世界最小といわれる小さな体にウルウルとした愛らしい瞳、アップルヘッドといわれるリンゴ形の頭が魅力のチワワ。
数ある小型犬種のなかでも「超」小型といえるほどの小さな体で愛くるしい大きな瞳を持つ犬種です。
日本では2000年代前半にテレビCMをきっかけとして爆発的に人気となった犬種でもあるチワワですが、現在も安定した根強い人気を誇ります。
JKC(ジャパンケネルクラブ:純粋犬種の犬籍登録や血統書の発行などを行う団体)が毎年発表している日本国内での犬種別の登録頭数で見ても2位となっており、チワワの人気の高さがうかがえます。
世界一小さな犬種と知られるチワワは、古代メキシコに存在したとされる「テチチ」という小さな犬が祖先と考えられています。
テチチについての記録は9世紀以降に出現しているとされていますが、テチチに近いものは紀元前15世紀頃、マヤ文明で栄えたユカタン半島のチチェンイツァ遺跡でも見つかっているとされています。
5世紀のマヤ文明の遺跡などからもチワワを思わせる小型の犬をかたどった遺跡が発掘されていて、古い歴史を持っている事実はうかがい知れます。
チワワの原産国はメキシコだとされていますが、中国地方やヨーロッパに起源を持っているとする説もあり、そのルーツについては謎が多い犬種。
一般的にはチワワの祖先は、古来はメキシコの村で番犬としての仕事を担っていたとも考えられています。
村人以外の来訪者があったり害獣が村に近づくと、吠えて村人に異変を知らせていたとか。
また、日中と夜間の寒暖差の激しいメキシコの山間部において、寒いときに人々の懐を簡単に温める湯たんぽのような役割を果たせるよう、抱っこしやすいサイズに改良されたとも言われています。
紀元15世紀ころ、コロンブスによるアメリカ大陸発見の際に、コロンブスからスペイン国王に宛てた手紙の中で、南米で発見した小さな犬の存在に触れられています。
16世紀に入り、スペイン軍が南米を侵略すると、テチチたちは滅亡の危機にさらされていたと推測されています。
その後、1850年になって、メキシコのチワワという町で、3頭の小さな犬たちが発見されました。
発見地にちなんでチワワと名付けられた彼らは、現在に続くチワワの基礎犬となりました。
チワワたちは、発見者によってアメリカに持ち帰られて、犬種の固定化が図られることになりました。
50年にわたる繁殖と犬種の固定化の試みの中で、ベーリング海峡からアラスカを経由してアメリカに入ったチャイニーズクレステッドドッグなどが交配に使われ、現在のチワワに近い形となったとされています。
南米メキシコを原産とし、アメリカで育種されたチワワは、1904年にアメリカンケネルクラブに登録されることになりました。
アメリカでは現在も人気犬種の上位に大型犬が何頭もいるほど住宅事情にゆとりがあり、チワワのようにあまりにも小さな犬は使役犬として働くこともできないため、あまり需要がありませんでした。
そのため、1950年代までは登録頭数も増えないままでしたが、1960年代以降、近代工業が発達して都市化が進むと、家庭で飼いやすい大きさのペットとして注目されるようになり、近年では登録頭数上位20頭の常連になっています。
日本に本格的に輸入されるようになったのは1970年頃のことでしたが、日本では高度成長期を経てバブル景気を迎え、大型犬が流行していました。
やがて景気が落ち着く中、日本の都市でもペット可マンションなどが増えていくことになりました。
犬の大きさの制限により、小型犬や超小型犬に人気が集まるようになりました。
21世紀の現在、チワワはダックスフンドやプードルと並んで、都市生活の市民のあいだで愛好される犬種となり、ジャパンケネルクラブ(JKC)の登録頭数でも毎年上位にランクインしています。
チワワの体の特徴としては、まずは華奢で小さな体型と、大きな瞳が上げられるでしょう。
チワワは手足は細いものの胴体と頭蓋骨はがっちりとしています。
体高より体長がわずかに長い、立ち耳の超小型犬です。
両手にすっぽりとおさまるサイズ感と愛らしい表情から、思わず守ってあげたくなる魅力を持った犬種です。
JKC(ジャパンケネルクラブ)の犬種標準(スタンダード)では、理想体重は1.5kg〜3kg(500 g~1.5 kgは許容)とされていて、体高は既定されていません。
チワワはその毛質により大きく2種類に分けられます。
柔らかく長い毛を持つロングコートチワワ(ロングヘアードチワワ)と、なめらかで短い毛を持つスムースチワワ(スムースコートチワワ、スムースヘアードチワワ)の2つの種類のチワワがいて、それぞれに人気が高い犬種です。
