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【本日のニュース・記事】
■日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?
ヤフーニュース(2018/12/24)遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20181224-00108787/
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・日本の半導体産業を徹底して潰したアメリカ:常に「ナンバー1」を求めて
1980年代半ば、日本の半導体は世界を席巻し全盛期にあった。
技術力だけでなく、売上高においてもアメリカを抜いてトップに躍り出、世界シェアの50%を超えたこともある。
特にDRAM(Dynamic Random Access Memory)(ディーラム)は日本の得意分野で、廉価でもあった。
それに対してアメリカは通商法301条に基づく提訴や反ダンピング訴訟などを起こして、70年代末から日本の半導体産業政策を批判し続けてきた。
「日本半導体のアメリカ進出は、アメリカのハイテク産業あるいは防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題がある」というのが、アメリカの対日批判の論拠の一つであった。
日米安保条約で結ばれた「同盟国」であるはずの日本に対してさえ、「アメリカにとっての防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題がある」として、激しい批判を繰り広げたのである。
こうして1986年7月に結ばれたのが「日米半導体協定」(第一次協定)だ。
「日本政府は日本国内のユーザーに対して外国製(実際上は米国製)半導体の活用を奨励すること」など、アメリカに有利になる内容が盛り込まれ、日本を徹底して監視した。
1987年4月になると、当時のレーガン大統領は「日本の第三国向け輸出のダンピング」および「日本市場でのアメリカ製半導体のシェアが拡大していない」ことを理由として、日本のパソコンやカラーテレビなどのハイテク製品に高関税(100%)をかけて圧力を強めた。
1991年7月に第一次協定が満期になると、アメリカは同年8月に第二次「日米半導体協定」を強要して、日本国内で生産する半導体規格をアメリカの規格に合わせることや日本市場でのアメリカ半導体のシェアを20%まで引き上げることを要求した。
1997年7月に第二次協定が満期になる頃には、日本の半導体の勢いが完全に失われたのを確認すると、ようやく日米半導体協定の失効を認めたのである。
(中略)
・見るも無残な日本半導体の現状
アメリカの半導体市場調査会社IC Insightsの統計によれば、2017年の世界半導体メーカー売上高トップ10の第一位を飾っているのはサムスン電子で、あのインテルを追い抜いている。
2018年ではサムスン電子の前年比成長率は26%であるのに対し、インテルは14%と、インテルとの差を広げている。
日本は1社(東芝)が辛うじて滑り込んでいるありさまだ。
ファブレス半導体メーカーに至っては、日本勢は1社もトップ10に入っていない。
同じくIC Insightsが2018年初頭に発表した統計によると、2017年のファブレス半導体メーカー世界トップ10は、アメリカ6社、中国2社、シンガポールと台湾各1社となっており、日本の半導体メーカーの姿はないのである。
消えてしまった。
ファブレス半導体トップ10の第7位はHuaweiのハイシリコン社だが、Huaweiでさえ、ハイテク製品企業の研究開発部門を本社から切り離し、半導体の研究開発だけに特化できる会社としてハイシリコン社を立ち上げている。
日本は、これができなかった。
総合電機が半導体事業を抱え込んだまま沈んでいき、分社化する決断と経営の臨機応変さが欠けていた。
そして韓国が虎視眈々と東芝を狙っていた、あの「狡猾さ」というか「窃盗まがいの逞しさ」に気づかず、日本の当時の通産省が主導した半導体先端テクノロジーズ(Selete、セリート)に日本国内の10社以外に、なんとサムスン電子だけを加盟させて11社にし、サムスンの独走を許してしまったのである。
中国の半導体の動向に関しては新刊『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』で詳述したが、アメリカは同盟国である日本に対してさえ、アメリカを追い抜くようなことを絶対に許さず、「アメリカにとっての防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題がある」として日本半導体を潰してしまった。ましてや最大のライバル国(敵国?)である中国に対してなど、どんな手段でも取り、いかなる容赦もしないだろう。
言論弾圧をする一党支配体制の国を潰すのは歓迎する。
ただ、日本はアメリカの同盟国だったからこそ、抵抗できずに潰されてしまったが、中国の場合はそうはいかない。
致命傷でも負わない限り、徹底して抵抗し続け、逆に強大化していく可能性(危険性?)を大いに孕んでいる。
それは「中国製造2025」を完遂させるための中国の執念や人材の集め方などをご覧いただければ、ご理解頂けるものと信じる。
今やっかいなのは、日本が、中国のハイテク製品メーカーに日本半導体を使ってもらおうと、政府丸抱えで必死だということだ。
特に半導体製造装置に関しては日本はまだ優位に立っており、中国の日本への視線は熱い。
・さて、いま日本はいかなる立ち位置で、どこにいるのか――。
東芝の経営体制や韓国側のモラルが問題なのか、日本全体の産業政策が間違っていたのか。
あるいはアメリカには何を言われようとも、何をされようとも、日本は文句が言えない立場にあるのか?
