■価格抑制「実感なし」 ガソリン補助金、支給から1年―6兆円超投入、見えぬ出口
時事通信 2023年01月27日
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ガソリン価格の高騰を抑えるため、政府が補助金の支給を始めて27日で1年。
時限的措置だったはずの事業は拡充・延長が繰り返され、9月末までに投入する予算額は6.2兆円にまで膨張している。
ただ、価格抑制効果が消費者に十分に伝わっていないとの指摘もある。
脱炭素化に逆行する手厚い支援策の「出口」は見えてこない。
・ガソリン補助上限額、段階的に引き下げへ 11月30円、12月25円
「給油するお客さんは、政府がいくら補助金を出しているのか実感していない。いつもガソリン価格が高い、高いとこぼしている」。
山梨県山中湖村で給油所を経営する男性は補助金の恩恵を知らない人が多いとみる。
補助金は2022年1月、ガソリンや軽油、灯油、重油の価格を抑える「激変緩和措置」として始動。
石油元売り会社に支給する補助金の上限額は当初1リットル当たり5円だったが、ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰し、3月に25円、4月に35円に引き上げられた。
西村康稔経済産業相は今月23日の記者会見で、「本来ならば200円程度にまで上昇していたガソリン価格を170円程度に抑制し、原油価格高騰による国民生活や経済活動への影響を緩和してきた」と政策効果を強調した。
22年12月に成立した22年度第2次補正予算では新たに3兆円を計上し、今年9月末までの延長を決めた。
足元の原油価格は、世界経済減速による需要減退を見込んで落ち着いている。
政府は補助金の上限額を1月から毎月2円ずつ減額し、5月には25円まで引き下げる方針だ。補助金事業を急にやめれば、買いだめなどの混乱が起こるため、上限額を徐々に縮小しながら「出口戦略」を探る。
石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)も「大きな財源を投入しているので、未来永劫(えいごう)お願いする立場にはない」と話す。
ただ、このまま原油高や円安進行が収束に向かう保証はなく、9月末で事業を終了できるかは見通せない。
西村氏も「先のことを予断を持って答えることは控えたい」と述べるにとどめる。
政府は1月からは3.1兆円を投じ、電気・ガス料金の負担軽減にも乗り出した。
巨額の財政資金を使ってエネルギー価格を抑え込む施策は、家計・企業の省エネへの意欲を鈍らせ、脱炭素化に逆行しかねない。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「税金の使い方として有効性に疑問だ。価格上昇で打撃を受けている家計や事業者に絞って支援する方が価値の高い政策になる」と指摘している。
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価格抑制「実感なし」 ガソリン補助金、支給から1年―6兆円超投入、見えぬ出口
時事通信 2023年01月27日
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023012600856&g=eco
■政府の電気料金値上げ支援策にはガソリン補助金と同様の問題点
NRI(野村総研)2022/10/17 木内 登英
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・補助金制度では、生活に余裕がある高額所得者まで財政支援することに
政府が具体的にどのような枠組みで、電気料金値上げへの対応策を講じるのかは、まだ明らかではない。
しかし、負担増加分に相当する給付金を通じて家計を直接支援するような方式ではなく、コスト増加分の補助金を電力会社に与えることで、電力料金値上げを回避させる方式が、現在検討されているようだ。
その場合、今年1月から実施されているガソリン補助金と似た制度となる。
先手を打って補助金制度を導入することで、電力会社が電気料金値上げを申請することを回避させる狙いがあるのだろう。
その際には、ガソリン補助金制度と同様な問題が生じるのではないか。
第1に、電気料金値上げの負担感は、家計の所得水準によって大きく異なるが、同制度の下ではすべての家計で一律に電気料金の値上げの回避が図られることになる。
電気料金の値上げで大きな打撃を受けない所得水準が高い家計も、相当額の財政資金によって支援されることになってしまう。
家庭向けで2割の値上げ分を政府が補填すると年1.9兆円もの財政支出が必要な計算となる。
これだけの資金を用いて、高額所得層まで支援するのは妥当ではないだろう。
