいくつもの国が似たような制度を導入していますから、今のうちに彼らの失敗例と成功例をみて日本は上手に良いとこどりをしてゆけばいいのです。
・民主主義の将来像
【斎藤】経済的利便性や、国家的利便性はいったんわきに置き、どのような社会を私たちは今後作っていきたいのか。ビジネスの第一線で働く方々だけでなく、高齢者や、女性、若い世代や外国人、あらゆる視点や立場をとりいれて考えるべきですね。
【堤】まさに、それこそが政策決定プロセスにおける民主主義の本質ですね。存在感を高めた台湾が、あえて若い世代と高齢者に政策提言をさせているように、日本でもビフォアデジタルに生きてきた高齢層が、Z世代に託せる財産が実は思った以上にたくさんあるんですよ……という本が、ちょうどもうすぐ書き上がるところです!
デジタル化のすてきなところは、これが、誰もが立場や条件に関係なく「当事者」になれる歴史的シフトだということでしょう。
おまかせではなく「当事者意識」を持った時、私たちはスマホ脳で自動運転になってしまった「考える力」をとり戻し、自分たちの手で未来を変えていくことができるからです。
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斎藤幸平×堤未果「デジタル植民地化」から日本を守る方法
GAFAMが狙うのは「Z世代の頭の中」シリコンバレーの技術者が子供にスマホを持たせない納得の理由
プレジデント 2022.06.20
https://president.jp/articles/-/58800
■GAFAによる「人類の家畜化」を止めるのは誰か
人間はすでに「大切なモノ」を奪われつつある
東洋経済オンライン 2019/07/04 泉美木蘭
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「痛くない歯医者は?」「おいしいパスタ屋は?」「タケノコの茹で時間は?」――手元のアイフォンをつついて質問すると、すべてグーグルからひとまずの答えが返ってくる。
実家に住んでいた頃は、医者も飲食店も家族や友達から聞いたり、日頃の会話の中でなんとなく情報として仕入れたりしていた。
料理の作り方は、田舎の母に電話すれば喜んで教えてくれるはずだし、ついでに口やかましくあれこれ言われて面倒に思う反面、日常の緊張感がほどけて電話を切るときには少し気が楽になっていたりもする。
当初の目的以上の広がりがそこにはあったのだ。
ところが今や、必要なのは「回答」だけ。
人と話すよりグーグル直行、誰かと会話している最中ですら、「あれ、何だっけ?」と記憶につっかかるや、考える間も迷う間もなく反射的にスマホに手をのばしている。
そういう仕組みの世界に組み込まれてしまった以上、もはや抗うのは難しいが、この行動パターンは忌むべき安直さだと自覚している。
そして不安になるのだ。GAFA――グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン――自分はこれら巨大IT企業が用意した枠のなかにはめ込まれ、「必要なものだけ」を与えられている家畜みたいなものなのではないか、と。
・「知りたい」を奪うグーグル、「欲しい」を奪うアマゾン
スコット・ギャロウェイ著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』によれば、アマゾンは「1兆ドルに最も近い巨人」、アップルは「ジョブズという教祖を崇める宗教」、フェイスブックは「人類の1/4をつなげた怪物」で、グーグルは「全知全能で無慈悲な神」という事態であるという。
なかでもGAFAがその破格の成功を収めた一因を分析する第7章「脳・心・性器を標的にする四騎士」では、私が自覚する「安直さ」が見事にカモにされていたことがよくわかる。
例えばグーグル検索は、毎日地球上の20億人から、35億回もの質問をされ続けているという。
その規模もさることながら、人々がほぼ無意識的、反射的にグーグルに直行するという状態を作り出すことによって、もはや「調べたい」「知りたい」という人間の意思に基づく脳内の欲求すら奪い取ろうとしているように見えるのだ。
「自分では理解していないけど、ググレばわかる」「自分の記憶力や思考力は怪しいけど、検索すれば大丈夫」……こんな感覚がどこかに棲みついていないだろうか。
