成功の秘訣「ギーク」とは?
椎葉忠志/株式会社Aiming
「この市場なら絶対に勝てる」という確信を持ってください。
強く確信を持つことが成功への第一歩です。
また、ぜひ「ギーク」であってください。
「ギーク」の意味は、常に実践することにより深い知識を持つ、ということです。
情報が溢れる現在、同じようなサービスが乱立する中で、画期的な発明はそうそう起きません。
まずは、今世の中にあるものを手にとり、深く理解した上で、次の一手を考え“形”にすることこそが、ものづくりの一歩です。
勝つという強い確信と、「ギーク」な姿勢をぜひ大事にしてください。
椎葉忠志(Aiming創業者)とは?
椎葉忠志。
1973年生。
立教大学卒業後、1997年テクモ株式会社に入社。
2003年、株式会社ゲームオンに入社、2006年12月東証マザーズにIPO、2008年3月同社常務取締役退任。
2008年6月、ONE-UP株式会社代表取締役就任。
2011年5月同社退任。
2011年5月株式会社Aiming設立。
家庭用ゲーム開発からゲーム業界のキャリアをスタート。
ゲームオンでは日本で最初に最も成功したFreeToPlay(基本無料)型MMORPG「REDSTONE」の立ち上げなどが有名。
ONE-UPではソーシャルゲーム初期の代表的なヒット作「ブラウザ三国志」「戦国IXA」等を立ち上げ成功させる。
どのような時代であっても、インターネットに繋がるゲームで革新的な最初の成功を出し続けるためのオンラインゲーム事業計画立案、運営、開発、マーケティングについて現場レベルから経営レベルまで幅広い知識と実績を持つ。
2015年3月東証マザーズ上場。
椎葉忠志(Aiming創業者)の「コトバ」
すべての市場は、良い時期・悪い時期の両波を繰り返します。その波の中で、自らが挑戦したいアイディアに需要・可能性があるのかを模索し、ここぞというタイミングの時に勝負することが非常に重要だと思っています。特に市場の波が激しいゲーム業界では、3〜4年でトレンドが大きく変化します。90年代後半に家庭用ゲーム機が流行り、ポータブルゲーム機が主流になったかと思えば、携帯でゲームを楽しむ時代が到来し、プラットフォームが力を持ち…そのような波の中、私は、当時決して主流ではなかったPCオンラインゲームがのびる可能性を見いだし、その市場開拓に集中した結果、狙った通りの成功を収めることができました。
PCオンラインゲーム市場の開拓後からは、前職で数々のオンラインゲームを手がけながら、いつも、【必ず来る次の波】と【挑戦の場】を模索していました。そしてある時、スマートフォンゲームという市場に辿りついたのです。当時(2011年)は、もちろん現在のような確固としたスマートフォンゲーム市場は存在せず、世界的なタイトルでも月商1億円ほどの小さな市場でした。しかし、スマートフォンのスペックは確実に進化し続け、常にインターネットに繋がるという事実を前にし、私は、「ゲーム機に劣らないリッチなスマートフォンゲームを必ず作り、世界中のお客様に自分たちのゲームを届けることができる」と確信しました。この市場に挑戦すると決めてから、2~3ヶ月後には、第1回目の資金調達を終えた形でAimingを設立していました。その間、迷いなど皆無でした。「今しかないチャンスを自分で掴むしかない」という気持ちのみでしたね。
カオスの世界はワンマンが全部決めて、まっすぐ進むしか成功する方法はないのです。間違いない。合議なんて無理で、全員が同じ知見と理解をもっているわけではない。飛びぬけた能力を持った人がこうだと判断して進めていくしかない。何か束縛の中では、遅いし話にならない。すべてを自分で即決してまっすぐ行くこと以外に世界的な競争に勝ち抜く方法は無い。それは独立しないとできないことでした。お金うんぬんよりも時間が惜しいという危機感を持っていました。
僕らが最初に基本無料をやりはじめたときは、“いかに怪しく見せないか”ということをすごく考えていました。無料でゲームができるなんておかしいと思う人が絶対に出てくるから、それをどのように払拭するかにものすごく気を使いました。
当時は、基本無料なんて絶対ありえない、ものも無いのに高い金で売りつけるなんてとんでもないビジネスだという話をされていてまったく理解されていなかった。今はぜんぜん違いますよね。業界全体もすごく変わっています。僕の強みは良いオンラインゲームを作ることができる。平均点以上のゲームを作ることができる。お客さんに楽しんでいただいて、お金を払っていただける仕組みを作るのがうまい。スキルセットとしては、ブラウザゲームも作れるし、MMORPGも作れるし、携帯ゲームも作れる。全方面にチャンスがある。全方面のチャンスを最短で取りに行ける。
