猫のチャームポイントでもある肉球。
あのプニプニした独特の感触や可愛らしい形がたまらない!という飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そもそも猫の肉球にはどのような働きがあるのでしょう。
今回は、感触や見た目だけでなく、あまり知られていない猫の肉球についてご紹介します。
肉球の役割
猫の肉球には、クッションや滑り止め効果など様々な役割があり、猫が生活していくうえでなくてはならない部分です。
プニプニと柔らかく可愛い肉球が、実は重要な役割を担っているのです。
クッション効果
猫は普段から様々なところに登る傾向があります。
木の上や塀の上など、高い場所が大好きです。
その昔、猫が狩りをしていた頃、木の上に隠れて獲物を待ち、近づいた獲物に向かって飛びかかっていました。
そんな時に、分厚く盛り上がった肉球がクッションのような役割になっているのです。
そのため高所から飛び降りることも多くなりますが、肉球が着地の際の衝撃を吸収するため、身体へのダメージを軽減してくれます。
滑り止め効果
猫は高所のほか、足場が非常に悪いところを移動することも少なくありません。
そういった場所を移動する際に、肉球に汗をかいて湿ることで滑り止めの効果を生み出します。
高い場所や不安定な場所を歩く時は、肉球が滑り止めの役割を担っているのです。
体をキレイにする
猫は自分の体を舐めてキレイにしますが、自分の眼や耳周辺の顔まわりは舐めることができないので、肉球を舐めて湿らせ、ブラシ代わりにしています。
自分の前足を舐めて湿らしてから、頭部をキレイにするセルフグルーミングはよく見ることができます。
音を立てずに忍び足
狩りをする際には、獲物に気づかれないように接近する必要があります。
肉球には足音を消す働きがあり、猫が餌を確保するうえで欠かせない機能となっています。
猫の爪は、自在に出し入れできるため、獲物に近づく時は、爪を引っ込めて肉球だけにして足音を立てずに歩きます。
足元を探るセンサー
猫の前足には、「手根球」と呼ばれる肉球があり、この肉球の上には何本かのヒゲのように飛び出した毛が生えています。
この毛が足元の様子を探るセンサーの役割を担っています。
手根球は、他の肉球よりもやや硬く、手根骨という骨を保護する役割もあると言われています。
肉球の名称
肉球の正式な名称は「蹠球」(しょきゅう)といい、中心に位置する大きなものと外側に位置する小さなもので構成されています。
それぞれの部位に名称があり、前脚と後ろ脚でも名称が変わってきます。
<前脚>
掌球(しょうきゅう):大きな肉球で前脚の中心に位置する。
指球(しきゅう):掌球の外側についている5つの肉球の総称。
狼爪(ろうそう):指球の中の内側にある親指にあたる肉球。
手根球(しゅこんきゅう):前脚にしかない肉球。掌球の上部の少し離れた部分にある。
<後ろ脚>
足底球(そくていきゅう):後ろ脚の中心に位置する大きな肉球。
趾球(しきゅう):後ろ脚にしかない円形の4つの肉球。足底球の外側に位置する。
肉球は脂肪および弾性繊維でできています。
猫の皮膚はとても薄く、0.02~0.04ミリほどであるのに対し、肉球は厚く1ミリ程あります。
年齢や環境で柔らかさは変化し、生後間もない子猫の肉球はとても柔らかく年齢を重ねていくことで硬くなります。
また外猫と家猫では柔らかさが異なり、外猫は硬い場所や熱い場所、冷たい場所などを歩くため家猫よりも肉球が硬くなるのです。
また肉球は摩耗しにくく多少擦り減っても再生しますが、全てを失ってしまった場合は再生できなくなります。
猫の肉球の数はいくつ?
さて、本題です。
猫の肉球は前足と後ろ足でそれぞれ数が異なるのです!
驚きですね。
前足に存在する肉球の数は片方の足で7個です。
後ろ足に存在する肉球の数は片方の足で5個です。
4本の足に存在する肉球の数は、全部で24個です。
なんで、肉球の数の違いがあるの?
なぜ前と後ろで数が違うのでしょうか?
諸説ありますが、猫が生きていく上での進化だと考えられています。
より速く走るためには、多くの指は邪魔になってしまいます。
馬がひづめのみに進化したのはそのため。
しかし猫は、走るだけではなく木に登ることも多くあります。
木に登るためには、前足の指と爪を木肌に引っ掛け、抱え込むようにして体重を支える必要がありました。
そのため、前足には5本の指が必要だったのです。
ただ木に登る際も、後ろ足はあまり関係がありません。
また獲物を捕まえる際も、前足は重要ですが後ろ足はあまり使いません。
そのため、後ろ足の指は徐々に退化していったと考えられます。
つまり、前5本ずつ後ろ4本ずつという指の数は、木に登る・獲物を捕まえる・速く走るという様々な行動を取る猫の生き方に最適なものだといえるでしょう。
肉球の色は毛の色で決まる!?
猫の肉球の色と鼻の色は、同じことが多く、これらは毛の色によって決まると言われています。
毛色が薄い個体は肉球の色も同じように薄くなり、濃い個体は肉球の色も濃くなるようです。
白い毛の色の猫の肉球は、薄いピンク色です。
茶トラの肉球は、濃いピンク色です。
キジ猫の肉球は、焦げ茶色です。
黒猫の肉球は、小豆色です。
たとえば、猫の毛が2色だった場合は、それぞれの特徴が肉球にもあらわれます。
猫の毛が白と黒の2色だった場合は、薄いピンクと小豆色の斑模様になります。
毛の色が3色の三毛猫は、肉球も3色の斑模様になります。
指の数が多い猫は”幸せを呼ぶ猫”
猫の指は基本的には前足5本ずつ・後ろ足4本ずつですが、まれに「多指症」という生まれつき指の数が通常よりも多い猫が存在します。
多指には遺伝子が関係しているため日本ではあまり見かけませんが、海外では指が多い猫は「幸運を呼ぶ」として大切にされています。
こういった多指の猫は、「ヘミングウェイ・キャット」と呼ばれることもあります。
由来はアメリカのノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイ。
彼は1930年代、フロリダ州のキーウエストで友人の船乗りから猫を譲り受けました。
この猫は6本の指を持つ多指症で、ヘミングウェイは大変可愛がったといわれています。
今でも博物館となったヘミングウェイの家では、遺伝で多指症になった子孫猫たちがたくさん走り回っているとか。そのため、とくにアメリカでは「ヘミングウェイ・キャット」という呼び名が定着しているようです。
当時は指の多い猫は手先が器用なため、たくさんネズミを捕ってくれるとしてとくに船乗りたちの間で重宝されていました。
このことからも「縁起が良い」とされており、航海のお守りとして人気が高かったそうです。
多指症の多い猫種としては、アメリカンポリダクティルやクリッパーキャットが知られています。
ギネス記録として残っているのは、7本の指×4本の28本の猫。
すごいですね。
ちなみに指が多くても、健康上とくに問題はありません。
場合によっては爪が研ぎにくく定期的な爪切りが必要なこともありますが、指が多くてもとくに治療は必要としないため安心してください。
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