最初は便利な道具の1つとして手に取っていたものが、使い慣れるにしたがって、まるで自分を構成する器官の一部のようになり、手放せなくなっていく。
自分の脳よりも、一企業のサービスに絶対的な信頼を置いて重要視しているのだ。
しかし、そのサービスが人間に与えているのは、「依存」と「堕落」である。
いや、「退化」かもしれない。
グーグルは、人間から「自分の脳を使う」手順を省略させて、その脳に成り代わっているのである。
欲しいもの、食べたいもの、行きたい場所、政治思想、異性との悩みなど日々あらゆることをグーグルに向かって送信し続けていると、それに応えるべく出現するのがグーグルアドセンスやアマゾンの商品リンクだ。
次から次へと「欲しいのはこれだろ?」「これが欲しいなら、こっちも欲しいはず」と突きつけて、物欲を捨てさせないよう誘惑し続ける。
スマートスピーカー「アマゾン・エコー」のCMに、ママの誕生日を祝うためにケーキ作りに奮闘する幼い息子とパパを描いたものがある。
ご存じの方も多いだろう。
パパは「アレクサ、キッチンペーパー注文して」「アレクサ、ライト消して」など次々とアマゾンのAIを自分の手足として使っていく。
感激しながら息子を抱きしめるママのために「アレクサ、ハッピーバースデー歌って」と命ずるシーンには「そこは自分で歌わんかい!」とママからのツッコミが欲しいところだが、どうやらこのアマゾン・エコー、クリックなしの完全自動注文へと人々を誘導する布石でもあるようだ。
自分が「欲しい」と思ったものを、自分で選んで注文し、届くのを待つ。
それがネット通販だが、ギャロウェイ氏によれば、アマゾンは消費者の「意思決定」や「注文」という作業なしに、物質的な欲求を自動的にすくい上げ、満たしてしまう未来へと向かっているという。
今はアレクサを介してキッチンペーパーを注文していても、それを繰り返すうちに、この家庭がどのくらいの頻度でキッチンペーパーを消費するのか、その購買パターンがビッグデータとともに分析可能になっていくというのだ。
すでに日替わりで弁当や冷凍パックの食事を配達する宅食サービスはあり、高齢者や産前産後などで買い物が難しい家庭などに利用されているから、生活必需品から衣料品まであらゆるものを自動注文化し、アマゾンプライム会員に手軽に利用させることは技術的にはそう難しくないのだろう。
やがてアマゾン・エコーで家族の会話を聞いて、必要と思われるものを勝手に届けたり、好きそうなデザインの洋服を何点か送ったり、「こんなのいらない!」と言えば返品用の箱を届けたりということも考えられる。
以前、データ入力業の方から、スマホの音声認識に話しかけられた音声データを文字起こしするという仕事について話を聞き、そんなふうに音声が抜かれているのかと驚いたが、スマートスピーカーも当然、その家庭内での音声はデータとして精度を上げるべく分析されているはずだ。
アレクサに話しかけていたCMのパパは、将来はアレクサから「お父さん、キッチンペーパーがまもなく切れます。シンク右下の棚に新品があるので交換してください」と先手を打って命令されるようになるかもしれない。
そのときにはもう「これが欲しい」という自発的な欲求さえ奪われて、すべてアマゾンという一企業の枠の中で生かされている状態だ。
最初に、自分はGAFAから「必要なものだけ」を与えられている家畜みたいなものではないか、と書いたが、実は「何が必要なのか」という意思決定すら委ねてしまう、本当の家畜化がこれから始まっていくのかもしれない。
・GAFAは多様性と常識を破壊する
ここで困るのは、アマゾンの完全自動化、大規模化によって小売店がせん滅させられていくことだ。
アメリカではアマゾンはすでに「小売りのサタン」となり、ウォルマートやKマートなど著名な小売りブランドも含めて同業企業がめちゃめちゃにされ、「アマゾン以外はほぼ敗者」というゼロサム・ゲームを展開しているという。
そんなになるまで保護を考えないのかと思うと、自由の国・アメリカの自由さも問題があるなと思うが、日本もひとごとではない。
GAFAのような巨大企業は、富だけでなく、社会の豊かさ、多様性をも奪っている。
それは、アマゾンのような物質的な独り勝ちだけではない。
例えばフェイスブックでは、フランスの巨匠ドラクロワの名画「民衆を導く自由の女神」が、上半身裸の女性を描写しているという理由で掲載禁止になったり、ベトナム戦争の悲惨さを伝える報道写真としてあまりにも有名な「ナパーム弾の少女」が児童ポルノと判定され、問答無用で削除されるなどの事件が起き、大問題となった。
