乳がんになってみて、人生が豊かになったと感じています。人生で無意味なことはありません。朝、元気に起きることができるだけでも感謝の念を忘れないなど、一日一日を大切にしています。
「教育」は学力や点数など勉強だけではなく、子どもの個性を伸ばしたり、様々な体験や考える機会、興味を持つきっかけづくりなど全てが教育。
子どもには無限の可能性があるんですから、スケールの小さい話をしないで「子どもが本当は何をやりたいのか」ということを聞いて、その子の夢を応援してあげてほしいですね。
がんになってから、毎日を大事にできるようになったかな。「ほほえみ大使」になって仲間がいっぱいできたし、がん制圧運動に参加するなど、やりがいがある活動もたくさん増えたんですよね。そういう意味では、「心強く生きている」と実感していて、死ぬこともそんなに怖くなくなりました。
アメリカの場合、地域によっては子どもが学校に行っているのかいないかさえ親が把握していないという家庭もあるので、日本のように教育熱心な親が多いのはネガティブなことではありません。学校は「やりやすい」と言います。もちろん「教育」は学力や点数など勉強だけではなく、子どもの個性を伸ばしたり、様々な体験や考える機会、興味を持つきっかけづくりなど全てが教育。どんな親だって、自分の子どもの可能性を120%伸ばしたいと思うもの。そういう普通の欲望を肯定的に持っていいと思うんです。
子ども達が社会に出ていく20年後もきっと親世代が想像できない世界が待ち受けているのです。親の限られた想像力で子どもの将来を決めない、夢を小さくしないということもすごく大切です。いつも最先端を目指したほうがいいと思います。
世界中には教育を受けられない子ども達もたくさんいて、教育を受けられること自体が「恵み」。義務教育がある日本はせっかく学校で教育が受けられる環境にあるんですから、ぜひ皆さんも恥ずかしがらずに「私は教育熱心なんだ」とお互いに誇りに思うくらいでいいんじゃないかと思いますね。
骨と皮しかない子供たちの体を見て、言葉が出なかった。子供たちを抱きしめたとき、こんなにも軽いのかと感じて。飢えて死ぬってこういうことなんだ…。それも、あんなにたくさんの人が…。ばたばたと倒れて死んでいく人たちも初めて見て、私の人生は変わりました。
「自分は自分でいいんだ」という安定した自信があるので、人と自分をやたらと比べません。このため心に余裕があり、他人にも優しくなれます。 逆に、セルフ・エスティームが低い子は、人より上位に立つことで、自分の存在価値を確かめようとします。そのため、弱い者いじめをしたり、相手の困った顔を見て優越感を得ようとしたりするのです。でもそうして得られた自尊感情は長続きしませんし、そんなことをしている自分を好きになれないので、自分の中で葛藤が生まれ、素直に伸びていくことができなくなってしまいます。
教育というものは、子どもの自己肯定感(=セルフエスティーム)を高めるところからスタートすると考えています。他人は他人だし、自分は自分。他人の人生を羨むこともなければ、他人を差別することもない。これが教育のファーストステップで、できれば小学校就学前に仕上げておくのが理想です。そこをさらに突き詰めると、子どもが1~3歳のうちに、親がどれくらいの愛情を注いであげられるかというのが課題になってきます。
自分を肯定できる子どもは自らの可能性を伸ばすことができ、何事にも前向きに取り組めますので、それが学力や成績にもつながってくるはずです。
一番最初に長男を叱ったのは、嘘をついたとき。
愛してるんだ、嘘つく必要ないんだ、どんな君でも受け止めるんだ、問題あったら解決しよう、それが小さい子にはなかなか分からないから、一生懸命説明しました。
個性も得意分野もそれぞれですが、3人の兄弟を比べることは絶対にしません。
