アイデアの“神様”の正体とは?
森岡毅/株式会社刀創業者(USJ元CMO)
誰もが求める、アイデアの“神様”の正体。
それは”確率”です。
いいアイデアを生み出す確率を高めるため、私は常に”イノベーション・フレームワーク”を実践しているだけなのです
森岡毅とは?
森岡毅。
元株式会社ユー・エス・ジェイ チーフマーケティングオフィサー 執行役員。
株式会社「刀」、代表取締役CEO。
兵庫県伊丹市出身。
1996年神戸大学経営学部卒業。
同年P&Gジャパン・マーケティング本部に入社。
ヴィダル・サスーンなどヘアケアブランドのブランドマネージャーを歴任後、P&G世界本社(米国シンシナティ)へ移籍、P&Gのメガブランド北米パンテーンのブランドマネージャーとなる。
その後北東アジアのアソシエイトマーケティングディレクター、P&Gが買収したウエラジャパンの副代表等を歴任。
2010年6月、P&Gを退社しUSJに入社する。
入社のきっかけは、P&Gでの抜群の実績に目をつけた当時のCEOグレンガンペル氏によりヘッドハントされた。
経営難に陥っていたテーマパーク・ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを劇的にV字回復させた。
入社直後からUSJの大改革を断行し、経営回復のための大戦略『三段ロケット構想』を掲げた。
大戦略『三段ロケット構想』とは、第一段ロケット『USJの弱点であったファミリー集客を強みに変える』ものとして新エリア・ユニバーサルワンダーランドを2012年にオープン。
そこから稼いだ資金で第二段ロケット『集客の関西依存体質からの脱却』を目指して450億円を投下してウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッターを2014年にオープン。
そこから稼いだ資金で第三段ロケット『効率的にテーマパークを経営するノウハウで新パークを日本全国やアジアへ多拠点展開する』ことで、USJをエンターテイメント分野におけるアジアのリーディングカンパニーにするというもの。
実際に第二段までは実行され、USJを劇的なV字回復に導いた。
森岡の入社当時に730万人台まで落ち込んでいたUSJの年間集客は、森岡の着任年である2010年から上昇に転じ、2012年にオープンした第一ロケットのユニバーサル・ワンダーランドの集客効果を柱に、2013年には年間集客が1050万人を記録。
第二ロケットのハリーポッターの新エリアをオープンした2014年度は、悲願であった開業年度に記録した1100万人の年間集客記録をついに更新し1270万人もの集客を達成した。
しかも大型アトラクションをオープンした翌年は反動で集客が下がるテーマパークの常識を覆し、ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッター導入翌年の2015年度の年間集客は、記録をさらに大幅に更新し1390万人を記録し東京ディズニーシーを超え、世界第4位になった。
2016年度も引き続いて集客は昨年を上回り、ついには2010年の着任以来、毎年百万人単位で集客を伸ばし続け、730万人台のUSJを倍の1460万人にまで伸ばした。
特筆すべきはこの間、森岡がUSJのチケット料金を大幅に値上げしながら集客数を倍増させたことである。
着任当時から入場料金は5800円から7600円へ、年間パスも10500円から22800円へ大幅に値上げされている。
単価と売上個数の両方の大幅増を鮮やかに可能にしたのは、森岡独自の数学マーケティングのノウハウと言われ、現時点での日本最強マーケターとの評価も少なくない。
集客を倍増させUSJをV字回復に導いた、そのマーケティング手腕は高く評価されている。
2017年USJを退任したのち、「マーケティングで日本を元気にしたい」という大義の下、マーケティング精鋭集団「刀」を設立している。
厳選!森岡毅の珠玉名言
よく、「どうしてやることなすこと全部当たるんですか?」と言われますが、負けそうな戦は避けて、勝てる戦だけを見つけているからです。「どう闘うか」より「どこで闘うか」です。
富士山に登ろうと思ったとき、青木ヶ原の樹海から富士山を見上げても道筋は見えないけれど、富士山の上から見下ろせば「あそこから登れる」「こっちは崖が崩れそうだ」とよく見えます。
