「空気を読め!、KYな奴だな!」こんな言葉、聞いたことありませんか?
空気を読み、相手の意向を感じ取る能力は、非常に重要な能力の一つかもしれません。
しかし、この忖度能力が良い部分と、そして悪い部分にも使われてしまいます。
「忖度」大国日本。
今回は「忖度」についてお伝えします!
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そもそも忖度の意味とは?
2017年、新語・流行語大賞の「忖度」(そんたく) 。
あらゆるメディアでも取り上げられました。
そもそも、この「忖度」。
意味としては、(気持ちを)察する・計る・推しはかる・(心を)汲む・汲みとる・おもんばかる・斟酌(しんしゃく)する・立場にたつ・考慮する・配慮する、などとなっています。
「忖」という字は訓読みで「はかる」です。
りっしんべんは「心」、寸は「短い時間」の他に「手」や「人」といった意味があります。
その二つが合わさって「忖」となり、「心に手を当てて人の気持ちを推し量る」の意味を持ちます。
「度」は訓読みで「たび」です。
「度数」や「角度」などから分かるように長さや量や大きさを表す単位の意味、「程度」などから分かるようにほどあい、また「態度」や「度量」などから分かるように人柄や様子を表す意味があります。
そして仏教用語では「さとりの世界や仏の世界へと導く、救う」「はかる、みつもる」という意味があります。
「度」にも人に関わる意味合いが含まれていることが分かります。
その二つが合わさって「忖度」となり、相手との距離など、ほどあいをはかりながら相手の気持ちを推し量るといった意味となったそうです。
また、「忖度」の英語としては、「read between lines」が一番近い表現だと言われています。
「行間を読む」という意味で、「推測する」という意味の「surmise」なども使われているようです。
「忖度」の類語と反対語
忖度と似ている意味を持っている類語はどのようなものがあるのでしょうか。
以下、忖度の類語です。
【忖度の類語】
・斟酌(しんしゃく)・・・相手の心情を推しはかること。また、推しはかって手加減すること
・推測(すいそく)・・・知っているものから推しはかること
・配慮(はいりょ)・・・良い結果になるように気遣うこと
・推察(すいさつ)・・・他人の事情や心中を想像したり察すること、思いやること
・顧慮(こりょ)・・・深く考えてそれに気遣いすること、心配すること
・慮る(おもんぱかる)・・・深く考えて考慮すること、思い巡らすこと
など
また、続いて忖度と反対の意味を持つ反対語を紹介します。
以下、忖度の反対語です。
【忖度の反対語】
・断定(だんてい)・・・はっきりと判断すること
・確認(かくにん)・・・はっきりと確かめること
・露骨(ろこつ)・・・相手のおもわくを考えず、自分の気持ちをそのまま表すこと
・無頓着(むとんちゃく)・・・こだわらないこと
・独善(どくぜん)・・・ひとりよがり、他人に関与せず自分の身だけ正しく修めること
・利己的(りこてき)・・・自分の利益だけを考え、他人の立場などを考えないで行動するさま
・身勝手(みがって)・・・自分の都合・利益だけを考えてふるまうこと
・わがまま・・・他人のことを考えず自分勝手にふるまうこと
など
利己的、身勝手、わがままといった、否定的な語句の反対語でもある「忖度」。
「忖度」は、国会答弁やニュースなどで取り上げられるようになって、それまであまり頻繁に使用することがなかったかもしれませんが、一気に知名度が上がった言葉の一つですね。
日本人として、日本の伝統的な心配り
「忖度」と言えば、「空気を読む」という言葉があります。
そういえば、以前外国人から「日本人同士はテレパシーでもあるのか?」という笑い話があったのを思い出します。
それほど、日本人は「空気を読むこと」が当たり前なんですね。
例えば、取引先との会食。
取引先のビールグラスが空きそうなとき、招待された側は自分からお替わりを要求するのははばかられますから、招待した側が先回りしてグラスを満たすなり、新たな注文をします。
上司や先輩への気遣いもそうですね。
これが日本人として「良し」とされています。
言葉を交わさずとも、相手又は周囲の人たちの意をくみ取る。
ある意味、日本人の強みともいえるのかもしれません。
以心伝心とは?
