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サイバーダイン創業者、山海嘉之:日本初種類株式で上場させた理由とは?

日本初種類株式で上場させた理由とは?

 

山海嘉之/サイバーダイン創業者

 

「株主の意見によって、経営方針が左右されることのないよう、株主の意見を聞きながらも設立の理念は追求できるような仕組みを作りたかった。一般企業なら、HAL開発当初のように開発に時間がかかり市場が見えにくい分野に事業展開しようとすれば、ステークホルダーがNOと言うでしょう。でもCYBERDYNE社はあえてそこに挑もうという企業です。これからも適切な管理をしながら、社会の中で重要な役割を担う組織であり続けたいと思っています。」

 

「当社の上場目論見書や定款にもありますが、平和利用が基本です。また、当社は、普通株式に対しての議決権が10倍の種類株式の中での複数議決権でもって上場した日本初の企業です。これにより、敵対的買収で技術が悪用されることを防ぎます。」

 

 

 

山海嘉之とは?

 

 

山海嘉之。

サイバーダイン株式会社の創業者兼CEO、筑波大学教授、筑波大学サイバニクス研究センター長。工学博士。

 

世界初のサイボーグ型ロボットであるロボットスーツ「HAL」を開発した。

1958年:岡山県に生まれる。

 

小学3年生の時にアイザック・アシモフの短編集『われはロボット』を読んだことと、石ノ森章太郎原作の『サイボーグ009』のアニメを見たことで、ロボット、サイボーグを製作している博士に興味を抱く。

1978年:岡山県立岡山朝日高等学校卒業。

 

1987年:筑波大学大学院工学研究科(システム制御工学分野)博士課程を修了。

筑波大学講師、助教授、米国・ベイラー医科大学客員教授、筑波大学機能工学系教授を経て、現在、筑波大学システム情報系教授、筑波大学サイバニクス研究センター長。

 

人・機械・情報系を融合複合した新学術体系を確立し、サイバニクス(Cybernics)と命名する。

2004年6月:研究成果を活用することを目的に大学発ベンチャー企業「サイバーダイン株式会社(CYBERDYNE Inc.)」を設立、ロボットスーツHALの研究開発/製造/販売を推進。

 

2005年:The 2005 世界テクノロジー賞大賞(ITハードウエア部門)受賞

2006年:グッドデザイン賞金賞、日本イノベーター大賞優秀賞受賞。

 

2007年:産学官連携功労者表彰経済産業大臣賞受賞。

2007年:「つくばベンチャー大賞」大賞受賞。

 

2009年:全国発明表彰受賞 21世紀発明賞「サイボーグ型ロボット技術の発明」受賞。

2014年3月26日、東証マザーズ上場。

 

2014年 トムソン・ロイター、IPO of the Year(最優秀上場企業)。Edison Universe、エジソン賞金賞。日本ロボット学会 ロボット活用社会貢献賞。ぞれぞれ受賞。

2008年:文部科学省グローバルCOE(Global Center Of Excellence )プログラム 採択。サイバニクス国際教育研究拠点 拠点リーダー。

 

2009年:内閣府最先端研究開発支援プログラムFIRST 中心研究者 採択。Center for Cybernics Research(サイバニクス研究コア) 統括。

2014年:内閣府革新的研究開発推進プログラムImPACTプログラムプログラムマネージャ採択。

 

 

 

厳選!山海嘉之の珠玉名言

 

 

 

ベンチャーが立ちあがったばかりの柔らかい時期に、「来期にはこれだけの収益を上げてくれ」「こちらの事業を先にやってくれ」などといわれると、せっかくのチャレンジができなくなります。

 

 

 

小学3年生のときにアイザック・アシモフのSF短編集『われはロボット』を読みました。物語は西暦2058年が舞台。テーマは人とテクノロジーの関係です。小学6年生までには「社会の役に立つロボットを作りたい」と明確に思っていましたね。そして、研究者や科学者としての倫理にも目覚めていました。当時の文集には「科学とは悪用すればこわいもの」と書いていましたから。

 

 

 

大学に入ると、もう天国みたいなもの。だって、専門家があちこちに普通に歩いているわけです。ゾウリムシやら細胞膜やらを何十年も研究してきたマニアックな人がゴロゴロ。いろんなことを知りたい僕は当然、聞きに行く。すると、みんな忙しいのにどんどん話してくれる。中には、「その程度でわかったと思っているのか」と説教までしてくれる人もいたりして(笑)。

