「ちょっとだけ頑張る」ことを、毎日続けてみよう。
よく「マラソンは独りのスポーツ」と言われます。しかし、私は決してそうではないと思っています。レースが始まれば自分で決める場面が多いのですが、スタートラインまでは小出監督がすばらしい練習メニューをつくってくださる。料理のスタッフが日々ベストになる栄養状態をつくってくれて、トレーナーが身体を痛めることのないよう調整して送り出してくれる。そして最後が私の番。私が勝てば監督もスタッフも皆が一番になれる。私はいわばアンカーのようなものです。マラソンもチームのスポーツなのです。
金メダルも世界記録もすごいと思いません。それより目標を達成した喜びが大きいです。
暗闇の中でも、夢を持つことで、ホントに1日1日を充実した時間を過ごすことが出来ました。なので、陸上に関係なく、いま暗闇にいる人や悩んでいる人、ほんとに1日だけの目標でも3年後の目標でも何でも目標を持つことで、すごく一歩一歩1日が充実すると思います。
長い階段を一気に上がろうとすると、 途中でへばってしまう。 でも一段ずつ確実に上がっていけば、 時間はかかっても頂上まで上がることができる。
輝ける場は人それぞれ。いかに輝くかはその人次第だと思います。
選手にけがをさせるほど練習させるのは良くない。それは当たり前です。でも、みずきちゃんとよく話すんですが、『この練習をしたらけがをするかもしれない。でもやらないと世界と戦えないとしたらどうする?』って。私たちは迷わず、けがをしてもいいから突き進む道を選びます。
新しいことをやるのは危険だと忠告されましたし、バッシングもされました。でも、私たちが欲しいのは常識の中で得た結果ではない。
私はすべての大会において、結果がどうなろうとも、スタートラインに立った時は『やるべきことはすべてやった』という気持ちでした。なぜそういう気持ちになれるかというと、それまでの一日一日がすべて、『きょうはすべてやりきった、もう走れない』『ありがとう。あしたもまた一緒にがんばろう』と抱き合って終わる毎日を過ごしてきたからです。
「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」。これは高校時代の恩師がくださった私の座右の銘です。結果は目に見えますが、成長は目に見えないものです。
諦めなければ夢は叶う。
高橋 尚子。
岐阜県岐阜市出身。
2000年シドニーオリンピック金メダリスト。
女子マラソンの元世界記録保持者。
女子スポーツ界で初の国民栄誉賞を受賞。
愛称は「Qちゃん」。
中学校時代から陸上競技を始め,中距離ならびに長距離のトラック競技を主としていたが,大学卒業後小出義雄監督の指導を受けマラソンに転向。
1997年の大阪国際女子マラソンで7位に入った。
1998年の名古屋国際女子マラソンでは2時間 25分 48秒の日本最高記録で優勝。
2000年のシドニー・オリンピック競技大会では,高低差の激しい難コースにもかかわらず2時間 23分 14秒のオリンピック新記録で優勝し,日本女子陸上競技界に史上初のオリンピック金メダルをもたらした。
同年女子スポーツ選手としては初めての国民栄誉賞を受賞。
2001年のベルリン・マラソンでは2時間 19分 46秒の世界最高記録をマークした。