■貿易赤字最大の19.9兆円 22年、円安と資源高響く
日本経済新聞 2023年1月19日
~~~
財務省が19日発表した2022年の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は19兆9713億円の赤字だった。
比較可能な1979年以降で最大の赤字となった。
円安と資源高で輸入額が大幅に増えた。
貿易赤字は2年連続。14年の12兆8160億円を上回り最大の赤字となった。
輸入は前年比39.2%増の118兆1573億円だった。100兆円を初めて超えた。
原油や液化天然ガス(LNG)、石炭などの値上がりが響いた。
こうした鉱物性燃料の輸入は96.8%増の33兆4755億円で、全体の28.3%を占めた。
原油の輸入価格は1キロリットル当たり8万4728円で76.5%上がり、過去最高になった。
ドル建て価格の上昇率は47.6%だった。春以降に急速に進んだ円安・ドル高が輸入価格の上昇に拍車をかけた。
税関への申告時に使う為替レートは年平均で1ドル=130.77円と98年以来の円安水準だった。
輸出は18.2%増の98兆1860億円で過去最高を更新した。
米国向けの自動車やメキシコ向けの鉄鋼などが増えたが、輸入の伸びに追いつかず大幅な赤字となった。
地域別の貿易動向をみると、対アジアは輸入が29.8%増の53兆3327億円、輸出は15.1%増の55兆4106億円だった。
対米国は輸入が31.5%多い11兆7230億円、輸出は23.1%多い18兆2586億円となった。
エネルギー資源の値上がりによって、中東からの輸入は82.1%増の15兆4265億円に達した。
オーストラリアからの輸入も11兆6243億円に倍増した。
ウクライナに侵攻したロシア向けの輸出は6057億円で、29.8%減った。
米欧と協調した日本の経済制裁などにより、半導体等電子部品や通信機などが大幅に減った。
ロシアからの輸入は1兆9579億円と26.2%増えた。LNGと石炭が押し上げた。
荷動きを示す数量指数(15年=100)は対世界全体の輸入が前年比0.3%、輸出は1.9%それぞれ下がった。
円安でも輸出は振るわなかった。
中国向けの輸出は13.8%の急激な落ち込みとなった。
22年12月単月の貿易収支は1兆4484億円の赤字だった。
赤字は17カ月連続で、12月としては最大の赤字となった。
輸入は前年同月比20.6%増の10兆2357億円、輸出は11.5%増の8兆7872億円だった。
石炭や原油などの輸入額が膨らみ、大幅な赤字が続いた。
12月は中国向けの輸出が1兆6178億円と前年同月比6.2%減った。
減少は7カ月ぶり。自動車や自動車部品が減った。
新型コロナウイルスの感染拡大などが影響したとみられる。
~~~
貿易赤字最大の19.9兆円 22年、円安と資源高響く
日本経済新聞 2023年1月19日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA190OR0Z10C23A1000000/
■かつての輸出立国がなぜ? 去年の貿易赤字19.9兆円で過去最大に
NHK 2023年1月19日
~~~
財務省が発表した去年1年間の貿易統計は、原油などエネルギー価格の上昇や記録的な円安の影響で輸入額が膨らんだことから、過去最大の貿易赤字となりました。
去年1年間の貿易統計で、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は19兆9713億円の赤字となりました。
赤字額は前の年(2021年)よりも18兆円余り増えて、1年間の貿易赤字としては、比較が可能な1979年以降で過去最大となりました。
これまで最大だった2014年の赤字額よりも7兆円以上拡大しています。
ウクライナ情勢を背景に原油やLNG=液化天然ガスといったエネルギー資源などの価格が上昇したことに加えて、一時1ドル=150円を超える水準となった記録的な円安の影響で、輸入額が大幅に膨らみました。
去年1年間の輸入額は、118兆1573億円と前の年よりも39.2%増え、輸出額は98兆1860億円で18.2%増えています。
輸入額、輸出額ともに過去最大ですが、アメリカ向けの自動車などの輸出が増えたものの輸入額の伸びがそれを大きく上回っています。
一方、先月の貿易収支は、1兆4485億円の赤字となりました。
去年8月以降、2兆円を超えていた赤字額は、5か月ぶりに1兆円台となりましたが、貿易赤字は1年5か月にわたって続いています。
