猫が、まるで顔を洗うように手で顔をこする仕草。
とっても可愛らしいですよね。
もちろん人間のように水で洗うわけではなく、自分の前足を舐めてその前足で丁寧に顔をこするしぐさ、何をしているのでしょうか。
猫が体を舐めたり擦ったりするのには、猫それぞれの理由があります。
猫が「顔を洗う」などのグルーミングを行う理由はさまざまですが、代表的なものは以下の5つです。
猫はとてもきれい好きな生き物です。体に汚れがついてしまったら、自分で舐めたりこすったりして汚れを落としています。
野生では、ニオイを発していると敵から見つかりやすくなったり、狩りがしづらくなったりします。食事の後に特に口の周りをこすっているのは、食べ物のニオイを消すための本能的な行動です。
猫は足の裏以外からは汗をかきません。暑いときは自分で体を舐めて、唾液の水分が蒸発するときの“気化熱”で体温を下げようとします。
反対に寒いときは、体をこすることで被毛の間に空気の層ができ、保温効果を高めています。
体を舐めたりこすったりすることで、血流が促進され、全身の血行が良くなります。
また唾液には感染症予防の効果もありますので、全身に唾液を塗って病気から自分の体を守っています。
ノミやダニがついた場合は、自分で舐めて取り除くこともあります。
例えば棚から落ちてしまったり、他の猫とケンカをしたり、飼い主に怒られたりなど、猫がストレスを感じたときに、それを紛らわすためにグルーミングを行い、気持ちを落ち着かせます。
これを動物行動学的には「転位行動」と呼びます。
日本には猫にまつわる有名な言い伝えがあります。
「猫が顔を洗うと雨が降る」という言葉を聞いたことはありませんか?
猫の仕草とお天気の関係は古くから言い伝えられてきたようで、明治43年に出版された猫研究書である『猫』(石田孫太郎)の中では、「猫顔を拭ふてその手耳を越せば降雨」「猫顔を拭ふてその手耳を越さねば晴天」などが紹介されています。
また『日本俗信辞典』の中では「猫の洗面と晴雨」として「猫の手水は雨(筑前地方)」「猫が背中から頭を撫で下ろせば長雨(沖縄・竹富島)」「猫が口元だけ洗うときは雨(岐阜)」など、これら以外にも数々の俗信が紹介されています。
では、猫が顔を洗うと雨が降る確率はどのくらいなのでしょうか?
「ほぼ90%の確率で当たる」という説もあるようですが、残念ながら正確な統計はなく、はっきり言って科学的な根拠がないのが事実です。
実際、グルーミングは猫にとって気持ちを落ち着かせるためのもの、という説が有力です。
ネコの顔には、全部で50本~60本のヒゲがあるそうです。
口元以外にも、まぶたの上や頬、アゴなどから生えているそうです。
ヒゲの色は白、茶色、根元だけ黒…といったように様々で、いずれも半年ほどの周期で、自然に抜けて生え変わります。
ネコのヒゲは、ネコが生活して行く上で欠かすことができない大切なものです。ネコのヒゲにはたくさんの神経が集中していて、微妙な振動でも敏感に感じ取ることができます。
ネコが暗い場所でも物にぶつからずに歩くことができるのは、ヒゲで空気の流れや音の振動を感知しているからだそうです。
さらにネコは、ヒゲで幅を確認しています。
例えば狭い場所を通るとき、ヒゲを広げて顔を入れて、ヒゲが当たらないかを確認します。そしてヒゲが当たらなかったら体も通れる! と判断しています。
但し、これは“標準の体型のネコ”の場合で、“太めなネコ”の場合、頭は入ってもお腹が通り抜けられないこともあるそうです。
ネコのヒゲはとても敏感なので、風や湿度の変化を素早く感じ取ることができます。
猫は湿気を敏感に感じ取ることができる動物だと言われています。
湿度が高くなると、湿気によってヒゲに張りがなくなったり、ヒゲや被毛が湿ってムズムズし、顔を洗うという行動をします。
雨が降る前は湿気が多くなりますが、そうした湿気や天気が変わることへの不安を取り除くために、ネコは顔を洗うと言われています。
ヒゲは猫にとって様々なことを感じ取るレーダーのようなもの。
低気圧が近づくと空気中の湿気が多くなり、ヒゲの表面に水分が付着して重たくなり、ヒゲの“ハリ”が失われます。
湿度によってその感覚が鈍ってしまうのを防ぐために、猫は念入りに顔を洗うようです
雨が降る前であっても湿度は高くなっていますから、その湿気を嫌がって顔を念入りに洗う行動が「猫が顔を洗うと雨が降る」と言われるようになった理由のひとつだと考えられます。
また、個体差はありますが、湿度が高い日や低気圧が近づいているとき、猫は耳の後ろまで何度も何度も前足でこすりながら顔を洗って気分を整えようとします。
「猫が耳の後ろまで顔を洗う」と、雨が降り(間もなくかその日のうちに)、「猫が耳の前で顔を洗う」と、曇りでも雨が降らないとも言われています。
不思議ですね。
東京都世田谷区にある「豪徳寺」の伝説の招き猫から、「猫が顔を洗えば雨が降る」という話がきているともいわれています。
招き猫の話は、檀家も少なく貧しい豪徳寺の和尚が、可愛がっている猫に「お前が檀家をみつけてきてくれないか」といつも言っていると、ある日、「いまこの寺の前を通ったら、猫がしきりに手招きをするので訪ねてきた。
しばらく休ませよ」と言って立派な武士が寺にきたところ激しい夕立となったそうです。
和尚が穏やかに説法をしたところ「猫に招かれ、夕立ちをしのぎ、ありがたい説法が聴けたのも仏縁」と武士は喜び、以後この寺は井伊家の菩提所として栄えたので、猫のおかげだからと、和尚は猫が死んだあと墓を建て大事に供養したと言われています。
「豪徳寺」は招き猫で有名なお寺ですよね。
猫が顔を洗っているしぐさが「おいでおいで」と手招きしているように思えたのかもしれませんね。
雨が来るサインは、猫ちゃんが感じ取っていたのでしょう。
やっぱり、ネコちゃんって、素晴らしいですね!