日本人は「空気を読む」ことに長けている人種かもしれません。
その背景の一つとして、島国としての日本。
言語や生活文化、風土など同じ環境で育った日本人同士では、相手の気持ち、周りの空気を読むことが容易かった、という背景があるのではないでしょうか。
そして宗教。
仏教も一つ影響があるのかもしれません。
「以心伝心」という言葉、ご存知でしょうか。
以心伝心とは、言葉や文字を使わなくても、互いの気持ちが通じ合うことのたとえです。
この「以心伝心」、もともとは、仏教用語。
仏教の真髄を師から弟子の心へ伝えることの意味から、この「以心伝心」が派生したと言われています。
長く日本に根付いた仏教の教えからも、互いの気持ちを通じ合うことの貴さを継承している、そう言えるのかもしれません。
このような地理的、宗教的背景もあってか、「空気を読むこと≒忖度」は日本の特性、特徴ともいえるでしょう。
相手を想う。
このこと自体、素晴らしいことではないでしょうか。
空気が読めない「KY」
忖度という言葉が取り上げられるようになってから思い出した言葉があります。
それが「KY(ケーワイ)」。
2007年頃から流行った言葉ですね。
いわゆる「空気が読めない」という批判めいた言葉です。
「KYな奴」と言われれば「空気の読めない人」という否定的な意味で使われています。
個人攻撃、またはいじめの言葉としても使われているようです。
「空気を読め!」
あらゆる組織で使われているのではないでしょうか。
でも、なぜ、集団化・組織化することで、このような否定的な言葉が頻繁に使われ、ある意味、個人へ強要することになるのでしょうか。
その一つの背景が、日本の「ムラ社会」かもしれません。
有名なのは豊臣秀吉が作り上げた「五人組」制度。
農民を統治、支配する目的で5軒ずつの家を一組として、お互いを監視、見張りさせ、不正などの密告を促す仕組みとして制度化しました。
その流れにあるのがもう一つ。
第2次世界大戦中の「隣組」(となりぐみ)。
各集落に結成された官主導の銃後組織で、戦争総動員体制を具体化したものの一つと言われています。
5軒から10軒の世帯を一組とし、団結や地方自治の進行を促し、戦時下の住民動員や物資の供出、統制物の配給、空襲での防空活動などを行ったそうです。
そして思想統制や住民同士の相互監視の役目も担っていたとも言われています。
相互監視を目的の一つとして作り上げられた「五人組」や「隣組」。
日本の「ムラ社会」の一つの背景かもしれません。
揚げ足を取る「ムラ社会」
「忖度」という言葉。
もともとは、相手を想う、素晴らしい言葉ではないでしょうか。
でも。
特定の上司、特定の個人に偏りすぎると弊害が生まれてきます。
そして悪意ある「集団」の忖度が、個人攻撃にも利用されてしまいます。
「組織」や「上下関係」に組み込まれることで、悪意ある言葉として使われてしまうのかもしれません。
日本人の素晴らしい特性「相手を想う」が、日本人の悪い特性「ムラ社会」に切り替わってしまう転換点ではないでしょうか。
最悪なケースは、「空気を読め!」「KYな奴」といった相互監視の揚げ足を取る「空気」。
こうなってしまっては、あらゆる場面で多くの人が意見を言わなくなってしまいます。
何を言っても否定。
新商品や新サービス開発はダメ出しの嵐。
当然新規事業開発も中止。
新規顧客開拓すら進みません。
そのような「マイナスの空気」を読んでいたら、企業そのものが存続できないでしょう。
敢えて空気を読まない「忖度」
「空気」を読む能力。
組織を生き抜くには重要な能力かもしれません。
特に官公庁や大企業には欠かせない能力です。
いや、官公庁や大企業では、最も重要な能力と言っても過言ではないかもしれません。
でも、空気は読めても、そうではあってはならない人たちがいます。
それが、起業家、ベンチャー企業、新規事業開発者です。
なぜなら、常に新しいことへチャレンジしなければならないからです。
否定的な空気を読んでいては、何も新しいことに挑戦できなくなってしまいます。
相互監視の揚げ足を取る「空気」は何も生み出しません。
その空気は「誰」の空気ですか?
その空気は「前向き」ですか?
もし、その空気が「後ろ向きの空気」なら、「敢えて空気を読まない」ことが必要ではないでしょうか。
空気が読めないのではなくて、敢えて空気を読まない。
もしかして、その「KYな人」は、「もっと広い視点で一段階上の空気」を読んでいる人かもしれません。
最後に
得てして日本人は、何とか家や何々会社のようなムラ組織に入ってしまうと、ムラの空気を読んでそこに合わせるという行動原理になりがちです。
冨山和彦/経営共同基盤創業者
僕がいいたいのは「もっとわがままに生きていい」ということです。いまは「空気を読むこと」が社会人として必須のスキルのようにいわれていますが、最近は、空気を読みすぎて、自分が空気みたいになっている人が多いのが心配です。周囲に合わせすぎて、自分を押し殺して生きることは、とてもつらい。それで苦しんでいる人を見ると切なくなります。
家入一真/クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」創業者
これから問われるのは、自分の頭で判断して、決めること。周りの空気、隣の人の行動に左右されるなんてことは情けないことだ。
柳井正/UNIQLO創業者
「KY(空気を読めない人)」であることが重要だと私は思っています。チームの雰囲気が沈滞気味でも前向きな態度を貫く、愚痴や悪口が飛び交っても同調しない、といった姿勢が大切です。
高城幸司/独立開業情報誌「アントレ」の初代編集長
NECとのEV(電気自動車)用の電池開発の現場では侃々諤々やりあっています。「空気を読めない」ことを気にしていては、新しい発想は出てきません。変わるためにはKY(空気が読めない)が必要なのです。同質性の居心地の良さからは、新しい価値観は生まれないからです。
志賀俊之/日産自動車取締役副会長
社員には新しい価値を作り出せる人になって欲しい。場の空気を読む人ではなく、空気を作れる人になって欲しい。
重永忠/「生活の木」代表
ほどよく空気を読む力を持ちながら、そのうえで置かれた状況に応じて「あえて読まない」選択をできるかどうか。それができるようになれば、ビジネスパーソンとして、一つ上のステージに上がれると思います。
藤田晋/サイバーエージェント創業者
「やりたいことがあるなら、迷うな! やってみればいいじゃん」私のこの考えはずっと変わらない。やりたいと思うのなら、そこで失敗のことなんか考える必要はない。やるかやらないかだけ。もちろん失敗する人もいるが、成功を手にできるのは、やった人だけなのだ。やらずに成功をつかめる人なんて、どこにもいない。
堀江貴文
変わり者と言われても、風当たりは強くても、初志貫徹で人生満足。
多田克彦/多田自然農場代表
「最後は、自分で決めて進め!」って事です。誰かに決められた道なんて、後悔した時にはもう遅い。笑われても馬鹿にされても、自分で決めたその決意に揺るぎない誇りを持てれば、それで良い。
小渕健太郎/コブクロ