・中小の製造業 仕入れ価格の高騰に直面
貿易赤字が膨らんだ原因は、円安などを背景とした輸入物価の上昇です。
その影響で中小の製造業の中には過去に例のないほどの仕入れ価格の高騰に直面している企業もあります。
製造業などの中小企業が多く立地する東京 大田区。
ここに工場がある従業員40人余りの金属加工メーカーは、この1年、仕入れ価格の高騰に悩まされてきました。
海外から輸入する石炭などの価格上昇で卸売業者から仕入れる鉄鋼の仕入れ価格は去年4月から7月にかけて30%以上、上がりました。
さらに電気代などの上昇もあって1か月の固定費は前の年に比べて100万円以上増えたということです。
このままでは経営が立ちゆかなくなるとして取引先の自動車メーカーと交渉した結果、去年10月からは、主力製品の卸価格を引き上げることができました。
また、急速な円安から一転して為替が円高方向に値を戻したこともあって去年の秋以降、鉄鋼の仕入れ価格の上昇は一服したということで、最も厳しい時期は脱することができたと考えています。
ただ、先行きには不安もあります。
さらに円高が進んだり海外経済が一段と減速したりして出荷先の自動車メーカーの輸出に影響が及べば部品の受注が減るおそれがあります。
金属加工メーカーの石渡良平工場長は、「受注自体は好調が続いているので、この先の見通しとしては明るい印象だ。ただ、円高基調になってくるとうちが受注できる数量にも影響してくるのでそこの見通しが難しい」と話していました。
・かつては輸出立国も原発事故をきっかけに…
かつて日本は「輸出大国」として国内で生産した製品を輸出することで巨額の貿易黒字を積み上げてきました。
1980年代から1990年代にかけて日本は、半導体や自動車を世界中に輸出し、1981年以降、一貫して貿易黒字を計上。
黒字額が10兆円を超える年も多くありましたが、その一方で、アメリカなどとの間で激しい貿易摩擦も引き起こしました。
貿易黒字はリーマンショックの影響で2兆円台まで落ち込みますが、さらに大きな転機となったのは2011年です。
東日本大震災による原発事故の影響で、全国の原発が運転を停止し、火力発電の燃料となる原油やLNG=液化天然ガスの輸入が急増。
この年の貿易収支は、2兆5647億円の赤字となり31年ぶりの貿易赤字に転落しました。
その後、2015年まで5年連続で貿易赤字となり、中でも2014年には12兆8160億円とこの時点での過去最大の赤字額を計上しました。
その後は、年間の貿易収支が黒字となった年もありましたが、資源価格が上昇すれば貿易赤字につながるという構図が続いています。
さらに、日本の主力産業である自動車などもアメリカや中国など海外での生産が進み、以前ほど輸出が増えなくなっているという事情もあります。
去年は、原油などエネルギー資源の価格高騰に加えて、外国為替市場で円安が急速に進んだことで円建ての輸入額の増加につながりました。
その一方で、輸出はアメリカ向けの自動車などが増えたものの、輸入に比べると伸びは小さく、この結果、赤字額は過去最大を更新しました。
原発事故以降、去年までの12年間で赤字になった年は合わせて9年となっています。
去年1年間の月ごとの貿易収支を見ると1月以降、毎月赤字となっていて8月には1か月としては過去最大となる2兆8000億円余りの赤字を計上。
9月以降も2兆円を超える赤字が続きましたが、先月の赤字額は1兆4484億円と前の月に比べて5800億円余り縮小しました。
海外経済の減速を背景に原油などの価格が下落傾向になっていることや、日銀が金融緩和策を修正したことで為替市場で円高が進んだことなどが要因です。
こうした傾向が続けば、輸入額が減少して貿易赤字が縮小する可能性がありますが専門家の間では、海外経済の減速の影響で輸出が伸びないことも予想されるとして直ちに貿易赤字を解消することは難しいという指摘も出ています。
貿易赤字は日本の企業や個人が経済活動を行って稼いだ富が海外に流出するだけでなく、赤字が続けば海外から資源などを輸入するのに必要なドルを調達するため、円安につながることにもなります。
~~~
かつての輸出立国がなぜ? 去年の貿易赤字19.9兆円で過去最大に
NHK 2023年1月19日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230119/k10013953591000.html
■なぜ? 貿易赤字が過去最大 拡大の要因は? 影響は?