石油元売り会社に対するガソリン補助金についても、高額所得層まで支援することになってしまっており、その予算は今年12月分までで3.2兆円に達するのである。
・財政負担が際限なく膨らむ懸念
第2に、電力会社のコスト増加分と補助金の金額が一致する保証がないことから、補助金の恩恵の一部が家計ではなく電力会社の収益に回る可能性があるのではないか。
補助金を受けながら、電気料金の値上げを申請するところも出てくるかもしれない。
第3に、電気料金の値上げによる節電効果、あるいは脱炭素の取り組みなどを損ねてしまう面もある。
政府はガス料金の軽減策についても導入を検討している。
このように、ガソリン・灯油の値上げ対策が電気料金値上げ対策に広げられ、さらにガス料金の値上げ対策にまで広げられる方向だ。
このままでは、食料品の値上げ対策など、支援対象が際限なく拡大し、財政負担が膨れ上がってしまうことも懸念される。
・景気対策としての政府の物価高対策は必要ない
物価高は個人消費にとって逆風ではあるが、足元の個人消費は比較的安定を維持している。
新型コロナウイルス問題の悪影響が克服されてきているからだ。
このような局面では、景気対策としての物価高対策は必要ないだろう。
必要があるとすれば、消費に占める電気料金の支払いの比率が高く、値上げが生活を圧迫する低所得者の生活を支援する、セーフティネット強化策としての対策だ。
その場合には、限定された低所得者層をピンポイントで支援する給付のような支援策の方が適切だ。
賃金上昇期待が限られる中、物価高が長期化するとの懸念を個人が強めると、消費が大きく抑制されるリスクが高まる。
この点から、目先の対応である政府の物価高対策よりも、物価高が長期化するとの懸念を和らげることが経済の安定維持の観点からは重要だ。
中長期の物価安定の確保は、本来金融政策が担うべき領域である。
日本銀行には、金融政策の柔軟化を伴う形で、中長期の物価安定に対するコミットメントを改めて強く示すことを期待したい。
その結果、「硬直的な金融政策のもとで悪い円安、悪い物価高がどこまでも続いてしまう」といった個人の懸念を緩和することができれば、日本経済の安定に貢献するのではないか。
輸入物価の上昇については、海外での商品市況の上昇よりも、円安進行の影響の方が大きくなってきている。
金融政策の影響を大きく受ける円安を通じた物価高が長期化するとの懸念が、個人の間で高まってきているのである。
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政府の電気料金値上げ支援策にはガソリン補助金と同様の問題点
NRI(野村総研)2022/10/17 木内 登英
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/1017
■政策減税の「恩恵」、自民党献金の多い業種ほど手厚く 本紙調査で判明
東京新聞 2021年4月21日
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研究開発費を使った企業などの法人税を優遇する「租税特別措置」(租特)の恩恵が、自動車や電機など一部製造業に偏っていることが本紙の集計で分かった。
減税額が大きい業界ほど自民党への献金額が多い傾向も判明。献金の「効果」の大きさが浮き彫りになった。
3月に関連法が成立し、大半の租特は2021年度も延長される。
特定の業種に減税の恩恵が集中する状況が今後も続きそうだ。(大島宏一郎)
本紙は租特に関する財務省の資料を分析。
租特のうち本来の納税額から一定額を差し引ける「税額控除」分を抽出し、35業種別の減税額を集計した。
・政権復帰後 計6.8兆円
その結果、自民党が政権復帰後の13年度以降、19年度までの租特による「政策減税」の減税額は計6・8兆円に上ったことが分かった。
業界別では、自動車など「輸送用機械器具製造業」が1兆4000億円で首位。
これに8700億円の「化学工業」、5300億円の「電気機械器具製造業」が続いた。
一方、自民党の政治献金の受け皿団体「国民政治協会」への業界別献金額(2000万円超の大口献金のみの合計)をみると、献金が多い業界ほど、租特による減税の恩恵を受けている傾向が浮かび上がる。
13~19年の献金額首位は、日本自動車工業会(自工会)や自動車メーカーなどの「輸送用機器」で計17・3億円。
13~19年度の減税額も輸送用機器が首位で、献金の影響力の大きさが表れる形となった。
計12・8億円を寄付した献金額2位の「電気機器」も、減税額は3位と多かった。
減税額と献金額の関係について自工会は「政治資金規正法にのっとって適切に行った」とコメント。
ただ、民主党政権で09年9月から約1年間、財務副大臣を務めた峰崎直樹氏は「自公政権になってから一部製造業の意向を背景に減税策が拡充された」と指摘。