「80点をとりたいなら、100点分の努力をしなさい」と言っていました。「先生をびっくりさせるような発想がないと点はとれないのよ」とも。 同時に、いつも私が息子たちに言っていたのは「点数をとる勉強は本当の勉強とは違う」ということでした。点数というのは、先生に対して、自分の理解度を示す手段であり、また、将来遭遇するいろんな門を開けるための鍵のようなものです。 希望する高校や大学に行くための鍵ですから、できることならよい点をとったほうがいい。でも、その勉強の内容をどこまで本当に分かっているのか。勉強だけではなく人としてモラルをきちんと守っているのか。そういうことのほうがずっと大事と、息子たちにはしつこく話していましたね。
子どもたちに自分の良さを気づかせてあげることが大事だと思います。それで自信を持たせてあげれば、子どもはどんどん伸びていきます。
親も先生も、とてもありがたい立場にいるのだと思います。だって、人の人生を左右するほどの大変な影響を与えることができる立場なのですから。誰にでもできることではないし、選ばれた存在なんですよ。 私自身、何人もの先生と出会い、彼らから人生に大きな影響を受けました。私はすぐ上にとても優秀な姉がふたりいて、幼い頃はいつも比べられてコンプレックスの塊でした。でも、小学校6年生のとき、担任の女性の先生から「あなた、可愛いね」と言われ、それを機に引っ込み思案が少し治ったんです。また、中学生のときには、私にボランティア活動をするよう勧めてくれた先生がいて、そのおかげで今でもボランティアは私の生活の一部となっているのです。 私も大学で教えていますので、学生が社会に出て本当の大人になったとき、「ああ、あの先生と出会って、あのとき救われたな、出会えてよかったな」と思ってもらえるような先生になりたいと思っています。
ちょっとした努力で喜んでくれる人がいる。自分がどう思われているかなんて、どうでもよくなりました。
お子さんのいいところを褒めること。悪いことをしたら、叱るのは親として当然ですが、叱られてばかりだと、子どもは存在自体を否定されているように感じてしまいます。叱る時も「今、あなたがやっていることには賛成できないけど、あなたのことは大好きよ」ということが伝わるようにしましょう。その場で理解できなくても、いざという時、きっとそれが支えとなります。
先生は人生に影響を与える大きな存在です。だから、いつも明るく元気でいてもらいたいものです。私は「先生の日」というのを創ってはどうかと考えています。「母の日」や「父の日」があるように、自分の恩師に感謝の言葉を贈る日。私たち大人も、振り返ってみて、感謝したい先生がいますよね。今の先生たちも保護者も、だれかに教わって大きくなったのだから、だれにでも感謝したい先生がいるはずです。
私たちは、ティモールなど、戦争後の町や村で、「バック・トゥ・スクール・キャンペーン」を行っています。家をなくし、大人はみな絶望的になり、なかなか社会復帰できない。そんな中、先生がひとり立ち上がると社会は変わっていきます。焼け跡の一本の木の下で、先生が「授業を始めます」と呼びかけると、親が張り切ります。自分が立ち直ってなんとか子どもを送り出さなきゃ、と。学校がはじまると、人や情報が集まり、そこで水や食糧を配ったり、予防注射をしたり。そうして、だんだん街が元気になってゆきます。だから、私たちが村に入って最初にすることは、先生になれる人を探すことです。「建物はなくても、先生がいれば学校はできる」。これが私の持論です。
何といっても、「教育の基本は家庭」です。学校や先生は子育てを手伝ってくれる貴重なパートナーであるはず。保護者が先生にプレッシャーをかけたり、学校の責任を追及したりするというあり方は、根本的に間違っていると思います。国や社会全体で、未来を担う子どもたちを育てていけるよう、周りの大人がしっかり協力していくことが大切ですよね。
まずは親が、その子の存在を丸ごと受け入れることです。「君のそのままのすべてが好き」って言ってあげるのです。
