これからどんなことが起こるかを考えるほど不安になる。どんなことを起こしたいかを考えるほど楽しくなる


組織の成功と個人の幸福。

ある意味相反する事柄ではないでしょうか。

でも、そうではない方法もあるはずです。

今回は組織の成功と個人の幸福について、イノベーションと幸福との関係についてお伝えします!

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Contents

ロボットに幸福?!

先日、あるラジオ番組に聞き入ってしまいました。

「ロボットと幸せ」についての内容です。

ゲストが、ロボット工学者で知られている、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司氏。

同氏は日本では珍しい「幸福学」についても研究しているユニークな方です。

経歴は以下です。

【前野隆司氏略歴】

1962(昭和37)年、山口市に生まれ、東京工業大学第4類入学、東京工業大学工学部機械工学科卒業し、同科専攻修士課程修了。

1986(昭和61)年、キヤノン株式会社入社し、1993(平成5)年、博士(工学)学位取得(東京工業大学)

1995(平成7)年、 慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師、助教授を経て教授へ。

2011(平成23)年より、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長およびシステムデザイン・マネジメント研究科付属システムデザイン・マネジメント研究所長兼任しています。

前田氏は、もともとロボット研究をしており、笑ったり喜んだりするロボットの心のアルゴリズムを作ることで、人間が笑ったり喜んだりすることを理解できると考えたそうです。

結果、笑うロボットを作ることができましたが、ロボットは笑っているふりをし、「人間の偽物」にすぎないと気付いたそうです。

すごいですね、ロボットの幸せ。

そこで、前田氏は本物の人間の幸福にせまるために、幸福学の研究をするようになったとのことです。

幸せの4つ葉のクローバー

私はラジオ番組で興味を持ち、少し前野隆司氏の研究を調べてみました。

前野隆司氏の幸福学では、「因子分析」という、多くのデータを解析してその構造を明らかにする手法により、幸せには4つの因子(結果を引き起こす要素)があることを導き出しています。

その4つの因子を組み合わせて、「幸せの4つ葉のクローバー」と呼んでいます。

以下、「幸せの4つ葉のクローバー」です。

【幸せの4つ葉のクローバー】

第一因子:「やってみよう!」因子

〇本名称:自己実現と成長の因子

人は、成長を感じたときに、幸せを感じます。

「自分の強みを活かせているか?」、「自分が成長している実感はあるか?」などの要素。

例えば自分の強みを把握し、それを社会に活かせるようチャレンジすることが幸福度アップにつながります。

つまり、一人ひとりが自分なりの自己実現の方法を見つけて、強みを発揮し、成長するということです。

第ニ因子:「ありがとう!」因子

〇本名称:つながりと感謝の因子

感謝する。感謝される。どちらも私たちは、幸せを感じます。

「人を喜ばせているか?」、「感謝することはたくさんあるか?」などの要素。
仕事の同僚やビジネスパートナー、プライベートでは家族や友人、趣味のつながりなど、つながり・愛情・感謝・親切に関するものです。