経済産業省元官僚の古賀茂明氏は「税制改正は業界の要望を基に決まる。献金が多い業種の意向が反映されやすい」と話した。
・恩恵小さいサービス業
確かに献金が多く減税の恩恵が大きい製造業に比べ、非製造業の献金額は少なく減税額も小さい。
本紙の法人企業統計の分析では、13~19年度の業界別利益(税引き前)の首位は約80兆円の「サービス」だった。
サービスは飲食、宿泊、福祉、医療、広告などで、その利益は約36兆円の自動車業界の2倍超に上った。
一方、サービスに属する企業の大口献金はゼロで、租特による減税額は自動車など(約1・4兆円)の半分以下の約5000億円にとどまった。
近年はサービスなど非製造業の経済規模が拡大し、業種別の国内総生産(GDP)はサービスなどを含む第3次産業が約7割を占める。
だがサービスは従業員の給料を引き上げた場合に適用される「賃上げ減税」などは使えるものの、租特全体の6割を占める「研究開発減税」は活用しにくい。
・専門家「産業構造の変化への対応、不可欠」
租特について日本総研の立岡健二郎氏は「産業構造の変化への対応が不可欠だ」と強調。
その上で「人材投資に関する減税措置を充実させるなどソフト面にも適用すれば、幅広い業種が使え、新しい産業が育つきっかけにもなる」と指摘した。
財務省元官僚で東京財団政策研究所の森信茂樹氏も「産業振興の観点から業種間の偏りを見直してほしい」と話した。
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政策減税の「恩恵」、自民党献金の多い業種ほど手厚く 本紙調査で判明
東京新聞 2021年4月21日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/99557
■自民が組織票固め強化 首相、業界団体と会合
産経新聞 2022/4/5 田中 一世
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自民党が夏の参院選に向け、組織票固めを強化している。
党総裁の岸田文雄首相は5日夕、東京都内のホテルで開いた各種の業界団体との懇談会に出席し、選挙への協力を要請した。
自民は、比例代表に組織内候補を擁立した業界団体の競い合いによって比例代表全体の票の上積みを図る戦略を描く。
5日の懇談会は農林水産、建設、運輸・交通、労働などの分野の業界団体を集め、首相や茂木敏充幹事長ら党幹部、関係閣僚が出席した。
今月中旬までにさらに2回、医療・福祉、教育、金融など他の業界を対象に開催する予定だ。
業界団体をめぐる動きは活発化している。
首相は3月31日、日本歯科医師連盟(日歯連)の高橋英登会長と官邸で会い、歯科治療で使う金銀パラジウム合金の価格高騰対策を要望され、「関係部署にすぐ伝達して対応する」と応じた。
日歯連は元会長らによる迂回(うかい)献金事件などの影響で、正式な組織内候補は見送ってきたが、今回9年ぶりに擁立を決めた。
会員数約5万人の有力団体の参戦で当選枠をめぐる団体間の競争は激化しそうだ。
平成24年の政権奪還以降、自民の比例代表の当選者は18~19人で推移し、今回も「同じくらい」(参院幹部)を見込む。
ただ、令和元年の前回参院選で、特定の候補を優先的に当選させる「特定枠」を導入。
今回も合区対象県の候補2人に適用する見通しで、2枠はあらかじめ埋まる。
前回の最下位当選者の得票数は13万1千票で、特定枠がなかった前々回(平成28年)の10万1千票に比べてハードルが上がった。
これに対し、自民は比例代表で27人を公認しており、業界団体の組織内候補が半数ほどを占める。
近年の比例代表では全国郵便局長会(全特)の「1強」状態で、組織内候補の一人は「楽観できるのは全特だけ」と語る。
医療・福祉分野だけみても医師、看護師、薬剤師、歯科医師、理学療法士などが乱立している。
参院自民幹部の一人は「各団体が(競い合いで)本気になって票を出せば比例票全体が増え、当選者も増える」と期待する。(田中一世)
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自民が組織票固め強化 首相、業界団体と会合
産経新聞 2022/4/5 田中 一世
https://www.sankei.com/article/20220405-IJLJUK677RJTZMZDMS3MPGBSRI/
■投票率の低迷は自民有利の傾向 獲得票数は大敗した2009年と同程度
東京新聞 2021年11月1日
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衆院選の小選挙区(定数289)では、自民党が追加公認の無所属を含め計189議席を獲得した。
2017年の前回衆院選から26議席減らしてもなお全体の65%を占める。
小選挙区全体での獲得票数は2762万票で、同党が下野した09年衆院選とほぼ同じ。