東芝の元半導体技術者のモラルも問われないわけにはいかないだろうが、少なくとも東芝と当時の通産省(のちの経産省)などの脇が甘かったことだけは確かだ。
サムスンとの経緯を踏まえながら、ともかく日本の国益をこれ以上は損なわないよう、日本国民は強い自覚を持たなければならないし、日本政府には熟考をお願いしたいと思う。
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■日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?
ヤフーニュース(2018/12/24)遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20181224-00108787/
本日は3つの記事をご紹介いたします。
2つ目の記事はこちらです。
■政府の農協改革、裏に米国の強力な圧力が発覚
Business Journal(2015.09.01)
https://biz-journal.jp/2015/09/post_11338.html
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JAバンクは、農協と信用農協、農林中央金庫で構成され、預金残高は90兆円を超え、みずほ銀行を超え国内2位である。
また、農協共済は資産52兆円、保有契約高289兆円で国内3位となっている。
これだけの規模でありながら組織形態は協同組合で、法人税も軽減税率が適用される。
また、株式会社でないため、株式保有による経営介入もできないし、買収もできない。
これに対して、民間企業との競争条件の同一性を要求しているのが、米国政府と米国金融、保険の多国籍企業である。
在日米国商工会議所は、米国政府の通商代表部(USTR)や米国商工会議所とも連携している、著名な米国多国籍企業で構成員される商工団体である。
意見書をまとめ、日本政府に対して絶えず圧力をかけている。
今回の農協改革にも、意見書で次のような見解を明らかにしている。
「J Aグループは、日本の農業を強化し、かつ日本の経済成長に資するかたちで組織改革を行うべき」
「JAグループの金融事業は、金融庁の規制を受けないことによって利益を得ている」
「JAグループの金融事業と、日本において事業を行っているほかの金融機関との間に規制面での平等な競争環境を確立し、JAグループの顧客が金融庁規制下にある会社の顧客と同じ水準の保護を受けるために、JAグループの金融事業を金融庁規制下にある金融機関と同等の規制下に置くよう要請する」
さらに、JA共済についても「日本政府は国際通商上の日本の責務に従い、共済を外資系保険会社と同等の規制下に置くべきである」との意見書を発表している。
この在日米商工会議所の意見書は、株式会社と同等の規制、すなわち農協の信用、共済事業を株式会社へ転換することを要求しているのであり、それにこたえようとしたのが、今回の農協法などの一部改正なのである。
・米韓FTAで韓国農協も株式会社化
農協の株式会社化は、すでに韓国で先行して実施されているが、それも米国政府の要求を受けてのものであった。
2007年6月に調印し、12年3月に発効した米韓FTA(自由貿易協定)で、米国政府は金融サービスにおいて金融機関の規制の同等性を要求し、韓国政府もそれを受け入れたのである。
これによって、農協の株式会社化への道筋ができたのである。
韓国政府は11年3月に新農協法を国会で成立させ、これにより韓国農協中央会の金融共済業務は分離され、持株会社の下で農協銀行、農協生命保険、農協損害保険にそれぞれ株式会社化されたのである。
さらに、経済部門も同様に株式会社化された。
この韓国農協の株式会社化は、日本の農協の株式会社化の先行事例になるのであろうが、日本の農協は、金融部門の預金量や共済の保有契約高も韓国農協をはるかに上回り、世界有数の規模を持っているだけに、その株式会社化の衝撃度は極めて大きい。