いずれもその後、フェイスブックがそれぞれの作品に対して個別に判断を撤回しているが、作品に対する冒涜云々という観念的なことよりも、もはやインフラとも呼べる規模のサービスを展開している一企業が、その企業ルールによって情報統制を行ってしまい、一国を飛び越えて、勝手に人々の知る権利や表現する自由を狭める世界を作っているというのは、もはや危険だと感じたほうがいい。
もちろんこうなるのは、ありとあらゆるものが散乱するネット上には、本物の児童ポルノや犯罪に関わるものがあり、管理するために均一のルールを敷いてしまうという背景がある。
しかし例えば、「ナパーム弾の少女」は、少女本人の自伝が出版されており、その表紙はあの写真だ。
これが児童ポルノとされたら、ベトナム戦争被害者の証言が、よりにもよって交戦国アメリカを代表する企業によって排除されるというめちゃくちゃなことになってしまう。
たまたま有名な作品だから炎上したものの、ひっそりと排除されているものが実はほかにもあるだろう。
こんなことに慣れて麻痺してしまったら、「常識」という感覚すら破壊されかねない。
・強すぎる力は「健全な表現」すらむしばむ
さらにこの問題は、GAFAそれぞれのプラットフォーム上だけで起きているのではない。
2018年1月、ドワンゴ社のサービスを使って配信している有料ブロマガ内の連載に、フェイスブックの表現規制に関する記事を書いたのだが、ここにアップル社からの矢が飛んできたのだ。
公式に配布されている「ナパーム弾の少女」の画像を掲載して削除事件の経緯を説明したところ、ドワンゴ社から「アップル社より、当該写真が児童ポルノに当たるため削除要請があったので、削除してほしい」という通達が届いたのである。
記事はパソコン、スマホのブラウザ、メール配信、アプリなどいろいろな方法で読むことができるのだが、アプリ版に関しては、ドワンゴ社が「アップルストア」と「グーグルプレイ」から配布しているため、2社の基準に従わなければならないらしい。
会員制かつ有料の場所に書いたものにまでそんな無茶な話があるかと怒ったが、ドワンゴ社としてはどうすることもできないようで、「弊社としては児童ポルノには当たらないとは考えているのですが……」と平謝りするばかりの担当者が気の毒だった。
ギャロウェイ氏によると、アップルストアで大成功をおさめたアップルの手元資金は、いまやデンマークのGDPとほぼ同じとされる。
多くの企業が、その土俵の上で商売するしかない。
弱小国よりも強い力を持ったGAFAは、同業者をどんどん駆逐し、「わが社のルール」を世界に押しつけ、そぐわないものは排除してしまう。
この「多様化」が叫ばれる時代に、まったく真逆の世界へと推し進めてしまっているのだ。
そして、人々からは考えることを奪い、欲求することすら奪おうとしている。
こんなふうにGAFAに向かって腹を立てても、爪ようじで戦車をつつくようなもので、結局アイフォンを手に取る身では、なんの意味もないのかもしれない。
けれど、このまま惰性で受け入れて、GAFAの家畜まっしぐらなんて道はいやだ!?個人としての疑問と怒りを忘れたくない。
まずは、自分たちが置かれているテクノロジー時代の現実を理解しておくことが必要だ。
幸いにも、と言ってはなんだが、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』では、著者ギャロウェイ氏による冷徹なGAFA分析と、そしてかなり過激で発憤気味のGAFA批判とが怒涛のごとく展開されている。
本書を読んで、「GAFA怖い」と震えるだろうか。それとも「GAFAふざけやがって!」と憤るだろうか。
後者の気概を持つ人々の中に、四騎士の支配の世界に殴り込む妙案が生まれるのだと私は思っている。
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GAFAによる「人類の家畜化」を止めるのは誰か
人間はすでに「大切なモノ」を奪われつつある
東洋経済オンライン 2019/07/04 泉美木蘭
https://toyokeizai.net/articles/-/289479
■GAFAの「デジタル植民地」になりつつある日本、危機感を持ちなさい
日本のIT政策、デジタル政策はこれでよいのか
日経クロステック 2020.01.30 廉宗淳 e-Corporation.JP 代表取締役社長
