日本の経済を映し出す、中小企業白書。
ベンチャー企業も、一つの中小企業ですね。
2018年版中小企業白書がもう少しで公開されます。
今回は2017年度版中小企業白書について、振り返ってみたいと思います。
※追記 2018年版中小企業白書の記事をアップいたしました。
宜しければ、ご覧ください。こちら→2018年版中小企業白書を個人的視点で要約してみた!
Contents
「中小企業白書」とは?
中小企業白書はご存知でしょうか。
「中小企業白書」とは、中小企業庁が毎年4月~5月にかけて発表している、中小企業とそれを取り巻く環境についての調査と分析です。
国会に報告する目的で作成をされています(中小企業基本法第11条に基づく)。
大企業がけん引する日本経済ですが、日本の大半は中小企業が占めています。
大多数である中小企業の実態、そしてその課題は、日本経済そのものを映し出す、ともいえるかもしれません。
中小企業白書のサブタイトルの意味とは?
中小企業白書には毎年サブタイトルがついています。
サブタイトルは「中小企業庁が最も伝えたいこと」です。
2017年版は「中小企業のライフサイクル‐次世代への継承‐」。
つまり、2017年版は「次世代への継承」をどうするのか、ここが最大の論点のようです。
参考までに、過去の中小企業白書のサブタイトル一覧は以下です。
【中小企業白書のサブタイトル一覧】
1999年版(平成11年版)「経営革新と新規創業の時代へ」
2000年版(平成12年版)「IT革命・資金戦略・創業環境」
2001年版(平成13年版)「目覚めよ!自立した企業へ」
2002年版(平成14年版)「まちの起業家の時代へ」
2003年版(平成15年版)「再生と企業家社会への道」
2004年版(平成16年版)「多様性が織りなす中小企業の無限の可能性」
2005年版(平成17年版)「日本社会の構造変化と中小企業者の活力」
2006年版(平成18年版)「『時代の節目』に立つ中小企業」
2007年版(平成19年版)「地域の強みを活かし変化に挑戦する中小企業」
2008年版(平成20年版)「生産性向上と地域活性化への挑戦」
2009年版(平成21年版)「イノベーションと人材で活路を開く」
2010年版(平成22年版)「ピンチを乗り越えて」
2011年版(平成23年版)「震災からの復興と成長制約の克服」
2012年版(平成24年版)「試練を乗り越えて前進する中小企業」
2013年版(平成25年版)「自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者」
2014年版(平成26年版)「小規模事業者への応援歌」
2015年版(平成27年版)「地域発、中小企業イノベーション宣言!」
2016年版(平成28年版)「未来を拓く稼ぐ力」
過去を見ても、経営革新、新規創業、再生、変化、挑戦、自己改革、イノベーションなどの文言が多用されています。
つまり、「中小企業白書」という中小企業の課題のポイントは、新しいことへの挑戦、チャレンジが多くを占める、ということが分かります。
戦後、団塊世代が立ち上げた企業の多くが創業数十年を経過しています。
団塊世代の引退が、今のタイミングになるのでしょうか。
もちろん、時代の変遷で事業内容の多くが取り残されているという企業も多くあるのかもしれません。
「中小企業白書」の構成について
中小企業白書の内容は主に第1部と第2部に分けられています。年によっては第3部が加わります。
主に第1部は毎年ほぼ同じ、現状や課題について。
そして第2部や第3部で、さらなる課題深化、また課題解決方法やヒントについて述べられています。
2017年中小企業白書において、第1部は「平成28年度(2016年度)の中小企業の動向」、そして第2部は「中小企業のライフサイクル」を表題にしています。
2017年版「中小企業白書」を個人的視点で要約してみた!