今、米国の穀物多国籍企業は、全農の株式会社化で全農の子会社である全農グレインを傘下に収めることを狙っているともいわれている。
全農グレインは、米国ルイジアナ州ニューオーリンズに世界最大の穀物船積み施設を保有しており、そこでは遺伝子組み換え(GM)作物を分別管理している。
GM小麦の導入を目指している米国にとって、GM作物を混入しないように管理している全農グレインは不愉快な存在でしかなく、全農をまずは株式会社化して、その後に全農グレインを買収するというシナリオは十分にあり得る。
いずれにせよ今後、農協、全農、経済連の株式会社化がどう進展するのか、注視していく必要がある。
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■政府の農協改革、裏に米国の強力な圧力が発覚
Business Journal(2015.09.01)
https://biz-journal.jp/2015/09/post_11338.html
最後、3つ目の記事はこちらです。
■コロナ危機が暴いた日本の没落<日本総合研究所会長・寺島実郎氏>
infoseekニュース 2021年7月3日 日刊SPA!
https://news.infoseek.co.jp/article/spa_20210703_01763990/
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・進行する「日本の埋没」
―― コロナ禍が始まってから1年半が経ちます。現在の状況をどう見ていますか。
寺島実郎氏(以下、寺島) 今年5月末で、日本国内で初めて感染者を確認した昨年1月から500日が経ちました。
私たちはここで「コロナ500日」を総括する必要があります。
重要なことは、問題はコロナそのものにあるのではなく、コロナがあぶり出した日本の構造的な課題だということです。
結論を先に言えば、今の日本には物事の本質や全体像を体系的・構造的に捉える「全体知」や課題解決のための「総合エンジニアリング力」が決定的に欠落している現実が暴かれたのです。
まず政府にはこの500日の政策を総括して国民に語る責任があります。
しかし、政府はそういう政策科学的な説明や総括を一切することなく、ただ緊急事態宣言の延長の可否を判断することだけが政策決定であるかのような錯覚に陥っている。
このような迷走そのものが、日本に大変な閉塞状況をもたらしているのです。
象徴的なのは、500日を経て、現段階で日本は国産ワクチンの開発ができていないという事実です。
関係者からは、これほど早くmRNAワクチンが登場するなどということは想定外だった、日本では過去にワクチンの副反応問題で厚労省と製薬会社の責任が厳しく追及された経緯から新規開発に及び腰だったというような理由が挙げられていますが、現実には海外からワクチンを購入することに腐心するしかない状況になっています。
・「やがて日本は間違う」ある臨床医の言葉
ここで思い出すのは、昨年お亡くなりになりましたが、ある臨床研究の最前線にいた医師が私によく話していたことです。
「やがてこの国は間違う。再生医療にだけ傾斜している。確かに基礎研究は重要だが、最も重要なのは生身の人間に向き合う臨床研究だ」と。
基礎研究の理論は臨床研究で人体にどう作用するかという検証を経て、初めて実用化されますが、基礎研究と臨床試験の間には「死の谷」(デスバレー)が横たわっていると言われます。
それほど基礎研究を臨床研究に応用するのは難しいということです。
日本の医療研究は基礎研究ではそれなりの成果をあげられていますが、デスバレーを超えて臨床研究で成果をあげる総合エンジニアリング力が欠けている、ということなのです。
その結果、ワクチンをどう入手するか、ワクチンの打ち手をどう確保するかという議論に埋没しているのが、現下の日本の状況なのです。
・ワクチン以外でも欧米に大きく劣後する日本
―― それ以外のコロナ対策も成功していません。
寺島 昨年5月から1年間でコロナ患者は5倍に増えた一方、コロナ病床は2倍にしか増えていません。
当初、日本は一人当たりの病床数が世界一と誇っていましたが、一般病床とコロナ病床は違います。