NHK 2022年7月21日
~~~
ことし1月から6月までの上半期の貿易統計は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が7兆9000億円あまりの赤字と半年間では過去最大の赤字額となりました。
・なぜ貿易赤字が拡大?
第1に資源価格や食料価格の高騰です。
特に原油や石炭、天然ガスなどエネルギー関連の品目の価格が大幅に値上がりし、輸入額が大きく膨らみました。
第2に円安が進んだことです。
日本の企業の多くが輸入品の支払いをドルで行いますが、貿易統計ではこれを円に換算することになるので円ベースの輸入額が押し上げられました。
・貿易赤字は円相場にはどう影響する?
貿易赤字が続くと企業の間で手持ちの円を売って支払いに必要なドルを買う動きが進みます。
この結果、円安ドル高の動きに拍車をかけることにもつながります。
・円安 日本経済にメリット大きいと言われたときもあったが…
かつては円安によって輸出品が値下がりし、海外での価格競争力が高まるとされていましたが、日本企業が海外に拠点を移す動きが広がるなかで円安のメリットは限定的だという見方も出ています。
急速な円安の進行が日本経済に及ぼす影響について日銀の黒田総裁は、先月「先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり、望ましくない」と述べ懸念を示しています。
・輸入額を押し上げたのはどの品目?
貿易統計を品目別にみると、価格の高騰に伴って輸入額が大きく押し上げられていることがはっきり分かります。
貿易統計によりますと、輸入額が大きく伸びているのは、原油や石炭、LNG=液化天然ガスなどの「鉱物性燃料」で、輸入の増加額のほぼ半分を占めています。
このうち、原油および粗油は、輸入量が去年の上半期と比べて12.7%増え、輸入額はプラス106.3%と、2倍あまりに増えています。
LNGは、輸入量が3.5%減少する一方、輸入額はプラス94.1%と、こちらもおよそ2倍に増えました。
石炭は、輸入量が3.9%の伸びに対して、輸入額はプラス212.8%と3倍あまりに増えていて、価格の上昇で輸入額が膨らんだことがはっきりと分かります。
また、このところ食品の値上げが相次いでいますが、原材料の小麦などの穀物類は、ことし上半期の輸入量の伸びが1%だったにもかかわらず、輸入額はプラス48.1%とおよそ1.5倍増加していて、こちらも単価の上昇が輸入額を押し上げる形となっています。
~~~
なぜ? 貿易赤字が過去最大 拡大の要因は? 影響は?
2022年7月21日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220721/k10013728941000.html
■日本人は今の貿易赤字がいかに深刻かを知らない
競争力低下で経常収支が恒常的に赤字となる危険
東洋経済 2022/11/13 野口 悠紀雄 : 一橋大学名誉教授
~~~
・構造要因による赤字拡大分は?
2022年4~9月の貿易収支は、約11兆円の赤字となり、年度半期ベースで過去最大となった。
下期もこのペースが続けば、年間貿易赤字は20兆円を超える。
これは、短期的な変化にすぎないのか?
それとも長期的に継続するものなのか?