一方で投票率は、政権復帰を果たした12年衆院選以降、低迷している。
近年の同党の強さは、獲得票数よりも投票率と連動する傾向がある。
09年衆院選は、政権交代に注目が集まったことで投票率が69%台と、小選挙区制導入後で過去最高だった。
小選挙区で自民党は64議席しか得られず、政権を失った。
12年衆院選は、小選挙区で全体の79%に当たる237議席を得たにもかかわらず、獲得票は計2564万票と、09年の2730万票から大幅に減らした。
投票率は09年から約10ポイント急落した。
14年衆院選以降、投票率は今回も含め過去最低水準が続く中、自民党の獲得票は2500万票台半ばから2700万票台半ばで推移している。
議席数は17年まで7割台を維持。今回も全体の3分の2近い議席を得て、自民党と同様に議席を減らした立憲民主党など他党の追随を許さなかった。
小選挙区での自民党は、全有権者の4分の1程度の「固定票」にずっと支えられているのは間違いない。
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投票率の低迷は自民有利の傾向 獲得票数は大敗した2009年と同程度
東京新聞 2021年11月1日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/140331
■自民最大の「集票マシン」不適切な政治活動浮き彫り 全容解明は遠く
西日本新聞 2021/11/27
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全国の郵便局長によるカレンダー配布問題は26日、「全国郵便局長会」(全特)が日本郵便の経費で購入されたカレンダーの政治流用を指示したと認定され、全特会長ら96人を処分する異例の事態に発展した。
自民党最大の「集票マシン」とされる全特の不適切な政治活動の一端は明らかになったが、会社側は配布の詳しい状況は把握していないのに、「支援者も広い意味で郵便局のお客さま」として経費の目的外流用は否定した。
「内輪」による調査は踏み込み不足の内容で、専門家からは徹底した調査を求める声が出ている。
・「会社の業務と局長会活動が、混然となっていた」
同社の立林理代表取締役兼専務執行役員は記者会見で慎重に言葉を選びながら説明した。
訓戒処分となった9人の「主幹地区統括局長」は、いずれも全国約1万9千人の局長で構成する全特の最高幹部。
他に処分された81人の地区統括局長も、各地区で約100の郵便局を束ねる要職だ。
全特は、過去3度の参院選の比例代表に自民公認の組織内候補を擁立し、党内トップで当選させてきた。
実質的に局長の人事権を持つなど同社の経営にも強い影響力を持つ。
九州の局長は「処分は軽すぎるとは思うが、会社が上層部を根こそぎ処分した事実は重い。世の中から厳しい目が向けられている。今後の活動にも大きな影響が出ると思う」と話した。
だが調査結果には現場の局長からも疑問の声が上がっている。
調査は全特がカレンダーを組織内候補の後援会員らに配布するよう指示したと認定した。
一方で、立林氏は「カレンダー配布は会社業務で行われた」などと説明し、目的外流用は認めなかった。
全特にカレンダー代を損害賠償請求する考えもないという。
現場の局長が顧客や支援者にどのような言葉を掛けてカレンダーを渡したのかなども確認されず、どれだけの数が流用されたのかも不明のまま。
それでも立林氏は「全貌の把握は十分できた」と繰り返した。
東北の局長は取材に「局長会の地区役員の指示を受け、参院議員への支援のお礼を伝えながら配布した。経費が目的外に使われたのは明らかだ」と証言する。
調査結果は四国地方局長会では「不正な指示は出されなかった」と認定したが、西日本新聞が入手した同局長会の内部資料には、カレンダー配布を「参院選に向けたお客様・支援者対策」と記載していた。
政治とカネを巡る問題に詳しい日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)は「誰の指示でどのようなことが行われたのか詳細な事実関係が明らかになっておらず、責任の所在も曖昧だ。調査が尽くされたとは言えない」と指摘した。 (宮崎拓朗、小川勝也)
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自民最大の「集票マシン」不適切な政治活動浮き彫り 全容解明は遠く
西日本新聞 2021/11/27
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/837961/
■「自民党支持を強制」「配偶者も面接」全国郵便局長会の「後継者育成マニュアル」に批判噴出
ライブドアニュース 2022年6月8日 Smart FLASH