■日本はこのままだとデジタル植民地に、迫り来る危機の「正体」
日経 xTECH/日経コンピュータ 2020.02.04 大豆生田 崇志
■「日本はデジタル植民地に陥ってしまう」、多数の取材先が危機感を抱く理由
日経クロステック 2019.10.31 大豆生田 崇志
■米首都ワシントン当局、アマゾンを独禁法違反で提訴
「グーグルとフェイスブックを米連邦法の独禁法違反でそれぞれ提訴。アマゾンに対しては米連邦取引委員会(FTC)、カリフォルニア州やワシントン州などが独禁法違反で調査」
2021/5/26(毎日新聞)
■<独自>アマゾン、不正商品管理に不備 名誉毀損やわいせつ物頒布の疑い
産経新聞 2021/6/20
■「日本人はなぜアマゾンに怒らない」潜入ジャーナリストが暴く現場の絶望
「アマゾンは日本でも租税回避をしています。法律を犯しているわけではないから「脱税」ではないものの、税制の抜け道を上手に探して納税額を最低限に抑えている」
週刊ダイヤモンド(2019.9.20)
■米富裕層「税金ほぼ払わず」 ベゾス氏らの納税記録暴露
「アマゾン創業者のベゾス氏は07年、会社の株価が2倍以上になったにもかかわらず、所得税を払っていなかった」
日本経済新聞 2021年6月9日
■デジタル課税のルール
米による骨抜き許されぬ
「米国のグーグルやアマゾンなどはネットでのサービスを通じ、国外で巨額の利益を得ている。なのに現地では税金を少ししか払っていない。現状では、法人税を課せるのは工場などがある国に限られる」
毎日新聞2020年2月5日
■アマゾンの納税額が楽天より圧倒的に低い理由
東洋経済 2019/11/11
■上位企業による寡占とは 競争原理失う恐れ
「ネット検索や広告分野で競争を阻害とグーグルを提訴」
「企業同士が話し合って価格を高く設定したり、資本力を背景に取引先に圧力」
日本経済新聞 2021年5月16日
■グーグルが握っているあなたの「個人情報」
「ウェブ閲覧履歴をグーグルが集めている。また、アンドロイド・アプリの使用履歴をグーグルが集めているのも、行き過ぎだ」
The New York Times(執筆:Brian X. Chen記者、翻訳:藤原朝子)
東洋経済(2018/06/06)
■グーグルが検索シェア9割死守に年1兆円
「グーグルはネット検索で9割近いシェアを握る独占的な地位」
東京新聞(2020年10月21日)
■【米マイクロソフト“分割回避”の裏事情】
「マイクロソフト社はおびただしい数のロビイストを雇い大金を惜しげもなく費やして政治家に働きかけた」
日経クロステック(日経BP)2001.09.10 小林雅一
■日本人は「GAFAの恐ろしさ」を知らなすぎる
「四強企業の真実」は現代人の必須科目だ
東洋経済オンライン 2018/07/27 塩野 誠 : 経営共創基盤(IGPI)共同経営者
■Googleの検索結果操作っぷりは予想をはるかに上回る…
「msnニュース」ギズモード(2019/11/19)
■「ChatGPT」に浮かれる人が知らない恐ろしい未来
新井紀子氏「非常に危険なものが生み出された」
東洋経済 2023/03/04 武山隼大 森田宗一郎
■Googleの検索履歴はこうしてバレる
日経パソコン 2014.09.29 八木玲子、福田崇男
■Yahoo! JAPANが米グーグルの検索エンジンを採用
日本経済新聞 2010年7月28日
■ヤフーがグーグルの検索エンジンを採用、日本でもヤフー天下の終わりの始まりか
東洋経済オンライン 2010/07/27
■ヤフーの検索結果がGoogleになった背景
・ヤフーが独自の検索エンジンをやめた理由
「日本の検索エンジン技術の90%がGoogleに独占」
All About(企業のIT活用)水谷哲也
■実質は国内シェア96%を握る
ヤフー・グーグル提携の波紋
週刊ダイヤモンド 2010.12.27
■デジタル化が自由の危機に?国家を超える新たな権力の存在 山本龍彦・慶応大大学院教授に聞く
東京新聞 2021年5月3日
■グーグル検索は「独占」、米国政府が暴いた全容
アップルに年間1兆円支払い、検索シェア拡大
東洋経済オンライン 2020/10/22 中川 雅博
■Googleは何を「独占」しているのか 元司法省幹部が解説 米議会で27日に公聴会
東京新聞 2020年7月21日
■シェアは92.2%!Google検索が世界一になった理由とは??
