PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)創業者、上野山勝也:一般解と個別解の価値観にズレがあるところとは?

PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)創業者、上野山勝也:一般解と個別解の価値観にズレがあるところとは?

PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)創業者、上野山勝也:一般解と個別解の価値観にズレがあるところとは?

一般解と個別解の価値観にズレがあるところとは?

 

マサチューセッツ工科大学教授・MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏の『地図よりもコンパスを持て』、まさにこの言葉に尽きると思います。

10年先のキャリアプランを立てようとする人がいますが、変化の激しい今の時代、10年後の未来を予測することは到底不可能です。

そんな意味のない地図を描こうとするよりも、“コンパス”つまり『好きなこと』『得意なこと』をしっかり持って欲しい。

こんな話をすると『好きなことが見つかりません』と学生さんから相談されます。

その理由は、情報革命前の親の世代から、『皆同じが良い』『大企業が良い』という画一的な価値観を押し付けられているからではないでしょうか。

しかし今は、自分が好きなものを大事にする時代。

皆が良いと言う『一般解』のパラダイムから脱却して、自分が良いと思う『個別解』を大事にするべきです。

好きなことが見つからない理由はもう一つ、異文化や異なる価値観とのぶつかり合いを経験していないからです。

だから学生さんたちには『他者と格闘しよう』とよく話すんですけどね。

研究室に籠って同質的な相手としか接していない人も多い。

例えて言うなら、画面が白黒の状態です。

しかし他者と格闘すれば、色んな感情の動きがあります。

すると、『これはめちゃくちゃ好き』『これは大嫌い』『これは得意』と、白黒の画面にビビットな色が付いていくんです。

その色の濃淡が自分の固有性であり、キャリアを築くコンパスになるのではないでしょうか。

大人は『仕事やキャリアに好き嫌いするな』と言いますが、それは違うと思います。

何の感情も色もない世界より、カラフルな世界の方がハッピーですよね。

起業を考えている人に対しても、同じことが言えます。

自分の中の好き嫌い・得意不得意を貪欲に探索し続けることは、アントレプレナーシップを養うことと似ていると思います。

『自分が好きだけど、皆が嫌い』とか『皆は面白いというけど、自分は大嫌い』というように、一般解と個別解の価値観にズレがあるところに、チャンスが潜んでいるかもしれません。

 

 

上野山勝也とは?

 

 

上野山勝也(うえのやま・かつや)。

株式会社PKSHA Technology 代表取締役。

 

1982年生まれ。

東京大学大学院工学系研究科修了後の2007年、新卒でボストン コンサルティング グループに入社。

 

約4年間、コンサルタントとしてビジネス・インテグレーション等のプロジェクトに携わった後、米国にてグリー・インターナショナルの立ち上げに参画。Webプロダクトの大規模ログ解析業務を担った。

その後、東京大学に復学し、松尾豊特任准教授の研究室にて機械学習を学び、工学博士号取得。

 

2012年、PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)を創業し、機械学習、言語解析技術を用いたアルゴリズムソリューションを大企業向けに提供。

2017年9月東証マザーズに株式上場と、同時にトヨタ自動車より10億円の出資を受けた。

TOYOTAも認めたベンチャー企業の創業者となった。

 

 

厳選!上野山勝也の珠玉名言

 

 

30歳で起業したのですが、今思えば、私にとっては20代はインプットの時代、30代はアウトプットの時代ですね。

 

 

デジタルの世界で生きていこうということは決めていましたが、復学当時は会社を立ち上げようという決意までには至りませんでした。ひとつ大きなきっかけとなったのは、2012年に起きた深層学習技術(ディープラーニング)のブレークスルーです。この出来事に背中を押され、研究室のメンバーで起業に至りました。崖から身を投げるような決死の覚悟とはちょっと違いますね。デジタル技術が好きでそれを続けていたら、ふわっと飛行機が離陸するような自然な流れで起業に至りました。

 

 

大学時代には自分は何が好きなのか正直分からなかったんです。東大に入学したのも、BCGに入社したのも、直近数年間で考えた時に最も面白そうな選択をしてみたという感じです。それはそれで良いのだと思うのですが、何かを捨てて何かを取る、という「決断」ではなかったと思います。どちらかというといいとこ取りというベターチョイスだった気がします。

 

 

まだ世の中を知らない頃から、10年20年先のキャリアをプランニングしても意味がない。そこで、数年の短期スパンを一区切りと考え、その中で最も濃い経験ができそうな場を選択しました。

 

 

