株式会社アルファポリス創業者、梶本雄介:成長する転換期とは?

株式会社アルファポリス創業者、梶本雄介:成長する転換期とは?

 

成長する転換期とは?

 

 

梶本雄介/株式会社アルファポリス

 

当社では、最初で最後となるのですが、ハローワーク経由である女性を採用しました。

慶應義塾大学を卒業し、医療事務をしていて、でも出版の夢を忘れられずにいた女性でした。

彼女に「ネットで人気のあるロマンス小説をまとめてきて」とお願いしたところ、 1 日でエクセルの表にまとめてきたのです。

それらを恐る恐る出版したら、出す本、出す本ヒットしたのです。そこから当社の成長が始まりました。

しかも彼女がセレクトしたものは、ロマンス小説だけでなく、あらゆるジャンルでヒットしました。

彼女は現在、取締役 3 人のうちの 1 人であり、編集のトップです。

そういう出会いというか、人のおかげで成長しました。

 

 

 

 

 

 

 

梶本雄介(アルファポリス創業者)とは?

 

 

梶本雄介。

1969年生まれ。

 

東京大学工学部卒業後、1993年4月(株)博報堂入社。

2000年8月株式会社アルファポリス設立、代表取締役社長就任。

 

書籍出版化支援サービス「ドリームブッククラブ」開始。

2010年、新感覚ファンタジー小説レーベル「レジーナブックス」を創刊。

 

2014年10月東証マザーズに株式上場。

2015年、投稿作品の人気度に応じて作家に報酬を支払う「投稿インセンティブ」サービスを開始。

 

「アルファポリス電網浮遊都市」はポータルサイトと小説投稿サイト、漫画投稿サイトなどを兼ねており、同サイト掲載作品を出版するほか「Webコンテンツ大賞」という文学賞を設けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梶本雄介(アルファポリス創業者)の「コトバ」

 

 

 

 

当社の設立は2000年です。わたしは新卒で広告会社に入って7年間勤務し、30歳のときに創業しました。当社は、インターネット上で公開されている小説や漫画といったコンテンツを集め、そのなかの人気作を書籍として出版するという事業を行っています。作品を当社のサイトに無料で投稿してもらい、読者にも無料で読んでもらいます。そのなかから、書籍化したら売れそうな作品をピックアップし、当社の編集部で編集を行ったうえで出版するという流れです。

 

 

 

 

 

 

静謐な文章とSF的な物語が持ち味で知られる市川拓司さんはネット小説出身で当社から書籍化デビューしました。2015年に話題となった『君の膵臓をたべたい』もネット小説でした。

 

 

 

 

 

 

 

ネットの投稿小説を書籍化するにあたって、編集者の手が入りますから違いはあります。ネット版では作家さんの思い入れが強く、それは良いことなのですが、文章が冗長になりがちです。場面展開が同じであったり、内容の整合性がとれていなかったりすることもあります。ネット上で読むと、ある程度は許せたり、気にならなかったりするのですが、じっくり読む書籍の場合はそうはいきませんから、編集者の助けが必要です。

 

 

 

 

 

 

小説の内容がおもしろければ、文章が荒削りだったところで大きなマイナスにはなりません。歌手の方を見ても、歌はけっして上手とは言えないけれど、なぜだか人を惹きつけて止まない人がいるでしょう?小説の場合もそれと同じで、拙いかもしれないけれど、人を惹きつけるおもしろい作品があります。

 

 

 

 

 

 

 

人気作が世に出るまでには、弊社の場合も編集部の方針が入るので完全に透明とはいえません。しかし限られた人物たちだけによる密室会議とはわけが違います。読者の反応がリアルタイムに人気に反映されて、そこから本が出る流れは、作家にとっても、読者にとっても、お互いの求めるものがわかるのでいい状態といえるでしょう。読者のニーズが目に見えることは、私たち出版する側にとってもありがたくて、流行の度合いがデータになって現れるのは非常に大きいものがあります。

 

 

 