それを判断するには、貿易収支がなぜ悪化したのかを分析する必要がある。
貿易赤字を拡大させたのは、次の3つの要因だ。
1.資源価格の高騰
2.円安(円安は輸入と輸出を同率だけ増加させるが、貿易収支が赤字だと、輸入の増加額のほうが大きくなるので、円安が赤字を拡大する)
3.日本経済の構造変化
1、2はよく指摘される。以下では、3が重要な意味を持っていることを指摘したい。
1、2は、いずれ収まる可能性があるが、3が大きな原因であるとすると、赤字は今後も継続する可能性がある。
3の影響を知るには、1、2の影響を取り除く必要がある。そのために、ここでは、次の方法を用いる。
2の影響を除去するため、輸出、輸入、貿易収支をドル建てで見る。
そして、1の影響を除去するため、鉱物性燃料を除いた収支を考える(穀物価格の高騰も赤字拡大要因だが、額が少ないので、ここでは別途扱いをしない)。
2004年と2021年とを比べると、図表1、2に示すように、貿易収支は、2004年の1104億ドルの黒字から、2021年の148億ドルの赤字へと1252億ドル悪化した。
ここには、原油価格上昇の影響がある(鉱物性燃料の赤字は?962億ドルから1457億ドルへと、496億ドル増加)。
・構造要因は、鉱物性燃料による赤字増の1.5倍
そこで、鉱物性燃料を除く貿易収支を見ると、図表2の最下欄に示すように、2065億ドルの黒字から、1309億ドルの黒字へと、756億ドルの縮小だ。
これは、鉱物性燃料の赤字増496億ドルの1.5倍になる。
このような傾向的な変化が生じていることが大問題である。
これは、日本経済の構造変化によって生じたものだ。
円安を進めたアベノミクスは、ドル建てで見た貿易収支を改善せず、むしろ悪化させたことがわかる。
上で見た756億ドルの黒字縮小は、何によって引き起こされたのか?
図表2は、2004年と2021年の輸出・輸入差額を、財別に示したものだ(いくつかの財を省略して示してある)。
財別に見ると、輸出・輸入差額の減少額がもっとも大きいのが、資本財の中の電気機械であり、484億ドルとなっている。
輸出・輸入差額が、662億ドルの黒字から177億ドルの黒字に縮小した。
次が粗原料で、赤字が258億ドル増加した。
次が、食料及びその他の直接消費財で、赤字が113億ドル増加した。
次が家庭用電気機器で、赤字が53億ドル増加した。
このように、電気機械の黒字の減少が、極めて大きなウエイトを占めているのである。
756億ドルのうち、64%を占めている。
資本財としての電気機械は、長らく、日本の主要な輸出品であった。
今でも貿易収支は黒字ではあるが、2004年から2021年の間に大きく競争力を失ったのだ。
収支が改善しているのは、資本財の一般機械と輸送機器、それに乗用車だけだ。
なお、以上では、2004年以降を対象とした。
図表1に見られるように、2000年代においては、「輸出主導型」と言われた経済成長が実現した。
これは、2000年頃の円安政策によって主導されたものであり、アメリカで生じた住宅価格バブルと相まって、自動車を中心として輸出が増大した。
しかし、この動きは、2008年に起こったリーマンショックによって終わった。
・2022年の貿易赤字が20兆円超となる可能性は高い
2004年から2021年までの変化を要約すれば、次のとおりだ。
電気機械の貿易黒字縮小等によって、日本の貿易収支が756億ドル減少した。
これは構造的な変化だ。
それに加え、鉱物性燃料の収支が496億ドル増加した。
以上によって、ドル建ての貿易収支が1252億ドル悪化した。
さらに、円安の影響で、円建ての貿易収支赤字が拡大した。
冒頭で述べたように、2022年においては、貿易収支の赤字が年間20兆円を超える可能性がある。
こうなる要因を分解すれば、次のようになる。
為替レートとして、6月から7月頃の値、1ドル=135円を用いれば、20兆円は、1481億ドルだ。
上で見た「鉱物性燃料を除く貿易収支」の額が2021年と変わらず1309億ドルの黒字であるとすれば、鉱物性燃料の収支差が2790億ドル(=1481億ドル+1309億ドル)になることになる。