「偉いか偉くないか」なんて関係なく、「議論の中で意見しない者はコンサルタントとして価値がない」という考え方が面白かったし、すごく勉強になりました。コンサルティングファームは、「新人だから下積みからスタートする」という考え方ではなく、最初からプロジェクトのいちメンバーとして役割を担う。それをシニアや中途の方にフォローしてもらえる、という仕組みなので、とけ込んで行きやすいとも思いました。もう一つ、入社後に実感したのが1週間の密度の圧倒的な濃さですね。学生時代の1カ月分に当たる刺激量が5日間に凝縮されているイメージです。1日の中で大きく自分の考えや価値観が変わるなんてことも日常茶飯事でした。知的好奇心や成長欲求の強い人には、とても恵まれた環境だと思います。脳に入る刺激量が違う。振れ幅がとてつもなく大きかったことを鮮明に記憶しています。

 

 

インターネットやスマートフォンが浸透したことで、旧来のマス的な価値観にとらわれていないわけです。世の中が大きく変わり始めていることを実感しています。恐らく私たちは今、新旧の異なる2つのパラダイムが共存する、不思議なタイミングに生きているのだと思います。

 

 

どんなに時代が変化していても、ビジネスを形作っているのはインターネットが浸透する以前からずっと存在する人であり組織であり会社なわけですね。そうした世の中を形成する大手企業のビジネスを間近で見たことのない世代は、自身が持つデジタル・ネイティブ世代ならではの価値観やテクノロジーを、そこでどのように活かすことができるのかにどうしても気付きにくい。世代の異なるパラダイムのすり合わせがしにくいのです。しかし、私はこの旧来のビジネスフィールドと、今の時代ならではの価値観や情報技術との接点を生み出し、融合させるところにこそ、大きなビジネスチャンスがあると考えています。

 

 

これまでは、人間がキーボードで入力することにより、コンピュータに情報をインプットしてきました。しかしディープラーニングの出現により、ソフトウエアに帰納的推論能力を埋め込むことが可能となりました。人間がわざわざ情報を入力して命令を出さずとも、コンピュータ側が音声や画像など様々なものを認識することが可能となったのです。コンピュータインターフェイスも劇的に変わり、新しい製品・サービスが数多く出現するでしょう。

 

 

我々が提供するアルゴリズムは、使えば使うほどヒトが持つ知識・経験を学習し、精度が上がるという特性を持つソフトウエアです。そのため一度導入すると使い続けてもらいやすい。この特性を活かしてアルゴリズムを進化させ、品質を向上させていくというのが1つ目の軸です。また、現在はコールセンターやマーケティングといった領域でアルゴリズムを提供していますが、今後は少子高齢化による労働力の減少といった社会的背景により、人材不足となる領域が出現してくるはずです。こうした新たな領域に合わせて、製品を横にずらして事業を展開していく。これが2つ目の軸です。

 

 

機能的推論部分での精度が劇的に上がってきている。またデバイスも出始めていますし、粛々とコンピューターが進化していると感じています。ここの要素技術というのは、非常に重要なものであると我々は考えております。ここのモジュールを作り込んで領域を特化することで、Googleみたいな会社と差別化を行いながら、いろいろと、最終的にはユーザー体験を新しくしていく。こう考えていくのが、我々がなぜこの事業をやっているかというところになっています。

 

 

人工知能技術の社会実装を考えるうえで重要なのは、目的の定義です。例えば、中国の一部の学校では、教室全体を撮影できるよう、黒板のうえに監視カメラを設置する実験が始まっています。これをどのような目的で使うのか。生徒の表情を読み取り、教師がきちんと授業をしているのか監視することもできれば、イジメを早期に発見し、イジメが流行らない学校を作ることもできるかもしれません。やはり目的の定義が大切で、その技術によりどういう世界を実現したいのかという思想次第で、社会に与える価値は大きく変わります。また、データを何にどこまで使って良いのか、どういう目的でデータを使うのかという思想は国ごとに濃淡があります。

 

 

人工知能技術分野では、目的特化型AIと汎用型AIを分けて議論する必要があります。人工知能という言葉は皆が妄想でき、議論が盛り上がる傾向にあります。そのため、人々の想像が肥大化し、現在起こっている技術革新の現状を正しく捉えられていないことが多いです。目的特化型AIは様々な分野ですでに実用化されていますが、汎用型AIの研究では、未解決問題が山積みです。

 

 

旧来型のソフトウェアは一行一行演繹的に作るため、動作が確実で、製造業的な品質基準に合いやすいです。一方、(機械学習技術という意味での) AIは帰納的推論能力をソフトウエアに埋め込む技術であり、人が判断を誤るように、AIの判断も100%の精度にはなりません。学習データが増えるごとに判断の精度は上がりますが、製造業的な品質基準のものさしで考えると『未完成品』であると認識する必要があります。まず、旧来型のソフトウェアと機械学習的なソフトウエアは異なることを理解しなければなりません。

 

 

