商いは笑人の戦場なり~ユーモアセンスとビジネス~


「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ」

これはアメリカの哲学者、心理学者ウィリアム・ジェームズの名言です。

『幸福論』を書いたフランスの哲学者・アランも「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」と名言を残しています。

楽しくもないのに、笑うことはできませんよね?

でも、これが予想以上に効果がありそうです。

今回はユーモアと笑顔についてお伝えします!



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Contents

食は「Enjoy」?!

牛丼、立ち食いそば屋などが多い日本。

駅前や駅構内などで忙しいビジネスマンの強い味方です。

日本は古くからのファストフード大国?とも言えそうです。

以前、イタリアへ旅行に行った際、少し驚いたことがあります。

あるレストランで、食事を注文し、料理を作ったコックが一通り料理の説明を終えたのち、立ち去る際の一言。

「Enjoy!」

んん!?「Enjoy?」

そうか!

食事は「Enjoy!」 なんですね。

忙しい毎日を過ごしていた自分にとって、食事が「Enjoy!」だということをすっかり忘れていました。

1日3度の食事にも「Enjoy!」があるのなら、何気ない毎日にも「Enjoy!」があるのかもしれない。

今までの常識を考え直す、いい機会となったのを今でも覚えています。

「サンタの追跡」

「Enjoy!」と言えば、海外では、様々な遊び心のあるイベントが多いですよね。

その一つ、「サンタの追跡」はご存知でしょうか。

クリスマスイブの日、アメリカとカナダの連合防衛組織、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が1955年以来60年以上、毎年、サンタクロースの追跡を実施しています。

もちろん、これはユーモア。

NORADは、毎年サンタ追跡専用ホームページを公開し、サンタクロースの出発を「レーダーで確認」、その飛行を「偵察衛星とイージス艦とサンタカメラネットワークで追跡」し、戦闘機をカナダのユーコンからメキシコのメキシコ・シティーまで飛ばして、「アメリカの領域内にいるサンタを追跡」するのです。

NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)は、24時間体制で人工衛星の状況の観測、地球上の核ミサイル・弾道ミサイルの発射警戒や、戦略爆撃機の動向監視などを行っているカナダ・アメリカの軍事組織の一つ。

実際に「サンタの追跡」ではカナダ空軍がサンタクロースを上空でエスコートします。

国家の税金を使って行われる一大イベント。

遊び心満載です。

でも、日本で実施するには、税金の無駄遣い!と非難されてしまいそうですね。

イグ・ノーベル賞

遊び心と言えば、もう一つ、ご存知、「イグノーベル賞」。

ノーベル賞にさきがけノーベル賞のパロディーとしてユニークな研究、発見に毎年贈られる イグ・ノーベル賞。

世界最高の知的エンターテインメントとも呼ばれています。

1991年に創設され「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられています。

毎回聴衆が殺到する、世界的にも注目を集めるイベントの一つです。

ノミネートされる研究のほとんどが、まっとうな科学者による大真面目な研究であり、科学的な方法論に基づく論文であること、時に強烈な皮肉や風刺を含んでいます。

そしてイグ・ノーベル賞の受賞式のスピーチでは、「60秒で聴衆を笑わせなければならない」ルールがあります。

本当の知性とは、面白くなければならない、のかもしれません。

昨今のビジネスの世界においても、Googleやザッポスなど、優れたイノベーションや卓越したサービスを提供する会社の独特な文化やユニークな職場環境は、創造力を引き出すためにいかにユーモアや遊びが重要かを教えてくれています。