チワワの体毛には様々なカラーのバリエーションがあります。
犬種クラブにおいても、猟犬などの職業犬と違い、愛玩犬であるチワワは毛色を限定されることもありませんでした。
単色だけでも、一般的なブラックやレッド、チョコやフォーン、ホワイトやクリームといった薄めの色、ブルーなどのレアカラーと呼ばれるチワワまで、毛色のバリエーションはとても豊富です。
また、2色の組み合わせのトイカラー、3色以上のパーティカラーを持つチワワ、全身にまだらの差し色が入ったブリンドルのチワワもいて、そのような個性的なチワワも高い人気となっています。
また、両目の上にタンマーキングという眉のようなマークが入ったチワワ、特にチョコタンやブラックタンのチワワも人気です。
チワワの性格は千差万別で個性豊かと言われていますが、総じて非常に愛情深く、飼い主に対してはよくなつきます。
甘え上手な一面もあり、チワワを飼った人にしかわからないチワワの魅力だという飼い主の方も多いようです。
また、好奇心も旺盛なので、見た目によらないアグレッシブさもチワワの魅力の一つです。
動きが機敏で、とても活発です。
また、愛らしい見た目とはうらはらに、勇敢で負けん気の強い面があります。
飼い主さん家族には甘えん坊ですが、自己主張が強いので、甘やかしているとわがままになりがち。
子犬の頃から、しっかりしつけることが大切です。
一方で、見た目からも想像出来る通り、神経質で臆病な性格であることが多いのもチワワの性格の特徴です。
気弱にブルブルと震えているチワワだけではなく、大型犬に対して臆することなく向かって行くような大胆なチワワも、実は臆病な面の表れということもあります。
そのため、侵入者に対しては非常に敏感に反応し、番犬として優秀ではありますが、怖がりゆえの吠え癖もあります。
吠えることで自分を大きく見せようとしているのかもしれません。
苦手なものが多くならないよう、ほめながらいろいろなことに慣れさせましょう。
家族一人だけになつこうとする傾向があるため、しつけは家族全員で行うことが肝心です。
また、小さいうちにしっかりしつけないと、社会的な適応力が身につけられず、うなったり牙を向いたりするようになります。
体が小さいからといって過保護にしすぎないことが大切です。
もともとチワワは頭がいいので、適切にしつければきちんと覚えてくれます。
チワワ自身、自分の体が小さいことから、他の大きな犬たちから見下ろされて威圧感を感じたりして、臆病になることもあります。
体が小さいことで体力に限界はあるものの、本来は活発で明るく好奇心が強い性格です。
素質として社会性が強くないため、防衛意識が強くなりすぎると無駄吠えが多くなる傾向があります。
子犬の頃からほかの犬と触れ合わせるなど、積極的に外に連れ出すようにしましょう。
勇敢過ぎることがあり、大きな犬に挑むことがしばしばありますので、ドッグランなどでは決して目を離してはいけません。
体が小さいからといって、甘やかしてしまい飼い主さんや社会に迷惑となる行動を見過ごしてしまうのは禁物です。
甘やかしていると犬がわがままになり、うなる・噛むなどの問題行動を起こすようになることも。
厳しく接する必要はありませんが、ほめるしつけを取り入れ、要求には毅然とした態度でダメと伝え、嫌がるお世話はおやつなどを与えてほめながら少しずつ慣れさせましょう。
チワワは寒さに弱い犬種でもあるので、冬場の寒さ対策には工夫が必要です。
チワワは寒がりなので、寒い季節には洋服を着せてあげるなどの工夫をしてあげてください。
また、夏の暑さにも強くないので、しっかりと室温管理を行ってください。
そして、頭部の衝撃には特に弱いという特徴があるので、不注意で事故をおこす事がないよう、日頃から注意をしてあげることも大切です。
チワワの毛は短いスムースであれば、ラバーブラシをかけ、その後にタオルでふいてあげること、長いロングコートであれば、できるだけこまめにブラッシングとコーミングをしてあげて被毛が絡まったりしないように心がけてあげましょう。
秋冬2回の換毛期には、1日2回ほどブラッシングして毛をすいてあげましょう。
特にロングコートチワワの場合、残った抜け毛が皮膚トラブルや毛玉の原因になりやすくなります。
また、普段から2週間に1度くらいを目安にシャンプーをしてあげて、1カ月に1度くらいを目安に定期的にプロのトリマーに見てもらうことをおすすめします。
