株式会社マクアケ創業者、中山亮太郎:「アイディアの加速装置」とは?

株式会社マクアケ創業者、中山亮太郎:「アイディアの加速装置」とは?

 

「アイディアの加速装置」とは?

 

 

中山亮太郎/マクアケ創業者

 

 

素晴らしいアイディアが決してお蔵入りしない世界を実現したいです。

優れたチャレンジが躓き、お蔵入りとなっててしまうことは、日本だけでなく地球レベルで不幸なことだと思っています。

それを躓かせず、後押しし加速させていけるような仕組みをもっともっと普及させなくてはいけないと思っていますし、それが僕らのミッションでもあるとも思っています。

おかげさまで、世の中のアイディアの加速装置になっているという感覚はだんだんつかめてきています。

もちろん、まだまだ足りないところもあって、例えばMakuakeで成功したプロジェクトが次の展開に乗り出すためのサポートなどは、これから必要になってくるでしょうね。

加速装置としての機能を徹底的にブラッシュアップし、その加速をさらに後押ししていくことに努めていきます。

 

 

 

中山亮太郎(マクアケ創業者)とは?

 

 

中山亮太郎。

1982年、東京都生まれ。

慶応義塾大学卒業。

2006年、サイバーエージェントに入社後、社長アシスタントやメディア事業の立ち上げを経て、2010年からはベトナムにベンチャーキャピタリストして赴任し、現地のネット系スタートアップへの投資を実行。

 

2013年、日本に帰国後、サイバーエージェント・クラウドファンディング(現・マクアケ)を設立し、代表取締役社長に就任。

 

同年、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」をリリース。

2019年12月、東証マザーズに上場。

 

 

 

 

 

 

中山亮太郎(マクアケ創業者)の「コトバ」

 

 

 

 

うちはサラリーマンがいない家系でした。曽祖父は山口で大工をしていて、祖父は林業を営んだ後、個人投資家に。父は山口から上京して、裸一貫から医学書の出版社を立ち上げて、いまも経営しています。もう40年近くやっています。

 

 

 

 

 

もともとは本気でサッカー選手になりたかったんです。でも、高校に入ってから全然ついていけなくなり、無理だと悟りました。ただ、普通に諦めるのは恥ずかしい。そこでサッカー選手を諦める言い訳として、「弁護士になりたい」と言い始めました。本当はどんな仕事かもよくわかっていなかったのですが、難しそうだから、そう言っておけばカッコがつくかなと(笑)。言った手前、とりあえず法学部に入らないといけません。弁護士の出身大学で多かったのが東大、早慶、中央など。結局、浪人して慶応に入学しました。

 

 

 

 

 

事業に興味が出てきたのは大学生になってから。弁護士の仕事がよくわからなかったので弁護士事務所でアルバイトを始めたのですが、新規事業の法律相談にやってくるビジネスパーソンたちを見ていたら、ゼロから事業をつくっていくことのほうがおもしろそうに思えました。

 

 

 

 

 

父は普段は何も言いません。ただ、家族で焼き肉屋さんに行ったとき、突然、改まった顔で、「人として生まれたからには、社会に何か価値を残すべきだ。子どもを残すのもいいし、事業を残すのもいい」と言われたことはあります。それなら僕は事業だなと。

 

 

 

 

 

 

家族でもいいし、事業でもいいし、作品でもいい、何かを残せる人間になれと。そんな話をすることがなかった父がいきなりそういうことを言い出したもので、強烈に胸に残りました。それでその時考えました。それなら自分は事業を残したい、事業を残せる人間になろうと決めたのが大学生の時でした。

 

 

 

 

 

(サイバーエージェントへ)入社したのは2006年。いまでこそCAは大きな会社ですが、僕が就活をしていた04~05年はアメーバブログが始まったあたりで、とにかくいろんなことに挑戦していました。成長中の若い会社なら、20代のうちに事業を起こすチャンスがあるはず。そう考えて入社を決めました。IT領域であることも大きかった。既存の産業だと、若い自分は40~50歳のベテランに比べて周回遅れのスタート。しかし、新しい産業ならベテランと同じ位置から始められる。スタートが同じなら若いほうが勝つと思っていたので。

 

 

 

 

 

 

口では「世界世界」って言っているのに、当時の自分の頭の中には山手線と東京メトロの路線図ほどの世界しかなかった。これはまずいなと思って、どこかのタイミングで海外に出て仕事をするチャンスがないかなと思っていた時に、当時の上司から「ベトナムでベンチャーキャピタルをやってくれる人を探している」という話を聞いて、すぐに「僕が行きます」と返事しました。これが自分にとってとても大きなターニングポイントになりました。

 

 

 

 

 

 

ベトナムには2010年から2013年の頭までいましたが、世はiPhoneブーム。Appleはベトナムでプロモーションをしていなかったのに、代理店経由などで、どうにかみんなが手に入れようとしていました。日本では物が売れなくなっているとか、デフレだとか言ってましたけれど、『人は欲しいものなら買う』という人間の本質を見たようでした。

 

 

 

 

 

 

