みなさんは秋田犬にどのような印象を持っていますか?
『忠犬ハチ公』として古くから知られていましたが、いまや秋田犬は、世界中からの注目を集めていますね。
秋田犬はその名の通り秋田県原産の日本犬です。
素朴な顔立ちともふもふの姿がなんともかわいらしいですね。
可愛らしい外見とは対照的に狩猟犬としての性質も持っています。
今回は秋田犬についてご紹介します。
秋田犬は足が長く腰高でがっしりとした体格、短毛の大型犬です。
まれに「むく毛」と呼ばれる長毛タイプの個体が生まれることがありますが、スタンダードとしては認められていません。
ストップがあり、マズルは中くらいの長さで、先がとがっていてはいけません。
鼻は黒に限りますが、白犬は肉色でも許されるとされています。
耳は三角形の厚い立ち耳とされています。
ジャパンケネルクラブの標準では、オスの体高は67cm、メスは61cmとされています。
地元秋田では「あきたいぬ」と呼ぶことが多く、全国的には「あきたけん」呼びが定着しています。
天然記念物に認定された大型の日本犬です。
人間と一緒に狩りをする犬を総称して『マタギ犬』と呼びますが、秋田県では古来よりこのマタギ犬を重宝していました。
秋田犬の祖先となった犬は、この地方に存在した猟師の犬・マタギ犬と考えられています。
秋田のマタギ犬を特に『秋田マタギ犬』といい、秋田犬の祖先となっているのはこの品種です。
江戸時代、秋田県大館地域の領主佐竹氏により始められた闘犬は、主にマタギ犬を選択交配していました。
明治に入るとより強く大きくなるように、土佐犬やジャーマンシェパード、グレートデンなどとも交配が進められました。
しかし、20世紀初頭の1916年になると、闘犬は日本でも禁止されました。
闘犬の禁止により秋田犬の存続を危ぶんだ愛好家や研究者などによって、新しい秋田犬の標準が探られ、1919年に発令された天然記念物保存法の指定動物となるべく、改良と作出が始まりました。
ついに1931年には天然記念物秋田犬として登録されることになりました。
やがて始まった戦争が、犬種の保存と改良に暗い影を落とします。
「忠犬ハチ公」が話題になったのは1934年頃のことですが、渋谷駅前の銅像は金属供出のため、わずか数年後に一時、取り壊されることになりました。
また、第二次世界大戦が終わるまで、毛皮で防寒衣料を作るため、軍用犬であったジャーマンシェパード以外の犬は軍へ供出することになりました。
秋田犬も例外ではなく、苦肉の策としてジャーマンシェパードを交配し、時には犬を疎開させるなど、保存のための必死の努力がひそかに行われ続けていました。
終戦後に残っていた純粋な秋田犬は20頭にも満たず、この犬たちを基礎に、21世紀の現代につながる秋田犬の作出が改めて行われることになったのです。
戦争が終わり、日本に入ってきた占領軍や海外との人的交流により、秋田犬は海外へも持ち出されることになりました。
この頃の秋田犬には、ジャーマンシェパードとの混血も多くおり、このタイプの秋田犬がアメリカに持ち出されて人気を博して、のちの「アメリカン・アキタ」の基礎犬となりました。
アメリカン・アキタは秋田犬と異なる発展を遂げ、現在は日本を始め世界でも別の犬種として登録されています。
秋田犬と柴犬は遺伝子的には古代犬種の系統であり、同じルーツを持つとされています。
しかし時代が経つにつれてその系統が分岐し、新種改良も相まって別種とされるようになりました。
現在の秋田犬と柴犬は何と言っても大きさが違います。
秋田犬は大型犬に、柴犬は基本的には小型犬に属します。
柴犬の体重はオスとメスで異なりますが、平均8kg~10.5kgとされています。
先に記した秋田犬の体重と比べると、大きさが一目瞭然です。
秋田犬の初海外はアメリカで、ある偉人の飼い犬として贈られたことがきっかけなのですが、その偉人とは誰だか分かりますか?
