ここ数年、米有力ベンチャーキャピタル(VC)が日本のベンチャー支援を強化しています。
背景には日本のベンチャー企業の資金調達がさらに活発化していることが挙げられます。
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日本国内の未公開ベンチャー企業資金調達状況
「2017年未公開ベンチャー企業資金調達状況」(ジャパンベンチャーリサーチ、東京都渋谷区)によると日本国内の未公開ベンチャーの資金調達額は前年比21.2%増の2717億円となり、拡大傾向を維持。
【未公開ベンチャー企業の資金調達額推移】
・2014年:1,390億円
・2015年:1,716億円
・2016年:2,099億円
・2017年:2,717億円
特徴的なのはベンチャー企業1社当たりの資金調達額が増加していることです。
事業領域として、伸びが顕著な分野は、以下4分野です。
・FinTech(ITと金融サービスを融合)
・IoT(モノのインターネット)
・ロボット
・人工知能(AI)
以上、4つの資金需要が大きかったとしています。
この4つの分野はグローバルな市場にも通用するだけに、今後の資金調達需要が拡大することから、国内ベンチャーキャピタル以外にも米ベンチャーキャピタルも動きを見せています。
Plug and Play、三菱UFJ銀行と提携
2017年6月、米シリコンバレーでベンチャーの支援を手掛けるPlug and Playは三菱UFJ銀行をビジネスパートナーとして日本市場に動きだしました。
Plug and Playは米シリコンバレーに本拠を構え、中国、ドイツ、フランスなど世界10カ国に展開し、これまでに約2000社の支援実績があるベンチャーキャピタル。
Plug and Playは国内最大級のメガバンクと提携することで日本における信頼性の担保と、三菱UFJ銀行が保有する日本国内の情報網ネットワークを活用するのが狙いと見られます。
支援プログラムは3カ月ほどで、ベンチャー企業を20社選定し、10社ずつ2つのグループに分けて実施。
外部から投資家やアドバイザーなどを招き助言を求め、事業の課題克服や取引先ネットワーク化を進めます。
三菱UFJ銀行としては、大企業を含めた自社の取引ネットワークとPlug and Playの経験、ノウハウ、ネットワークを生かし、グローバル化を進めたい意向があるのではないでしょうか。
500 Startups、クールジャパン機構と提携
2017年6月、米投資ファンド500 Startupsは、官民ファンドのクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)より1000万ドル(約11億円)を日本向け1号ファンドへの資金調達を発表。
500 Startupsは2010年にアメリカシリコンバレーで設立、創業間もないシードベンチャー支援に特化して投資しており、運用総額は約3億5000万ドル、世界60カ国・1800社以上に投資している実績があります。
同社は資金提供にとどまらず、自社の起業家向け教育プログラムを通じ、ベンチャー企業の育成を行っている点に特色があります。
500 Startupsが日本向けに投資を開始したのは2010年。
当初は米国から直接投資をしていたが、2016年2月、ニコンや三菱地所、みずほ銀行など日本の大企業から資金を集め、新たに日本に特化した1号ファンドを設立しています。
今回、クールジャパン機構の投資を受け、日本向け1号ファンドで3500万ドル(約38億円)の資金調達を完了、当初の目標額の3000万ドル(約33億円)を上回ったと発表。
500 Startupsは世界各国で同様の地域ファンドを運用しているが、今回クールジャパン機構から出資を受けることで日本が最大規模になります。
また、2013年11月に設立されたクールジャパン機構にとっては、初の海外ベンチャーキャピタルへの出資となりました。
このようにPlug and Playや500 Startupsなど米ベンチャーキャピタルが日本国内で動きを活発化させている背景には、米ベンチャーキャピタル側の思惑と、日本側の思惑の双方が絡み合った結果のように思えます。
米ベンチャーキャピタル側の進出理由としては以下2点が考えられます。
米ベンチャーキャピタルの進出理由
東京オリンピックに向けた経済復興
まず一つ目。
米ベンチャーキャピタル側の思惑として、日本の高い技術力を念頭に置きながら、東京オリンピックを控え日本市場、IPO市場の活況などを背景に日本に注目していることが挙げられるのではないでしょうか。
アジア全体への進出の足ががり
そして二つ目。
また、成長市場のアジア全体を考慮するうえで、日本での成功事例を確立し、基盤を構築することで、アジア全体への進出の足ががりにしたい、という意向もあるように思えます。
一方、受け側の日本にとってもメリットがあります。
もともと日本は開業率が低く、新しいベンチャー企業が生まれにくい風土でもありますが、その限られたベンチャーを育成するうえで大きなメリットとなります。
米ベンチャーキャピタルを受け入れる日本のメリット
ハンズオン型支援ノウハウが少ない
日本国内のベンチャーキャピタルはハンズオン型支援できる人材、企業が少ないことです。ベンチャーキャピタルの価値は資金提供のみ、と言っていいほどです。
もちろん、ベンチャーキャピタルだけではなく、大手金融機関や大手事業会社においても、ハンズオン支援ノウハウが少ないという大きな課題があります。
グローバル情報網、グローバル取引先ネットワーク
米ベンチャーキャピタルは豊富な実績、経験を持ちますが、それ以上にも、世界各国にグローバルな情報網があることも大きな強みです。また、既存の支援先や過去の支援先など、すでに超大手となっているベンチャー企業の取引先ネットワークが全世界に広がっています。
最後に
いずれにしても、Plug and Playや500 Startupsなどの米ベンチャーキャピタルが日本国内で動きを活発化させています。
このことで、日本のベンチャーキャピタル、そして大手金融機関、大手事業会社、その他エンジェル投資家などの投資活性化にも期待したいと思います。