また、家電を売る店のラインナップにも非常にショックを受けました。日本のメーカーの製品が日本以外のメーカーにどんどん追いやられていたんです。2年半ベトナムにいましたが、日を追うごとにその度合いが激しくなっていきました。でも、考えてみたらiPhoneの中身には日本の技術がたくさん使われている。ものづくりの技術の高さは絶対に世界最高レベルにあるのに、最終製品として出していくところで競り負けているということに、非常に悔しさを覚えましたね。コンテンツに関しても、日本の新しい音楽や映画はほとんど流通していなくて、代わりに韓国のものがどんどん入ってきていました。ゲームも中国や韓国のものがベトナムだけではなく東南アジア全体で遊ばれていた。日本では「クールジャパン」だとか「メイドインジャパンが海外を席捲」だと言って報道されていたけれど、その感覚には程遠い日本の危機感を強く感じるようになって、何とかしなければという想いを強く持って帰国しました。

 

 

 

 

 

新しい製品を作るにしても、お店やコンテンツを出すにしても、前例のないことをやっていくということに対して日本のビジネス環境はとてもリスクが高いと思うんですね。これは決してチャレンジする人に勇気がないということではなく、そのリスクを下げていく仕組みが日本にはないということであって、そのことが本当のポテンシャルを埋もれさせる大きな要因になっていると感じたんです。「もっと思い切れ」とか「勇気を出せ」とか「叩かれて強くなれ」とか、そういう精神論でなくても思い切れるような仕組みが作れないだろうかと。それが自分の関わるべき事業の意義でもあり、チャンスポイントになるのではないか、というように発想が繋がっていったんです。そうして、僕はクラウドファンディングを通じてチャレンジを促進する仕組みを作ろうと、Makuakeのサービスを立ち上げることになります。

 

 

 

 

 

 

シリコンバレーを参考に日本でも既にインターネットの新事業や新サービスが生まれやすい生態系が整えられており、IPOまでの道筋も徹底的にノウハウ化されている。しかしながら、ネット事業以外の、新しい商品が生まれる生態系がなかったのではないかな、と。そこで、クラウドファンディングで資金さえ集まればいいのではないかという仮説を持って、Makuakeを“募金サイト”の発想で始めたんです。

 

 

 

 

 

 

 

資金調達や募金のような切り口は自分がVC出身だったからこその発想だった。実際のニーズの解像度を高めないままにビジネスを始めてしまったんです。トレンドや評論家の声ばかりを耳に、大事な現場を見なかったのが、立ち上げにおける地獄の日々の始まりです。

 

 

 

 

 

 

世の中には良い人が多いし、これほど素敵な体験やプロダクトなら、誰もが朝起きたら募金したくなるはず……なんて思っていたんですよね。トレンドワードに甘えて、事業がなんとか成立しているだけ。戦略が拙く、マーケットにはフィットしていないままだから、瞬く間にお金はなくなっていきました。

 

 

 

 

 

 

サイバーエージェント内のベンチャー企業として始まったので、投資も甘いのではと思われることもあるのですが、そんなことはない。独自の“撤退ルール”もある中で、なんとか延命処置をしてもらうための交渉です。注目を集める案件も出ていたし、熱量を込めて『あと半年』と。結果的に、あえて騙されてくれて、男気でチャンスをもらえたのだと思います。

 

 

 

 

 

 

ただ、期限の半年後でもキャッシュは足りず、追加投資を願い出ました。それでも初回よりは自信を持って交渉できましたね。Makuakeはテストマーケティングやインサイトの発掘ができるサービスである、というマーケットフィットする部分が見えたからです。

 

 

 

 

 

 

救世主となった彼(本田圭佑)には本当に感謝しています。ただ、初めて外部からのお金を預かることになりましたから、経営陣としても独り立ちしようと。出向扱いになっていたサイバーエージェントを退職し、自らも出資して責任とリスクを取る形式にしました。

 

 

 

 

 

 

箱入りの起業家、と思われてきたんです。でも、上場よりも随分前には自分たちの資本も投入していたから、後には引けない。上場のことは、サイバーエージェントの株価に関わるインサイダー情報にもなり得るので誰にも相談できず、ステルスに進めなくてはなりませんでした。その孤独感は大きかったです。

 

 

 

 

 

 

 

本音を言えば、他の経営者を羨んだこともありました。それを言ったところで状況は変わらないけれど、一個人としては……どうしても。そんなとき、日常で抱えるストレスや苦しさと立ち向えたのは、サウナのおかげです。サウナ好きな友人から熱烈にオススメされて入ってみたら、すごくよかった。頭を真っ白にできる時間を作れる、良い手段だったんです。

 

 

 

 

 

アイディアで勝負できるプラットフォームであるところですね。ともすればお蔵入りになってしまっていたようなアイディアがどんどん羽ばたいていっています。情熱がある、アイディアもある、それを作る能力もある、でもそれをスタートさせる方法がわからない。そうやって埋もれてしまっていたものがこれまで日本の津々浦々にたくさんあったと思いますが、それを掘り起こせている実感はあります。

 

 

 

 

 

 

