吉田沙保里の「大切な」言葉たち
自分の決めた道で、一日一日を精いっぱい努力し、試合で勝つことで、様々な人との出会いがあり、世界が広がった。
世界の大舞台で連勝できた要因は、超負けず嫌いな性格だから。それと「何が何でも金メダルが欲しい」という動機。
「約束」は「何が何でも勝つ」という覚悟となり、力になる。プレッシャーになると思う人もいるかもしれませんが、それは当人の受け取り方次第。
試合が終わったとき、私の手が上がっていればいい。大事なことは、表彰台の一番上に立つことだけ。
あの試合を振り返って一番思うのは、慣れの怖さですね。なあなあの気持ちで、なんとなくマットに上がってしまいました。試合が始まっても、ガムシャラに攻めず、相手の出方を見たり、時計をチラ見したり。世界選手権で1ピリオド取られたシーンが頭をよぎったりしました。タックルに入ろうとしても、躊躇する自分がいたんです。
「五輪前に負けてよかった」そう思いました。自分の中にどこか甘さがあったのでしょう。あの負けは、自分の意識を変えてくれました。精神的にも強くなれたし、技術的にも進歩できました。連勝中なら絶対にそんなことしないでしょうけど、初心に戻って練習に打ち込みました。
(金メダルを逃し)悔しいですが、銀メダルもきれいだなと思えるようになりました。勝つことだけが人生ではない。努力する過程も大事だと思えるようになったのも、レスリングを続けてきたおかげです。
実力の差などいろいろと考えられますが、一番の敗因は、相手の「勝ちたい」という気持ちが私より上回っていたこと。五輪の決勝という世界最高峰の舞台において、最後はメンタルの差が勝敗を分けた。
連勝記録が119で途切れた時、私はショックで立ち直れなくなったんです。その時は母から、「あなたが勝っている時はほかの選手が泣いているんだよ。一度負けたぐらいでクヨクヨしない」と言われました。その言葉を聞いて、「そうか、そうだよな。いつまでも落ち込んでいたらダメだ」と思えた。それからは悔しいことや辛いことがあれば、ワーッとひとしきり泣いて、気持ちを切り替えられるようになりました。
コーチを含め、様々な方から頂いた励ましや助言を原動力にしてきましたが、特に父や母からの言葉には、私のレスリング人生を支えてもらったと思っています。幼い頃、父はよく私に「もしおまえが途中で負けたら、おまえに負けた子が泣いてしまうぞ」と言いました。私は「そうか、勝たなきゃいけない」と思えて目の前の相手に全力で向かうことができた。
4歳の時、試合で同い年の男の子に負けたことがあったんです。そのまま勝ち進んで優勝した彼が首からぶら下げている金メダルを見て、私は欲しくてたまらなくなった。そして父に、「メダルが欲しい!」と泣きながら駄々をこれました。すると父は「あれはスーパーで売ってないし、勝った選手しかもらえない。そんなに欲しいなら帰って練習しなさい。次の試合で勝ったらもらえるから」と私に言い聞かせた。「金メダルが欲しい」。私はその一心で練習し、1年後の同じ大会で優勝しました。私がレスリングに真剣に取り組んだきっかけは、4歳の頃の「金メダルが欲しい」という思いが始まりであり、その動機はずっと変わっていません。「誰にも負けたくない」「金メダルが欲しい」という強い思いが根底にあったからこそ、必死になってこられた。
私は勝ち続けることで成長したんじゃなく、負けて強くなってきたんです。
吉田沙保里とは?(人生・生き方・性格・プロフィール・略歴など)
吉田 沙保里。
女子レスリング個人で世界大会16連覇、個人戦206連勝を記録し、「霊長類最強女子」の異名を持つ。
2012年には13大会連続世界一でギネス世界記録認定、国民栄誉賞受賞を成し遂げた。
紫綬褒章受章者(2004年、2008年、2012年)。
父親はレスリング選手・指導者の吉田栄勝。
自宅でレスリング道場を開いていた父の指導で3歳でレスリングを始める。
中京女子大学(現・至学館大学)卒業。
1998年、1999年の世界カデット選手権で優勝の後、2000年、2001年の世界ジュニア選手権を2連覇する。
2002年のジャパンクイーンズカップでは前年の世界王者山本聖子を破り、アジア大会でも優勝。
そのままの世界選手権、全日本選手権でも優勝した。
2003年も世界選手権、ワールドカップと立て続けに優勝。
2004年のアテネオリンピックで金メダルを獲得。
2008年北京オリンピックで2大会連続でオリンピックの金メダリストとなった。
2012年ロンドンオリンピック開会式の旗手を務め、3大会連続五輪金メダルを達成。
2016年リオデジャネイロオリンピックでは銀メダルに終わったが、日本選手団主将を務めた。
また、2016年9月には現役を続行しつつレスリング女子日本代表コーチに就任した。
2019年1月8日、現役引退を本人自身のツイッターで発表した。
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