基本無料で触ってもらうチャンスさえ築ければ,面白さでなんとかなるんです。ログレスもそうでした。初月売り上げは2000万円あるかないかだったのが,雪だるま式に増えていって,ピーク時には初月の100倍とかになったんです。まぁこの過程までは凄く長かったです。それができるのも基本無料だからだなあと思ってます。少しのユーザー数でも,少しずつ確実に売上を上げて,それによってできたお金も,開発費を取り返そうというのではなく,再投資するようなイメージで。今のゲーム内容で楽しんでもらえて,売上が伸びたのだからと,さらに投資すればもっといけるんじゃないかと。ただ,まずお客様に手に取ってもらわなきゃいけないと考えたときに,たくさんゲームがある中で選んでもらうためには,見た目のいいものや名前が立派なもの,自分の興味あるものを手に取っちゃうのは,どうしても消費行動として当たり前なわけで。決してモバゲーとGREEが悪いという話じゃなくて,ゲームの歴史でずっと繰り返されてきていることなんですが……モバゲー,GREEもカード型ソーシャルゲームだけで,新しい遊びを提案できなかったわけです。新しいことをしない,つまり諦めたんですね。
家庭用ゲームのソフト市場売上が2000億円を割ったというデータがあったので,過去20年くらいの家庭用ゲームのソフト市場を調べたんですよ。そしたら,ピーク時って5800億から6000億あったんですね。1997年とか98年なんて,ミリオンヒットが年間10本以上あって,それこそスクウェア1社で4本出したりしてたんです。我々が家庭用ゲーム業界に入ったころですが,当時僕がプレステで初めて担当したゲームは,27万本くらい売れたんです。いまだと凄い数字ですよねえ。
僕は,日本のプロ野球が好きなんですね。テレビは視聴率が悪いと放送すらしなくなってきていますが,観客動員数はずっと増えてるんです。なんか放送とかも減ってきて,ただでさえ不況感ありますしね(笑)。でも昔は人気がないと言われたパ・リーグも,動員数は増えている。本当に好きなものには夢中で,自分が強い趣味に思っているものには全然気にしないでみんなお金を使うんです。そんな時代に,膨大なマスマーケットであるスマホゲームにおいて,僕らはカジュアル(ライト)ユーザーとコアユーザーの間を狙っているんですが……この定義が曖昧で,線引きが難しいわけです。
カジュアルユーザーですが,これは「モチベーションが低い人達」です。なんか言葉だけ聞くと誤解を招きそうですが,そこまでどっぷりゲームに浸かっていない人達ですね。こういう人達は,小さい達成感でいいんです。パズドラや「キャンディクラッシュ」(iOS / Android)のようなシンプルなルールのパズルや,「運が8割じゃないのかこれ」という“運ゲー”とか呼ばれるようなゲームでも,2割でも自分が関与してるとこがあれば,「クリアできた」「いいカードが手に入った」と満足できる。どっちが上とか下とかそういう話ではなく,楽しみ方とそれぞれに合ったゲームがあるという話ですが,でもその2つって相容れないですよね。僕らは,両者の真ん中よりもちょっとカジュアル向けを目指してます。モチベーションが高い人はそれなりの操作があった方が楽しんでくれるんですけど,長くやるゲームとなるとその操作が面倒くさくなる。でも操作が多くてもモチベーションが高ければ乗り越えるんで,このバランスをどうすればいいか,常に意識してるんですよ。
飛びきり優秀な人材が集まってくるからでしょう。欧米やアジアと比較すると,日本はゲーム開発者の地位が低いですよね。そもそも大学でソフトウェア工学を学んだ人が,第一志望でゲーム開発を選ぶ率ってむちゃくちゃ低い。一方で中韓だと,IT企業のトップは,売上の6割がゲームだというTencentです。時価総額が20兆円とかで,日本で言うとメガバンクを軽く超えてますから。そういう会社だから,もちろん大学で専門的にソフトウェア開発を学んだトップの人や一流の人が志望するわけです。むろん,決して学歴が高い人が必ず優秀ということでもないんですが,業界や会社の社会的地位の高さが,開発の現場で技術的な差が生まれることにつながっているというのは間違いないと思います。
新しい会社は,ビジネスセンスに長けていて挑戦する気持ちは強いけど,ゲームについての意識や経験が弱いわけです。僕らAimingがIT/ベンチャー系に近しいところは何かというと,挑戦するという意識を持っているところです。でも本質的なものとして,昔からの「ゲームを丁寧に作って売ってます」という職人気質も持っている。ちょうど中間くらいにいるんじゃないかとは自負しているんです。
上の人は新しいやり方が受け入れられないんですよね。どうしても下に見ちゃうし,今さら無理だ,ついていけない,ともちょっと思っている。若い子は若い子で,一生懸命就職活動してどうにか入れた会社を,なんで辞めなきゃならんのだという,それぞれの世代でチャレンジしない要因があるんです。
