吉野家元会長、安部修仁:最も重要なコミュニケーションの道具とは?

吉野家元会長、安部修仁:最も重要なコミュニケーションの道具とは?

最も重要なコミュニケーションの道具とは?

 

 

安部修仁/吉野家元会長

 

 

数字は最も重要なコミュニケーションの道具です。

言葉だけを伝えると、まったく逆の解釈をされるといったことがしょっちゅう起こってしまいます。

ですから、個々の役割を明確にするためには、数字で目標を伝えることが不可欠です。

 

ただ、数字だけを伝えると、今度は手段の目的化という現象が起こってくる。

数字はあくまで手段であって目的ではありません。

だから、数字は必ず目的と一緒に伝えなくてはなりません。数字を使うときには、きちっと翻訳してやることが大切なのです。

 

 

 

 

安部修仁(吉野家元会長)とは?

 

 

安部修仁。

1949年生まれ。

 

福岡県出身で、福岡県立香椎工業高等学校を卒業している。

高校卒業後にプロミュージシャンを目指して上京し、R&Bバンドを結成して活動する傍ら吉野家でアルバイトとして働いた。

 

音楽の道を諦めて、1972年に松田瑞穂に採用されて正社員として株式会社吉野家へ入社した。

1977年から九州地区本部長を務めて「アメリカ200店構想」の先兵としてイリノイ州へ語学留学したが、1980年7月に同社は会社更生法適用を申請たため米国から召還された。

 

1983年に取締役開発本部長に就任したのち、セゾングループ出資により再建された同社で1988年に取締役として参画し、常務取締役や日本ダンキンドーナツ社長などを経て、1992年に当時42歳で代表取締役社長に生え抜きとして就任し、以降22年間吉野家の経営を指揮して「ミスター牛丼」と称された。

 

牛丼単品主義で早さと安さを追求して営業利益率10%超の高収益を実現していたところ、2003年にアメリカのBSE問題で米国産牛肉は輸入禁止されて同業他社は豪州産などで牛丼販売を続けたが、安部は「牧草で育てる豪州産牛にしたら、別のテイストの牛丼になる。」と米国産牛肉にこだわり、国内の既存在庫が尽きた2004年2月11日から牛丼の発売を停止し、24時間販売は2008年(平成20年)に再開した。

 

2007年10月の持株会社化により吉野家ホールディングス代表取締役社長に就任し、事業会社分割により事実上は続投となった。

新設の事業会社吉野家の社長に出射孝次郎が就任して安部は吉野家事業から退いたが、2010年4月より株式会社吉野家社長を兼任して再び吉野家事業に携わった。

 

2012年9月1日付で吉野家ホールディングス社長を退任して代表権を有す会長に就任したが、2014年5月にHD会長を退いて取締役を離れ、同8月31日付で事業会社「吉野家」の社長からも退くと発表し、同時にかつて倒産を経験した幹部たちも安部の退任に合わせて退いた。

 

 

 

 

厳選!安部修仁(吉野家元会長)の珠玉名言

 

 

 

牛丼を食べる刹那的な時間であるけれど、お客さんとのメンタルなつながりを大事にしていきたい。そういうマインドを、心根のところで共有していきたい。

 

 

私が20代後半のころ、吉野家は急成長企業でしたから、社員も大きな希望を持っていました。それに、吉野家を企業化した先代の松田瑞穂社長は、教育投資、報酬制度、利益の配分といった面で、社員の成長に必要な環境を非常によく整備してくださる方でした。それらをトータルに考えると、決して労働搾取されていたとは思いません。やはり、残業や過重労働の問題を考えるときは、経営者がごまかしで搾取しようとしているのか、そうでないのかが非常に重要だと思います。

 

 

仮説ってものほどあてにならないものはないから、仮説検証には相当ボリュームをかけます。280円のときは4タイプの価格実験を30店舗でやりました。粗利が一番大きくなる合理的なプライスポイントは一直線には出てこなくて、跛行性がある。たとえば、270円と280円で客数は変わらないが、290円と300円の間には壁がある。つまり、とびとびに出て来る。その中から、あるレンジに収まる価格を選び出すのです。

 

 

時代の変化に合わせて変えるべきものもある。では何を基準にするか。それは短期的な利益ではなく、少なくとも3年後とか5年後の未来にその判断がどのように評価されているのか。その視点で選ぶべきでしょう。

 

 

目先の刹那的な評価を優先するより、今我慢しておけば将来振り返った時に従業員の自負とか誇りになる決断だってある。一時的に社会的な批判を受けたとしても、世間様もいつかは理解してくれる時が来る。そのような判断を下すことが継承者の役割なんですよ。

