ブックオフ、俺の株式会社創業者、坂本孝:勘を養うための訓練とは?

ブックオフ、俺の株式会社創業者、坂本孝:勘を養うための訓練とは?

勘を養うための訓練とは?

坂本孝/ブックオフ、俺の株式会社創業者

 

 

私がラーメン屋に入ったら、店内を見渡して、こう考えます。

「全部で15席か。客単価が平均千円として、1回転したら1万5千円。この混雑具合だと、1日に20回転はするだろうから、30万円の売上か。この立地でこの広さだと、家賃は月に5万円程度。どうやら夫婦2人でやっているようだから、従業員への給与もないし、売上から経費を差し引いても随分儲かっているな」

そんなことを、常に頭の中で考えているんです。

飲食に関係することだけじゃないですよ。

電車に乗って、年配の男性2人が会話しているのを見たら、「あの2人は同窓会の帰りかな。それとも、1人は医者で、もう1人に持病があるから、自分の知り合いの腕のいい医師のところへ連れて行くところかな」と想像したり、向かいの席に女性が座っていたら「この人は銀行に勤めていそうだな。いや、服装をよく見ると、銀行の雰囲気には合わないかな」と思いを巡らせたり。

いつも周囲をよく見て、その人やものの背景に何があるのかを、あれこれ考えるんです。

これが勘を養うための訓練になる。

 

 

 

坂本孝とは?

 

 

坂本孝。

「俺のイタリアン」などを展開する「俺の株式会社」、古書店チェーン「ブックオフ」創業者。

山梨県出身。

慶應義塾大学法学部卒業後、父が経営する精麦会社に入社。

その後独立し、オーディオショップを設立するも失敗。

中古ピアノ販売、化粧品販売などを経て、50歳でブックオフを設立。

同社を大きく成長させた後、会長を辞しバリュークリエイト(のちの俺の株式会社)を設立。

未経験の外食産業に参入し「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」などの繁盛店をつくった。

 

 

 

厳選!坂本孝の珠玉名言

 

 

365日四六時中考えて、物まねじゃないことをする。それがベンチャースピリッツ。

 

 

「従業員と共に幸せになれる会社をつくること」が、私の起業家としての志。

 

 

ブックオフが成功した理由は、本に対する目利きがモノをいう従来の古本屋ビジネスではなく、「本がきれいか、きれいでないか」というブックオフ独自の価値基準を作り、新たな中古本市場を創出したことです。

 

 

会社に大事にされていない従業員が、お客様を大切にできるはずがない。

 

 

世の中を変える人は、その業界の中心にいる人ではなく遠くから見ている「よそ者」「若者」「ばか者」、この3つのタイプの人です。

 

 

他社に出来ない特徴をいくつか持ち、競争に巻き込まれないようにすることも、ひとつの戦略です。これが、「俺の株式会社」の創業の一番の基礎にあると思います。

 

 

私の人生は順風満帆だったわけではありません。数々のビジネスに挑戦し、失敗を経験してきました。私のキャリアはせいぜい「2勝10敗」だと思っています。今は13戦目を戦っている途中です。

 

 

私たちの会社は当初、客単価2500円の串焼き屋を10店舗ほど経営していたのですが、結局は同業他社と同じことをやっているに過ぎなかった。同じことをやっているうちは、大手の居酒屋チェーンには勝てないんです。だったら、大手にはできないことをやってやろうと考えた。つまり、他には誰もやっていない、ビジネスの「すき間」を探したんです。

 

 

私だって勘が外れることはあります。例えば、銀座五丁目に出した高級フレンチレストランは、オープンから2週間で畳んでしまいました。予想よりも客数が伸びないというのが理由です。これが粗利や価格設定に問題があるというなら修正がききますが、ウチのような商売は客数がすべて。もともと「客数が見込めない場合は、3カ月で閉めよう」と決めていたので、その期間が早まっただけのことです。つまり、予めリスクを考えておいたので、勘が外れたとしても、すぐに軌道修正できたわけです。

 

 

新業態を始めるにあたってリスクも考えました。最初はうまくいっても、いつか飽きられてしまうかもしれない、とかね。しかし、私はいつも、稲盛和夫さんの「楽天的に発想し、悲観的に構想し、楽天的に実行する」という言葉を心の支えにしています。構想の段階では悲観的にリスクを考えておくべきだが、発想と実行は前向きにイケイケでやりなさいと。ですから、閃いて、やると決めたからには、あとは自信を持って実行したまでです。

 

 

銀座にユニクロの新店舗ができた時は、開店前の行列に並びに行きました。商品を買いに行ったのではなく、並んでいるお客さんたちの会話を聞きに行ったのです。実は、あの行列に並んでいる人の中には、地方から偵察に来た衣料品店の経営者が多い。すると同業者同士で、「ユニクロのシャツは、○○というメーカーの繊維を使っているみたいですよ」「そうらしいですね、私も今日はその最新技術を見に来たんです」と専門的な話題で盛り上がっている。そういう話は、飲食業界の人たちと会っている時には絶対に聞けないわけですから、またとない勉強の機会でしょ? こうやって街に出て、自分のアンテナを張って、ビジネスの芽を探す努力をすることは非常に重要です。