鉱物性燃料の収支差がこの程度になったことは、過去にもある。
2012年には2890億ドルだった。
この時には、原油価格が1バレル100ドル程度だったのである。
2022年末まで1バレル100ドル程度の水準が続けば、貿易収支は1500億ドル程度の赤字となるだろう。
ただ、現在、原油価格は90ドル台にまで値下がりしている。
今後も値下がりが続けば、貿易赤字は1500億ドルを下回るだろう。
そうであっても、円安が続けば、円建ての貿易赤字は拡大する。
1ドル=150円であれば、1500億ドルは、22.5兆円ということになる。
・長期的に経常収支が赤字になる可能性
以上の要因のうち、鉱物性燃料の価格は、低下する可能性がある。
しかし、為替レートや構造的要因による変化を元に戻すことは、非常に難しい。
鉱物性燃料を除く貿易収支は黒字だが、下降傾向にあるので、あと数年で黒字が500億ドル程度に縮小してしまうことは十分ありうる。
他方、鉱物性燃料収支額赤字が1600億ドルを超えたことは、過去に何度もある(最近では、2018年:この時は、1バレル60ドルから70ドルだった)。
そこで、鉱物性燃料収支額をマイナス1600億ドルとすると、貿易収支は1100億ドル(=1600億-500億ドル)の赤字となる。
1ドル=150円であれば、これは16.5兆円だ。
また、鉱物性燃料輸入額が2000億ドルを超えたことも、過去に何度もある。
そこで、鉱物性燃料収支赤字額を2000億ドルとすると、貿易赤字は1500億ドル(=2000億-500億ドル)の赤字となる。
1ドル=150円であれば、これは22.5兆円だ
ところで、日本では、サービス収支が360億ドル程度の赤字、第1次所得収支が年間1820億ドル程度の黒字だ。
だから、仮に貿易収支が1500億ドルの赤字だと、経常収支が40億ドルの赤字になる。
鉱物性燃料収支赤字が2000億ドルを超えれば、赤字はもっと拡大する。
経常収支が赤字になれば、その分を外国からの借り入れによって埋め合わせる必要がある。
すると、対外純資産が減り、所得収支も減ってしまう。
悪循環が始まり、日本経済が深刻な問題に陥る危険がある。
これは、そう簡単になることではないが、資源価格の動向によっては、十分に起こりうることだ。
・アメリカは経常赤字を続けられるが、日本はできない
アメリカは経常収支の赤字を続けている。
しかし、それによって問題が生じることはない。
それは、ドルが基軸通貨だからだと言われることがあるが、そうではない。
因果関係は逆だ。
アメリカ経済が強いからだ。
アメリカに投資をすれば、将来、大きな収益とともに投資資金を回収できると期待できる。
このため、経常収支が赤字でも、外国から投資がなされるのである。
だから、赤字を続けられる。
ドルが基軸通貨であり続けられるのは、このようにアメリカ経済が強いからだ。
いまの日本経済は、残念ながら、このような信頼を世界から獲得していない。
日本経済の体質強化は、焦眉の課題だ。
~~~
日本人は今の貿易赤字がいかに深刻かを知らない
競争力低下で経常収支が恒常的に赤字となる危険
東洋経済 2022/11/13 野口 悠紀雄 : 一橋大学名誉教授
https://toyokeizai.net/articles/-/629864
■《危ない円安》「双子の赤字」とインフレ 「有事の円売り」が始まった=編集部
エコノミスト(毎日新聞)2022年4月18日
~~~
2008年のリーマン・ショック時に財務官を務めた篠原尚之氏は、ロシアによるウクライナ侵攻という有事にもかかわらず、ジリジリと進む円安に危機感を強める。
4月11日には、一時1ドル=125円台後半へと約6年10カ月ぶりの水準にまで円安が進んだ。
鈴木俊一財務相は翌12日、「最近の円安の進行を含め、為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視する」と、たまらずけん制するに至った。
