昨今、「見える化」「可視化」と様々な場面で聞くことがあります。
でも、この「見える化」、どういったものなのでしょうか。
組織の見える化、営業の見える化、経営の見える化とは?
今回は経営における「見える化」についてお伝えします!
Contents
「見える化」とは?
企業経営において「見える化」「可視化」という言葉が使われます。
一概に企業経営の「見える化」と言っても様々な使い方、意味があるのではないでしょうか。
一般的に「見える化」とは、「見えないもの」を「見えるようにすること」です。
つまり、今見えていない課題など(潜在的課題)を見えるようにすること(顕在化)が本来の意味であると言われています。
では、この「見える化」、もともとどのように使われ始めたのでしょうか。
日本の場合「見える化」は製造現場からスタートした考え方だと言われています。
有名なものは自動車メーカーのトヨタ「かんばん方式」ですね。
製造現場の「帳票」が「かんばん」と呼ばれたことから「かんばん方式」と名乗られています。
この「かんばん方式」は、当初「適正在庫」を目的に生み出されました。
資金負担である在庫量を最適な数に減らすために考えられた仕組みで在庫の部品が不足しないギリギリの数を仕入れ、必要以上に在庫を持たないようにするために考えられたと言われています。
すごいですね。
やはり、日本の経営の仕組みは基本、「製造業」から生み出されたと言っても過言ではないでしょう。
製造の現場では常に「カイゼン」(KAIZEN)を繰り返し、時には光や音なども活用しながら、最適な「製造プロセス」が「見える」ように工夫されてきたことが背景にあるようです。
「見える化」は、このように「生産性向上」(効率化)を実現するための現状把握の手法として発達してきたと言えるでしょう。
現在では製造現場以外にも、一般事務やオフィスワーク、また経営者が会社全体の状況を把握し課題を抽出するために頻繁に使われ、広がりつつあります。
2種類の「見える化」
製造現場から派生してきた「見える化」。
「見える化」は様々な部署、職種で発達してきましたが、大きく分けて2種類「ミクロ的見える化」「マクロ的見える化」に分かれると言われています。
2つの「見える化」
①「ミクロ的見える化」
②「マクロ的見える化」
それぞれみてみましょう。
①「ミクロ的見える化」
まずはミクロ部分。
一つ一つの業務や作業を「見える化」する方法です。
一つ一つの業務プロセスを「見える化」することで、今まで実施していたことに無駄が多かった、ということも改善できます。
また、職人やプロが実施する業務や作業が「ブラックボックス化」してしまうと、属人化するリスクや組織規模が大きくならないなどのデメリットが生じます。
できる限り、俗人化せず、新入社員やバイトなどでも遂行できる「仕組み」を整えることで、職人やプロ社員の負担を軽減し、組織も一気に拡大することも可能となります。
マニュアル化したり、成功事例やベストプラスティクスの共有することも可能となります。
また、その製品や商品、サービスが受注してから顧客へ配送されるまでの一連のフローを把握することも「見える化」の一つです。
例えば、営業社員が受注し、製造部署が製造し、顧客へ納品する、その一連した流れを全社員でプロセスを把握する方法としても使われます。
役員から各部署の責任者、そして各部署の担当社員に至るまで「共有」することで、ミスやトラブル防止につながっていきます。
②「マクロ的見える化」
もう一つがマクロ部分。
主に経営者が、全社的視点で経営判断するうえで活用する「見える化」です。
例えば、「リアルタイム」で各部門毎の売上やコスト、採算などの全体数値を把握する方法です。
四半期毎、半期毎、そして通期の財務数値や、受注残高や入金状況、部署や社員毎の効率化なども把握し、的確な経営判断を行うことができます。
部署や支店毎、また1人1人の生産性に至るまで数値化することも可能となります。
過去と現在の時系列、複数部署を跨ぐ全社的視点で、「今と未来」すべきことが見えてくるのではないでしょうか。
「見える化」のメリット
「見える化」には様々なメリットがあります。
今まで見えなかった潜在的課題が見えることで、どのように手立てすべきか、解決策が見えてくるのではないでしょうか。
まずは「ミクロ的見える化」のメリットです。
「ミクロ的見える化」のメリット
・効率化、無駄な業務の削減(業務プロセスの見直し)
・リスク回避やリスク低減(業務フローリアルタイム共有によるミスやクレーム、トラブルなどの早期解決、内部統制やコンプライアンス強化)
・各部署のスキル底上げ(職人やトップ営業マンの成功事例やベストプラクティスの共有)
・組織規模拡大のレバレッジ化(属人部分の縮小)
・業務分掌による様々な人材の活用(女性や高齢者、障害者人材の活躍できる業務創出)
・公正公平な評価(各部門毎や社員個別毎の行動可視化)
などです。
そして「マクロ的見える化」のメリットが以下です。
「マクロ的見える化」のメリット
・自社の現状把握(売上、コスト、財務などの多角的視点による現状把握)
・経営課題の抽出(他社との比較、過去実績との比較などで課題明確化)
・未来創造(ビジョンや中長期計画策定など)
などです。
「ミクロ的見える化」では、今まで見えなかった詳細な部分が見えるようになります。
また「マクロ的見える化」では、今まで捉えることができなかった視点から自社全体像の把握が可能となります。
細かすぎて見えなかったものや、大きすぎて見えなかったものが見えてくる。