今年1月下旬の時点でコロナ病床は欧米の10分の1以下にとどまっていることが判明しました。
その結果、政府は昨年から現在に至るまで感染拡大・病床逼迫・緊急事態宣言というルーティーンに陥っています。
コロナ病床が不足するから緊急事態宣言を出すという説明は、「コロナのトンネル」に入った昨年時点なら通用したかもしれませんが、500日経った今では本来通用しません。
なぜこの間に、コロナに対応する病床を増やしたり、専門病院を作ることができなかったのか。
1年以上、何をしていたのかということです。
また、政府は昨年度に第1次補正から第3次補正まで、総額76・6兆円の補正予算を組み、「1人10万円」の特別定額給付金をはじめとする総額55・9兆円の経済対策を行いました。
それに対して、医療対策は9.2兆円であり、予算全体の1割程度にすぎません。
しかし、その経済対策が果たして効果的だったのか、これはしっかり検証しなくてはなりません。
たとえば、特別定額給付金の効果により、昨年の勤労者世帯のひと月当たりの可処分所得は47.7万円(2019年)から49.9万円に増加しました(ただし、給付金を除いて試算すると47.1万円となり、19年から0.6万円減少)。
それに対して、昨年の全世帯家計消費支出は29.3万円(2019年)から27.8万円に減少しています。
つまり、給付金によって使えるお金は増えたが、実際に使われたお金は減ったということです。
消費刺激という政策的な効果については、ほとんどなかったと言えます。
生活保障政策ならば、全国民に一律10万円を給付するより、年収二百万円以下の低所得者層に重点的に現金を給付した方が効果はあったでしょう。
その分浮いた予算を特効薬・ワクチン開発を中心とする医療対策に回していれば、現在の状況も変わっていたはずです。
政府がこうした政策科学を重視しないという事実の中に、日本の政治的貧困が滲み出ているように思えます。
・日本の産業を弱体化させたアベノミクス
―― 日本は先進国から転落したと言っても過言ではありません。
寺島 ここで指摘しておきたいのは、日本はこの10年の間にコロナ禍と東日本大震災という二つの災禍に見舞われたという視点です。
この二つの危機を冷静に総括する必要がある。
東日本大震災から10年が経ちますが、この間に政府は復興庁を創設し、2019年度までに37兆円の復興予算を投入しました。
その結果、被災地はどうなったか。
まず人口減です。
東北6県の人口減は震災前から進んでいましたが、震災がその流れを加速させ、2019年時点で、岩手、宮城、福島の被災3県では人口が32.9万人(6.1%)も減っています(2010年比)。
厚労省の予測によれば、2015年から2045年の30年で、東北6県の人口は30%以上減るとされています。
次に産業構造の歪みです。
被災3県の県内総生産について2017年度時点で、1次産業は33.9%減少した一方、2次産業は29%、3次産業は6.2%増加しています(2010年度比)。
原発事故の影響で1次産業が打ちのめされた一方、復興予算の投入によって2次産業の建設土木関連が急拡大を遂げ、その恩恵にあずかった3次産業も潤ったという構図です。
しかし、現実として復興予算が投下されなくなるにつれ、2次産業、3次産業もシュリンクし始めています。
つまり、37兆円の復興予算が土木建設業を中心に投入され、ハード優先の復興が進められた結果、被災地の産業構造が歪められ、人間の顔の見えない地域に変質したということです。
そのため、県別・市町村別の復旧復興計画はがれき処理、高台移転、防潮堤建設はそれぞれ何%進んだと、数字上は復旧復興が進んだことになっていますが、人口は減っている。
ハコモノだけは作ったが、人間の生活は戻ってきていないのです。
それは、被災3県を含む東北6県の全体を見渡した上で、この地域にどういう産業を興し、いかなる生活の基盤を築き上げるのかという総合的な構想、グランドデザインが描かれていないからです。
その結果、本当の意味での創造的復興は実現できていないというのが、東日本大震災から10年後の現実です。