・金利差の拡大
円安が進む要因は大きく二つ。
一つは欧米主要国との金利差拡大。
8%に迫るインフレ(物価上昇率、2月は7・9%)抑制に向けて3月から利上げをスタートさせた米国は、5月にはコロナ対応として始めた金融緩和で膨らんだ保有資産を圧縮する「量的引き締め(QT)」に突き進む構えだ。
「秋の中間選挙に向けて、バイデン大統領は市民生活を直撃しているインフレ抑制を至上命題にしており米連邦準備制度理事会(FRB)は強力で、スピーディーな引き締め政策に転じる」(市場関係者)。
英国も利上げをスタートさせ、欧州中央銀行(ECB)も年内の利上げを市場は視野に入れる。
その一方で、日銀は「金融政策を修正する必要性を全く意味しない」(黒田東彦総裁)と、2%の物価目標が達成しないことから、異次元緩和を根気強く続ける姿勢を崩さない。
さらに、欧米主要中央銀行の金融正常化から波及する金利の上昇圧力が強まった3月末、日銀は指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」を連発。
是が非でも金利を抑え込む姿勢を鮮明にした。
「一般に金利の高い国の通貨が、低い国の通貨より上昇しやすい。足元のドル・円相場は、教科書通りに利上げに向かうドルが買われ、金融緩和を続け金利が低いままの円が売られる格好だ」(為替アナリスト)。
日米の金利差拡大が、ドル高・円安を加速させている。
・低成長の日本トリプル安も
もう一つの円安要因が原油やガス、穀物など国際商品価格の高騰を背景にした、日本の貿易赤字の拡大や経常収支の赤字化である。
特に貿易赤字の拡大は、輸入企業の円売り・ドル買いを通じて、需給面で円安を促す。
政府は原油高騰に伴うガソリン価格の上昇を補助金で、しのごうとするのもよくない。
ガソリン価格が上昇すれば、需要が抑制され価格上昇が抑えられるという市場メカニズムが機能するが、財政資金で補助すれば、需要は強いままで、消費は拡大。
その結果、原油輸入の増大と価格上昇を通じた貿易赤字は拡大する。
これがさらに円安を後押ししてしまう。
大和総研の試算によると、22年の外為市場では16兆円の円売りが生じる見通しという。
市場では「年内に1ドル=130円台の円安」を予想する声も上がり始めた。
さらに懸念すべきは、貿易や経常収支の赤字(双子の赤字)が円安を加速させ、株安と金利上昇(債券価格の下落)という「トリプル安」「日本売り」を誘発しかねないか、だ。
バークレイズ証券の山川哲史調査部長は、「『日本売り』の問題は経常赤字自体ではなく、円滑に赤字がファイナンス(資金手当て)できるか否かにかかっている」と指摘する。
・投機筋の日本売り
経常収支とは、外国とのモノやサービス、金融取引で発生した受取額と支払額の差額である。
黒字なら生産や消費などの経済活動が国内資金で賄える状態で、赤字は不足する資金を外国から調達する状態を指す。
1980年代以降、黒字を定着させた日本の経常収支の中心は貿易黒字だった。
毎年10兆円を超える黒字を計上し続け、98年には15・7兆円に達した。
しかし、これをピークに減少し、08年のリーマン・ショック後は4兆円に急減、11年は2・5兆円の赤字に転じた(図2)。
もう一つの柱である対外直接投資や証券投資から得られる配当や利子などの第1次所得収支の黒字が定着したのも80年代だが、その金額は年2兆~3兆円と貿易黒字の3分の1以下の低水準だった。
ただし、稼いだ黒字を先進国の債券や海外の工場建設などへの直接投資に振り向けたことで、日本の対外純資産は増加の一途をたどり、20年末で世界最大の356兆円に達する。
この資産から上がってくる利子や配当が第1次所得収支の黒字を押し上げた。
貿易黒字が減少するのとは対照的に増え続け、05年を境に両者は逆転し、その格差は拡大している。
21年は第1次所得収支の黒字は20・4兆円と貿易・サービス収支の赤字(2・5兆円)を補って15・4兆円の経常黒字を確保した。
だが、今年1月は昨年12月に続く経常赤字となり、その赤字額も過去2番目に多い1・1兆円となった。