労働生産性効率化から適正な経営判断を行う上で、非常に重要な施策ではないでしょうか。
業務の見える化を実施する方法
それでは実際に「見える化」を実施するにはどのようにするのが良いのでしょうか。
様々な手法があります。
システム導入による「見える化」を行う方法もありますし、専門のコンサルティング会社に依頼する方法もあります。
今回は一例としまして、自社内でコストをかけずに、オフィスワーク業務を見える化する方法をお伝えします。
以下、参考までにご参照ください。
【オフィスワークの業務見える化例】
①各業務の洗い出し
各部署が実施している業務をすべて洗い出します。
例:請求書発行
②各業務のフロー(手順)
各業務のフロー(手順)を1工程毎に分けます
例:入力処理→出力処理→押印申請→発送の4工程
③作業詳細
1程毎の作業詳細を文章にします。
例:
入力処理・・・システムに入金入力
出力処理・・・システムから請求書を印字、発行
押印申請・・・押印申請し押印してもらう
発送・・・封筒詰めして発送
※この③「作業詳細」については、それぞれの手順毎に担当者の業務実施におけるコツや工夫を拾い上げることでマニュアル化などに有効利用できます。
④作業量など詳細な情報の把握
以下の項目例をできる限り把握します。
【項目例】
・業務頻度(ディリー、ウィークリー、マンスリー、イレギュラー)
・業務発生の具体的な時期
・業務担当者(管理者、正社員、派遣社員、パートアルバイト)
・対応人数
・業務件数(月間件数)
・1件当たりの時間数
・1人当たりの月間見込み時間数
・業務期間(発生から終了までの平均日数)
・必要なツール
・必要書類
・社内の他部門との連携
・外部(提携企業)との連携
・発生しうるリスク
など
⑤整理、分析
全部署の担当者ごとに洗い出し、記入を終えた後、整理し、分析します。
部署の担当者によっては、文章が苦手な方もいるかもしれません。
その場合はヒアリング担当者を1人指名し、コミュニケーションをとりながら文章化する方法もあります。
今までブラックボックス化していたものが、見えてくることがあります。
ただし、担当者によっては自分の職域を奪われるのではないか、という不安から非協力的な方もいます。
その場合、業務プロセス見直し専門コンサルタント会社などを利用するのも一つかもしれません。
IT化による可視化
昨今はクラウド型の安価な業務システムも増えています。
特に資金的な課題となりやすいベンチャー企業や中小企業には活用しやすいものも多く存在しています。
以前はITシステム自体、大手企業向けの大規模システムが主流で、導入するうえで数千万円、場合によっては数億円のコストがかかっていました。
しかし、昨今、ベンチャー企業や中小企業向けの月額数万円程度の安価なクラウド型経営システムなども出てきています。
経営の高度化が実現するかもしれません。
通常、財務や在庫管理などのバックオフィス向け経営システムが主流ですが、なかには営業や販売管理などとセットになっているクラウド型総合経営システムなども増えてきています。
汎用型なので、すべての仕組みが自社にマッチするとは言い切れませんが、基本的な部分は「可視化」することで、飛躍的な業務改善を見出すことも可能となっています。
業務効率化にはオススメかもしれません。
もちろん、そういった総合経営システムを導入することで、「マクロ的見える化」も実現でき、自社をより多角的に把握することもできるのではないでしょうか。
見える化とは?
いずれにしても、一つ一つの業務をしっかりと洗い出すことで、今まで実施していた業務が、無駄な作業であるとことを改めて判明することも少なくなりません。
無駄な作業抽出だけではありません。
一つ一つ似たような業務が、部署別にバラバラに実施していたものを、部署を超え、統一する形で効率化することも珍しくありません。
簡易的業務を取りまとめてアウトソーシング(外注化)することも考えられますし、ロボット化、IT化などで飛躍的に効率化するアイディアが出てくるかもしれません。
大事なのは「現状把握」。
今を見える化することで、「次の一手」が見えてくるのではないでしょうか。
つまり、「見える化」とは、「未来の可視化」とも言えるのかもしれません。
最後に
名言を贈ります。
家計簿を付けているうちに自分のお金の使い方が自然に変わっていくのが分かります。見える化することで自分の潜在意識に無駄遣いしない回路ができて行くのです。
田口智隆/ファイナンシャルインディペンデンス代表
抜け落ちた作業があって進捗管理が混乱するようなトラブルを防ぐうえでおすすめしたいのが、やるべきタスクを並べて、具体的な作業にまで分解して見える化する手法。
石川和幸/サステナビリティ・コンサルティング、インターネットアプリケーションズ創業者
工場内の繁閑、モノや情報の流れを見える化した結果、業務の平準化が進み、縦割りを超えてカイゼンに向けた様々な知恵が集まり始めました。計画と業績にギャップを徐々に埋めることができ、生産性が見違えるように向上しました。
満岡次郎/ 株式会社IHI代表
計測できないものは改善できない。まず計測することで可視化され、マネジメントも可能になります。
安渕聖司/日本GE代表
業務を20%効率化すれば、いまの仕事は8割の力で遂行できます。そして余った2割は、次の成長のために使えます。そのためには個人のレベルアップに加え、ITによるインフラ整備が大切です。ただ、その前提となるのは、業務プロセスの「可視化」です。
小林栄三/伊藤忠商事会長
見える化をすれば、知恵が出てくる。
坂根正弘/コマツ相談役