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中小規模郵便局の局長で構成される任意団体・全国郵便局長会(全特)が作った「後継者育成マニュアル」が、国会で問題視されている。
マニュアルには、研修での具体的な指導例として「都道府県単位に自由民主党地域支部を結成」とある。
さらに、全特への帰属意識を重視し、日本郵便に局長として推薦する人には政治活動の必要性を教えたうえ、配偶者も面接し、協力する意思を確認するよう求めている。
5月31日の参議院予算委員会で、日本共産党の小池晃参議院議員がマニュアルの存在を追及すると、日本郵政の参考人は「存在は承知している」と認めた。
「さらに、6月7日の参議院総務委員会では、共産党の伊藤岳参議院議員が、昨年2021年6月の福岡地裁での公判について追及しています。公判では、日本郵便九州支社総務人事部の課長が、全特支社に対し『内々に候補者について情報提供してくれる。局長会と無関係の人が応募してくることもあるが、採用されたケースは知らない』などと供述。この供述調書は裁判で証拠として採用されていることも明らかにしました。全特の会員は多額の費用負担と、自民党候補への投票を求められます。つまり、自民党支持でなければ、日本郵政の局長にはなれない、ということになってしまうのです」(政治部記者)
参議院比例代表選挙では、自民党候補のなかで全特の推薦候補が3回連続でトップ当選。
全特は、自民党最大の集票マシンといわれてきたが、マニュアルの存在が明るみになると、ネット上では批判の声が巻き起こった。
《票田の郵便局長会を自民党が調査する訳無いよ》
《局長会はいつまでこんな胡散臭い事を続けているのか。支店長が集まって政治活動をしている会社など聞いた事がない》
《指摘された内容そのものはみなし公務員、公共性のあり方を根本から壊しかねない結構根が深い問題に思う》
6月3日、日本郵便は、マニュアルの内容について調査を始めた。
特定の政党支持を条件に局長が採用されているとしたら、郵便局とはなんと恐ろしい「会社」なのだろうか。
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「自民党支持を強制」「配偶者も面接」全国郵便局長会の「後継者育成マニュアル」に批判噴出
ライブドアニュース 2022年6月8日 Smart FLASH
https://news.livedoor.com/article/detail/22304673/
■<論壇時評>統一教会と自民党 固定票と「悪魔の取引」 中島岳志
東京新聞 2022年9月1日
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政治学者の中北浩爾は、『自民党?「一強」の実像』(中公新書、2017年)の中で、小泉純一郎元首相と安倍元首相の選挙戦術の違いに注目している。
小泉が重視したのは無党派層である。
これまでの自民党の支持層を「既得権益」と批判し、「自民党をぶっ壊す」と連呼することで、無党派層の票を大量に獲得した。
一方、第一次内閣の失敗を経験した安倍は、小泉の選挙戦術から距離をとり、固定票を積み上げる選挙戦術をとった。
安倍にとっての「敵」は、従来の自民党支持層ではなく、リベラル色の強い民主党だった。
そのため、リベラル批判で一致する右派勢力が、安倍にとっての岩盤層となっていった。
安倍が首相の座に復帰すると、選挙での勝利を重ねることで、長期政権の土台を築いていったが、この選挙を支えたのが、固定票だった。
中北はここで重要な指摘をしている。
「無党派層を重視した小泉政権は、高い投票率の下でこそ勝利したのに対し、安倍政権は低い投票率の下で勝っている」
安倍自民党が勝利をおさめた選挙は、どれも投票率が低い。
投票率が低ければ低いほど、野党に対して固定票で上回る与党が、圧倒的に有利になる。
すると、おのずと固定票への依存度が高まる。
ここに自民党と統一教会の共犯関係が生まれる素地ができあがる。
統一教会は組織票だけではなく、選挙運動を支える人員などを無償で提供した。
これに対して安倍政権は、長年にわたって申請を拒んできた統一教会の宗教法人名の変更を、一五年、下村博文文部科学大臣のもと一転して許可した。
このような相互関係を、鈴木エイトは「悪魔の取引」と表現している。
ここでポイントになるのは、参議院選挙である。
『武器としての世論調査』(ちくま新書、2019年)の著者・三春充希は、「旧統一協会の組織票分布の推定」(note、8月8日公開)において、統一教会の参議院選挙における戦略を分析している。
三春は、統一教会の有権者を八万三千人程度と推計する。
参議院の比例代表選挙で政党が一議席を獲得するためには百万票程度が必要となる。
しかし、獲得議席がどの候補者のものとなるかは、個人名が記された票の数によって決まる。
