急増している糖尿病。
今日本国内で糖尿病と予備軍含めて日本の成人5人に1人が該当していると言われています。
また、「糖尿病が強く疑われる人」のうち、40代男性の約半数は治療を放置しているそうです。
糖尿病は透析治療、失明、足切断の可能性もある、まさに恐ろしい病気です。
透析治療となった場合、10年後の余命平均30%というデータもあるそうです。
糖尿病だけではありません。
心の病気、うつ病やメンタル不調者も急増しています。
会社員の3人に1人は精神面の配慮、サポートが必要だとも言われています。
従業員の個人健康が企業の健全な運営と直結する時代。
今回は「健康経営」についてお伝えします!
Contents
今、日本国内で糖尿病患者がどれくらいいるかご存知でしょうか。
「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる成人の数」は1,000万人を超えたそうです。
そして糖尿病予備軍。
「糖尿病の可能性を否定できない者」(糖尿病予備軍)も推計で1000万人。
合わせて2,000万人!
日本の成人の5人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍となります。
すでに国民病ですね。
糖尿病は本当に怖い病気です。
成人の失明の原因第2位が糖尿病ですし、透析患者の原因第1位も糖尿病です。
糖尿病が原因で切断されている足は年間2万本!
厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、平成27年1年間の死因別死亡総数のうち、糖尿病による死亡数は1万3,327人と発表もされています。
さらに、特に働き盛り、40歳代男性では治療を受けている割合が約50%、約半数が治療していない計算となります。
すでに明らかに糖尿病であるにも関わらず、放置している40代男性は2人に1人の状況と言えそうです。
仕事の忙しさを言い訳にして「何とかなるだろう」と思っているのかもしれません。
この糖尿病増加傾向は日本だけではないようです。
アメリカでも糖尿病患者は増加、米国全土で予備軍含めると約1億人、人口の3分1に達しています。
(参考:米疾病対策予防センター(CDC)National Diabetes Statistics Report, 2017)
アメリカだけではなく、中国やインドも増加傾向にあり、全世界では4.2億人が糖尿病患者で、1980年~2014年の間に4倍にも増加しています。
2025年までに世界の糖尿病人口は7億人以上に増えると予測されています。
(参考:WHO「糖尿病についてのグローバルな報告」(Global Report On Diabetes))
日本中、そして世界中糖尿病患者が増加傾向にあるといっても過言ではありません。
ベンチャー企業、中小企業、そして大企業、いずれの経営において最も重要なもの、それは人財です。
社員の協力なくして企業の発展は望めません。
企業経営において、社員の健康の問題も非常に重要です。
そこで、今注目されているのが、「健康経営」という考え方です。
「健康経営」とは従業員の健康に配慮した安全な職場環境を整えることで、従業員一人一人の業務効率を高め、企業全体の労働生産性を上げる経営戦略のことです。
つまり、「健康経営」とは、従業員が健康でいること自体、企業の収益向上に貢献するという考え方です。
歴史的には、すでに1992年に出版された「The Healthy Company」の著者でアメリカの経営学と心理学の専門家ロバート・ローゼン(Robert H. Rosen)氏によって提唱されました。
「社員が健康でいることこそが収益性に優れた企業を作る」を意味する「ヘルシー・カンパニー」という思想です。
日本においては「企業経営と従業員の健康管理の両立を目指す」という目的のもとに広がり、「健康経営」と呼ばれるようになりました。
NPO法人健康経営研究会では「健康経営」を商標登録し、以下のように定義しています。
『「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践する』と定義しています。
現在行政でも、また大手企業でも意欲的に推進している考え方です。
現在東京証券取引所もこの考え方を推進し、重視しています。
それが「健康経営銘柄」と呼ばれるものです。
2015年度から始まった「健康経営銘柄」は、従業員への健康保持・増進活動を推進する企業を、経済産業省と東京証券取引所が共同で認定しています。
「健康経営銘柄」は、2019年度には35社が認定されています。
水産・農林業 1332 日本水産株式会社
建設業 1820 西松建設株式会社
食料品 2802 味の素株式会社