2012年以前では、いろんな研究者・技術者の方が世界中の研究室の中で、いわゆる画像認識であるとか音声認識等のいろんなモデルを、言わば人の匠の技で作り込み、精度向上を行ってきました。どのようなモデルを作ればうまくできるのかを世界中で競争していたというのが、2012年までの大きな競争の流れだったんです。2012年に起きた「深層学習技術」という枠組みにのっとって、音声認識であるとか画像認識のモデルを組む。どういうやり方でやるかと言うと、大枠の設計は、人が行うんですね。大枠の設計をしたあとに目的に合致するデータをたくさん集めてきて、それをインプットしていくと、そのモデルの中のパラメーターが変わっていってモデルが完成する。簡単に言うと、例えば画像認識の演算を作るときも、大枠を設計して実際にデータを集めてきて画像のデータを入れ込み学習させたら、モデルができる。そうすると、非常に精度が高いということがわかってきました。

 

 

我々のコーポレート・ビジョンとしまして、「未来のソフトウエア」をかたちにするということを言っています。我々は、技術的には人工知能分野ではあるんですけれども、あまりそういう言葉を使っておりません。なんだったら、機械学習で我々がやっている領域というのは、いわゆるデジタル進化の中の傍流の技術ではなくて、デジタル進化全体のすごくコアになる、ど真ん中の技術の要素技術の1つであると考えております。

 

 

人工知能技術分野の技術は平たく言うと高度なIT技術です。簡単なITを活用しないのに高度なIT技術(AI)を活用できるのかというと難しいかと思います旧来型のソフトウェアと機械学習ソフトウェアは水と油の性質を持っていることを認識することが必要です。旧来型は一行残らず演繹的に記述しているソフトウェアです。アウトプットが一意的に固定されています。それにより日本の品質基準に合っています。機械学習ではパターン認識をするようなソフトウェアなので、大枠の骨組みを人が作って、それに合致したデータを入れるとモデルの中のパラメータが変わって完成する。これによりパターン認識ができるという仕組みです。人が見ても間違えるので精度は100%はありません。なので、旧来型のシステムに合わせてローンチの判断をすると永遠に時間がかかります。機械学習分野の製品は (製造業的なものの見方からすると) 未完成品を世の中に出すという決断が必要になります。この2つをどのように組み合わせるのかが大事です。

 

 

これまでほぼすべての (99.99…%の) ソフトウエアは、一行一行エンジニアの手により演繹的に記述されてきましたが、2012年以降には深層学習技術によりソフトウエアに帰納的推論能力を埋めこむ(また、そのソフトウエアはヒトではなくデータにより記述される)ことが可能となりました。私たちは、長い目で見ると現在のソフトウエアの大部分は帰納的推論能力をもつアルゴリズムを具備し知能化されたもの (Algorithm Embedded) に置き換わっていくと考えています。また、そのアルゴリズムは各業界のヒトが持つ知識・経験を学習する (Specialities Bundled) ことで性能を高める、というソフトウエアとヒトのよりよい連携が広がっていくはずです。

 

 

データはIoTデバイスから取得できます。さまざまな領域の技術者もコラボしています。どんなデータをセンシングすると、どんな体験を生めるのかデザインしていくことが大切です。いま、応用するための要素技術は揃っていると思います。社会のどの課題を解決したいのかの議論が大切だと思っています。AI/SUMでは前向きな議論をしたいです。

 

 

技術開発、事業開発、組織づくりの3つが技術系ベンチャーの成長にとって重要。

 

 

今は「やりたいことが分からない」という人も、まずは熱量を持って仕事に没入する経験をしてほしい。多様な人と協働する中で、人との違い、自分ならではの固有性がクリアになっていく。それが、自分ならではのコンパスを見つけることにつながっていくはずです。私は「意味」とは「生成」されるものと考えます。やっていない状況では意味など何もないし、分からない。やった結果、意味は生成され、分かるのです。

 

 

ソフトウエアが社会を飲み込んでいくというのは、仮説というより、もはや確定した未来だと思うのだけど、考慮していない人が多すぎる気がするのはなんでですかね。前提に置かないのは明らかにおかしい。

 

 

チャンスが来ても、モヤモヤして踏み出せないのは、自分の中のコンパス(好き/嫌いと得意/不得意)に意識的になれていないからだと思います。

 

 

キャリアというのは、みんなにとっての正解なんてなくて、自分だけの正解を見つける作業です。ワクワクした瞬間に手を伸ばさないと、諦めた数だけ、心が枯れていってしまう。

 

 

自分の好き/嫌いと得意/不得意がキャリア選択においては大切だと思います。好きか嫌いかが分からないのは、単に行動量・運動量が足りないだけ。何でもかんでもまずやってみることが大切。

 

 

1万社に入るような、本当に世に浸透するアルゴリズムをつくる。

 

 

 



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