さまざまなフィードバックを受ける中で芯の強いプロダクト開発をすることは非常に難しいことだ。
新しいものを世に出すにあたっては誰もが不安を持つだろう。
でも、その不安に打ち克ち、もっともっと新しくエッジの効いたアイデアが試されるべきだ。
失敗を恐れるのではなく、失敗したとしても、その後の学びとなるような「活かせる失敗」とすることを目指そう。
そのために、月なみながら、強い仮説としてのターゲットセグメントとベネフィットが研ぎ澄まされていることは非常に重要な武器だと感じている。
佐々木大輔。
1980年生まれ、東京都台東区出身。
実家は祖父の代から続く美容院。
開成中学校・高等学校を経て、2004年一橋大学商学部卒業。
大学在学中は2年次まで体育会ラクロス部に所属。
3年次からは大上慎吾ゼミでデータサイエンスを専攻し一橋大学海外派遣留学制度でストックホルム商科大学に留学。
また、インタースコープ(現マクロミル)でインターンシップを行いデータ分析やシステム開発に従事。
大学卒業後は美容師になるため当初美容学校への進学を考えていたが、大学卒業後には博報堂に入社。
博報堂ストラテジックプランナー、プライベート・エクイティ・ファンドCLSAキャピタルパートナーズ投資アナリスト、株式会社ALBERT執行役員最高財務責任者兼商品企画統括を経て、2008年Googleに入社し、プロダクトマーケティング・マネージャーや、アジア太平洋地区中小企業アクイジション・マーケティング・ヘッドを務めた。
2012年、freee株式会社を設立。同社代表取締役CEO。
2015年及び2016年、2017年のフォーブス日本の起業家ランキングトップ10入賞。
新経済連盟幹事等も務める。
いいお題が身近にあるとそれを解決するために勝手に行動し始められるんです。ただ同じお題が続くとあまり成長していない気がしていました。「どれだけ自分が成長してるか」を軸にして、成長していないなと感じた時に別のことに取り組んでいましたね。
人に流されずに自分で決める癖、というか。「どうせ人生は限られているんだから、みんながあまりやっていないレアな経験をしよう」と考えるところはあると思います。だから、大学時代の留学先も、みんながこぞって行くような英語圏ではなく、あえてスウェーデンを選んだりしましたしね。
元々freeeでは、上司という概念がなく、役割としてのピープルマネージャーを「ジャーマネ」と呼んでいる。主役はひとりひとりのメンバーであり、主役が最大限パフォームする役割であることを明確化している。社内の組織呼称も、こんなモチーフでいったんゼロベースで考えてみると、例えば「本部長」や「部長」といった呼称でイメージが凝り固まってしまったり、中途入社の人が前職のイメージを引きずってしまうことをリセットする意味があり、既成概念を打ち破る組織づくりとしても面白い試みだと思っている。もちろん、様々な社内呼称を一気に変えているので、それは一瞬カオスにはなる。しかし、そんなことも楽しみつつ、自由に考えいろんな概念もつくりつつ、世の中に価値を届ける会社でありたい。一見ふざけても見えてしまうかもしれないのだが、大真面目に考えている。例えば freeeは、不具合のことも、「バグ」ではなく、「ハッピー」と呼んだり、価値基準の言葉も独自の言葉を使うことで、独自のカルチャーをつくることに強くこだわってきた。
「Google のようなものが日本に広まっていかないとすると、それはリスクだ」と考えて Google にジョインした僕は、今度は Google の経験を通じて体得した考え方を、自分のビジネスを通じて、世の中に広めようとしている。
いわゆる働いているという感覚をもって働いている、という環境はつくりたくない。例えば、それは始業時間と終業時間の決まりがあって、自分の席があってといった環境ですよね。そういうことではなく、家にいる感覚というか自由な環境で仕事をしてもらいたいのです。働いて、お金を稼ぎ、食べていくことはとても重要です。でも、会社は、社員の「自分は何のために世の中に生まれてきたのか」という問いに応える必要がある。働くということは、人生でかなり長い時間を占めます。本来、嫌なことではないはずなんですね。働くというものの象徴みたいなものは極力なくしたいということです。
本人(子ども)が興味があるのなら、どんどん触れさせていいと思います。ゲームに1日中どっぷりハマれるのも才能だし、飯を食うのも忘れて夢中になるようなことがあれば、是非続けた方がいい。かといって、「続ける」ことに無理にこだわる必要もなくて、飽きたら素直に手放せばいい。新しいことにどんどん触れて、興味が移ったら、移ったでよし。いろんなことをやってみて、結果的に続くものが見つかればハッピーなんじゃないですか。
慣れていない人にとっては、アイデアを人に述べることは案外恥ずかしいものだ。なので自分のアイデアを表現しようとするときに、そのアイデアが優れている理由を探しすぎてしまう。(より良いアイデアを考えることができたかもしれないのに、アイデアを正当化する理由探しに時間をつかってしまったり)その過程で自分のアイデアに愛着を持ちすぎてしまい、客観的な判断ができなくなってしまうのだ。一方で、「アイデアは量」さえ身につけておけば、自分のリソースをいったん「いいアイデアを数多く出す」というところにフォーカスさせて、その後で今度はフラットな目線で、よいアイデアを客観的に評価することができる。
僕らのミッションは「スモールビジネスに携わるすべての人が、創造的な活動にフォーカスできるよう」。中小企業がビジネスを行う上で、何から何までクラウド上でできる社会をつくりたい。私はいま、事業を伸ばすことにしか関心がありません。
他にはないイノベーションを起こすことにフォーカスして投資を続けてきました。投資し続けるのは大変なことですが、大きな価値があると思ってやっています。それを続けていくには、重要なものについては可能なかぎり特許を取って、主張していかないといけない。イノベーションを起こす組織としてそこは譲れないし、創意工夫をきちんと評価する社会をつくろうよという思いもあります。
大手企業で働いていると、だんだん安定志向になっている自分に気づくんです。私にはそれが自分を消費している感覚だったんですよね。高い給与はもらえるし、会社として世の中に与える貢献度もとても大きいはずですが、いち個人として貢献している実感が薄れていくと言った方が近いかもしれません。そこで、「失敗してもいいから、もっと自分自身が主体となって、世の中に大きく貢献したい」と考え、現在の会社を立ち上げました。Google社員にとって、起業することやベンチャーにジョインすることは、さほど特別な選択肢ではありません。たとえ事業に失敗しても、その分何倍も人間的に大きくなって帰ってくる人を見ていますから、起業する際に不安はありませんでした。
freeeでは新しいことをやろうとしているのであって、そこで必ずしもこれまでの経験からくるものが正しいとは限らない。経験にとらわれず、新しいことをどんどん試し、結果を見るというPDCAを回せば回すほど、「世の中を塗り変える技術」には磨きがかかるし、この中にいることで、新しい本質がどんどん見えてくるようになることは非常に面白いことだ。
新しい価値を世の中にもたらし、世の中を変えていくスタートアップにおいては、経験や経歴は必ずしも重要ではなく、そこに捕らわれない本質的な価値を発揮できる人材であることが重要だと思う。