 

 

 

短期の収益のために会社のかじ取りを振り回されたのでは、産声を上げたばかりの会社にとってはひとたまりもない。

 

 

 

ざっくり言えば、私は場所を選はないほうです。どんな場所でもやればできると思います。やりやすい場所はあります。シリコンバレーとか、人が集まり易い場所もありますしね。それはありますが、筑波は筑波でいいところが沢山あって、やり易いところもある。また、やりにくいところもあります。

 

 

 

科学技術は人の役に立ってこそ価値がある。

 

 

 

たとえ、人件費が10倍違ったところで、僕はどうということはないと思っているんです。それよりもつくり上げていくものに大きな価値があればいい。

 

 

 

ロボットスーツは、サイバニクスのひとつの研究成果です。では、なぜロボットスーツだったのか。人間というものは、進化をやめた種族なんです。テクノロジーによって環境を変えることで、自分たちの進化をやめてしまった。生き物としては非常にまれな存在です。本来、自然界のなかで淘汰されてしまいそうな流れがあっても、それをテクノロジーが支えてきたわけです。例えば飛行機やトンネルなどの社会システムも重要ですが、一方で人間個体の機能そのものを強化したり、増幅したり、拡張したりする。そんなテクノロジーの流れが必要だと考えたんですね。それがサイバニクスを作る大きな目標になりました。

 

 

 

大切なチャレンジであれば、メディアがしっかり報道してくれる。

 

 

 

人間が大きな力を出すとき、2つのパターンがありますよね。追い込まれてギリギリで出る力。そして好きで好きでたまらなくて出る力です。どうせ力を出すなら、後者でしょう。なぜなら、やってもやっても疲れないから。だから好きなこと、やりたいことがあるなら、絶対にチャレンジすべきだと思います。
本当に重要なことは、一つひとつ積み上げていくこと。

 

 

 

研究者にとって、「夢や情熱」って非常に大事だと思いますが、それ以上に大切なのは「人を思いやる心」です。それがなければ、「何を成すべきか」ということが発想しにくい。

 

 

 

最初に経営のプロを雇ったりしたのですが、当時の証券会社や監査法人から部局化を強く勧められ、何をするにも縦割りの部局ごとの承認が必要な大企業的な組織体制となってスピードが落ちました。ベンチャーはフットワークの軽さが重要なのに、古い会社構造しか知らない人たちは、いきなり「大企業病」に感染させようとします。結局、プロジェクト単位で私と直結した体制を組むことで、スピードが上がりました。それまでは4年かかっても取れなかった医療機器の国際規格が、8カ月で取れました。

 

 

 

クリエイターというのは生まれにくくて、育ちにくくて、壊れやすい。彼らを育てるにはいじらず、かき回さず、じっくりと見守ることですね。

 

 

 

日本には素晴らしい研究業績が山ほどあります。基礎研究をつくった日本なのに、産業化に失敗している。つまり企業が動かない。なぜかと言いますと、目の前にマーケットがないからという理由です。

 

 

 

私たちが目指すのは、社会の課題を解決できる技術ということ。社会の課題を解決できる技術とは、人がそれを必要とする技術のこと。

 

 

 

1番というのは、もう学ぶものがない。つまり手探りをしながら、課題を解決するしかない。フロントランナーを歩むときは、強い頭でないといけない。やり抜こうとする意思。開拓マインドを持った状態でなければいけない。それはリスクを超えていくという強い思いじゃないとやっていけない。

 

 

 

研究者の多くは研究がある程度まとまると論文作成のため、次の研究テーマに移ることが多い。しかし、せっかく生み出した研究テーマなら、それを責任持って大切に育て、社会実装できるまでやり抜く意志が重要。

 

 

 

他の生き物と違って、人間はテクノロジーを手に入れました。環境を変えることで危機を乗り越え、自分たちが生物として進化する道を捨てたのです。この意味は大きい。私たちの未来はテクノロジーとともにあるのです。つまり、どのようなテクノロジーを創り出すかによって未来社会が変わってくるのです。だからこそ、若者には適切な未来の開拓者になってほしい。

 

 

 

