経営者の仕事は大きく2つ。
メンバーが毎朝、会社に行きたくなるような楽しい組織をつくる。
楽しければ必ずいいアイデアが生まれますから。
これが9割。
そして、残りの1割は、メンバーがわからないことをはっきり決めてあげる。
これだけですよ。
出口治明。
1948年(昭和23年)三重県一志郡美杉村(現:津市)生まれ。
三重県立上野高等学校を経て、京都大学法学部を卒業。
卒業後の1972年(昭和47年)に日本生命保険相互会社に入社。
経営企画を担当として企画部や財務企画部に所属し、また生命保険協会で財務企画委員の初代委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。
ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年(平成18年)58歳の時に同社を退職。
同年、生命保険準備会社であるライフネット企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
2008年(平成20年)の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。
2013年(平成24年)に社長職を岩瀬大輔に譲り、自らは代表取締役会長に就任。
2012年3月東証マザーズへ上場。
2017年(平成29年)6月に取締役を退く。
2018年(平成30年)1月に立命館アジア太平洋大学第四代学長に就任した。
思うままにならない人生だからこそ、「風が吹いたときに凧を上げる」そのための準備はしておくべき。
いくら自分の抱えている問題を解決してくれるような言葉を本の中に見つけ、気持ちがすっきりしたとしても、そこで終わりでは何も変わりません。大事なのは行動に移すこと。
ライフネット生命は、生まれて間もないベンチャー企業。人もお金も足りません。同じ保険業界には歴史ある大企業がいくつもあり、新興企業がそれと同じことをやっていては、絶対に勝てません。生き残っていくためには「いかに人と違うことを考えるか」がすべてです。
書物を通じて過去に生きた先人の思考に触れるにつけ、人知を超えた大きな時代の力が働いていることを実感します。人は一人で生きていくことはできず、常に他人や時代といった社会との関係性の中で生かされているのです。
反対する方は企画の甘いところをついてくる。だから、反論できないように「数字・ファクト・ロジック」の精度を上げておくことがまず大事。わざと突っ込みどころをつくっておいて、突かれたら「素晴らしいご指摘ですね」と徐々に論破していく戦法もあります。
我々は全国枠でテレビCMをやったことがなく、地区と期間を限定して流しています。その結果、どのくらいのお客様がホームページにアクセスし、実際にどれくらい契約に至ったかを見ているのです。地区を限っているから、何もしなかったところとの比較ができます。効果があり1件あたりの獲得コストも安いという仮説が立てられれば、ほかの地区でもやる。いくつかの地区で行った結果、費用対効果が見えてくれば、料金が高い東京地区でもやってみようとなるわけです。
説明が上手な人は、事前の勉強や準備をきちんとして、まず自分を納得させている。相手を説得するには、自分の納得感が必須。
読書は丁寧に思考のプロセスを追っていくことでこそ、様々な著者の思考パターンを学ぶことができます。とくに役立つのが、賢人の思考パターンを理解すること。だから、古典を丁寧に読むことが大切なのです。
年功序列主義で企業が健全に成長しているのであれば、実力成果主義を導入する必要などないでしょう。しかし、仮に年功序列型組織で成長していないのであれば、やはり見直すべきだと思います。
直感を鍛えるためには、勉強し続けるしかありません。人間は「人」と「本」と「旅」からしか学べないと思っています。多くの人に会い、たくさんの本を読み、様々な場所へ旅をする。人によって得手不得手があります。3つの中から、自分に合っているやり方を選んで、勉強すればいいと思います。
子供の頃、ほとんどの人は「偉人伝」を読んだことがあるでしょう。そのときは、昔の英雄たちの活躍に、胸を躍らせたり、感動したり、憧れたりしただけだったかもしれません。ビジネスパーソンの皆さんには、そうした伝記をぜひ、もう一度読み返してもらいたい。なぜなら、偉人伝こそ、最高の人生の教科書だからです。
岩瀬と3カ月ほどひざを突き合わせて考え続け、言葉として書き起こしたのが、当社のマニフェストです。これさえあれば、メンバーは道に迷うことなく、ミッションに向かって突き進むことができます。もしも迷った時は、マニフェストの言葉を読み返せばいいのです。
パートナーである岩瀬は私より30歳近く年下で、当時、生命保険業界を全く知らない若者でした。そんな異質な人との出会いは、新しいアイデアをどんどん生んでくれるのです。私にとって岩瀬は、新しい刺激を与えてくれる人であり、彼との日々のコミュニケーションが、やる気と生産性をいっきに高めてくれました。
ライフネット生命の場合、保険料を半額にして、安心して赤ちゃんを育ててもらいたいというのが、ひとつの大きなミッション。そのミッションを軸に、人を集め組織を構築し、推進していくための「旗」となるのが当社のコアバリューであるマニフェストです。
ついつい「他との差別化を図る」とかビジネス用語で考えてしまうのですが、そうではなくて、どうやったらお客様が喜んでくれるかが競争の根源だと思います。