正解は、なんとヘレン・ケラーです。
1937年(昭和12年)、来日していたヘレン・ケラーが秋田犬を所望し「神風号」が贈られました。
体が大きく愛らしい顔つきの秋田犬はアメリカでもウケ、ちょっとしたブームが起きました。
そして2010年代。
母親と「オリンピックでうまく滑れられたら秋田犬を飼ってもいい」という約束をしていた女子フィギュアスケート・ロシア代表のアリーナ・ザギトワが平昌オリンピックで金メダルを獲得したことにより、2018年(平成30年)5月、秋田犬保存会からメスの子犬「マサル」が贈られました。
ザギトワがマサルとの休日をインスタにアップしたことにより、秋田犬の愛らしさに世界中が釘付け。
現在に続くまでの「Akita Inu」ブームが起こっているのです。
ちなみにロシアへは東日本大震災の支援の返礼として、2012年(平成24年)にウラジーミル・プーチン大統領に秋田犬「ゆめ」が贈られています。
特にロシアでは秋田犬は馴染み深い犬になってきたのかもしれません。
秋田犬は、忠誠心が厚く従順で命令に素直に従い、飼い主さんに寄り添う性格であると言われています。
しっかりとしつけられていないと、神経質な性格が出ることもあり噛みつく・暴れるなど周囲の人たちに怪我を負わせることがあります。
家族であっても飼い主さんと認めなければ攻撃的になることがあるため、小さい子供がいる家庭ではしつけに関して特に注意が必要です。
非常に知性に優れ頭が良く、警戒心も高いので、番犬としても活躍してくれます。
大型で攻撃的な一面を持っている秋田犬を飼うことは簡単ではありませんが、きちんとしつけをすれば、優しくしっかり者で『忠犬ハチ公』のような最高のパートナーとなってくれることでしょう。
秋田犬は有り余る体力を持てあまさないだけの十分な運動が必要な犬種です。
飼い主との信頼関係を作るためにも、運動欲求を満たしてやる必要があります。
1日に1時間以上は散歩に連れて行きましょう。
見知らぬ人への警戒心があるため、散歩中は知らない人が触ろうとして安易に手を出さないように、気を付けてあげてください。
猟犬の本能や闘犬の気質を前面に出さないためには、飼い主との十分な信頼関係と訓練が必要です。
力で抑え込もうとして犬に負けた時は、手の付けられないことになりかねません。
子犬の頃からしっかりと、しつけを行いコミュニケーションをとりましょう。
なお、秋田犬は都道府県条例で特定犬種として届け出や飼育管理方法に既定のある地域が多くあります。
飼い始める時に、お住まいの保健所や愛護センターを確認しましょう。
日本犬は意外と抜け毛が多いです。
できれば毎日、少なくとも週に2回くらいはブラッシングを行いましょう。
しつけは生後2~3ヵ月頃から始めると良いでしょう。秋田犬のしつけで一番大切なことは、誰がリーダーなのかをはっきりとさせることです。
例えば、食事の時に指示があるまで食べてはいけない、散歩の時にリードを引っ張る、など主従関係をはっきりとさせることが重要となります。
これができないと秋田犬は言うことを聞かなくなってしまいます。
また甘噛みも注意が必要です。
力の弱い犬であれば問題ないのですが、秋田犬や力の強い犬は、大人になるにつれ怪我をさせるほどの力になるからです。
秋田犬に特に起こりやすい疾患として、犬のブドウ膜皮膚症候群があります。
この病気は、まず最初は、突然涙があふれ出して止まらなくなります。
続いて白目の部分が充血し、目の表面のブドウ膜が白獨して、眼球が肥大します。
原因は、自分の体のメラニン色素を自分の免疫が攻撃するという事態により引き起こされ、目以外の部分の皮膚でも色素が抜けて薄くなってきます。
他犬種でも起こりますが、秋田犬が圧倒的に多いようで、遺伝的な素因があると推察されています。
早期にステロイドによる治療と目薬や免疫抑制剤等により、進行を抑えることができるようですが、放置すると失明に至ります。
おかしいなと思ったら、早めに動物病院で診断を受けましょう。