株式会社FRONTEO創業者、守本正宏:やらなければならないという使命感とは?

株式会社FRONTEO創業者、守本正宏:やらなければならないという使命感とは?

 

やらなければならないという使命感とは?

 

 

守本正宏/株式会社FRONTEO

 

 

 

現在展開しているような情報解析事業の存在を知ったのは会社員のときです。

防衛大学時代の先輩で、商社のアメリカ法人社長をしていた人から、訴訟支援事業の話を聞いたのがきっかけでした。

 

事業内容に興味を持ち、いろいろと調べてみると、日本には国際訴訟の支援を情報解析の側面からサポートする会社がないということが分かりました。

多くの日本企業がアメリカへ進出しているにも関わらず、日本企業を訴訟の面で支援する日本の企業がなかったのです。

 

訴訟というと、弁護士を雇って戦うというイメージがあるかもしれませんが、実際には費用の約7割はデータ解析に充てられます。

アメリカの会社に解析を依頼することになりますから、会社が持っている非常に重要な情報を海外の会社に引き渡すことになってしまうのです。

 

その現状を変えたい、日本の企業を守りたいという思いで会社を始めました。

起業したいという思いが先にあったわけではなく、この事業をやらなければならないという使命感から、結果的に会社を作るに至りました。

 

前職を退職した頃は、私に社長業ができるとは全く思っていませんでした。

 

 

 

 

 

 

守本正宏(FRONTEO創業者)とは?

 

 

守本正宏。

1966年、大阪府生まれ。

 

1989年に防衛大学校卒業後、海上自衛隊の護衛艦で勤務。

退官後、半導体製造装置メーカーのアプライドマテリアルズジャパン株式会社を経て、2003年にUBIC(現FRONTEO)を設立。

 

グローバル企業の国際訴訟対策をビッグデータ解析の技術で支援し、また、自然言語処理と人工知能の研究成果を応用した人工知能エンジン「KIBIT」(キビット)の開発・実用化を推進。

2007年には東証マザーズ上場、2013年には米国NASDAQ上場を果たし、事業分野を創業事業であるフォレンジック調査、国際訴訟支援から、ビジネスインテリジェンス、ヘルスケアへと拡大。

 

後に、ヘルスケア・インダストリーに特化した人工知能「Concept Encoder」(自然言語処理技術の形態素解析のうち「単語と文書のベクトル化」を用いてテキストの特徴を数値化する人工知能)を自社開発(2018年5月リリース)。

現在では、FRONTEOグループCEOとして、KIBITとConcept Encoderという2つのAIを軸に、金融、知財、人事、医療分野など様々な分野での事業展開を牽引している。

 

公認不正検査士(CFE)、NPO法人デジタル・フォレンジック研究会理事、警察政策学会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

守本正宏(FRONTEO創業者)の「コトバ」

 

 

 

 

 

子どものころに宇宙飛行士に憧れて、宇宙飛行士になるためにはどうしたらいいのか、そのころ調べました。するとどうもアメリカの空軍の戦闘機のパイロットが多いということで戦闘機のパイロットになるためには…ということで防衛大学校に入って、自衛隊に入りました。しかし、残念ながら防衛大に通っているときに目が悪くなりまして、パイロットの道を諦め、結果的に宇宙飛行士も諦め、現在に至るという状況です。

 

 

 

 

 

 

自衛隊を退官した後に、半導体の業界に入ったんですが、そこであるとき、アメリカの特殊な訴訟制度があるんですけども、それに日本の企業が非常に困難を極めていると。それを何とか支援したいということで今の会社をつくったという経緯ですね。

 

 

 

 

 

 

 

日本人で実際に開発を中心的にやっているのは10人ぐらいですが、本当にエンジンを開発してるのは2人の天才です。本当は天才1人でもいいかもしれない。うちには2人もいて、すごいことだと思っています。実際もう一つ大事なのは、FRONTEOのような会社だと、AIを作れる人も必要なのですが、いわゆるデータサイエンティストというAIを使える人たちが必要です。FRONTEOには20人います。運用してサポートする20人が、実際に実用化して運用するためには必要な人材です。こういう人たちもそろえていることは重要だと思います。資格に関しても、G検定とか取っている人間もいます。やはり資格が重要だと思っているのですが、その人物がAIを使えるかどうかは、なかなか見える化できてないのです。やはり資格があった方がいいと思います。今、「KIBIT Automator」に関しては、今は社内での資格を作っています。将来的には「KIBIT Automator」を使う資格に関してオープンにして、やっていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

新型コロナウイルスに関連する、さまざまな社会的な混乱は、確かにありますし、今後、AIの活用ということが必要になってくるとは思いますが、第3四半期(19年10~12月期)の後半ぐらいから、ようやく新しいAIソリューションの米国での活用が増えてきました。基盤が確立できたので、それに合わせてプレスリリースをだんだん打ててきました。たまたまタイミングが重なっていますが、単純にそれだけではないと思います。FRONTEOとして、創薬(ドラッグディスカバリー)を支援するためのAIシステムがかなり成熟してきて、実際に製薬会社が導入したということもありました。FRONTEOのAIを使って新型コロナウイルスに対する治療薬の開発を支援でしたいということもあり、アピールしましたが、基本的にFRONTEOの成長のカーブがちょうど乗ってきた段階というのが、一番の理由ではないかなと感じています。

 

 

 

 

 

 

 

それまでの米国の弁護士は「やっぱりAIは信用できない。人のほうが信用できる」というものでした。それが、訴訟を扱うので保守的な米国の弁護士でさえ、ようやく「AIだけでもレビューしていいよ」というように、FRONTEOの技術を使うことを認め、それをアピールしてくれたのです。そのことが、ものすごく大きなマイルストーン(画期的な出来事)であり、ゲームチェンジ(流れを変えること)になったと思います。それまでは、「AIを使っても人との併用」というものでした。それが、米司法省(DOJ)に提出するような資料にAIが使われたというのが大きいと思います。それがFRONTEOにとって、大きな前進だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