「自民党の場合、その際に必要となる票は十二万票程度であるため、旧統一協会の票を誰に乗せるかは、自民党の各派閥の中でどのように議席が分配されるかということに関わってくる」。
つまり、統一教会のプレゼンス(存在)を最大化することができるのが、参議院比例代表選挙の「非拘束式名簿」なのだ。
統一教会はこの方法を通じて、実質的な教団の組織内議員を与党の中に送り込み、政治的影響力を行使してきたと見られる。
統一教会と自民党の蜜月を生み出した背景には、低投票率と選挙制度のあり方がある。
有権者もまた、この問題にかかわってきた当事者であることを、自覚しなければならない。(なかじま・たけし=東京工業大教授)
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<論壇時評>統一教会と自民党 固定票と「悪魔の取引」 中島岳志
東京新聞 2022年9月1日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/198721
■自由であってはいけない社会? 日本は国民の半分しか投票しない「半分民主主義」【はがくれ時評】
サガテレビ 2022/07/06
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日本は民主国家であろうか。
厳密に言うと違う。
国政選挙の投票率をみれば分かる。
選挙区も狭く、比較的身近な衆院選でも最近は50%前後。
昭和が終わる1980年代後半までは70~80%はあった。
参院選も同様で、3年前の前回が48.8%と史上2番目に低かった。
民主国家というのは、主権者である国民が議員を選び政治を託す。
その基本が選挙なのに、今は国民の半分しか投票しない。
「民主主義」ではなく「半分民主主義」なのである。
日本は自由な社会であろうか。
憲法は思想や信教、表現などさまざまな自由を掲げてはいる。
しかし、現実は個々の自由をおおらかに認める社会だろうか。
小さいころから学校現場では、ひとと同じ行動が「善」で、自由な発想、自由な行動は「異端」である。
不登校の児童生徒が増え続ける理由はここにある。
ひとと違う意見はバッシングに遭う。
ネット社会がそれを後押しする。
いつしか日本は「自由であってはいけない社会」になってはいないか。
コロナ禍で飲食店は閉めろ、酒を出すな、外に出るなの大合唱だった。
行政による要請で義務ではないにもかかわらず、ルールに従わないだけで異端児扱いされる。
給付金を受け取らずに、独自のコロナ対策で営業を続けた東京都内の飲食店女性店主は、朝日新聞の取材にこう言った。
「コロナ禍で私たちは政府や自治体のルールを疑わず、個人の自由を明け渡している」。
生きていく上でかけがえのない「個人の自由」は、あっけなく葬り去られている。
国会議員だって、自由な主義主張は許されない。
与党は原発容認、大型開発推進、国防費増額と判で押したように訴えがおんなじだから、演説を聞かなくても中身は分かる。
参院だって「党議拘束」というものがあって、所属する党が言うことに「いや俺は違う」とは言えない。
衆院と違って、6年間じっくり仕事ができるのだから、目先の課題より、天下国家を論じて欲しいと思うが、ついぞ聞かない。
国会議員も不自由な「サラリーマン」なのである。
国会議員をこの不自由さから解き放つための提案がある。
投票を義務化してはどうだろう。
賛否はあるが、各地の選管が投票率アップの策を講じる必要もなくなる。
世界を見ても、罰則の有無は別にして30カ国ほどが義務制である。
ヨーロッパのイタリア、ベルギー、スイス。
アジアではフィリピン、シンガポール、タイ。
オーストラリアもそうだ。
投票率が90%近いとなれば、おそらく候補者の主張も変わってくる。
都市型、高齢者型政党である自民党は、若者やサラリーマン、さらに地方など幅広く配慮した政策も不可欠になってくる。
支援組織だけにこびへつらう演説は影を潜め、論戦は間違いなく活性化する。
「選挙に関心のない人たちは、そのまま寝てしまってくれればいい」との”迷言”を残した自民党幹部がいた。
組織選挙一辺倒で、浮動票を含めた真の世論など不要としてきた政党にとって「投票率90%台」は脅威であろう。
こうした政治家にとっても、日本の選挙風土にとっても、投票義務制は大いなるカンフル剤になり得る。
サガテレビ解説主幹 宮原拓也
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自由であってはいけない社会? 日本は国民の半分しか投票しない「半分民主主義」【はがくれ時評】
サガテレビ 2022/07/06
https://www.sagatv.co.jp/news/archives/2022070610093
■なぜ無党派層は目を覚まさないのか? 日本を動かす自民「組織票」の正体
