人間と同じように犬にもそれぞれ性格があります。
犬種の違いによる性格の傾向の差はありますが、育った環境によっても犬の性格は異なってきます。
飼い主もイヌも手足がひょろりと長い、ボサボサ頭の飼い主がボサボサの毛のイヌを連れている――。
見た目が互いによく似たイヌと飼い主は、はたから見ていて微笑ましいですね。
今回は、何故「犬は飼い主に似る」のか、各研究結果からその秘密について迫ってみたいと思います!
ペットが飼い主に似る、あるいは飼い主がペットに似る、というのはよく耳にする言葉です。
実際にイヌは飼い主と似るという研究成果が、2019年2月学術誌「Journal of Research in Personality」に発表されました。
論文の主執筆者で米ミシガン州立大学の社会心理学者、ウィリアム・J・チョピク氏は、長年、人間関係の変化について研究してきました。
その中で人間とイヌとの絆に興味を引かれ、関係と変化について調査したそうです。
調査は、1681匹のイヌの飼い主たちに、自分自身の性格と飼い犬の性格について、質問票に記入してもらう形で行われました。
その結果、イヌと飼い主は、性格の特徴が似ていることがわかりました。
例えば、同調性が高い人は、活動的で興奮しやすい(しかし攻撃的でない)イヌを飼う傾向が、ほかの人の2倍多かったそうです。
また、誠実な性格の飼い主は飼い犬について「よく訓練されている」と評価し、神経過敏な飼い主は「自分の犬は怖がり」とする傾向があったそうです。
チョピク氏は「落ち着いた人であれば、その人が飼うイヌも落ち着いています」と仰っています。
また、社交的な飼い主の犬は興奮しやすくアクティブ。
自分を「感じがいい」と回答した飼い主の場合、飼い犬は人や動物に対して怖がったり攻撃的になったりしにくという具合で、「飼い主の性格と飼い犬の性格は似ている」ということが明らかとなったそうです。
さらに、飼い主が飼い犬との関係を「最高に幸せ」と感じていると、飼い犬は活動的でしつけなどの訓練にもよく反応したそうです。
人間同士でもよい関係性はよい結果や相乗効果を生みますが、これは人間と犬にも言えることなのかもしれません。
イヌと飼い主の性格に、類似が見られるのは一体なぜなのでしょうか。
論文では、このことは説明されていないません。
ただ、チョピク氏は「一つは、その人がどんなイヌを好んで選んだのかということ。もう一つが飼い主のイヌの性格への影響です」と考えているそうです。
つまり、人がイヌを迎えるとき、無意識に自身の生活リズムに適応できそうなイヌに惹かれる傾向があるためです。
「かまってあげる必要がある、やんちゃなタイプのイヌが好きな人もいますし、反対に落ち着いたおとなしい性格のイヌをほしがる人もいます。
基本的に、人は自分に合ったイヌを選ぶ傾向にあるのです」とチョピク氏は仰っているそうです。
そして、チョピク氏は、犬と飼い主がその後の一緒の生活、同じ生活リズムを刻む中で、同じような性格ができやすくなると考えられているそうです。
ヒトもそうですが、犬も性格を形成する大事な時期があるそうです。
犬の性格形成にとって大切な時期は、生まれてから3ヶ月(4~12週)の社会化期だと言われています。
この社会化期に、どのような飼育環境にいたかによってその後の性格形成に大きな影響を及ぼすそうです。
犬は、4~12週の間に、適切な外部の刺激をうけ、人間社会で暮らしていくためのマナーやルールを学びます。
具体的には、たくさんの人に会う、両親、兄弟犬以外の犬に会う、生活の音や刺激に慣れさせるなどがあります。
犬が暮らしていく上で必要となる日常的な刺激に慣らしておくことが、成犬になった時の性格に現れるのです。
これが、後天的な性格に結び付いていくと言われています。
1歳までの間に外へ出てさまざまな刺激を受けた犬と刺激の少ない環境で過ごした犬とでは、将来の性格が大きく変わると言われています。
刺激の少ない環境で過ごした犬は、臆病、怖がりな性格になり、過剰に吠えたり、攻撃性を持ったりする問題犬となってしまう可能性があるのです。
1歳までの時期は、犬の性格を形成する上で、とても大切な時期であると言えます。
もう一つ、ワンちゃんの性格に関する面白い研究結果があります。
麻布大学の獣医学部は、アメリカ・ペンシルベニア大学で開発された犬の行動解析方法を基礎とした犬の性格を客観的に診断できる「C-BARQ」を開発し、多くの犬の解析を行っています。
この調査はアンケート方式で行われ、飼い主が約100項目の質問に対して自分の犬を5段階で評価するものです。
この結果を13の行動特性に分類することで、その犬種がどのような性格を持っているのかがわかります。
麻布大学では、日本とアメリカの59の人気犬種を8つのグループに分けて調査しました。
この調査では、遺伝的に近いと思われる犬種を8つのグループに分けています。
なんとなく性格の傾向が掴めるのではないでしょうか?