ポイントは、単なる友達の数ではなく、多様な繋がりを持つことが幸福度が高い傾向があるそうです。

第三因子:「なんとかなる!」因子

〇本名称:前向きと楽観の因子

前向きに、楽観的な人のほうが、幸せを感じることができます。

「ものごとが思い通りにいくと思っているか?」、「失敗や不安をあまり引きずらないか?」などの要素。

楽観主義は「そこそこで満足できる」態度にもつながっていて、ある程度のところでOKを出すのが大事。

完璧主義に陥ってしまうといつまでも満足できないそうです。

第四因子:「あなたらしく!」因子

〇本名称:独立とマイペースの因子

自分らしく生きる。これも、幸せに生きる大きな要因のひとつです。

「自分と他人を比べずに生きているか?」、「人目を気にせず物事を楽しめるか?」などの要素。

マイペースを維持するためには「メタ認知(自分を“他人事”のように見る能力)のトレーニングが重要」とのことです。

面白いですね。

幸せは「やってみよう!」「ありがとう!」「なんとかなる!」「あなたらしく!」4つの因子でできているのですね。

この4つの因子は、全て満たしている方が一番幸せで、ひとつ欠けていると幸福感が下がり、全部満たしていないと一番不幸、という研究結果が出たそうです。

ラジオ番組では、特に第一の因子「やってみよう」因子と、第二の因子「ありがとう!」因子が、最初の段階では特に重要だと仰っていました。

幸せな職場とは

「幸せの4つ葉のクローバー」は職場においても適用できるそうです。

法政大学坂本光司氏著書『日本でいちばん大切にしたい会社』という本にでている会社を対象に調査を実施。

なんと、ほとんどの会社が4つの因子を満たしていたそうです。

一例をご紹介いたします。

2017年のホワイト企業大賞を取った西精工という会社はナット製造会社

仕事内容自体は派手ではありませんが、社内で「月曜日に会社に行きたいですか?」というアンケートを取ったところ、なんと80%以上の人が「行きたくて行きたくて堪らない」と回答しました。

一般的に「月曜の朝は出勤が憂鬱だ」と言う人が多いのに、驚きの数字ですよね。

なぜ早く会社に行きたいかと聞くと、「みんなと早く会いたい」と言うそうです。

好きなメンバーと仕事をやり遂げることが幸せなのかもしれません。

仕事への不満は、多くが人間関係からきていると言われます。

人間関係を良くできればどんな仕事も幸せになる可能性があるようです。

一理ありそうです。

組織の規模で幸福度は左右

前野氏曰く、幸福度において「組織の規模」の壁は大きいと仰っています。

ちゃんと心がこもった統治で「みんなでやろうぜ!」という空気があればいいのですが、組織の人数が多い場合、人の感情や温度感が失われて、効率化ばかりが進むと、不幸せな人が増えてくる。