―― 総合的構想力の欠如により、日本は二つの危機を克服できていない。
寺島 その間に、アベノミクスなるものがあったわけです。
私は以前から日本の危機的状況について警鐘を鳴らしてきたのですが、「株価が高いからいいではないか」という楽観視が先行して、危機感を共有する人は少なかった。
株高円安というアベノミクスの上辺だけの効果で、「日本もそこそこ上手くいっている」という幻想にまどろむ経済人が多かったのです。
しかし、すでにアベノミクスが公的資金、すなわち日銀マネーとGPIFの年金資金をダイレクトに株式市場に突っ込み、異次元の金融緩和を進めるだけの人為的な株高円安誘導政策にすぎなかったことは一目瞭然です。
その結果、我々は今まさにコロナ危機によって「経世済民」という意味での実体経済の虚弱化が顕在化し、それによって著しく弱体化した日本産業の凋落が白日の下に晒されるプロセスを目撃しているのです。
・日本の基幹産業はメルトダウンした
―― コロナ禍で日本唯一の優位性だった経済力も打撃をうけています。
寺島 いま国際社会の中では「日本の埋没」という認識がコンセンサスになりつつあります。
たとえば、世界全体のGDPに占める日本のGDPの割合はピーク時の17.9%(1994年)から既に6%(2020年)まで縮小しています。
わずか四半世紀のうちに世界経済における日本経済の存在感は3分の1に圧縮されてしまったのです。
私は様々な企業の経営者と議論してきていますが、コロナ危機を機に彼らが心の中に押しとどめていたトラウマがはっきりと浮かび上がってきたと感じます。
最大のトラウマは、MRJ(三菱リージョナルジェット、現MSJ)の挫折です。
これは三菱重工を中心とする中型ジェット旅客機の国産化計画であり、「自動車産業一本足打法」と言われる産業構造から脱却して新たな宇宙航空産業を切り開くという、日本産業界の希望とビジョンを託した一大プロジェクトだったのですが、巨額の開発費をかけた末に、昨年凍結に追い込まれました。
表向きはコロナ禍によって航空機需要が見込めなくなったと説明されていますが、現実には総合エンジニアリング力不足から頓挫したのが実態です。
これまで日本は部品や部材を開発製造する要素技術は世界一流、ボーイングのパーツの半分以上は日本が作っているなどと胸を張っていましたが、実際に自分たちでやってみたら、個々のパーツを作ることと完成体を作ることでは次元が違うという事実に直面したわけです。
自前でジェット機を完成させるには、個々の要素技術だけではなく、総合エンジニアリング力が必要だったのです。
その力が不足していたために、たとえば当初は最先端のパーツを投入することで燃料費を2割削減するという大きなビジョンを掲げて動き出したプロジェクトが、そのうちアメリカの型式認証をクリアするためにはボーイングで認証済の部材を使ったほうが速いという話となり、計画が徐々に矮小なものに収斂していったというのが実際のところなのです。
・アベノミクスという幻想に寄りかかり、衰退した日本の産業
―― 他の日本企業も惨憺たる状況です。
寺島 戦後日本は鉄鋼・エレクトロニクス・自動車を基幹産業とする工業生産力モデルの優等生として成功を収めてきたという自負心がありましたが、それらの基幹産業の実態は深刻です。
鉄鋼分野では、すでに日本製鉄が国内高炉4基の閉鎖に着手しています。
それにより、数年前まで1.1億トンを維持していた日本の粗鋼生産量は、今年中に8000万トンを割り込むことになります。
エレクトロニクス分野でも、東芝が原子力事業に躓いたことから「ファンド」と称するマネーゲーマーに振り回され、株主利益を最優先する超短期的経営を強いられた結果、医療機器から半導体まで有望な分野は次々と売却させられています。
「技術の東芝」は、まるで生体解剖のようにバラバラにされてしまい、もはや見る影もないという状態まで追い込まれてしまいました。
自動車分野ではトヨタがしっかりと持ちこたえているように見えますが、国際的なルール形成に後れをとったため、後手に回ってジリジリと追い詰められています。