 

 

 

 

昨今の流行は、ユーチューバーなどに代表されるように、まずはインターネットで発生してくるからです。ここで非常に重要なのは、ネットで人気のある 1つの作品を出版して「売れてよかったね」という話で終わらないことです。インターネット上で人気となる作品は、かなりの割合でトレンドを形成するのです。これまでの出版市場にはなかったような傾向の作品が、ネット上ではたくさん現れます。こうした作品を安定的かつ多点数書籍化していることが、当社の強みです。

 

 

 

 

 

 

 

市場のトレンドを形成する、ヒット率が高いという点でわかりやすい例としては、日本人が主役の恋愛ロマンス小説の市場をつくったことが挙げられます。10年前までは、ロマンス小説といえば、カナダのハーレクイン社のような海外の小説を翻訳したものしかありませんでした。ところが、洋楽より邦楽を、洋画より邦画をという流れが出てくるのと同じように、外国人の恋愛ロマンスよりも日本人の恋愛ロマンスが読みたいというニーズが高まってきます。書店にこうした作品はないため、ネットでたくさんの作品が登場し、多くの人に読まれるようになりました。なかには人気作も誕生します。当社はそれらを「エタニティブックス」と名付け、レーベル化しました。これまでなかった和製の恋愛ロマンス市場をつくったのです。ネット上の人気作を 1 点ずつ出版するのではなく、こうしたトレンドをつかみ、大きく一固まりにしてヒット市場をつくりあげられるのが、当社の強みなのです。

 

 

 

 

 

 

わたしは 1 人だけで起業しました。経験は一切ありません。ですから、独学でプログラムをつくってサイトを開設し、編集も自分で行い、書店に売り込みにいきました。当時は、現在ほど出版不況ではなかったうえ、本は返品が可能で書店は不良在庫を抱える心配がないこともあり、書店に置いてくれたのです。そうやって地道に販路を広げるうちにヒット作が生まれ、「ネットで人気がある」「投稿から出版できるサイトがある」と知名度があがっていきました。そこからまた裾野が広がり、良い作品が集まってくるようになりました。あまり面白みのない話かもしれませんが、基本的に泥臭かったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

サラリーマンとしてものすごい活躍をされ、起業家としても活躍する人もいるでしょう。わたし自身は大企業のサラリーマンよりは、自分で事業を立ち上げたほうが向いているのかなと思っていますが、起業家にもいろいろなタイプがいると思います。ただ、わたし個人の考えでは、現場のプロと起業家は少し違うのかなと思います。わたしは、エンターテインメントビジネスが好きです。ですが、プロデューサーとして 1つの作品をつくっていくというよりも、そういうものを扱う会社を大きくしたいという気持ちが、起業当初からありました。

 

 

 

 

 

 

 

いろいろな経験をオンザジョブで学び、上司や先輩が指導しながら育てていくしかないのかなと思います。特殊な能力という点でお話すると、名プレイヤーが必ずしも名マネージャーではないのはどこの企業でも同じだと思いますが、編集者は特にそのような傾向が強いです。天才と呼ばれる、何をやらせてもうまい、ヒット作もよく出すような人材が、上に立つと思いがなかなか部下に通じないということが、ほかの職種よりも大きいです。

 

 

 

 

 

 

 

当社では、最初で最後となるのですが、ハローワーク経由である女性を採用しました。慶應義塾大学を卒業し、医療事務をしていて、でも出版の夢を忘れられずにいた女性でした。彼女に「ネットで人気のあるロマンス小説をまとめてきて」とお願いしたところ、 1 日でエクセルの表にまとめてきたのです。それらを恐る恐る出版したら、出す本、出す本ヒットしたのです。そこから当社の成長が始まりました。しかも彼女がセレクトしたものは、ロマンス小説だけでなく、あらゆるジャンルでヒットしました。彼女は現在、取締役 3 人のうちの 1 人であり、編集のトップです。そういう出会いというか、人のおかげで成長しました。

 

 

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