繊維製品 3591 株式会社ワコールホールディングス
パルプ・紙 3880 大王製紙株式会社
化学 4452 花王株式会社
医薬品 4507 塩野義製薬株式会社
石油・石炭製品 5020 JXTGホールディングス株式会社
ゴム製品 5195 バンドー化学株式会社
ガラス・土石製品 5332 TOTO株式会社
非鉄金属 5801 古河電気工業株式会社
機械 6146 株式会社ディスコ
電気機器 4902 コニカミノルタ株式会社
6448 ブラザー工業株式会社
6645 オムロン株式会社
6856 株式会社堀場製作所
7751 キヤノン株式会社
輸送用機器 6902 株式会社デンソー
精密機器 4543 テルモ株式会社
その他製品 7936 株式会社アシックス
陸運業 9005 東京急行電鉄株式会社
情報・通信業 4689 ヤフー株式会社
9687 株式会社KSK
9719 SCSK株式会社
卸売業 8060 キヤノンマーケティングジャパン株式会社
小売業 8252 株式会社丸井グループ
銀行業 8379 株式会社広島銀行
8411 株式会社みずほフィナンシャルグループ
証券、商品先物取引業 8601 株式会社大和証券グループ本社
保険業 8630 SOMPOホールディングス株式会社
8725 MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社
8766 東京海上ホールディングス株式会社
その他金融業 8566 リコーリース株式会社
不動産業 8860 フジ住宅株式会社
サービス業 2432 株式会社ディー・エヌ・エー
以上、経済産業省と東京証券取引所が共同で認定した「健康経営銘柄」企業です。
このように経済産業省と東京証券取引所が認定することで、株価にも影響を及ぼすことも考えられ、企業イメージや企業ブランドにも関係してくるのが、この「健康経営」です。
さらに、日本政策投資銀行は「DBJ健康経営各付け」を融資制度として運営し、優れた健康経営を行っている企業に優遇金利を適用するなどの取り組みもあります。
つまり、健康経営というものは、企業ブランディング、そして資金調達にも実質影響がある考え方と言えそうです。
今、この健康経営という考え方がベンチャー企業や中小企業にも広がりつつあります。
このように現在、ベンチャー企業や中小企業にまで広がっている健康経営。
どのようなメリットがあるのでしょうか。
以下、健康経営のメリット例です。
・従業員一人一人が、より心身ともに健康であることによる労働生産性の高まりと、それによる企業全体の生産性向上
・従業員の心身不調による休職や退職などによる労働力低下回避
・従業員の医療費などの経費削減(健康保険料の負担軽減)
・うつなどの労働災害による損害賠償や企業イメージ低下へのリスクマネジメント
・職場環境整備による従業員満足度の向上及び、それに伴う退職者の減少
・職場環境整備による企業イメージの向上、企業ブランドや株価などの強化
・企業イメージ向上による優秀な人材採用の促進
などです。
企業において非常にメリットがある考え方と言えそうです。
もちろん、課題もあります。
「対策費用がかかる」「効果が見えにくい」なども挙げられてはいます。
しかしながら、医療費削減にもつながり、労働力確保など具体的な企業メリットから鑑みても、実践していく価値はあります。
昨今社会的にも取り上げられている重大な労働災害。
労働災害が大きく取り上げられた場合、最悪、企業の存続にも影響しかねません。
従業員全員が心身ともに健康で、従業員全体が創造力や集中力を十分発揮し生産性を高め、休職者や退職者の少ない企業は、成長し発展できる企業と言えるのではないでしょうか。
では、「健康経営」は実際どのように指標を基に改善をしていけばよいのでしょうか。
実際に「健康経営」を推進するにあたり、大手企業は以下の指標を重視しています。
経団連「健康経営への取り組み状況」からの抜粋です。
①定期健康診断の受診率 91.3%
②総労働時間数・残業時間数 72.4%
③定期健康診断の有所見率 68.5%
④従業員の健康状態の改善率(BMI、血圧、脂質代謝などの各種数値) 55.1%
⑤病気休暇等の取得日数 52.0%
⑥健康保持・増進プログラムの参加率 44.1%
⑦医療給付費の推移(1人当たり、年齢・階層別) 38.6%
⑧従業員の生活習慣・意識調査結果(取り組み意欲、エンゲージメントなど) 33.9%
⑨その他 22.8%
「健康経営」の評価指標として最も重視されているのが、1位定期健康診断の受診率です。
そして2位は総労働時間数、残業時間数となっています。
1位の健康診断を受診する、2位の残業を削減するといった取り組みは、一番スタンダードな取り組みと言えそうです。