「効率」という言葉を重視する人は、オーソドックスなやり方だと何だかムダが多いような気がするのか、正攻法に背を向け、ともすればわざと奇をてらったような手段を選びがちです。でも、多くの場合それは、「策士策に溺れる」結果に終わることになります。堂々と正攻法でことにあたる。私の経験からいって、結局はこれに勝る解決法はないのです。
人と違うアイデアを生み出すための肝になるのは、とにかく経験やインプットを蓄積することです。
共同体の内部で快適に暮らそうと思ったら、あらかじめそこにある価値観や常識を受け入れ、同化・適応するのがもっとも容易で確実な方法です。たとえ多少の理不尽さを感じていようとも、周囲の人と同じように、自分も何くわぬ顔で、それに倣うのが賢明な身の処し方だ、誰しもがそう思っています。そして、その思いはいつしか世界の大いなる矛盾と問題に接しても、「自分たちにはどうにもならない」というあきらめに変わり、ついには、裸の王様を見て、「なんと立派な服だ」と拍手を送ることにすら疑問を感じなくなっていく。小さな閉じられた共同体の内部に取り込まれてしまった人に改革を期待してもしょせん無理なのです。
リーダーというのは、「わからないことを決められる人」の事です。
立派な指導者は、一番下の人の意見を良く聞く。
昔の石垣は、かたちがバラバラの石を組み合わせてつくられていますが、今でもとても頑丈です。組織を構成する人間も石と同様。一人ひとりの、三角や四角の出っ張りをしっかり見極め、社会と経済の環境変化に合わせながら、組み合わせていく。隙間ができれば、リーダーが接着剤となって埋めていけばいいのです。
普段、私が経営判断をするうえでもっとも参考にしているのは、モンゴル帝国の皇帝クビライです。ヨーロッパでは十字軍や異端審問が行なわれていた時代に、彼は思想・信条・宗教と政治を切り離していました。首都・大都の設計をムスリムの技術者に任せたことが好例です。この例にかぎらず、彼は中国人やペルシャ人、アラブ人など、さまざまな国・地域から優秀な人材を登用しています。徹底的に合理的なのです。いってみれば、ダイバーシティの先駆けですね。経営判断をするときには、社会の常識に囚われていないだろうか、クビライのように合理的に判断できているだろうか、とつねに自分を顧みています。
会社のこともすべてオープンにしたほうがいい。その覚悟で仕事をすれば、それがコンプライアンスだ。
いいかげんな思い付きで意思決定をしても、会社に成果をもたらし、顧客の利益に資すれば、それは良い意思決定だったことになる。一方で真剣に考え抜いた意思決定でも、会社にマイナスの効果しかもたらさず、顧客の不興を買うようであれば、悪い意思決定だ。
統率力とは、思いがけない困難にぶつかったとき、仲間と丁寧にコミュニケーションを取り、最後まで率いる力を指す。統率力というと誤解されがちなのが「黙って俺についてこい」などの不毛な精神論だ。独善的に振る舞うことは、統率することとは違う。
私は「人間ちょぼちょぼ主義者」です。要するに、「人間の能力は、それほど高くはない」「人間には、とくに賢い人も、とくにアホな人もいない。ちょぼちょぼである」と考えています。
若い人がもっと勉強するようにならなければ、日本が競争力を高め、より豊かな国になることは望めません。私たち企業人も含めて社会全体で大学教育の在り方をもう一度よく考えるべきですし、大学学側もグローバルな競争を見据えて改革に取り組んでいただきたい。
私はよく「「済んだことに愚痴を言う」「人を羨ましいと思う」「人に褒めてもらいたいと思う」、人生を無駄にしたいならこの3つをたくさんどうぞ」という言葉を口にして、自分を戒めるようにしています。
会社の経営には「タテ・ヨコ思考」が一番大事だと思います。タテ思考とは、10年前に比べて成長率はどうなっているかを見るという時間軸での発想です。しかし、売上が伸びていることだけで満足したらダメです。同業などと比較するヨコ思考も必要で、業界内のシェアも見ないといけません。「タテ・ヨコ思考」はいろいろな場面で応用できるのでお勧めです。
私はリーダーの条件とは、究極的には3つしかないと思っています。1.自分がこのポストにいる間に何をしたいのかを明確にすること。2.自分のやりたいことにはどういう意義があり、いかに自分たちの組織のためになるのかを仲間に説得できること。3.仲間を当初考えた目的地まで引っ張っていく統率力。
仕事ができるというのは、人より多くの付加価値を生み出すことだと私は思います。そのためには、隣の席の人より長く働くのではなく、隣の席の人が思いつかないようなことを考えられるようにならなければいけません。「人と同じことは絶対にやらない」という気概がなければ、新しいビジネスの発想は絶対に生まれません。
スタートアップの9割は3年以内につぶれる。だが、そのリスクにチャレンジしなければ社会は変わらない。
努力をすれば必ずその分報われるといった幻想を持ちすぎてはいけません。厳しい言葉かもしれませんが、それが事実であることは歴史が証明しています。いつの時代も人間の努力の99%は徒労に終わってきました。しかし、努力をやめなければ、人生には1%の可能性は常に用意されているのです。
人目や他人の評価を気にせず、自分に正直であればそれで十分、仕事は3割でどうでもいいことだ。
僕は、世の中の人はほとんどみんな変な人だと思っています。人間はみんな顔が違うし、能力も異なるので、みんな異能人であり変人なのです。
自らが信じる何かを実現したいと強く思い、たとえ失敗しても諦めずに、1%の可能性を信じて挑み続けた人たちが、世界をより良く変えてきた。