「幸せのちから」

私の好きな映画の一つに、ウィル・スミス主演の「幸せのちから」という映画があります。

証券会社 Gardner Rich & Co社(ガードナー・アンド・リッチカンパニー)の創設者クリス・ガードナーの半生をモチーフにした映画です。

ウィル・スミスの親子共演も話題となったため、ご存知の方も多いと思います。

その映画のワンシーン。

主人公クリス・ガードナーは、大手企業に就職するための大事な面接日の前日に駐禁で抑留されてしまいます。

しかもペンキ塗りしていた格好そのまま。

面接に時間ぎりぎりで駆け付け、スーツ姿ではなく、汚れた格好で面接に行った時のシーン。

面接官がこう言います。

「私が仮に、面接にシャツも着ず現れた男を雇ったとしたら、君はどう思う?」

クリス・ガードナーはこのように答えます。

「よほどいいズボンだった」

面接官はそのユーモアによって笑顔に。

見事面接に合格します。

まさに一発逆転のユーモア。

そういえば、以前、アーノルド・シュワルツェネッガ―氏がカリフォルニア州知事選を戦っていた際にも、印象的なユーモアがありました。

遊説先で観衆から突然生卵をぶつけられた時に、生卵をふきながら言ったひと言。

「やつにはベーコンの貸しだ」

面白いですね。

多くの人が、その切り返しに共感したのではないでしょうか。

ユーモアという人間力

そういえば、以前、海外では会社組織で階級を上げるには「ユーモア」が必要だと聞いたことがあります。

「ユーモア」は、上司になるために重要なファクターなんですね。

英国では、会話の中で、機知に富む一言や、柔らかい皮肉をさりげなく織り交ぜることのできる能力は、知性の高さを示すものと考えられているようです。

そういえば、「Mr.ビーン」や「ひつじのショーン」もイギリスですが、機知に富んだ笑いを提供していますよね。

ユーモアのある人間は、発想が豊かで考え方に柔軟性があり、表現力が豊かで相手を説得する力にも長けると言われています。

ユーモアは営業成績にも影響?!

日本国内でも「ユーモア」はビジネスにおいて大いに効用があると言われています。

神奈川大学教授の大島希巳江氏が行った調査から、ユーモアのセンスがビジネスに大きく関係していることがわかっています。

保険会社の営業マンを対象に実施した調査で、ユーモア度が高い人の方が、営業成績が高かったと報告されています。

トップクラスの営業マンで共通するのが、語彙が豊富で、スマートな表現をすることとでした。

難解で専門的な保険の説明も、ユニークな喩えを使ってわかりやすく説明するのが得意な人ばかりだったそうです。

「ユーモアがある人は、語彙が多いだけでなく、場を読み、適切なところで適切なことを言うコミュニケーション能力も高い。また、視点の意外性が笑いを誘うというのがユーモアの本質なので、創造力と、意外な切り口からものを見ることができる頭の柔らかさが必要。これらはどれも、仕事の能力に直結するものです」と大島教授は仰っています。

さらに、「相手を楽しませようというサービス精神が、営業成績を上げることと深く関連している」とも分析しています。

ビジネスの職場における「ユーモア」

職場では敢えて厳しい言葉を言わなければならない時があります。

でも、厳しい言葉をそのまま伝えた場合、職場はギスギスした雰囲気に包まれてしまいます。

ここで有効なのが「ユーモア」。

職場の雰囲気は、そのままストレスに直結する場合も少なくないのではないでしょうか。

ストレスが多い職場は、精神的にも悪影響を与えますし、身体的にも悪影響があると言われています。

現在、日本国内だけでも約500万人のメンタル不調者がいると言われ、働いている人の3人に1人は、何らかのメンタル配慮または、メンタルサポートが必要だと言われています。

「ストレス社会」と言われて久しい昨今。

職場において、空気を和ますユーモア、有効かもしれません。

笑いとストレス

笑いとストレスに関する実験結果があります。

大阪府立健康科学センターという研究施設。

落語を聞く前と聞いた後での人の唾液中のストレスホルモンの変化を調べた結果、ストレスホルモンの「コルチゾール」は半数以上の人が減少

同じくストレスホルモンの「クロモグラニンA」も4分の3近くの人で減少しており、落語を観賞した多くの人のストレスが和らいでいるという結果です。

笑いには、ストレスを軽減できる力がある、そう言えそうです。

笑いと健康

医師でもある「立川らく朝」氏は、笑いの効用を説明しています。

それが以下3つです。

1、免疫機能

ある医学実験では、笑うことによってがん細胞やウィルスをやっつけるナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化することが証明されています。