もともと、2012年に初めて「KIBIT」をリリースして事業を始めてから、お客さまとのPoC(概念実証)、導入、改善を繰り返し、ようやく、リーガルテック事業も、ライフサイエンスの分野も、金融や他の分野も、FRONTEOの強みを生かせたソリューションを確立できました。もう一つ大事なのは、やはり売る体制です。どうやってお客さまに訴求して、理解していただき、活用していただくかというところで、かなり練度も上がってきているということです。もう一つは、お客さまの(AI)リテラシーが上がってきていることもあり、ようやくビジネスとして軌道に乗ってきたという印象があります。技術やノウハウなどが、だいぶ整ってきたなと感じます。

 

 

 

 

 

 

訴訟に関して日本企業は極度に怖がる傾向にあります。問題は経営陣の証拠の重要性についての意識の差で、訴訟になったとき、証拠がどこにあるのか不明のため、訴えられると混乱してしまう。逆に相手が特許侵害をしている場合でも、訴訟に金額がかかりすぎるということから、怖くて訴訟を起こすこともできない。日本企業は良くわからないので弁護士の言いなりになっているケースが散見されますが、弁護士のなかにはディスカバリーを経験していても、Eディスカバリー(電子証拠開示)の経験がない弁護士もいるので、「弁護士は神様」という考え方を日本人は改めた方がよい。今後は、日本企業も国際ビジネスのなかで訴訟により相手企業を訴えるという交渉のカードを切っていかないとだめだと思います。

 

 

 

 

 

 

よく「日本はAIで遅れている。欧米の方が進んでいる」とか、「日本は米国や中国から遅れている」と言われますが、私はそうは思っていません。「日本がAIで遅れている」と言われる1つの理由が、投資額です。(欧米に比べて)日本は、はるかに小さいと思います。でも、AI開発は、本当は数人の天才でできるはずなのです。開発者の数が要るとか、お金がかかるということは、あまり関係ないと思っています。もう一つは、データを持っているかどうかということです。「AI開発にはデータが多くないと駄目だ」ということで、確かにGAFAや中国のように、国家レベルでデータを集めているところから比べると、日本は少ないかもしれません。でも、FRONTEOもそうですが、世界中の情報を本当に学ばなくてはいけないのかというと、決してそうではありません。優秀な人間も、世界中の情報を全部知った上で判断しているわけではありません。AIが人間を代替するものであるとしても、ある限られた情報の中で、素晴らしい発見をすることができる人間が存在するように、AIも、決して全部の世界中の情報を学ばなければいけないというわけではないと思います。そう考えると、実は日本にもすごいチャンスがあります。FRONTEOのAIは、少量の情報でも、的確に、精度が高く、スーパーコンピューターよりもはるかに良い性能を出せます。マイクロAIという考え方です。小さくても、性能がいいものをつくるということが、日本人は得意だと思っています。日本は、そういうところに特化してやっていくと、決して負けないと思います。まだ「AIの勝ち組」が決まっているわけではありません。むしろ、ここを伸ばすことをやっていけば、たぶん「コンピューター時代の勝ち組」と「ネットワーク時代の勝ち組」の(構成企業が)違ったように、「AI時代の勝ち組」も変わっていくと思います。その中にFRONTEOも入っていたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

当社の実質的な競合企業は約30社の米国企業ですが、日本語を実際に処理できるシステムを保有している企業はありません。「日本語の処理も可能」と謳っている弁護士も、実際は下請けに出していることが多い。その下請けが孫受けに翻訳を依頼し、実は日本の隣の企業が翻訳を行っていたというケースもあり得ます。弁護士がベンダーに下請けに出すことは業界の常識となっています。また、日本語はASCIIコードのほか、シフトJISなど多くのコードがあり、文法も独自のため、機械処理が進んでいません。このため、英語で効率のよいサーチエンジンでも日本語文書の場合、ゴミヒット(関連のないデータの抽出)になることが多い。このため、どうしても人手に頼ることになり、膨大なコストがかかることになります。このあたりにも日本企業が海外での訴訟に勝てない一因があると思います。

 

 

 

 

 

 

 

リーガルテクノロジー企業では顧客の訴訟に関連するデータは高い機密で管理されているのではないかと皆さん思っていらっしゃいますが、実は、ダンボールに入れて海外に送っています。日本企業のなかではセキュリティにあれだけ配慮しているのに、訴訟となると、暗号も解いて海外に送っています。そこからまた、海外の下請けに送られていることを知らないでいます。欧州は「データプロテクションロー」があり、国内でしかディスカバリーの処理を認めていません。

 

 

 

 

 

 

自分の考え方や生き方、経験を振り返るようになりました。何か決断をしなければならないとき、その判断には人生観が関係してくると実感しています。このことは自衛官のときから言われてきました。戦場における究極の決断においても、最後には、それまでにどんな生き方をしてきたのかが影響するのだと教えられました。明確な答えがあるのではないので、人生観が決断を左右するのです。今まさに、日々決断を迫られているので、以前よりも自分の人生観を信じるようになりました。

 

 

 

 

 

 

 

自衛隊時代、前職の外資系半導体メーカー時代を通して、海外に行く機会や外国の人と会う機会が多くありました。海外の文化に触れることで、日本人の誠実で真面目な気質のすばらしさに気付く機会が多かったと思います。技術力も素晴らしく、日本人はとてもクリエイティブで、「日本の誇りを守りたい」という思いはずっと持ち続けています。

 

 

businessカテゴリの最新記事