理由は「ありがとう!因子」が薄まっていくからだそうです。

人数が増えても、信頼や愛情などをしっかりと伝え、人との繋がりを感じやすい組織を維持することが大切だそうです。

しかし、つながりが難しい大きな会社でも社員がイキイキと幸せそうに働いている会社もあります。

例えば、チャレンジ風土の傾向が強い、googleやマッキンゼー、リクルートなどです。

こういったチャレンジできる風土の企業は、特に第一因子「やってみよう」因子傾向が強い企業。

このような企業は「第一因子型組織」。

第一因子型は、仕事に強いやりがいを感じて、成長とかワクワクとか、強いパッションを常に持てるような組織

第一因子型の幸せは、大きな組織でも実現しやすいのかもしれません。

競争がもたらすもの

一方で、一昔前の日本の大企業は「第二因子型組織」

第二因子「ありがとう!」因子を軸とした組織。

第二因子型は、特定の仲間のためにとか、社会のためにとか、人との繋がりや信頼関係を色濃く感じられる組織です。

「一生面倒見るぞ、家族の名前まで知ってるぞ」という感じの家族主義でしたから、お互いの繋がりを感じやすかった。

村社会に近い状態ですが、そこに幸せを見出していた時代がありました。

しかし、高度経済成長が終わり、業績が頭打ちになりかけてから、グローバル化に伴い、合理化が進んできました。

家族運動会をやめるなど、濃い繋がりを保つ取り組みが減少。

いわゆる競争社会の到来

年功序列や終身雇用も廃止傾向に。

結果、会社の株価は増加します。

しかし、実力主義にすると、実力がある人は幸せになりますが、競争から取り残された人は不幸になります。

負けたと感じてしまうんですね。

今では「第二因子型組織」が大企業の中では消滅しつつあるようです。

本当の競争力とは

しかし、前野氏によると、競争させても儲からないらしいということが分かってきたそうです。

人の能力なんて測れないから、同じ評価体系にしてしまおうという動きが、外資の大企業で始まりつつあります。

大組織において、一部の勝ち組が、多くの負け組を作り出してしまう、競争原理が総合的にモチベーション低下を招く。

総合力が強みの大企業にとっては大きな痛手です。

一方で、小さな会社、村社会的な良さがある会社が全て幸せとも限らないと前野隆司氏は仰っています。

うまくいっていない会社は、実力主義がうまくいかなかったり、権限委譲ができていないことが多いですね。

やっぱり、バランスなんですよね。

人との繋がりは感じられるけど、「出る杭は許さんぞ」みたいになってきちゃうと、第一因子や第四因子不足です。

そうなると、いくら第二因子が満たされていても、生き苦しくなってしまいます。

幸せな会社は、村社会的な生きづらさを工夫して乗り越えている印象があります。

例えば、「報・連・相」を禁止している会社も出てきています。

「任せきる」というスタンス。

信頼関係がベースに築かれた上で、のびのびと挑戦できることを意識しているのかもしれません。

業種別因子との相乗効果

前野氏によると、職種と4因子は関係しているそうです。

得に‎仕事内容がその因子に合っていると、より幸せを感じやすくなるそうです。

例えば、コンサルティングやクリエイティブな仕事の方は、第一因子が高い傾向。

「やってみよう」とか「自分を高めよう」みたいな気持ちが湧きやすい職種。

一方で、病院勤務や客商売など直接人と接する仕事は、第二因子が高い人が多い傾向です。

誰もが自分の特徴に合った仕事につければいいのですが、例えば第二因子が高いのに、第一因子ばかり満たされる環境に入ってしまうと、大変な思いをするかもしれません。

ただ、その特徴というのは先天的な資質だけではなく、後天的に磨かれる場合もあるそうです。

例えば、コンサルタントになったから第一因子が高くなり、第一因子が高くなったからいいコンサルタントになる、といった形です。

いわゆる好循環

向いてる仕事だから頑張る、頑張るから出世する、どんどん幸せになる、というようなループですね。

でも、組織が大きくなると、自分に合う仕事をする人だけでなく、自分に合わない仕事をする不幸な人が大量に生まれがちです。

組織が大きくなればなるほど、全員を最適な仕事に振り分けづらくなる傾向にあるので、小さい会社の方が幸せ度が高くなりやすいのかもしれませんね。

格差は、人を不幸にする

一方で、組織の中で全ての人が自分の特徴に合った仕事をしても、「格差」が不幸を生む効果があるとも考えられているそうです。

地味でコツコツやるような仕事が好きな人がいれば、派手で目立つ仕事が好きな人もいます。

どちらも自分の好きな仕事をしていて、お互いにきちんとコミュニケーションできていれば、双方幸せになるはでずですが、現実、そうはならないんですよね。

格差は、人を不幸にするんです。

収入格差が大きい国ほど不幸になる確率が高いという研究データがあるそうです。

妬んでしまうんです。

でも、こうなってしまうと、イノベーションに向かわなさそうです。

人がたくさん集まれば「差」というものは生まれてしまうものです。

そもそも、人が何千人と一緒に働くこと自体が、人間の心に適していない可能性もありますね。

前野氏が提唱する理想的イメージ。

それは、大企業の中でそれぞれが全部ニッチ戦略を取り、いくつもの小組織に分かれているような形態。

小さい幸せな組織がたくさんあり、それがちゃんとつながって、一つの大組織として成り立っているという状態とのこと。

あれ?

どこかで聞いたような。

そうです!

京セラ創業者稲盛和夫氏の「アメーバ経営」ですね。

アメーバ経営とは、組織をアメーバと呼ぶ小集団に分ける経営手法。

各アメーバのリーダーは、それぞれが中心となって自らのアメーバの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞り、努力することで、アメーバの目標を達成を目指します。

そうすることで、現場の社員ひとりひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現します。

アメーバ経営は、京セラをはじめ、稲盛が創業したKDDIや再建に携わった日本航空など約700社に導入されています。

それぞれの小集団が「やってみよう!」と自立し、「自分達らしい分野」で、「感謝」が伝えやすい組織規模。

それがアメーバ経営の真髄なのかもしれません。

従業員幸福度と会社の業績は比例する

しかし、働く個人の幸せが、企業の幸せ(=業績)をもたらすことがあるのでしょうか。

前野氏によると、「従業員幸福度と会社の業績は比例する」という研究結果もあるそうです。

例えば、ブラック企業が社員へ強制的に業務を指示すれば、一時的には大幅な利益計上できるかもしれませんが、業績不振や世の中の人手不足のときに社員は退社してしまいます。