ものづくりはものすごく得意だけれどインターネットはあまり得意じゃないという人もたくさいて、そういう人たちは本当に作りたいものや本当にマーケットフィットするものをなかなか作れずにいた。そんなジレンマを持った人たちに対して、「これだったらヒットするんじゃないか」というアイディアをしっかり提示し具現化していくのがMakuakeであり、それがちゃんと多くの人に届く仕組みも構築されています。Makuakeのプロジェクトがおもしろいラインナップになっているのは、そういうメカニズムがあるからなんです。

 

 

 

 

 

 

単純におもしろいと思ってもらえるアイディアであることはもちろんですが、サイト上でちゃんと魅力を見せられているかというところも非常に大きいですね。アイディアをどんなふうに見せていくかを全体的に考えていく必要があって、そこができてさえいれば、Makuakeでのクラウドファンディングはかなりの確率でうまくいきます。そのためには、自分のアイディアを望んでいるのはどんな人なんだろうというリサーチがしっかりできていること、そして、その人たちに対して伝わる形で表現できているかということ。この2つが成功への大きなポイントかなと思います。

 

 

 

 

 

 

かつては、「大手の卸や小売と取引さえできれば売れる」「納品さえすれば売れる」という産業構造だったわけですが、それは平成の前半で終わってしまいました。平成の後半からヒット商品がなかなか生まれてこなくなったのはそのせいでしょうし、一般消費者向けに新しい価値を生み出す商品が生まれにくくなったのが、ここ15~20年のものづくりの流れだろうと思っています。でも、アイディアや技術は企業の中に変わらずにあるんですよね。山ほど。まずは、「そこを救う」「背中を押す」というのが、いま目の前でMakuakeがすべきことであり、事実としてできてきている感覚があります。絶対に埋もれてしまっていたであろう地方のアイディアも話題性を伴って世に出してきましたし、思い描いていたことは徐々に実現できているなと思いますね。

 

 

 

 

 

 

 

我々を後押ししてくれるパートナーとして、最近は地方銀行さんや信用金庫さんと組ませていただいています。日本は、毛細血管のように地方の津々浦々まで地方銀行さんや信用金庫さんが根付いていますが、ここまで国の隅々までを網羅している業態は世界的にも稀有だと僕は思っていて、その底力を強く感じています。地方銀行さんや信用金庫さんにおいても、「地元の企業のいいものがどんどん広まってほしい」「地元からヒット産業が生まれてほしい」ということを本気で思っているわけです。その想いは、「広がるべきものが広がってほしい」という僕たちの価値観とまったく一緒だと思っています。そうした考えから、今、全国で約100社ほどの金融機関と連携して、「新製品を作りたい」という会社さんに対して事業をブーストさせるためのパートナーとしてMakuakeを紹介していただいています。実際に、そこから成功した事例もたくさん生まれていますし、成功によって銀行さんからその会社への融資枠が広がった例もあって、そういう広がりを聞くと、とてもうれしく感じますね。

 

 

 

 

 

 

 

「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」が僕らのビジョンです。しかし、不十分な産業構造により生まれるべきものが生み出されなかったり、広がるべきものが広がらなかったり、残るべきものなのになくなったりしてしまう……そういうことが世の中には山ほどあります。そういうものがない世界にするために、クラウドファンディングという言葉や概念にとらわれることなく、MakuakeとしてMakuakeらしくいろんな価値を紐づけていけたらいいなと思います。その形のひとつがリアル店舗での流通であり、銀行とのパートナーシップということです。

 

 

 

 

 

昔は完全にゼロの状態から自己資金で始めるパターンしかなくて、「起業とは会社を辞め、すべてを捨て去ってやるものだ」という極端な価値観があったと思うんですけど、最近は起業の方法がとても多様になってきたと思います。僕みたいに、大きな企業に在籍しつつイントレプレナーとアントレプレナーの合いの子みたいな形で起業していくパターンもありますね。じつは日本はそこがごっそり抜けている。これからは、僕のような形で物事を始めていく人が増えるだろうと思うんです。LINEさんなんかもそうで、それでインフラになっていますし、そういう事業はたくさんありますね。今からはもっともっと新しいことを思い切って初められる環境が整っていく時代になるでしょうね。

 

 

 

 

 

Makuakeの実行者の中にも、会社勤めのかたわら副業のプロダクトをMakuakeで実現し、今ではそれをメインプロダクトとして独立起業した方がいます。チームでプロジェクトを組んで、新しいことをしている人もいます。大企業の風土も変わってきていると思います。大手商社や家電メーカーで新規事業を提案できる仕組みや社員の起業を後押ししていくような制度ができたという話も聞いていますので、ようやく日本でも、起業を志す人たちにとって多様性に富む明るい未来の兆しが見えてきました。けれども、それを根付かせるためには、今実際に起業している僕らの世代は「未来は本当に明るいんだ」ということを証明しなくてはいけない。そのために、このMakuakeというプラットフォームがアイディアをカタチにするチャンスの場となるように、支援をしていきたい。これから起業を目指す人のためにも頑張っていかなければいけない。これが今の僕が成し遂げたい想いです。

 

 

 

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