国際社会ではいつの間にか「Co2ゼロ」が既定路線にされた結果、突如として欧米ではガソリン車・ハイブリット車禁止の方向が決まり、今後は電気自動車(EV)でなければならないというルールが形成されつつあります。
それにより、世界で1000万台近くの自動車を生産しているトヨタの時価総額よりも、36万台程度しか生産していないテスラの時価総額のほうが高いなどというパラドックスが生まれています。
環境問題を理由とする自動車業界のルール変更は、見方によれば「トヨタ潰し」とも言えるような状況になっているのです。
日本の技術力は世界最高峰だ、円高株安のアベノミクス万歳などと安易に寄りかかっているうちに、日本の基幹産業はメルトダウンして国際競争力を失いつつあるのです。
ワクチン開発の遅れ、MRJの挫折、基幹産業のメルトダウン、さらに言えば東日本大震災からの復興の歪み、アベノミクスへの耽溺、コロナ禍での迷走、これらの問題の根源はいずれも総合エンジニアリング力、構想力の欠如なのです。
これこそが東日本大震災から10年、コロナ500日の今、日本人が肝に銘じるべき教訓です。
・「ジャパノロジスト」が復権したバイデン政権
―― 経済的影響力の低下は、政治的・外交的影響力の低下に直結します。
寺島 外交構想力の欠如も深刻です。先日、日米首脳会談が行われましたが、ここで明らかになったのは、トランプ政権時代に排除されていた「ジャパノロジストの復権」です。
リチャード・アーミテージやマイケル・グリーン、カート・キャンベルといった日米同盟をワシントンでのビジネスにしている、いわゆる「ジャパノロジスト」が、バイデン政権になって日米関係の中枢に舞い戻ったのです。知日派と親日派は違います。
首脳会談では菅総理とバイデン大統領はファーストネームで呼び合い、日米安保条約第5条を尖閣諸島に適用するとされたことで、日本では成功であるかのように報道されました。
しかし、こうしたバイデン政権の対応は、明らかにジャパノロジストから「こうすれば日本人は喜ぶ」と入れ知恵されたようなものです。
たとえば、アメリカは米中国交正常化以来、尖閣諸島に対する日本の施政権は認めるが、領有権については態度を示さないという曖昧戦略を続けています。
だからアメリカから「日米安保第5条を尖閣諸島へ適用する」と言われたならば、「では、アメリカは尖閣諸島に対する日本の領有権を認めるのか」と即座に聞き返さなければならない。
「第5条尖閣適用」の一言を有難がり、本領安堵された御家人のように安心して帰ってくるようでは話になりません。
ファーストネームも第5条尖閣適用も、いわば日米同盟の固定化を自らの利害とするジャパノロジストに仕掛けられたものにすぎません。
ところが、日本人は相変わらず彼らの手のひらで踊らされ、喜ぶような自虐の構造にはまり込んでいるとも言えます。
日米首脳会談では台湾問題にも言及しましたが、仮に中国が台湾に侵攻した場合、米軍が動くとなれば、台湾に米軍基地は一つもなく、沖縄から出撃することになり、日本は否応なく米中戦争に巻き込まれる危険性をはらんでいます。
米中対立でどちらにつくのかという議論が先行していますが、これでは日本の21世紀は開かれません。
日本の貿易相手国のシェアは、2000年にはアメリカ25%、中国10%でしたが、2020年にはアメリカ14・7%、中国23・9%と逆転し、2030年にはアメリカ12%、中国26%とダブルスコアになると予想されています。
日本は中国との関係によって経済を成り立たせるという実態の中で、日米同盟を強化して中国の脅威に対抗するという歪んだ戦略を進めることで、自らパラドックスの中に突っ込んでいるのです。
こうした状態から脱却し、米中対立という枠組みを超えて、大国の力学に揉み潰されない主体性を取り戻さなければなりません。
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■コロナ危機が暴いた日本の没落<日本総合研究所会長・寺島実郎氏>
infoseekニュース 2021年7月3日 日刊SPA!