僕はもともと数学しかできなかった。文系のマーケターたちは学生時代、おしゃれな服を着て、おしゃれなクルマに乗って、おしゃれに合コンして楽しんでいた。マーケターになっても、彼らはセンスや感覚でトレンドを読むというファジーな世界で仕事をしています。理系少年だった僕にはそういう強みがまったくないので、逆に世の中のすべての現象を数値に置き換えて計算するという、いわば自分の土俵でマーケティングをやるノウハウをずっと研究してきたわけです。
ゴールから逆算して考えることが何よりも大切。
数学は嘘をつきません。嘘をつくのは数字を解釈する自分の脳です。想定を間違えたり、想定しきれなかったり。けれど数学自体は決して嘘をつかない。
マーケティングに必要なのは、創造力やセンスではなく、データを積み重ね、分析していく粘り強さ。その日常はサイエンティスト(科学者)に近い。
世の中のすべての現象は数値に置き換えて計算できる。
数字に『熱』を込めろ。
市場価値を創出する手段はいくつもあります。新技術の開発も、技術の組み合わせもそうです。手段は無限でしょう。ただし、それが本当に意味を持つかは、消費者をどれだけ理解しているかに尽きます。
マーケティング思考は、あらゆる仕事における業務効率と成功の確率を劇的に上げる。
マーケターとはお客様の心を掴む科学者である。
日本では「イノベーション」という言葉を、革新的な商品やサービスだと捉えがちです。もちろん、その通りですが、私自身は「市場価値を創出すること」がイノベーションだと定義しています。日々のビジネスでも小さなイノベーションは生まれますし、その積み重ねの中でブレークスルーが起きてきます。
消費者を理解するために重要なのがマーケティングです。業種は何であれ、企業は今すぐマーケティングの大切さを理解する必要があります。消費者の根源的な欲求を理解すれば、解決策、つまりイノベーションは起こせるはずです。
私が製造業の経営陣と議論すると「消費者が大事」と言いながらも、ふと気が付くと技術の議論になってしまいます。技術は大事ですが、消費者にとっての価値を定義せずに技術の価値は定義できません。2つはいわば双極的な関係なのです。
マーケターは消費者の代理人。どんなに成功を重ねても、消費者視点という原点は忘れてはいけない。
マーケティング思考を使いこなすために、まずは戦略的思考を身につける必要があります。その核となる考え方が「選択と集中」。限られた資源をどう有効に使うか考え、やることを選ぶということです。無意味に資源を分散させるのはただの愚か者です。
なぜ直感やひらめきを大事にするかといえば、人間の意思決定は非常に感情的なものだからです。多くの人は、物事を情緒的に捉えて感情的に反応します。人間を相手にする集客ビジネスには、ひらめきや直感があるほど有利になります。しかし、直感に頼りすぎると人間は大きな失敗を犯します。そこで直感やひらめきでなんとなく見えてきた「行きたい場所」に対して、そこへたどり着くためのストーリーを考えます。これを戦略と言います。
マーケッターは消費者を理解する専門職。消費者の日々の悩みだけでなく、潜在的な悩みや欲求を解き明かし、解決策となる技術を探していく。これを突き詰めることが、イノベーションを生み出す確率を高めてくれます。逆にマーケティングがなければ、消費者無視の自己満足に陥ってしまいます。残念ながら、日本の大企業、とりわけ製造業ではこうした傾向が強いのではないでしょうか。
私は前の会社で”野武士”と呼ばれていたんです。成果は出すけど、「お世辞が必要な」上司には嫌われる。
大きな変革をするときに一番大事なこと。それは、『人に好かれようと思わないこと』です。
今までのやり方を変えるのはしんどいことです。変えさせる私だってしんどい。でも、「嫌われていいんだ。だって正しいことなんだから」と思うと、強くなれます。
実は私、他人に好かれることに1ミリも興味がないんです。
ある問題について地球上で最も必死に考えている人のところにアイデアの神様は降りてくる。
私はこれまでたくさんの失敗をしてきましたけど、それでわかったことは、「正しいかどうかは、他人が決めることじゃない」ということです。
いくら周囲から嫌われても、結果が出るまで戦い続けるしかない。今でも私は周りから嫌われていると思いますよ。でも、それは勲章だと思っています
どこまで行っても100%がない中で、残りの数%を埋めていくのは、やっぱり意思の力、情熱の力。
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