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■国産検索エンジン開発が頓挫した先にあるもの
「Google八分」の恐怖
ITmediaエンタープライズ(2013年02月01日)
萩原栄幸
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中国は、独自の検索エンジン「百度(バイドゥ)」がある。
既に中国ではデフォルトで利用されている(国家指導という側面やGoogleの撤退という状況もあるが)。
韓国では「NAVER」が有名だ。
日本は恐らく8、9割のインターネット利用者は「Google」ではないだろうか。
周囲に尋ねても、Google以外の回答はほとんど聞かれない。
時々、「私はYahoo! JAPANだ」という人もいるが。
今ではYahoo! JAPANの検索エンジンはGoogleになっている。
ちなみに、livedoorのWeb検索エンジンは韓国系のNAVERである。
Windows 3.1や95のころ、まだPC通信が全盛でようやくPC通信のメニューの1つに「インターネット」があった時代は、アナログ電話器に音響カプラーを取り付けて、通信速度も「1200 baud(ボーと発音する)」といった状況で、画像1つ表示するのでも何十秒もかかった。
そういう時代なら検索エンジンは、あまり重要ではなかったかもしれない。
だが今の時代は、検索エンジンが無ければほとんど何もできない。
URLやIPアドレスを知っていて、じかにURLや数字の羅列を入力できる数少ないサイトを除けば、ほとんどのサイトには訪れることすらできない。
インターネットで何か調べようとするなら、まず「お気に入り」に登録してある検索エンジンサイトから始まるだろう。
その検索が一切できないなら、ほかに術が無いといっても過言ではない。
「Google八分(グーグルはちぶ)」という言葉がある。
Wikipediaによると、Googleの基準に該当したページが同社のデータベースから外されて、検索結果に表示されない状態になることを指す。
「村八分」になぞらえて呼ばれるもので、Googleの検閲行為という指摘もある。
数年前に筆者に届いたジャンクメールの中に、「私の会社のサイトはGoogle八分にされ、検索結果に表示されない。
グーグルの明らかな不正行為である」というちょっと変わったものがあった。
内容を確認していないので、真偽は定かではないが、「そうしようと思えばできてしまう」という怖さを感じた。
Googleは、「原則そういう行為はしない。しかし、その国の法に抵触したり政府などから要請があれば、その限りではない」と、論理的には可能であることを認めている。
同社がまだ中国に進出していた頃、中国政府の強い要望で検閲を行っていたことは、あまりにも有名な事実だ。
かつて、筆者も実験してみたことがある。
中国のGoogleと日本のGoogleの2つのサイトを立ち上げ、「天安門事件」を日本語と中国語で検索してそのヒット件数を調べたが、その数の差は3ケタも違っていた。
また5、6年ほど前に某テレビ局の社内セミナーで、「日本のGoogleと米国のGoogleには差があるのか?」という話題が出た。
筆者がテレビ局のディレクター(だったと思う)に、「そういう話を聞いたのか? 差がある理由を知っているなら教えてほしい」と尋ねたところ、こう話された。
「CNNに務める友人からのメールですが、『○○ということが真相らしい。アダルトサイトの中にそういう事実を公開している。まだ見られるが、URLが長すぎる。Googleで○○と検索すると、その1ページ目に○○と書いてあるサイトがすぐに出てくるので分かるはずだ』というのです。しかし、見当たらない。メールでまた質問したのですが、まだ回答が無いので分かりません」
筆者は続けて「Googleのオプションを変えていますか」と尋ねると、彼は「いいえ」と答えた。
マスコミの立場で日本のGoogleをそのまま使っているのは、ちょっとマズイのではないかと思った次第である。
なぜなら、かつて中国では中国政府が求めてGoogleがフィルタリングを実施していたものの、当時の日本ではGoogleが自らの意思でフィルタリングを実施していたからである。
検索を行うのであれば、このオプション(日本向け)を外すか、米国のGoogleを利用すべきだったかもしれない。
その当時、日本のGoogleではフィルタリングが適用されており、たしか「中」がデフォルトであった(編集部注:現在は性的コンテンツなどに対しては適用される)。
オプションを外してみると、検索結果の件数は大幅に違った。
こうしたGoogleの施策を逆手にとって商売をしているのが、今でも盛んな「SEO対策(検索エンジン最適化)」である。
Googleは検索エンジンのロジックを公開していないので、さまざまな試行を元に、「こういう処理をすると検索結果が上位にできる」ということを商売にしている。
お金を払えば、小さな会社のサイトでもGoogleの検索順位を1位にできる(可能性だが)からだ。
今回、国産による検索エンジンの開発を取り上げたのは、近年に新聞沙汰となっている「サイバー攻撃」などの影響があるためだ。
別の機会でもお伝えしたいが、今や世界は「サイバー攻撃」というより「サイバー戦争」という様相が強まり始めている。
日本では「SFの世界」とか絵空事のように言われているが、現実の状況がどうであるかは、最近のオバマ米大統領の動きなどを注視していると分かるだろう。
今やインターネットが無ければ、米国はもとより仮想敵国も日本も身動きがとれないという事実がある。
そのインターネットで仮に検索エンジンが使えない、あるいは、密かにフィルタリングが行われているとしたら、その影響は極めて大きい。
どのくらいの被害になるか見当もつかない。
しかも検索エンジンを停止する手間などは、ミサイルを1つ製造するコストに比べたら、はるかに手軽である。
想像力のある人なら「ぞっと」するだろう。
インターネットを使えても検索エンジンが無いというのは、「サイバーリスク」の1つとして考えるべきではないかというのが、筆者の見解である。
こういう視点には、多分に政治的な要素もつきまとうが、一般的な感覚からしても、リスクがあるのに(できる可能性があるのに)そのリスクヘッジをしないというのはおかしいと感じる。
現実の世界には「日米安保」などさまざまな仕組みがあるし、そもそも、米国と日本が敵対してしまう可能性はゼロに近いかもしれない。
一方で、政府はサイバーの世界における日本としての立ち位置をどうしたいか考えるべき時期に来ているだろう。
自前では何もできない国になりたいのだろうか。
食糧の自給率アップ、石油や天然ガスを含めたエネルギーの自給率アップなどと一緒に、「情報の自給率」アップを目指してはどうか。
その一環として、インターネットや衛星回線などの防衛策や国産検索エンジンの実現などが入ってくるだろう。
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■国産検索エンジン開発が頓挫した先にあるもの
「Google八分」の恐怖
ITmediaエンタープライズ(2013年02月01日)
萩原栄幸
いかがでしょうか。
いま日本の検索サイトは、Google1社のみと言っても過言ではない状況ではないでしょうか。
もし、仮に、Googleが「意図的」な検索結果を表示することがあったとしたら、日本人は、Googleの「意図」した知識範囲の日本人だらけになってしまうのかもしれません。
すでに、このリスクを避けるべく、ロシア、中国、韓国等、他国では自国の文化思想を守るべく、自前の検索エンジンを育て、保護しています。
今一度、国産検索エンジンについて考えてみるのも必要ではないでしょうか。
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