ですが、社員が幸せな会社でしたら、厳しいときでも逃げません。

短期的にはブラック企業のほうが儲かるかもしれませんが、長期的に見たら幸せな会社の方が組織も成長するのかもしれません。

一部のブラック的ベンチャー企業創業者は「立ち上げた時の苦しい時期、社員の幸せなんて考えられない。業績が上がり余裕が出てきたら考えるものでしょ」という方もいらっしゃいます。

でも、そうではないと思います。

前野氏の研究では、いわゆる福利厚生を整備するとかの話ではなくて、仕事自体でいかに幸せになるかということを提唱しています。

仕事自体が楽しくて、会社の仲間にも会いたくて堪らない状態が幸せ。

そう考えると、立上げたばかりのベンチャーの人が、やらされ感じゃなくて本当に仕事自体を楽しんでいて、仲間への信頼感を持っている状態っていうのは、すごく幸せな状態。

その状態を維持し経営すれば、幸せと業績は維持できる、そう言えるのかもしれません。

イノベーションと幸せ

前野氏曰く、イノベーションと幸福は相関関係があるそうです。

そういえば、カリフォルニアの温暖な気候の中で、のびのびとアイデアを育てることで生まれたのがiPhoneであり、Facebookであり、Uberでもあります。

日本では「働くことは苦しいことだ」というイメージが根強いので、生産性が上がらず、イノベーションも起きにくい。

幸福度が低いままだと生産性も上がらず、創造性も破壊され、イノベーションも生まれにくいのかもしれません。

もともとイノベーションの語源はラテン語で「新しい」を意味する形容詞「novus」の女性単数主格形「nova」(new)から来ています。

イノベーションとは「新しいこと」と深くつながっている。

新しいことに、「やってみよう!」が幸せなら、ベンチャー企業がイノベーションを起こすことは「幸せ」なことではないでしょうか。

個人にとってもそうかもしれません。

新しいことへチャレンジすること自体、幸福なんですね。

「やってみよう!」

「ありがとう!」

「なんとかなる!」

「あなたらしく!」

幸せになってみませんか?

最後に

最後に名言を贈ります!

これからは進んで何もしない、何も変えないことが最も悪いことだと考えてほしい。トライして失敗すれば、またトライすればよい。そしてトライする事実に対して正当な評価をしていきたい。
奥田碩/トヨタ自動車元会長

やった人にだけノウハウがつき、スキルがつく。ノウハウがない、スキルがないからと勝負に出るのをやめるなんて、大変な勘違いです。
増田宗昭/TSUTAYA創業者

勇気ある決断と熱烈な行動力で、勝負はほぼ決まる。大切なのはそれを信じ無心になって諦めず努力する情熱だ。後は運を天に任せて開き直る潔さ。答えは近い未来に必ずはっきりする。
近藤太香巳/ネクシィーズ創業者

人生なんて、楽しいか、楽しくないかのどっちかなんですから。楽しくなかったら、すぐやめるというか、ほかに楽しいものを見つけられる自信だけはありますよ。
内藤剛志

あなたにできること、できると夢見たことがなにかあれば、それを今すぐ始めなさい。向こう見ずは天才であり、魔法であり、力です。さあ、今すぐ、始めなさい!
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/哲学者、政治家、法律家、文豪

できないって誰が決めた、なれないって誰が決めた、やってもないのに誰が決めた。あなたの人生は、あなたが決める。あなたらしく生きてこそ人生。
きむ/詩人

あなたの能力は、あなたの行動によって、開花されるのを待っています
喜多川泰/作家

プライドだとか恥ずかしいとか、そんなつまらないことにこだわらないで、仕事も恋愛も、自分からどんどん扉を叩くの。そうすれば、もっともっと新しい扉が開いてくるわよ。
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