・チワワ
・パグ
・ポメラニアン
・シーズー
・パピヨン
・ペキニーズ 等
・ヨークシャーテリア
・ジャックラッセルテリア 等
・ウィペット
・ボルゾイ
・コーギー
・ボーダーコリー
・シェットランドシープドッグ 等
・コッカースパニエル
・キャバリア
・トイプードル
・マルチーズ
・スタンダートプードル 等
・柴犬
・秋田犬
・シベリアンハスキー
・サモエド
・バセンジー 等
・ラブラドールレトリバー
・ゴールデンレトリバー
・フラットコーテッドレトリバー
・グレートデン
・バーニーズマウンテンドッグ 等
・ボストンテリア
・ボクサー
・フレンチブルドッグ
・ブルドッグ 等
・ドーベルマン・ピンシャー
・ジャーマン・シェパード・ドッグ 等
この調査では「見知らぬ人への攻撃性」「見知らぬ犬への攻撃性」「飼い主に対する攻撃性」「同居犬に対する攻撃性」「見知らぬ人への恐怖」「非社会的恐怖」「接触過敏性」「分離不安」「訓練性」「愛着行動」「興奮性」「運動活性」「追跡能力」の13項目で分析が行われました。
結果を見ると、「①トイグループ(愛玩犬)」は攻撃性や恐怖心が強く、人に触られることが苦手だったそうです。
抱っこされていることが多いミニチュアダックスフンドやチワワ、トイプードルですが、実はあまり抱っこが好きではないのかもしれません。
見知らぬ人への恐怖性が高かったのは「③サイトハウンド・ハーディンググループ(牧羊犬、牧畜犬)」でした。
ジャーマン・シェパード・ドッグなどの「⑧作業犬グループ」は殆ど恐怖性がなかったそうです。
「オスワリ」の指示への反応などをチェックしたところ、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークなどの「③サイトハウンド・ハーディンググループ(牧羊犬、牧畜犬)」がトップ。
「見知らぬ犬への攻撃性」ヨークシャー・テリアなどの「小さいテリアグループ」が最も高く、次いで柴犬などの「古代犬&スピッツグループ」も高かったそうです。
「愛着行動」はジャーマン・シェパード・ドッグなどの「作業犬グループ」と、ラブラドール・レトリーバーなどの「レトリーバーグループ」がどちらも高い数値を示しています。
柴犬などの「古代犬&スピッツグループ」は目立って低い傾向にあり、適度な距離感で家族と暮らしていることがうかがえます。
このように、犬種によっても様々な性格の違いがあると言えそうですね。
ワンちゃんは、例え同じ犬種と言っても性格は異なります。
例えば、全く同じ母犬、父犬から生まれた子犬でも、一頭として同じ性格を持つ犬はいません。
つまり、10頭生まれれば10頭それぞれ異なる性格と個性を持って生まれてくるのです。
同じ兄弟でも、臆病な子もいれば積極的な子もいるはずです。
これは生まれ持った性格で、その犬が持つ先天的な性格と言えます。
しかしながら、犬の性格は、遺伝的なものとその後の生活環境、飼い主の性格が相まって形成されていくことが研究成果として解明されました。
米ミシガン州立大学の社会心理学者、ウィリアム・J・チョピク氏も、同じような性格ができやすくなるとのコメントもありました。
人間と暮らす犬たちは、野生の犬と違い、ある一定の環境で暮らすことが普通です。
その暮らしは、飼い主の性格や趣味が強く反映されたものであると考えられることから、犬の性格も飼い主と暮らすうちに変化することもあると考えられます。
人間同様、遺伝子に加えて、生活環境が人格形成に大きな影響を及ぼすものではないでしょうか。
犬も人間と同じように性格が大きく変わり、生活の変化による影響がすごく大きいとも言えます。
飼い犬を屋外に連れ出す機会が多い傾向が強いほど、イヌは『社交性が高く』なって、いろいろな物事に慣れていきます。
つまり、実は人間がイヌの性格を作り上げているという可能性もあると言えそうです。
犬は自分を映す鏡だと思うと、色々考えさせられますね。
大事なワンちゃん。
しつけも大事ですが、まずは、私たち飼い主がしっかりとした考え方、生活習慣が大事なのかもしれませんね。