「猫の姿が見えない!」と思って探したら、箱や袋に入りこんでいた経験はありませんか?
人間から見れば狭くて居心地悪そうに見える箱の中ですが、猫はなぜこんなにも好きなのでしょう。
すっぽり箱に収まった猫の姿はかわいらしいですが、彼らはけっしてかわいらしさをアピールするために箱に入るのではありません。
そこには、れっきとした科学的な理由があったのです。
猫が狭い箱に入りたがるのはなぜ?
「せっかく猫のためにグッズを買ったのに、猫が興味を示したのはグッズが入っていた箱や紙袋だけだった……」
こんなちょっと残念な経験、猫の飼い主さんなら身に覚えがある方もいるのではないでしょうか。
どうして猫はこんなにも狭い場所が好きなのでしょうか。
自分の体よりも小さな箱に入りたがる気持ちは、人間にはなかなか理解しがたいところです。
猫ちゃんが箱や袋に入ってしまう理由、大きく分けて3つの説があります。
1、ストレス回避説(防衛本能)
猫は犬と違ってあまり集団行動をしない動物です。
そのため、集団で身の危険を守る犬と違い、猫は「安全地帯」で身を隠すことが本能なのかもしれません。
この猫の習性を確認するために実施した研究があります。
ある猫の保護施設で行った研究では、新しく施設に保護された猫のケージに隠れることのできる箱を入れると、箱を入れなかった猫よりもストレスを示唆する行動が大きく減少し、より短い期間で新しい環境に慣れることができたという結果が報告されています。
猫は新しい環境に入るとまず安全な場所を確保し、徐々にナワバリを広げていきます。
拠点となる箱があるとより早く精神的に落ち着くのでしょう。
また猫が沢山いる環境で箱は防音にもなりますし、他の猫に匂いが入ってこないのでストレスを減らすことができるのではないかと考えられます。
私たちも電車の席は端から埋まっていきますよね。
周囲に知らない人(猫)がいるとなんとも落ち着けないものです。
猫は人よりも臆病で敏感なため、箱に入って落ち着きたいのでしょう。
猫ちゃんにとって、箱の中というのは、敵に教われる心配をせずに、辺りを観察し、狩りに備えることのできる、守られた場所だと感じられる場所なのです。
2、野性時代の名残説(攻撃本能・好奇心)
猫は狭くて暗い空間を好みます。
猫はもともと狭い穴を出入りするネズミを捕まえるのが得意な動物です。
小さな箱はネズミの隠れ家を思い起こすのかもしれません。
また猫のハンティングは待ち伏せ型です。
箱の中に入って姿を隠して、そこから獲物が出てくるのを待っているのでしょう。
見た目は可愛いですが、猫はまだまだ野生の感覚を忘れていません。
これは猫が野生動物だったころ、獲物や外敵から身を隠すために、木の洞や岩穴など自分の体がすっぽり入るくらいのスペースを寝床にしていた名残によるものです。
また私たちすると窮屈そうなサイズでも猫にとってはジャストなのです。
むしろ、自分の体より大きな空間は、敵が入ってくる可能性もあるので安心できません。
箱は猫が好む条件が揃った、文句なしのパーソナルスペースだったのですね。
猫は被毛を除くと細身であり、関節が柔らかいので自分より小さい箱に入ることができます。
ギリギリ入れるぐらいの方が猫からすると嬉しいみたいですね。
3、高い室温を好む説
猫ちゃんは暖かい場所を好む習性があります。
猫ちゃんを飼ったことがある人はご存じかもしれませんが、猫ちゃんの大好きな場所は「暖かい場所」です。
こたつの中やストーブの前、そしてテレビの上やパソコンなどの熱で寝てしまうネコちゃんも多くいます。
国家研究会議の調査によると、人間は気温が24度だと快適に感じるそうですが、猫はさらに暖かい温度、30度から36度ぐらいを好むということがわかっています。
ダンボールの箱の中で丸まっているのは、体温を少しでも上げるためという説もあるのです。
太陽の下で日向ぼっこをしたり、ヒーターの通気孔の上で丸まるのが好きなのも、そういうわけなのです。
動物が無理をして温度調整する必要がない温度の範囲を「熱的中性域」と言います。
これよりも温度が高いと人では汗をかいて体を冷やしたり、逆に温度が低いと体を震わせて熱を産生したりして、体温を調整します。
猫で熱的中性域が30〜38度と言われていて、これは平均的な家庭の室温よりもずっと高いですよね。
ちなみに人の熱的中性域は裸で27〜32度ですので、着衣ではもう少し低くなり、24度前後に室温が設定されていることが多いです。
そのため、猫は日頃から少し肌寒く感じている可能性があります。
そう考えると保温性の高いダンボールや袋の中に入ってしまうという理由の一つなのかもしれません。
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