 

 

当社では、会議の時に指定席を設けません。多くの会社では、上座に会長と社長が座って、専務、常務と順番が決まっているでしょうが、そんなルールは壊してしまえばいい。出席者が毎回好きな席に座れば、それだけで見える景色は変わります。同じ景色に慣れてしまえば、勘は鈍る。常に「異質なもの」の中に自分の身を置くよう心がけるべきです。

 

 

身近にいる料理人達を、奥さんまで含めて幸せにすること。これが僕の夢です。

 

 

ブックオフを離れた後、このまま引退しようかと思った時期もあった。そうしたら稲盛(和夫)さんが日本航空の会長になっちゃった。年下のお前が何してるって稲盛さんに言われたら奮起せずにはいられない。

 

 

今、世の中で一番必要なのは「GNN」と「TTP」。GNNは「義理、人情、浪花節」で、TTPは「徹底してパクる」(笑)。これがある会社は絶対に伸びます。僕は「飲食の京セラ」になりたいし、ブックオフの頃も「古本屋の京セラ」でありたいと思っていたので、今も京セラや稲盛さんの真似をしています。

 

 

自分と違う特性や能力をもつビジネスパートナーを見つけるには、まずは自分のことをわかっていなければならないのは言うまでもありません。自分は何が得意なのか、また何が苦手なのか。それらを理解したうえで、自分に足りない部分を補ってくれる相手とチームを組むのが理想です。自分の得意分野や苦手分野については、これまでの成功や失敗の経験を振り返ればおのずとわかってきます。

 

 

私の心強い右腕は、元証券マンの安田道男さんと、飲食業20年の経験をもつ森野忠則さんです。私たち3人は、過去の経験や人生観、物事に対する感性がまったく違います。違うからこそ、面白い。お互いの意見を交換し合い、知恵を統合することで、新しい価値を生み出すことができるのです。

 

 

双六に例えれば、振り出しに戻ったつもりで、事業家としてやり残したことはないかと考えた。そして行き着いたのが、才能を持った人たちの独立の道を切り開くということだった。それが飲食業です。日本では、努力をしたミシュラン星付きシェフですら恵まれていません。同じ40歳でも、年収は銀行の支店長の半分ほど。彼らを幸せにしてみせようと決意した。

 

 

これまでは、料理人は店の売上げには関与しないのが一般的でした。損益には責任を持たない代わりに、メニューを自由に組み立てる権限もなかったのです。しかも、効率を重視する経営側からは、「新たなメニューは作らずに現状維持でいい」と指示される。また、原価率は20%と決められており、これを超えると料理人の給料から補てんする高級店もあったようです。このような環境では、料理人の腕を発揮できないばかりか、原価や味に妥協しなくてはならないことも多く、料理人の不満は募る一方だったようです。そんな彼らが当社でメニュー作成の裁量を与えられ、店の売上げに責任を持つようになったのです。彼らにとってはこの状態がおもしろいらしく、ミシュランの星つきクラスの料理人が大勢当社に集まってきました。これまで料理の提供に専念していた料理長が、「俺の~」では閉店後に自分のつくったメニューの売行きをチェックし、売行きによっては翌日からメニューを変えるなど対応しています。

 

 

当社では、失敗云々よりも、社員には自分たちの好きに挑戦してもらうという方針です。たとえば、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」では、メニューは料理長の裁量に任せられています。一流の料理人による一流の料理を、これまでにないおいしさとリーズナブルな価格で提供するのが「俺の~」のコンセプトであり、我々の圧倒的な競争優位性です。ですから、料理人は「原価をじゃぶじゃぶかけていい」ことになっています。ただし、ひとつだけ条件として、開店から3~4カ月以内に利益の出る店に転換することが料理人には求められています。つまり、何をやってもいいけれども、損益計算書に責任を持たなければならないということです。

 

 

料理の世界には「3年間の皿洗いを耐えた者だけが一流の料理人になれる」という考え方があるようですが、当社では皿洗いで一流の料理人が育てられるとは考えていません。世界の舞台で勝つためには、2年で副料理長レベルの腕前を育てる仕組みを持たなければならない。

 

 

私は、シェフという人種はそもそもわがままで、経営に関しては関心がないという先入観がありました。ところが一流のシェフはへたな経営者より、よほどセンスがあります。人間力というのでしょうか、理念さえ共有できればさらに大きな力を発揮する。

 

 

私はみなさんが幸せになるための会社をつくる。みなさんには株を差し上げます。会社は株主のものですから、誰の会社と聞かれたら「俺の株式会社」といってください。
【入社したシェフたちに言った言葉】

 

 

「人生で起こることに無駄なことはない。過去の失敗をどう活かすかが大切だ」と思えるようになれば、失敗は自分が次に飛躍するための糧であると捉えられるようになります。

 

 

 

 

 



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