サイバーダインの目的は「社会変革・産業変革」を起こすことです。単にテクノロジーをつくり出すだけでなく、またそれを製品として出荷して終わりということでもありません。多くの人に使われて、社会の経済サイクルに入ること。テクノロジーを社会に実装していくことです。

 

 

 

これまで「追いつき追い越せ型」の人材が日本を発展させてきました。アンテナを張って、世界の動きをぱっと掴んで、フォローアップしていく。学習能力の高い人ほど優秀だとされてきた。しかし、こういう人では、トップに近付くことはできますが、トップを走ることはできません。

 

 

 

サイバーダイン設立時、まずは自分の貯金を使い、その後は銀行からお金を借りました。担保は私が退職するまでに支払われる予定の大学からの給料です。給料を差し押さえられても、ご飯ぐらいは食べさせてもらえるだろうと思って(笑)。

 

 

 

システム論というのは面白くて、例えばアリを1匹つかまえてきて放置しても、アリはアリです。10匹もそうでしょう。しかし、1000匹、1万匹となると、誰が教えたわけでもないが、蟻塚をつくる。つまり、システムは数が増えることによって、個々の意向とは違う方向につくりあげられてしまう可能性が十分あるということです。

 

 

 

一般的に学者というと、浮世離れしているイメージがあるが、これを変えていきたいと思っている。テクノロジーで新産業を創出するには、社会が直面する課題を解決する方法を考え、創り出し、実装していく。この方法を考えるのが学者としての自分。そして社会を変革するテクノロジーを経営に組み込むのが経営者としての自分だ。この両方ができなければ、イノベーションは起こせない。

 

 

 

経済のあり方もさることながら、人間観とか、倫理感とか社会観、こういうものをしっかりと組織の軸に据えていくこと。知識や知恵を身につけながら、社会づくりをしていける人材でなければいけない。闇雲に競争だけに燃え上がる人ではなくて、また、その基本的な軸がない状況の中で知識や知恵だけを身につけてもいいことにはならない。

 

 

 

我々は技術だけを磨いているのではないということ。我々は目的達成のためでしたら研究開発の手段には全くこだわらず、自分たちが専門としていない分野の開拓ですら臆せず挑戦し、技術的あるいは方法論的に突破するか、回避する方法を発見するかなどして、何としてでも目的達成に向けて取り組んでいきます。しかし、目の前にマーケットがない世界では方法論にこだわってはいけない。目的が達成されることの方がはるかに重要です。つまり、我々は緻密に設計された本来あるべき出口から現在を見て、その未来からバックキャストしながら課題を明確にし、なすべきことをやっていくと。それこそがサイバーダインが行っている研究開発や製品開発のプロセスであり、これに尽きると思います。

 

 

 

人や社会に対して何が還元できるだろうか。人や社会が喜んでくれることを、与えられた人生で全うしていきたい。自分ができることをやり抜こう。

 

 

 

我々がこの十数年やってきたことは、革新技術を創り出し、社会実装を進めながら「サイバニクス産業」という新産業を創出してきたということです。そして、手探りをしながら自らがパイオニアとなって産業を創りながら歩んできたということです。革新的技術を創り出すこと、市場が未開拓であること、資料も教材もなく手探りが続くこと、新領域の専門家人材がいないこと、社会が受け入れる仕組みがないことなど、乗り越えるための様々な挑戦が続きました。ついに、今は好循環のイノベーションスパイラルが回るようになってきた。HAL開発を通じて、イノベーションエコシステムの仕組みづくりを同時展開してきました。

 

 

 

あるべき姿の未来図をしっかりと設計し、そこからスタートして必要となる革新技術、国際規格、社会ルール、事業モデル、人材育成の仕組みなどを創っていく。私はそういう考えで社会変革・産業変革の実現に挑戦し続けています。それこそが未来開拓そのものだと思っています。

 

 

 

サイバーダインでは、「研究開発」「産業創出」そして「人材育成」を一体的に同時展開していくことが大切だと考えています。この3つはセットなのです。日本が次のフェーズに行けるかどうかは、未来開拓型の人間をつくれるかどうかにかかっています。

 

 

 

どのように生きてもかまわないが、「生きる覚悟」を持って生きてほしい。生きるとは、素晴らしく活力に満ちた奇跡の体験だ。

 

 

 

『無ければ創る』、これがポリシーです。

 

 

 

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