稲盛和夫氏のアメーバ経営!そのアメーバ経営に不可欠なものとは?


突然ですが、アメーバ経営はご存知でしょうか?

京セラ創業者の稲盛和夫氏が考案した経営手法の一つです。

京セラは弱小のベンチャー企業から、日本を代表する企業にまで成長、その過程で実体験で培って編み出したものです。

京セラ以外にも、1984年に創業されたKDDI(au)日本航空(JAL)の再建にも効果を発揮しました。

今回はアメーバ経営、そしてそのアメーバ経営に不可欠なものについてお伝えします。

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Contents

アメーバ経営とは?

アメーバ?!

あれ?ミトコンドリア?

初めて聞いた人は驚くかもしれません。

何か、微生物、または妖怪?のようなイメージかもしれません。

くっついたり、離れたり・・・。

アメーバ経営とは、京セラ創業者の稲森和夫氏が考案した経営手法です。

採算部門の組織を5~10人という小さな単位(アメーバ)に細分化し、それぞれがまるで1つの会社であるかのように独立採算で運営することです。

一言でいえば、小集団部門別採算制度に基礎を置いた全員参加型の分権的経営システムのことです。

各アメーバのリーダーは、それぞれが中心となって自らのアメーバの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞り、努力することで、アメーバの目標を達成していきます。

アメーバごとに「時間当たり採算=(売り上げ-経費)÷労働時間」を算出し、時間当たり採算の最大化を図り、時間当たり採算の目標値を月次、年次で策定。労働時間短縮や売り上げ増加策を実行に移して目標達成を目指していきます。

つまり、どの組織(アメーバ)が不採算なのか、高収益なのか、一目瞭然なんですね。

大企業病を防ぐにも画期的なシステムの一つかもしれません。

それぞれの組織が、ベンチャー気質を持ちつつ、強い意志を明確に打ち出すことができる仕組みとも言えそうです。

アメーバ経営のメリットとは?

京セラやKDDIの成功、JALの再建に大きくかかわった「アメーバ経営」。

多くのメリットがあります。

以下、アメーバ経営のメリットです。

【アメーバ経営のメリット】

①役割・責任の明確化

アメーバ経営における、わかりやすいメリットは、部門別採算制度の確立です。

一つ一つの組織が赤字なのか、黒字なのか、明確化することができます。

組織だけではありません。

その組織の一人一人の採算管理まで落とし込み、それぞれ自分たちの活動成果が分かるようになります。

一人一人の社員に「採算表」と名付けた家計簿のような帳簿を付けることで、「時間当り採算」が明確化。

どれだけ組織に貢献出来たのか、一人一人が理解できるようになります。

結果、社員それぞれが利益を意識し、それを生み出す意欲と責任を感じるようになるのです。

最近は情報システムに、その「採算表」を入力することで、リアルタイムで経営情報を把握することができます。

スピード経営の実現にも寄与できます。

②全員参加経営の実現

大企業病の一つに、経営と現場の乖離が問題となります。

経営者層が発する言葉にのみ、ただ追随する社員が増えていくことはよくあることです。

しかし、アメーバ経営を導入することで、それぞれの小集団(アメーバ)毎に、社員一人一人がその組織の運営を託されていきます。

つまり、社員が小集団の経営層となることができるのです。

自らの責任感も強くなり、目標に対する意識や自己実現の現場を作るうえでも大きな意味を持ちます。

それぞれの小集団に「意志」が生まれ、現場での課題や改善が共有されやすくなるというメリットもあります。

③次世代経営者の育成

小集団(アメーバ)のリーダーとなった社員は、経営者感覚を磨き、経験を積むことができます。

いわば、中小企業の経営者のような経験を積むことができるようになります。

つまり、リーダー育成としてのメリットも存在するのです。

アメーバ経営を積み重ね、様々な課題を解決してきたリーダーは、将来の経営幹部としての候補者として注目されることとなります。

人を育成する仕組みとも言えそうですね。

小集団(アメーバ)に分け、それぞれの細かい採算を把握し、役割と責任を明確化する手法。

のみならず、次世代経営者の育成にとっても大きなメリットかもしれません。

そういえば、そもそも、アメーバ(amoeba, ameba, amœba)という言葉は、ギリシャ語で「変化」を意味する αμοιβη(amoibē) に由来しています。

アメーバは「変化」する生物。

稲盛和夫氏は、組織が流体として変化し続ける必要をも意識して命名しているのかもしれません。

アメーバ経営の欠点とは?

しかし、アメーバ経営にも欠点はありそうです。

アメーバ経営に限りませんが、組織間の軋轢の問題です。

集団を区分けすることで、それぞれの組織が対立してしまうというリスクです。

特に独立採算を公表するのですから、それぞれの組織の成績如何で様々な感情がでてきます。

組織毎の対立はある意味、競争原理を発揮し、組織全体の力強さに結び付くことがありますが、これが行き過ぎると、単なる足の引っ張り合いになってしまうということがあるのではないでしょうか。

組織間の対立。

避けては通れませんね。

そういえば、以前、組織間の対立に関して、ある公認会計士からアドバイスをいただいたことがあります。

リスクマネジメントの一つに、組織間の相互チェック機能という考え方がありますが、組織同士に一定の対立関係をを持たせて、それぞれの組織に不正がないかを監視する方法です。