https://news.infoseek.co.jp/article/spa_20210703_01763990/
たびたび目にする半導体不足のニュース記事。
ご存じ、半導体とは、トランジスタや集積回路などコンピュータ・電子機器や装置の頭脳部分として中心的役割を果たしています。
半導体はあらゆる家電やスマホ、PC機器、自動車、エレクトロニクス産業などにおいて非常に重要で「産業の米」と言われています。
特に、製造業大国日本において、半導体は「なくてはならないモノ」です。
半導体が入手できない場合、日本の各メーカーは出荷ができない状況に陥り、多くの日本のメーカーは苦境に陥ります。
すでに日本の経済は製造業に頼っている状況となっています。
ただ、電機・家電メーカーは大きく失墜しています。
家電は韓国サムスン、中国ハイセンスなどが世界市場を大きく席巻し、日本メーカーは見る影もありません。
今や日本の製造業は、ほぼ自動車産業の一本足に頼っているような状況だと言われています。
つまり、日本経済は、すでに自動車産業の動向に左右される状況といっても過言ではない状況ともいえます。
しかしながら、その自動車産業も、日産はゴーン政権で、すでに半分外資系企業となり、今やマツダ、スバルを傘下に持つトヨタ1社が担っているような産業構造になりつつあります。
もし、トヨタ系列企業に半導体が入手できない状況となった場合、日本経済崩壊という最悪のシナリオも考えられる状況も考えられます。
最悪の日本経済。
さらに、「この下」がありうるという、本当に怖い話かもしれません。
ただ。
この半導体不足が、偶然突発的に引き起こされていたわけではない可能性があります。
すでに、1980年代中曽根元総理の時代から、アメリカによる日本の半導体産業弱体化の思惑がみられます。
日本の半導体大手東芝も、米国政府や国際政治、外資系投資ファンドによる「解体ターゲット」となり、日本の半導体産業は壊滅状態となりつつあります。
今ターゲットとなってりうのは自動車産業や製造業だけではありません。
日本の「金融分野」や「農業・食料・水」分野に至るまでターゲットとなりつつあります。
例えば、金融分野。
銀行業界のみならず、証券業界や保険業界も、すでに外資系企業が日本国内で力をつけており、日本企業の弱体化が懸念されています。
特に、懸念する点は、金融業界の大きな潮流、IT化です。
すでに米国では金融(Finance)と技術(Technology)の融合が進み「FinTech」(フィンテック)と、デジタルトランスフォーメーション(DX)化が急速に発展しています。
この流れは、日本の金融業界にも大きな影響が出てきています。
IT化が進む金融業界では、社内システムも富士通やNTT系列企業を締め出し、外資系企業のシステム導入が進められています。
すでに、政府系システムはAmazon系列企業が基盤システムを受託しており、東京証券取引所にも外資系企業のシステム導入が進められています。
米国主導の日本金融システム。
日本の金融業界のIT化が進むことにより、合理化の半面、大幅な人員削減も進む可能性があります。
銀行もATMや窓口人員の削減が見込まれます。
おそらく、多くの支店も統廃合されるでしょう。
窓口やATMにとどまりません。
地銀や信金などの小さな銀行そのものが統廃合される可能性があります。
日本には外資系銀行しか残らない、という未来が来る可能性すらあり得ます。
そしてさらに、銀行だけではありません。
すでに多くの外資系が市場を占めている保険業界、そして証券業界もそうです。
膨大な日本の金融市場が、外資系に席巻されるリスクを背負っているとも言えそうです。
さらに、金融業界はビットコインなどの「仮想通貨」との融合の可能性も論じられています。
世界の金融IT化と、その先にある「仮想通貨と世界経済の融合」。