もうすぐ2018年版「中小企業白書」が発表されると思います。
その前に、昨年度版、2017年版中小企業白書を個人的視点で要約してみました。
時間のない人、そして女性や学生などへ、少しでもご理解いただけるようにしています。
まずは第1部です。
第1部編
第1部は毎年、全国中小企業の現状について述べられています。
2017年第1部のポイントは、「景気が良くなってきています」というもの。
そして課題提起。大きく分けて3点です。
①廃業の多さ→高齢経営者が要因
②労働生産性の低さ→大企業との比較
③人材不足
この3つの課題提起が、第2部につながっていきます。
第2部編
そして本題の第2部です。
第2部タイトルが「中小企業のライフサイクル」。
4つの章から構成されています。
第1章 起業・創業
第2章 事業の承継
第3章 新事業展開の促進
第4章 人材不足の克服
一章づつみてみましょう。
「第1章 起業・創業」
日本の開業率の低さについて述べられています。
以前記事を掲載しております。
こちらをご覧ください。
「この世に生を受けたこと、それ自体が最大のチャンスではないか!【中小企業白書から見えるチャレンジ精神】」
「第2章 事業の承継」
この第2章は、中小企業庁が、2017年中小企業白書で最も伝えたい内容の一つだと思います。
団塊世代が立ち上げた企業の多くが、事業継承する時期となっています。
倒産や廃業に至らないためにも、事業継承をしっかりとしましょう、という内容です。
身内に事業継承する以外にも、既存社員が事業継承することもありますし、場合によっては事業譲渡やM&Aなどの選択肢を提示しています。
その場合、事業保証をどうするのか、そのヒントも述べられています。
いずれにしても、事業継承は、事前にしっかりと準備し、プロセスを踏んだうえで、リスクを最小限にとどめましょう、という意図が感じられます。
「第3章 新事業展開の促進」
新事業展開は、例年の中小企業白書の内容でも重要なポイントの一つです。
停滞する中小企業は既存の事業1本で低迷してきている企業が多いのも特徴の一つです。
特に新たに事業継承した、若手の経営者が事業再生の重要なポイントとなります。
旧来の事業において、時代の変遷、商品のライフサイクルなど、旧来の商品やサービス1つだけでは、どうしても業績が低迷しがちです。
新たな商品やサービス開発と合わせて、新たな事業の柱を育てましょう、という内容です。
ヒントが数点挙げられています。
以下、4つの新事業展開のヒントです。
①マーケティング
リソースの少ない中小企業は特にマーケティングが重要です。
〔1〕自社の強みの把握
〔2〕市場ニーズの把握
〔3〕自社の製品・サービスのPR活動
マーケティングをしっかりしましょう、という内容です。
特にIT化の重要性も述べられています。
②研究開発
他社との差別性を明確にするためにも、研究開発を強化しましょう、というものです。
③外部リソースの活用
自社だけでは新事業も簡単ではなりません。
人材不足をカバーするうえでも、外部との連携は重要な要素の一つです。
④新たな潮流の活用
IoT、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボット、さらにはシェアリングエコノミーの潮流についても述べられています。
革新的技術やサービスは、飛躍的成長にもつながる可能性があります。
「第4章 人材不足の克服」
人材不足はここ数年中小企業白書の継続的、かつ大きな課題です。
働きやすい職場環境や制度を整え、また女性や高齢者を積極活用し、人材確保しましょう、という内容です。
人材不足は中小企業の課題のみならず、今、日本経済全体にとっても大きな課題かもしれません。
2017年版「中小企業白書」総括
2017年版「中小企業白書」が述べている、中小企業における大きな課題は、やはり、第2部の4つの章にまとめられそうです。
つまり、「起業・創業」「事業の承継」「新事業展開の促進」「人材不足の克服」です。
でも、起業や創業、そして新事業展開、つまり新しいことへの挑戦が大きなポイントではないでしょうか。
私たち個人もそう。
日本の中小企業にとっても、新しいことへの挑戦、チャレンジが、自らの未来を創造するのかもしれません。
「はじめること」の壁
中小企業白書では、起業までのハードルについても述べられています。
第2部第1章のこちら。
「起業希望者が起業準備に着手していない理由」(中小企業白書2017、第2節:起業希望者・起業準備者の実態と課題より)
そして、もう一つがこちら。
「起業準備者が起業できていない理由」(中小企業白書2017、第2節:起業希望者・起業準備者の実態と課題より)
起業を希望している段階では「知識・ノウハウ」、準備段階では「資金」が課題のトップです。
お金と知識。
大きな課題です。
どうすれば、この壁を乗り越え、廃業を上回る起業を実現できるのでしょうか。
スモールビジネスのススメ
中小企業白書では、そのヒントも述べられています。
それが、第2部第1章のコラム欄で掲載されている、「兼業・副業としての起業」「フリーランスとしての起業」です。
戦後は基幹産業の育成を中心として、国策として復興してきました。
そのため、当時の起業とは、国家プロジェクトとしての起業がメインでした。
膨大な資金を元手に事業を始めることが、「起業」そのものの姿でした。
しかし、先進国の仲間入りを果たした昨今。
起業はスモールビジネスを中心に変化してきました。
「個」の時代、ある意味、民主化。
IT化の潮流と合流し、「超スモールビジネス」も広がりつつあります。
政府が進める働き方改革も柔軟な制度設計を検討する企業も増えています。
数億円かけて事業を始める時代ではないのかもしれません。
「小さく事業を始める」
一つのヒントかもしれません。
「はじめる」ことの貴さ
中小企業白書では、団塊世代の作った「高齢企業」の廃業が課題となっています。
日本経済にも大きな影響を与えかねません。
それを支えるのが、起業。
起業家、そしてベンチャー企業は日本経済にとって貴重な存在かもしれません。
起業に限りません。
今のポジションで新規事業を立ち上げる、新商品を開発する、新サービスを育成する、などなど。
企業成長にとって大きなプラスとなるかもしれません。
さらに、事業だけではありません。
個人の「はじめる」も新たな価値創造です。
始めるのは、いつの時代も個人。
個人が「はじめる」こと、第一歩ではないでしょうか。
新しい分野の能力開発を始める、新しい資格に挑戦する、新しい趣味にチャレンジする、などなど。
一人一人の「価値」創造が、日本の「価値」の原点かもしれません。
日本経済も「個人の想い」から。
まず、はじめること。
目の前にある小さなことから、新しいことにチャレンジしてみませんか?
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