「巨額の貿易黒字」や「盤石の経常黒字」は過去のものとなり、ドイツの猛追を受ける対外純資産は「世界最大」の称号を失う局面を迎えつつある。
この意味するところは、毎年垂れ流す財政赤字とGDP(国内総生産)の2倍を優に超える政府債務の持続性である。
フィデリティ・インスティテュートの重見吉徳首席研究員・マクロストラテジストは、「日本の貿易収支は、今後も1次産品や中国からの輸入品の価格上昇で赤字が定着するだろう」と予測する。
1月のように、貿易赤字を第1次所得収支で穴埋めできなければ、経常赤字になる可能性が高い。
前出の山川氏は「日本の公的部門の貯蓄不足を、家計・非金融企業部門の貯蓄余剰が相殺する形で、対外余剰を維持してきた。
民間の貯蓄余剰が国債市場へと恒常的に環流することで、海外からの資本流入に依存せず、財政赤字をファイナンスし、『日本売り』圧力を吸収するという特異な資金フローが定着した」と解説する。
経常赤字は、山川氏の指摘する特異な資金フローを成り立たなくする。
「経常収支の悪化、その裏側にある国富流出による貯蓄・投資バランスの構造変化は、『日本売り』を誘因する契機となりかねない」(山川氏)。
円や日本の国債に幾度となく大規模な売りを仕掛けた投機筋は、分厚い貿易黒字や経常黒字、世界一の対外純資産の前に跳ね返されてきた。
しかし、日本に巨額の投機マネーを蹴散らすだけの体力は残っているだろうか。
国内で財政資金をファイナンスできている経常黒字の間に、財政収支を改善し、「日本売り」を抑制する環境整備が待ったなしだ。
~~~
《危ない円安》「双子の赤字」とインフレ 「有事の円売り」が始まった=編集部
2022年4月18日
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220426/se1/00m/020/051000c
■医薬品輸入額は過去最高、コロナワクチンが影響との声-3月貿易統計
Bloomberg 2021年4月19日 占部絵美
~~~
日本の新型コロナウイルスワクチンを含む医薬品の輸入額は、3月に統計でさかのぼれる1988年以降の最高を更新した。
財務省が19日公表した貿易統計によると、医薬品の輸入額は前年同月比27.3%増の3565億円と、これまで最高だった2015年11月の3380億円を上回った。
輸入量は5.4%増の923万トンと、昨年7月(995万トン)以来の高水準。
政府は2月に医療従事者向けの新型コロナワクチン接種を開始し、今月12日からは65歳以上の高齢者に拡大している。
菅義偉首相は19日、9月までに16歳以上の1億1000万人の全対象者向けにワクチン接種するめどが整ったと述べた。
野村証券の新井真エコノミストは、3月の医薬品輸入額の伸びは「ワクチン輸入の影響が大きいと考えられる」と述べた。
ワクチン接種が本格化する来月以降はさらに「輸入額の押し上げに寄与する可能性がある」との見方を示した。
~~~
医薬品輸入額は過去最高、コロナワクチンが影響との声-3月貿易統計
占部絵美
2021年4月19日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-19/QRSCMMT0AFBH01
■医薬敗戦、バイオ出遅れ 21年の貿易赤字3兆円へ
日本経済新聞 2021年12月12日
■ゲノムリテラシーなき、さまよう日本:医薬品の貿易赤字は4兆円超に
アゴラ 2022.07.29 中村 祐輔
■“悪い円安”このままでは「深刻な日本売り」が始まる
毎日新聞 2021年11月27日 平野純一・経済プレミア編集部
■ソロス氏のヘッジファンド、円安で10億ドルの利益
日本経済新聞
■国際金融資本の真相を知り、「日本国民の国」を取り戻そう
[三橋TV第299回] 三橋貴明・林千勝・saya 2020/10/09
■日銀金融緩和で刷られた円の行き先が日本企業でも日本国民でもないカラクリ
(Dr.苫米地 2016年9月15日)TOKYO MXバラいろダンディ
コメント