皮膚の異常などを早期に発見できるということにもつながるからです。
チワワのような超小型犬種には室内の運動で十分という声もありますが、お散歩に出かけることで、犬好きの人に声をかけられたり他の犬と接することを通じて社会性を身につけたり、お散歩によって気分転換をし、ストレスを発散することができます。
出来れば毎日朝夕のお散歩に出かけてあげることが理想ですが、都合によって難しいときには、週末に時間を作って公園などに連れて行き、思いっきり遊んであげるなどの工夫をしてあげましょう。
チワワとお散歩をしていると、愛犬のかわいい容姿を見た小さな子どもが愛犬に近づいてくることも多いでしょう。
犬との接し方を知らない子どもが突然頭を撫でようとしてきたとしたら、それは愛犬にとっては驚異に映ってしまいます。
人に噛み付いたり吠えたりしないようにしつけができていれば問題ないかもしれませんが、必ず愛犬を座らせてリードを短めに持ち、愛犬が子どもに飛びかかったりしないように気を付けましょう。
もしまだしつけに自信がなければ「怖がりだから触らないでね」と優しく断ってあげましょう。
チワワのような小型犬に多く見られるのが、ひざの骨が外れてしまう膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)です。
この病気は、膝のおさらが、ずれたり外れてしまう病気です。
先天的に形成異常がある場合と、打撲や落下などをきっかけに骨が変形する後天性に分けられます。
もしスキップのような歩き方をしている、足をかばうように歩いている、など、いつもと違う歩き方やしぐさを見せた場合は、念のため早めに獣医師にみてもらうことが良いでしょう。
また、日頃からあまり膝に負担をかけないようにフローリングにカーペットをしいたりするなど工夫することも大切です。
チワワの水頭症は、先天的に脳内が奇形でうまれてくることによる発症が多い病気です。
水頭症は、脳脊髄液が増えて脳が圧迫され、様々な神経症状が出る病気。
犬全体で見た水頭症の発症確率が1.9%なのに対し、チワワが水頭症を発症する確率は3.3%。
つまり約1.7倍の確率で発症するということがわかっています。
水頭症の症状としては、主に活動低下、行動異常、不全麻痺、斜視などが見られます。
仮に先天性水頭症の場合、チワワの頭のてっぺんにくぼみのようなものができており、その部分を触ると穴が開いているように感じるといわれています。
これは泉門という名前で、頭蓋骨の接合部ですが、この接合が不完全な状態で生まれてくることで起こります。
成長に従って頭蓋骨同士が接合することもありますが、うまくふさがらなかったときは、皮下のすぐ下に脳膜が来ることになり、その部分の神経を刺激することで、全身の症状につながることがあります。
また、水頭症になった場合、一日中ぼーっとしていることが多くなった、歩き方がおかしくなった、などの症状がでてくるので、もしそのような場合には早めに獣医師に相談しましょう。
膀胱や尿道、腎臓など、いわゆる尿路に結石ができる病気です。
体の中の老廃物は腎臓でろ過され、尿管を通って膀胱へ運ばれ、尿道を通っておしっことして排泄されますが、尿路結石症になると、腎臓や尿管、膀胱といった部位に結石ができ、痛みを感じたり、尿が出づらくなってしまいます。
排尿時に痛がったり、尿が出にくくなったり、逆に頻尿になることもあります。
チワワでは、腎臓の尿細管という器官の異常(遺伝的)の結果生じる、シスチン尿石症というものが起こりやすいことが知られています。
十分な水分補給が予防策としては適切なので、日頃から意識して水分補給を心がけましょう。
チワワは気管が狭いという身体的な特徴を備えているため、気管虚脱になりやすい傾向にもあります。
気管虚脱は、気管がつぶれて呼吸しにくくなる病気。
気管が押しつぶされたように変形し、空気の通り道がなくなるため、呼吸困難や体温調整が困難になる病気です。
初期は軽い咳からはじまり、ガァーガァーとガチョウが鳴くような音を出すこともあります。
つぶれ方がひどければ、十分な量の空気が通れず呼吸困難を起こしてしまいます。
特に、トイ種(トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、チワワ、マルチーズなど)に多く発生するといわれています。
散歩時は首輪ではなくハーネスを使用したほうがベター。
また、肥満によって気管がさらに狭くなってしまうため、日頃の食生活に気を配ってあげることが大切です。