「俺が作ったゲームはこれだ」っていうのをやりたいがために,この業界に入ろうと思ったのが最初なんじゃないの? と。そう話すと,その場は共感したり,頑張らないといけないと思ったりしてくれるんですが……。その気持ちを継続できる人が大きくなって,本物になるんでしょうけど,それは100人中1人いるのかという。
……勝ち負けって表現してしまうのもなんですが,日本のゲーム業界全体が世界的に勝つためにはどうしたらいいか,それぞれの人が考えていると思うし,全員が一緒に何かを……ということではないですが,もうちょっと「何か方法があるんじゃないか」と,それぞれが考えないといけないですね。
gumiさんなんか,GREEで成功してダメになって,そこで早くから大きな赤字を続けながらもネイティブアプリに挑戦し始めて,その中からブレイブ フロンティアで復活した。挑戦する数が多いから,失敗があっても復活が叶うんですよね。IT/ベンチャー系の人達は,そのあたりのマインドがすごく高い位置にあって美しいと思うんです。
コンシューマも含めて,いろんなところでいろんなゲームを,もっと気軽に出せる仕組みみたいなものがないと,今以上に閉鎖的な業界になっていきますよね。巷で騒がれてる「インディーズ」だって,やっぱり日本は少ないですから。
なによりブレることのないように,というのが基本方針です。いろいろなことにチャレンジしていくというのも打つ手の一つではありますが,やっぱり「面白いゲームを作る地力」が必要だなと。このあとの市場がどうなるかは分かりませんが,どんな形であろうとも,ゲームには「入力」があって,そこに対しての何らかの「表示」があるわけです。根幹はそこで,そこをいかに真面目に考えるかであって,そこさえ外さなければ,市場がどうであってもあんまり関係なく対応できるわけです。そういう普遍的なところを大事にしていきたいですね。
根が真面目なんです(笑)。あと業界に対してなんですけど,悲観的なことを言う人も多いですけど「下がったら上がる」と考えてほしいです。そして僕みたいな(経営者としての)立場なら,会社としてどう新しいトライをするかを考えて,ゲーム制作に関わる人達は,次に何が“来る”のかということと,そのときに自分が活躍できるような準備をしておきましょう。そういうことをみんなが考えられたら,きっと業界全体が良くなるはずです。
スマートフォンではマーケットができる前から世界で全員が全力疾走の競争になってしまっていて、資本もぜんぜん違うところがやっています。たとえば、日本でもある会社さんが頑張ろうと思ってやってはいるけれども、その会社が集められるお金ではGREEとDeNAには絶対に勝てない。ましてやシリコンバレーでちょっと成功した会社には何十億円と集まってしまう。もっというと、中国には安い技術者が使える上に、カネも持っている。動いている金のケタが違うんです。スマートフォンの市場では、今自分たちが作っているような優れたコンテンツが勝てるチャンスはものすごく短くなる可能性が高い。
日本のゲーム業界としていま1つの大きなチャンスが来ていると思っていて、スマートフォンのような小さな端末に対して作るゲームというのは日本人が1番得意としているのではないかと思うのです。昔から携帯型ゲーム機はあるし、携帯電話ゲームもあるし、オンラインゲームは韓国産だろうが中国産だろうが見られるわけで、Facebookのソーシャルゲームもプレイできる。日本だけにはものすごいノウハウと情報がある。スマートフォンというデバイスを含め、色々な端末でオンラインゲームができる。これは今後のゲームには工夫が必要で、その工夫をする余地が日本にはある。今こそもう1度日本が勝てるチャンスなのです。別に愛国心から言っているのではなく、日本人としてゲームをビジネスにしているからには日本のバックグラウンドと強みを活かせるタイミングで勝負をするしかなくて、今がまさにそのタイミングだと感じています。
業界No1、No2になればブランドはどの時代でも生きる。自分たちはオンラインゲームの開発力はNo1だと言えると思うのです。同じように作っている会社はなくなってしまったし。我々以上に実績がある会社はないし。それは強いです。これからの時代は何でもオンラインゲームになるというのは誰しも当然だと思っていて、そのジャンルでの日本一の開発会社になっているのはものすごく強い。
挑戦しないかぎり、成功しません。エンターテイメント業界は、若い才能が何かを生み出さなくてはいけないと思います。ゲーム業界自体に停滞感があるけれど、挑戦がないと成長もないんです。
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