 

 

 

作業をブレークダウン(細分化)して最小単位の作業項目に置きなおし、作業項目を少なくする作業にも取り組みました。こうして想定できるイメージの限界ギリギリのところに終着点があるのだと考えて、高い目標を掲げて改善運動を進めていったんです。

 

 

作業工程の無駄を徹底的になくし、生産性を向上させるために、作業をすべて分解するところから始めました。たとえば、フロアモップがけという作業については、道具の運搬、人の移動、洗浄作業などの作業に分解し、ワークスケジュールの流れと組み合わせて、作業時間の短縮に取り組みました。

 

 

 

ドラスティック(徹底的)な革新運動はそれまでの常識を持ち出して、はなから無理だとしてしまったからできないんですね。そこで、現状肯定と過去習慣の延長は全部ご破算にして、おおっぴらに自己否定をするところから始めました。こうでなければ我々は成立できないという目標と枠組みを作って全員を追い込みました。

 

 

文化人の方々は、吉野家は無機質この上ないとおっしゃるわけですが、築地で生まれた吉野家には、伝統的にかもし出してきたひとつの文化があると思うんです。券売機を置かないのは、その文化を収益が許す限り大事にしていきたいというメッセージでもあるんです。

 

 

 

むろん時価総額は高いことに越したことはありませんが、短期的に株価を上げようとは思っていません。我々は長期的に株価を上げるとこに判断の軸を置いた経営を標榜するということです。もし、株主が短期的に株価を上げることを望むのであれば、僕らに経営をさせない方がいい。

 

 

 

我々と関わることで、相手のビジネスがさらに高まり、我々もよくなることが企業買収の必須条件です。補完しあいながら有効にドッキングするということです。

 

 

 

外食や小売業界の一部は、最も過重労働が蔓延しやすい体質を持っています。経営者が低コスト化を実現するために、実態的には労働搾取を行っているのに、それをごまかしているケースが多い。残業時間を語るときには、まず、その企業で公平な分配が行われているか否かを見定める必要があります。

 

 

 

大企業で働いていても、常に問題意識を持ち自分の仕事以外にも好奇心を向けることは可能だと思います。たとえ仕事の範囲が厳格に定められていても、その範囲の中で独自に課題を設定し、それを解決していくことはできます。つまり、どんな環境下でも、自力で仕事を面白くすることは可能です。

 

 

向上心の強い連中は、どんな組織にいても、仕事を単なる労働とは考えません。そういう人間は、5年、10年経つと必ず会社の中で頭角を現してきます。すると、必然的により大きな仕事を任されるようになります。だから、一層仕事が面白くなっていきます。

 

 

仕事は生活の糧を得る手段であると割り切って、プライベートの時間を大切にするのが俺の生き方だという考え方は誰も否定できません。ただ、あくまでも私見ですが、ビジネスマンは人生の大半を会社の中で過ごすわけです。その時間の密度を濃くしたほうが、楽しいのではないでしょうか。

 

 

 

仕事が面白くなると、思考の幅も深さも大きくなり、人生で得られる幸福感がより大きくなると私は思っています。

 

 

私自身、確信犯的に自分の職務範囲をはみ出して、自分勝手に挑戦を続けてきました。だって、簡単なことを達成したときよりも、難しいことに挑戦して、それを達成したときの方が喜びは大きいでしょう。

 

 

経験論でいいますが、自分の限界を小さく設定するほど、仕事はつまらなくなっていき、やらされ感が増大していきます。反対に、会社から与えられた仕事の範囲をはみ出して、周囲の仕事にまで好奇心をもって積極的に提案活動を行っていくと、仕事はどんどん面白くなっていきます。

 

 

 

ある時期、集中的にハードに働くとスキルが急激にアップします。つまり、量が質に転化する瞬間があるわけで、これも忘れてはならないことだと思います。

 

 

 

最終判断を下すのは上位者ですから、提案なんていくらでもやってもかまいません。採用されなければゼロ、採用されればプラスですから。会社にとってマイナスになることは絶対にありません。

 

 

私が28歳のころ、当時の吉野家は九州に一店舗も持っていなかったのですが、私の郷里は福岡なので、休暇で実家に帰ったとき、勝手に提案書を書いて九州の店舗計画を私にやらせてほしいと社長に直訴しました。いま思えば稚拙な提案書でしたが、社長のOKが出て、九州地区本部長になりました。

 

 

 

企業は往々にして、何かを変えようとしたがります。しかし、私の考えは逆です。まず変えるべきでないものを決めます。それ以外を変えていく。

 

 

 

勝つまでやる。だから勝つ。

 

 

 

 

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