日常化したメディアとしての「プラットフォーム」
週刊現代 2020.09.13
■Googleの検索結果上位は「Googleが所有するウェブサイト」に占められているとの指摘
GIGAZINE 2020年07月29日
■グーグルの検索履歴を政府が監視する「キーワード令状」の実態
Forbes(フォーブス) 2021.10.06 Thomas Brewster
■国産検索エンジン開発が頓挫した先にあるもの
「検索エンジンが無いというのは、「サイバーリスク」の1つとして考えるべきではないか」
ITmediaエンタープライズ(2013年02月01日)
■【グーグル八分】『ウィキペディア(Wikipedia)』
「検索結果として表示されるはずのサイトの一覧から特定のサイトを取り除き、サイトを表示しないようにすること」
■「Google八分、知ってますか?」眞鍋かをりが“国策検索”アピール【CEATEC JAPAN 2006】
ITmedia NEWS 2006年10月05日
■グーグルやアマゾンに価値観まで変えさせてはならない
CNET News 2020年01月28日
■東証がITシステムに初採用した「謎の米ベンチャー企業」の正体
「設立わずか8年の米国のベンチャー企業が提供するものに置き換えているのだ」
「ほとんど聞いたこともない謎の企業が受注」
週刊ダイヤモンド 2017.9.12
■クラウド政府基盤が稼働 アマゾンが食い込めた真相
「総務省が構築した中央省庁向けの「第2期政府共通プラットフォーム」がAWSのクラウド上で運用開始」
「中央省庁の行政の根幹に関わるシステム」
日経クロステック(2020年10月15日)
■アマゾンに日本政府のIT基盤を丸投げ
「政府共通プラットフォームは米国企業のAmazonが提供するAWSに移る」
「現在の日本政府は黒船Amazonの単なる客だ。しかも、国民や政府の機密情報が大々的に流出するリスク」
論座(朝日新聞)2020年09月28日
■『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』
著者: 堤未果
出版社:NHK出版
発売日:2021年08月31日
コロナ禍の裏で、デジタル改革という名のもとに恐るべき「売国ビジネス」が進んでいるのをご存じだろうか?
アマゾン、グーグル、ファーウェイをはじめ米中巨大テック資本が、行政、金融、教育という、日本の“心臓部”を狙っている。
デジタル庁、スーパーシティ、キャッシュレス化、オンライン教育、マイナンバー……
そこから浮かび上がるのは、日本が丸ごと外資に支配されるXデーが、刻々と近づいている現実だ。
https://a.r10.to/hD9lT7
■『日本が売られる』
著者/編集: 堤未果
出版社: 幻冬舎
発売日: 2018年10月
法律が次々と変えられ、米国や中国、EUなどのハゲタカどもが、我々の資産を買い漁っている。水や米、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇る貴重な資産に値札がつけられ、叩き売りされているのだ。マスコミが報道しない衝撃の舞台裏
いつの間にかどんどん売られる日本!/第1章 日本人の資産が売られる(水が売られる/土が売られる/タネが売られる ほか)/第2章 日本人の未来が売られる(労働者が売られる/日本人の仕事が売られる/ブラック企業対策が売られる ほか)
https://a.r10.to/hDunT9
■文明が変わる!? デジタル化の「恐怖」を正視しよう
[三橋TV第464回]堤未果・三橋貴明・高家望愛
1985年日航機墜落事故!日本…
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