既存の貨幣経済は、国際的仮想通貨との融合で、「日本の資産もバーチャル化」という未来も考えられます。
この「金融バーチャル化」は、おそらく欧米主導となる可能性が高くなります。
この場合、日本人による日本の金融企業の有無次第では、「日本資産のゆくえ」すら、危ぶまれる可能性もあります。
つまり、日本の金融業界に、日本の企業が残らなかった場合、日本人の資産や日本の財産も、自らの日本人の手で守れなくなるという、最悪のシナリオさえ考えられます。
今の日本の金融業界、日本企業を支援するのか、外資系企業を支援するのかで、その後の日本の資産全体をも左右する状況になりつつあります。
そして、この状況は、製造業界、金融業界にとどまりません。
今や、製薬業界も、日本企業の衰退が進んでいます。
欧米のビッグファーマ(多国籍巨大製薬企業)は、日本を含め、すでに世界の影響力をさらに拡大させています。
日本の製薬市場は、すでに輸入超過、大幅な赤字に転落しており、日本人が海外製の薬に依存している状況が続いています。
今回のコロナワクチンもそうです。
海外製ワクチンに依存しなければならない、リスクを背負っています。
そして、農業分野もそうです。
今や遺伝子組み換え食品や人工甘味料などは、普通にコンビニやスーパーで売られています。
他国で禁止されている種類も、日本だけに許可されている危険なものまであります。
つまり、いまや、日本の製造業、金融業、そして医療や食品に至るまで「外圧」は高まっており、日本人による日本の意思は、日本国内だとしても、殆ど通らなくなってきていると言えるかもしれません。
日本の経済だけではなく、日本の個人資産や日本人の健康、生命に至るまでリスクを背負っているのが、現状ではないでしょうか。
圧倒的な権力、多国籍大企業(国際資本)。
多国籍大企業(国際資本)は、すでに多くの政府や政治家にも大きな影響力を及ぼしていると言われています。
日本人の財産、日本人の健康、日本人の生命は、誰が守るべきなのでしょうか。
今、私達の選択した政治家は、私たちを守っていると言えるのでしょうか。
私たちができること。
私たちがやれること。
一人一人が、考え、行動することが必要な時代と言えるかもしれません。
【参考記事】
■郵便局再編のタブー視続く M&A失敗の源流に
「200億円を投じた巨額買収は事実上、失敗」
「日本郵政はなぜ拙速なM&A(合併・買収)で過ちを繰り返すのか」
日本経済新聞 2021年5月24日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13CQ30T10C21A5000000/?n_cid=SNSTW005
■日本はなぜ、アメリカに金を盗まれるのか?
~狙われる日本人の金融資産~
「米国は、TPPで郵政、年金、農協マネー総額500兆円の収奪を企てる」
「アベノミクスからTTP問題で日本の富を奪う」
ベンジャミンフルフォード(2016年)『フォーブス』元アジア太平洋局長
https://books.rakuten.co.jp/rb/13255294/
■「野党も与党も関係ない」「こんなときこそリーダーシップを」 コロナ対応へ450人の声
「国民」の「生活」に寄り添わない政治への不満、不安、いら立ち、怒りを募らせた声の数々。
毎日新聞 2020/5/7
https://mainichi.jp/articles/20200507/k00/00m/010/073000c
■政治に殺される」見開きで批判~宝島社、コロナ政策巡り新聞広告~
「この一年は、いったい何だったのか」
「無理を強いるだけで、なにひとつ変わらないではないか」
「今こそ、怒りの声をあげるべきだ」
共同通信(2021/5/11)
https://this.kiji.is/764678549068218368?c=39546741839462401