日本は競争が激しい国です。学力を注視しがちですが、まず自分を信じて、生まれてきた理由があることを知ってください。自分のことを好きになってください。勉強も毎日の生活も楽しんでほしいです。人間って1人じゃない。日本語で好きな言葉があります。それは「おかげさま」です。私たちは、人に支えられて生きています。恵みを受けているから感謝をしよう、そして恩返ししようという心を表す言葉です。反対にね、感謝がないと、いつも不満ばかりだから、何かを欲しがる人生になってしまいます。もう1つは「無我夢中」という言葉です。一生懸命に、このようになりたいと生きる。何も好きなことがないと人生つまらないですよね。好きなことに向かってキラキラと生きてください。
今は「正しい答えはひとつしかない」という世の中ではなく、「ひとつの問題から1000個の答えが出てくる」ような世の中に変わってきています。すごく頭が良いのに試験で点を取るのが苦手という子どもも多いですが、そういった彼らを拾い上げ、能力を伸ばしてあげられなければ、ひいては社会全体が損をしてしまうことにもなるんですよね。
学校のためでもない、親のためでもない「この子のためだ」という教育が一番大事だと思ったんです。
私が1970年代に日本に来たとき、日本人は頭も体もフル回転させていました。そうやって最先端の技術や日本ブランドなどを築き、たくさんの「蓄え」を作り出したけれど、最近、それに頼って「フル回転しない」という生き方をする人々が目立つようになったと感じています。日本では昨年、東日本大震災が起きましたが、復興は進んでいません。「蓄え」は減っているようにも見えます。そして、日本だけでなく、世界でも欧州や中東諸国などで政治や経済の「大ターニングポイント」を迎えています。そんな今こそ、守りに入るのではなく、再びフル回転する時期です。日本には底力があります。日本人は真面目で、頭が良く、みんな教育を受けている。だからこそ、一部の人たちだけがフル回転するような国になっては駄目で、「一億総国民フル回転」が大事だと思います。国民一人ひとりが自分を目いっぱいに信じて走り続ければ、日本は活性化し、震災からの復興も早く実現できるはずです。
アグネスチャン。
本名:陳美齡、英語:Agnes Meiling Kaneko Chan、広東語:チャン・メイリン、北京語:チェン・メイリン、日本名:金子 陳 美齢(かねこ チャンメイリン)。
1955年8月生まれ、香港出身。
中学・高校は、メリーマウント中學(中国語:瑪利曼中學)卒業、トロント大学卒業。
1972年、代表曲の一つである「ひなげしの花」で、日本での歌手デビューを果たす。
高く澄んだ歌声と愛くるしいルックス、たどたどしいが一生懸命日本語で歌う姿が受けて、一躍人気アイドルとなった。
日本ではその後も「草原の輝き」、「小さな恋の物語」、「星に願いを」、「ポケットいっぱいの秘密」、「愛の迷い子」、「恋人たちの午後」「白いくつ下は似合わない」、香港における「The Circle Game」「香港香港」、「雨中のカーネション」などヒット曲は多く、台湾やアメリカ合衆国などでも音楽活動を行っている。
1992年6月スタンフォード大学大学院教育学博士課程を修了。
1994年には博士号が授与された。
歌手としての活躍のほか、1998年には初代日本ユニセフ協会大使に就任。
初代日本ユニセフ協会大使(UNICEF国内大使)を経て、2016年より国際連合 (UN) の機関である国際連合児童基金 (UNICEF) の東アジア太平洋地域親善大使(UNICEF地域大使)。
ボランティアやチャリティーなどを通じた社会奉仕や貧困や平和についての発言でも知られている。
ピンクリボン運動への参加や、香港浸会大学の客員教授としての教育活動も行っている。
2017年著書「スタンフォード大学に三人の息子を合格させた50の教育法」が大ヒット。作家としての地位もアジアで高めている。
初代「ほほえみ大使」も務める。
2018年春の叙勲で旭日小綬章を受章。