特筆するべきポイントは、5位の病気休暇等の取得日数、そして7位の医療給付費の推移ではないでしょうか。
病気休暇がどのように改善できているのか、また医療費は実際増えているのか、減っているのか、その推移は企業の収益にも直結する部分においても重視すべき指標と言えそうです。
それでは実際に健康経営を企業として、どのように取り組めば良いのでしょうか。
前項と同じく、経団連「健康経営への取り組み状況」からの抜粋です。
①専門職(産業医・産業保健スタッフなど)との連携体制を整備 90.3%
②健保組合などの保健事業への協力(従業員への保健事業周知、保健指導の勤務時間内の実施など) 80.6%
③健康保持・増進に資する情報を従業員に提供(研修教育など) 76.2%
④就労環境の改善(相談窓口の充実、社員食堂の刷新など) 75.2%
⑤従業員の健康保持・増進に向けた課題を把握・分析 68.9%
⑥従業員の健康保持・増進にかかわる施策の 評価指標の設定・効果検証 61.7%
⑦経営方針などに「従業員の健康保持・増進」を明示し、社内に提示 51.9%
⑧担当執行役員や専門部署(職員)を配置 49.0%
⑨従業員の健康意識を高めるインセンティブ施策の実施 (福利厚生プログラムのポイント付与など) 32.0%
⑩その他 13.1%
「健康経営施策」の取り組み方法として、比較的多い施策は「専門家配置」や「セミナー、窓口設置」などの対策が見られます。
印象的なのは8位、「担当執行役員や専門部署(職員)」を配置です。
実際に、大手製薬メーカーでは、CHO(Chief Health Officer)という役員を設置し、重要な経営課題として、その責任を明確にしています。
このように、今、健康経営は企業運営において、非常に重要な経営課題として認識されつつあります。
健康経営を推進する方法として、大手企業は様々な取り組みを始めています。
最もオーソドックスな取り組みは「残業削減」「有給休暇取得推進」などではないでしょうか。
一般的な取り組みとも言えそうです。
少しためになりそうな取り組みをご紹介いたします。
従業員向けのセミナーや講座を開設する取り組みです。
具体的には「家庭でも作れる薬膳の作り方講座」「疲労回復セミナー」などを開催しています。
職場環境を改善する方法です。
具体的には「心身をケアするアロマ」を使用したり、社内に健康器具を設置し、健康増進を進める企業もあります。
スポーツ大会などを開催する方法です。
具体的には社内マラソン大会開催やサッカー大会開催などです。
ウォーキング推進活動などの取り組みを開始するケースもあります。
食事面からの健康増進を推進する方法です。
社内食堂において栄養士によるヘルシーメニューの提供を推進することも実施されています。
栄養管理に強い企業と提携する事例などもあります。
変わった制度としては「定期健康診断」未受診者に対する「賞与減額制度」などがあります。
年度内に受診しなかった社員には賞与の15%減額及び直属上司にも10%減額なる制度。
再検査未受診者には賞与減額がなされます。
また、逆に「ヘルスケアポイント」なる制度を設けた企業もあります。
ゲーム感覚に楽しみながら健康を維持する方法で、健保組合のポータルサイトからスマホでも参加できる仕組み。
「毎日10000歩以上歩く」「毎日体重を測り、記録する」などの目標を設定し、達成することでポイントがもらえる仕組みです。
このポイントはグループ企業のサイトポイントと交換できるなど、従業員の実益と直結することでモチベーション維持を図っています。
「精密検査」以上のリスクがある社員に対して、1泊2日の宿泊研修による集中的な「保健指導」を実施する方法です。
健康において重度な危険を有しながらも改善に乗り出さない社員が多い企業には効果的かもしれません。
いかがでしたでしょうか。
今政府を挙げて進めている健康経営。
大手企業は既に多くの企業が推進しつつあり、この流れがベンチャー企業や中小企業にも浸透しつつあります。
アメリカ発の健康経営という考え方は、そもそも日本の終身雇用や社員満足といった概念にもつながる日本の強みの部分なのかもしれません。
しかしながら、企業を取り巻く環境は変化しています。
糖尿病の他、うつやメンタル不調者も急増しています。
メンタル不調者は300人以上の企業の約8割に存在し、実質従業員の3人に1人はケアが必要だと言われる時代に入ってきました。
心身ともに健康な社員が多い企業と、そうではない企業は、いずれが成長・発展できるでしょうか。
社員の健康は、そのまま企業収益に反映されます。
今、健康経営を導入し始める企業と、しない企業では、数年後大きな活力の違いとなって現れてくるのではないでしょうか。
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