笑いは感染症やがんの予防にもなります。

2、血圧減少

笑うことによって副交感神経優位の状態になって血圧が下がり、身体をリラックスモードに変えてくれる効果があります。

心筋梗塞や脳梗塞などのリスク低減にも効果があります。

3、血糖値減少

笑うとインスリンを分泌する遺伝子の作用で血糖値上昇を抑えるようです。

糖尿病患者が落語を見た日は平均46mg/dl血糖値が下がったという研究結果もあります。

笑うことで糖尿病が改善します。

すごいですね。

笑いは、ストレスのみならず、万病に効きそうです。

特に死と直結するがんや、動脈硬化、糖尿病にまで効果がある、驚きです。

まさに「笑う門に福来る」ではないでしょうか。

「デュシェンヌ・スマイル」

健康やストレスにも効果のある、笑い。

でも、いつも、そう面白いことが周りに溢れている、というわけでもありません。

そう簡単に、笑顔はできませんよね。

「デュシェンヌ・スマイル」はご存知でしょうか。

いわゆる「作り笑い」です。

「デュシェンヌ・スマイル」とは、(1)「口角(唇の両サイド)を上げる」(2)「目尻にシワを作る」の2条件を満たした笑顔のことです。

発見者フランスの神経内科医、デュシェンヌが名前の由来です。

米カリフォルニア大学のグループが実験を行ったところ、このデュシェンヌ・スマイルを作ると、それだけで脳が前向きな状態に変化し、ヤル気も出やすくなることが判明しています。

デュシェンヌ・スマイルは因果関係が全く逆で、たとえ無理に浮かべた作り笑顔であっても、脳の中で後から前向きな感情が生じるというものです。

つまり、笑顔が、気持ちを前向きにするんですね。

デュシェンヌ・スマイルは、うつ病予防の効果も発見されています。

別に楽しいことがなくても、笑顔を作るだけで脳は笑っていると錯覚し、気分がほぐれる。

面白いですね。

冒頭の2つの名言。

これは医学的にも正しいのかもしれません。

笑顔の連鎖

子どもの笑顔を見ると、思わず自分もほほ笑んでしまうことがありませんか?

こんなユニークな実験があります。

普段からあまり笑わない、仏頂面で近寄りがたいタイプの人を笑顔にさせるにはどうしたらよいかという実験です。

結果、最も効果的だったのは、隣でただ根拠もなくケラケラと笑い続けるという行為だったそうです。

相手の笑顔を引き出すためには、まずは自分からほほ笑みかけることが効果的ということです。

あくびが移るように、笑顔も移りやすいですよね。

例え、最初が「デュシェンヌ・スマイル」だとしても、笑顔が笑顔を生み出す。

「笑顔の連鎖」

そんな空気の職場なら、ストレスも少ないと言えるのかもしれません。

笑顔は「未来」を創る

ユーモアセンスのある人が営業成績が良い、笑顔溢れる職場は健康な人が増える、例えそれが作り笑いでも。

そして、その笑顔が「連鎖」する。

どんなトラブルがあっても、乗り越えられそうです。

コミュニケーションが増え、人間関係が円滑化、リラックスした状態が、新しい創造力を生み出す。

新しいことにチャレンジしやすくなる、そう言えるのかもしれません。

原資0円の笑顔。

笑顔が笑顔を生み、その笑顔が組織を強固にし、事業を成長させる。

笑顔が未来を創る、そういえるのではないでしょうか。

最後に

名言を贈ります。

薬を10錠飲むよりも、心から笑った方がずっと効果があるはず。
アンネ・フランク

笑顔は人生に効くクスリです。
福田純子

採用面接のときによく見るのは、その人の笑顔です。笑顔には、その人の性格や人柄が出ますから。
藤田晋

単なる笑顔であっても、私たちには想像できないほどの可能性がある
マザーテレサ

人の行動と脳の働きは連動しています。ふつうは何か面白い・楽しいことがあると笑うというプロセスですが、顔の筋肉などを笑顔の形にするとその信号が脳にフィードバックされ、面白い・楽しいと感じてしまう。脳も笑ってしまうんです。
築山節

健全なる肉体に健全なる精神が宿るように、笑顔の店には金が宿る。
土光敏夫(東芝元代表)

笑顔は一ドルの元手もいらないが、百万ドルの価値を生み出す。
デール・カーネギー

笑を省ずれば、商は小なり。笑、昇ずれば、商は勝なり。
江見明夫「笑いがニッポンを救う」より

真剣と深刻は違いますよ。真剣さは、軽さがなければだめです。修行を真剣にした人ほど、身のこなしも軽いです。「軽さ」に「あ」を付けると、「明るさ」です。明るい人が、一番真剣なんです。
行徳哲男

商いは笑人の戦場なり
斎藤一人



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