いわば、敢えて対立関係を醸成する考え方です。

ただでさえ、組織同士は利害関係が起こりやすく、対立しやすいものであるにも関わらず、敢えて対立させる考え方、あまり共感できませんでした。

当然、アメーバ経営にも、組織間の対立というデメリットが存在するのも否めないのではないでしょうか。

アメーバ経営に不可欠なもの

アメーバ経営のデメリット、それは組織同士の対立、かもしれません。

組織だけではありません。

一人一人の採算が明確になっている以上、組織に貢献できない方への待遇や処遇にも影響が出てくるものではないでしょうか。

つまり、弱肉強食の世界

しかし。

稲盛和夫氏のすごいところは、これから。

稲盛和夫氏は、アメーバ経営手法のみ、独り歩きすることを推奨していません。

それが経営思想。

「京セラフィロソフィ」です。

以下、「京セラフィロソフィ」の考え方です。

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京セラグループは、世間一般の道徳に反しないように、道理に照らして、常に「人間として正しいことは何なのか」ということを基準に判断を行ってまいりました。人間として何が正しいかという判断基準は、人間が本来持つ良心にもとづいた、最も基本的な倫理観や道徳観です。「欲張るな」 「騙してはいけない」「嘘を言うな」「正直であれ」など、誰もが子どもの頃に両親や先生から教えられ、よく知っている、人間として当然守るべき、単純でプリミティブな教えです。日常の判断や行動においては、こうした教えにもとづき、自分にとって都合がよいかどうかではなく、「人間にとって普遍的に正しいことは何か」ということから、さまざまな判断をしてまいります。

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京セラホームページ「経営哲学」より

そしてもう一つ。

稲盛経営12ヵ条。

稲盛和夫氏が京セラとKDDI、JALを経営する中で、会社経営を成功に導く実践項目を12ヵ条にまとめたものです。

【稲盛経営12ヵ条】

事業の目的、意義を明確にする

公明正大で大義名分のある高い目的を立てる。

具体的な目標を立てる

立てた目標は常に社員と共有する。

強烈な願望を心に抱く

潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと。

誰にも負けない努力をする

地味な仕事を一歩一歩堅実に、弛まぬ努力を続ける。

売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える

入るを量って、出ずるを制する。利益を追うのではない。利益は後からついてくる。

値決めは経営

値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である。

経営は強い意志で決まる

経営には岩をもうがつ強い意志が必要。

燃える闘魂

経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要。

勇気をもって事に当たる

卑怯な振る舞いがあってはならない。

常に創造的な仕事をする

今日よりは明日、明日よりは明後日と、常に改良改善を絶え間なく続ける。創意工夫を重ねる。

思いやりの心で誠実に

商いには相手がある。相手を含めて、ハッピーであること。皆が喜ぶこと。

常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で

「稲盛和夫 OFFICIAL SITE」より

いかがでしょうか。

人間として何が正しいかという判断基準」。

この思想があっての、アメーバ経営ではないでしょうか。

「アメーバ経営」と「京セラフィロソフィ」の二つがあって、成り立つ経営手法と言えるのかもしれません。

この2つの手法、考え方が、京セラを世界企業にし、KDDI(au)の成長、そしてJALの再建成功に結び付けた、そう思っています。

単なる個人成績の把握、競争原理の導入が、成功させたとは思えないのは、私一人だけではないのではないでしょうか。

仕組みだけでは、機能しない、私はそう思っています。

稲盛和夫氏の経験、思想、学ぶべき点は多いのではないでしょうか。

最後に

稲盛和夫氏の名言を贈ります。

経営マインドを持った人材の育成には、小さくてもいいので自らの責任で部門運営をさせることが一番。

全従業員の参与がなければ良い経営は実現できない。

経営者を育てるには、社員に経営を経験してもらうことが一番。

僕は航空業界について何も知らない素人です。僕が持ってきたのは2つだけです。ひとつはフィロソフィー(哲学)、もうひとつは部門別採算制度です。

リーダーの行為、態度、姿勢は、それが善であれ悪であれ、本人一人にとどまらず、集団全体に野火のように拡散する。集団、それはリーダーを映す鏡なのである。

JALの経営再建時、京セラで私が編み出した独自の管理会計システム(アメーバ経営)も導入しましたが、何といっても、哲学が浸透していったことで、幹部、社員は自己犠牲を厭わないようになりました。みんな他人のために喜々として働くようになり、それにつれて業績もみるみる向上していきました。

精神主義かもしれませんが、「みんなのためなんだ」と周知徹底することは改革を進める上で何より重要です。

フィロソフィは経営者やリーダーだけでなく、中間管理職も新入社員も、働く人すべてに必要なこと。世の中のビジネスマンは、「仕事に哲学なんて必要ない」と思っている人が大半。そういう人に対して、人生や社会生活においていかに哲学が重要かを言って気づかせてあげるのは、リーダーや管理職の仕事。

経営者を含め、全社員が同じ考え方を持つためには、誰から見ても正しいと思えるような哲学、それを私はフィロソフィと呼んでいますが、それが必要となる。

私は、会社経営の目的というものは全従業員の幸せになってもらうことにあると思っています。従業員が一生懸命働いてくれたら業績が上がり上場もできるのです。

企業というのは従業員たちが幸福になる仕組みでなければ、長く存続しない。

稲盛和夫

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