まぐまぐニュース 2017年10月26日
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・投票前に勝利確定、野党が太刀打ちできない「組織票」の実態とは 投票率が低いほど組織票が有利に
解散の大儀がない、疑惑隠しだ…など様々な批判を受けながら行われた衆院選挙は、結局は自民党が改選前とほぼ同じ安定多数、自公あわせて2/3以上の議席を確保しました。
今回の選挙の最終投票率は53.68%で、戦後最低を記録した前回の選挙に次いで、2番目に低い投票率となっています。
投票率が下がると、組織票を味方にした勢力は有利となります。
組織に属さない票(いわゆる浮動票)が少ない中でも、組織票はどんなことがあっても必ず投票に行き、一定の得票となるからです。
ここに、政権不支持率が支持率を上回っても、選挙では自民党が多数の票が取れる理由が隠されていると思われます。
では、この組織票とは具体的には一体何なのでしょうか?その正体の一片をご紹介しましょう。
・現場サイドから見える組織票
私のブログに、ある投稿がありました。
その記事のテーマが、まさに「政権不支持率が高いのに、与党の議席獲得数が多いのはなぜか」というテーマだったのですが、そこに読者からコメントを寄せていただいたので、まずはそれをご紹介します。
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地元では、子供たちのスポーツ団体が加入する○○協議会の理事等を自民党の市議会議員がつとめています。
自民党議員に投票するようにと、各団体に働きかけがあり、監督さんからお母さんたちに説明があります。
そして○○さんが勝たないとグランドの割り当てが無くなるんだって!とお母さんたちの間で話がまとまります。
地域の福祉協議会では、各地区の役員が会議名目で召集され、翌年度以降の市からの予算について説明があり、自民党の○○さんがご尽力下さいますと説明があります。
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これ、すごい生情報でしょう。
そして、こんな情報もあります。
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日刊ゲンダイは、選挙の現場では自民党に冷たい風が吹いている、と書いている。
確かに街頭では自民が勝てるような空気はほとんどない。
が、自民が圧倒的に強い保守王国・九州で、その秘密の一端を聞いた。
選挙期間中、仕事は午前中だけ、午後は従業員全員電話がけで自民党候補を推す会社がある、という。
話をしてくれた方の友人が勤めている会社で、会社の名前まで聞いた。
会社ぐるみで、自民党候補の応援。
もちろんこれは本人の自発的意思ではないし、業務の一部としてやらされていて、給与も支払われているのだから、公職選挙法違反だと思われる。
こんなことが、あちこちで行われていて、不正が日常化しているため、感覚が鈍磨している可能性がある。
「選挙とはそういうものなんだ」と。
だから「選挙の現場」は、街頭だけとは限らない。
会社の中もまた「選挙の現場」になっている。
しかも「密室」だ。
自民党は組織票で固めている、とよく言われる。
しかし、組織票の実態とは、このような有無を言わせない不正と半強制の塊なのではないか。
職がなくなるのが怖い、仲間外れにされるのが怖い。
そんな不安心理に漬け込む卑劣なやり方である。
出典:岩上安身のツイ録 ? IWJ Independent Web Journal(2017年10月19日配信)
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前者のコメントは、地方議員が国政をサポートするという典型例で、国政で勝つには地方組織がしっかりすることが重要だということの一端を示しています。
地方議員は祭りやイベントにこまめに参加し、地域の利益のために国会議員を利用しますが、持ちつ持たれつの関係なわけです。
いっぽう後者はまさに「組織票」の実態を表しています
。どちらも生々しい現実なのです。
・業界票・組合票・宗教票には勝てない?
選挙は「業界票・労働組合票・宗教票」で決まると言われています。
一般の人が投票しても何も変わらないという嘆きはよくわかります。
「業界票・労働組合票・宗教票」は、自分たちの利益しか考えていません。
しかし、これら組織票の効力を薄めるには、投票率を上げることしかないのです。
浮動票、すなわち組織に属していない票を増やすことです。
かつて森喜朗元総理が選挙期間中に「無党派層は寝ていてくれたほうが良い」と発言したのは、紛れもない本音です。
投票においてネット活用の効率化が進まない理由も、このあたりにあるのではと勘ぐりたくなりますね。
・二世議員はなぜ強いのか?
これはよくマスコミでも言われていますが、各選挙区で当選者が1人しか選ばれない小選挙区制度が、政党得票数とは関係のない選挙結果を生み出すと言われています。
その結果が、自民党圧勝を招いたという人もいます。
確かに、小選挙区制度は「どちらかがましかを選ぶ究極の地獄の選択」と言った人もいるほどです。
でも、もう少しこの部分を掘り下げてみましょう。
これは、なぜ二世議員は強いのかにも関係してきます。
選挙は「地盤・看板・鞄」が大事だと言われます。
地盤・看板はわかりますよね。
3つ目の鞄とは選挙資金のことです。
そして、ここで最も重要なのは地盤を持っているかどうかです。
その地盤を守っているのが、地元で選挙対策本部長と呼ばれる有力者で、たいていの場合、先代からスライドして、そのまま二世議員にも就くことになり、これが二世議員にとっては何よりも宝なのです。
かつての中選挙区制度においては、政党で選ぶのではなく、候補者の名前で選ぶ選挙でした。
しかし今は政党で選挙が決まります。
候補者にとって、選挙運動という面では、中選挙区制よりも小選挙区制のほうが楽でしょうね。
中選挙区制度では、地元密着度がより重要になってきます。
だからお金が要ります。
すごくお金がかかるのです。
以前に自民党の石破茂氏が、「お金がかかりすぎて、二度と中選挙区制度は嫌だ」と言っていたインタビュー記事を思い出します。
中選挙区で戦っていた地元有力者の選挙運動は、それはそれは気配りの運動で、有権者への配慮は半端ないものでした。
小渕恵三元総理の娘の優子氏が、群馬選挙区の有権者を歌舞伎見学バスツアーに招待したことが問題視されたことがありました。
そのことで経済産業大臣を辞任することになったのですが、地元有権者に「候補者の名前」を書いてもらうためには、そこまでしなければならないということです。
小渕優子氏の地元選対委員長はお父様から仕えた人で、中選挙区制度の選挙を戦い抜いてきた人です。
なにせ小渕恵三元総理の選挙区には、中曽根康弘元総理、福田赳夫元総理という自民党の重鎮と、さらに山口鶴男元社会党書記長という大物が勢ぞろいしていて、その中で生き残りをかけて必死にドブ板作戦を繰り広げてきた選挙参謀なわけです。
そういう人が、自民党候補者の選挙対策本部長を務めています。
これは、離合集散を重ねる野党議員スタッフには到底できない芸当です。
これが自民党議員の強さ、言い換えれば議員自身ではなく議員を支える組織の強さなのでしょう。
・組織票に勝つには「投票率を上げる」しかない
ここまで組織票の表と裏を見てきましたが、このような環境で野党が自民党に勝つには、もう空中戦しかありません。
「風」を起こして勝利を掴むしかないのです。
民主党が政権をとった選挙も「風」のおかげでしたよね。
そこに小沢一郎氏の自民党流選挙運動が加わって、民主党は勝てたのです。
風を起こし、その風が組織票に勝つには、投票率が高くないとダメなのです。
今の選挙は、始まる前にすでに決着がついているのかもしれません。
今回の選挙結果を見ると、そう感じざるを得ませんね。
政権不支持率が高いのに、なぜ与党が過半数の議席を確保できるのか…その答えが見えた気がしませんか?
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なぜ無党派層は目を覚まさないのか? 日本を動かす自民「組織票」の正体
まぐまぐニュース 2017年10月26日
https://www.mag2.com/p/money/323639
■日本郵政マル秘名簿で暴く「特定郵便局長ネットワーク」、腐っても鯛の60万集票マシンの内幕
週刊ダイヤモンド 2021.7.15 浅島亮子:副編集長
■自由民主党の友好団体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
■【図解・政治】参院選2019・主な業界団体の集票力(2019年7月)
時事通信 2019年7月22日
■【独自】日本郵便経費で政治活動 6億円超? 自民後援会員にカレンダー
西日本新聞 2021/10/9
■郵便局長になるには自民支援組織への加入必須?思想信条で差別の恐れ
朝日新聞 2021年11月15日
■ガソリン補助金は「正しい」のか?市場メカニズムを壊す公的介入の意義とは
週刊ダイヤモンド 2022.3.16 小嶌正稔:桃山学院大学経営学部教授、東北大博士(経済学)
■石油元売り3社が最高益 22年3月期
時事通信社 2022年05月13日
■【日本民主化計画の裏の理由】
「アメリカがほしい工業製品を作らせ、アメリカで余った食糧を買わせるなどすれば、かなり利用価値の高い植民地にできる」
蔭山克秀:ダイヤモンドオンライン 2015.7.31
「日本はこうしてつくられた!今読み直す、米軍占領下のシナリオ」
■日本人が知らない「闇歴史」
~アメリカに支配された70年の真実~
「日本の主体的な意思によって行われたものではない。政治も経済も文化も勝者であるアメリカに操られてきた」
「日本はアメリカの属国のままでよいのだろうか」
日刊大衆(双葉社)2015/9/21
■愚民政策(Wikipedia)
「為政者が国民を愚民と呼ばれる政治的無知状態に陥れ、その批判力を奪おうとする政策」
「娯楽による心理的利己主義の普及(パンとサーカスのサーカス)、偏向報道、全体主義国家や軍事国家などの一部の反民主主義教育が愚民政策の例」
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